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「ソファーでいいか?」
「はい、ありがとうございます。」
そっと痛くないようにソファーに降ろされて
おまけにクッションまで当てられて
何だか申し訳なかった。
「おちゃでも・・・と言いたいとこなんですけど。」
申し訳なさそうに言うあたしに
雄輔さんは笑顔で言った。
「出来たらそれは今度な。」
今度・・・?
それはありえないけど。
「何か出来ることあるか?
今なら使い放題だけど?」
・・・・・・・・・・・
「いえ、何とかしますから、
お店に戻ってください。
ありがとうございました。」
あたしはそう言って帰ってもらおうとした。
そう言ってんのに
「冷蔵庫開けんぞ。」
そう言って、冷蔵庫を開けて中身をみると
「へぇ、ちゃんと自炊してんのな。」
と、感心したように言ってパタンと閉じた。
もう・・・何勝手に見てんですか。
ととがめる間もなく、
「ちょっとカギ借りてく。」
そう言って、止める間もなく
ガチャリとカギを掛けると
部屋を出ていった。
・・・・・・・・・・
誰もいなくなった部屋で、
5分もじっとしてると、何だか急に
自分が情けなくなった。
まともに動けなくて、迷惑かけて・・・
それに引き換え、奈々美さんは今も菊池さんと・・・
ふと、思考が負のスパイラルにハマる。
何だか何もかもが情けない。
あたしは何やってんだろう・・・・
つー―――っと涙が頬を流れた。
ガチャ、バタン!
「大丈夫かぁ?生きてるか?」
突然のことにびっくりしたけど
そうだ、カギ持ってどっか行ってたんだっけ。
雄輔さんは手に袋を持っていた。
「ほら、飲み物とか、そのまま食えるもんとか
少し買ってきたから、ここにおいとくぞ。
・・・・・・・・・・・どうした?痛むのか?」
あたしの顔見て、雄輔さんがギョッとして言った。
「いや・・ちょっと自分が情けなくて。
すみません。ご迷惑かけちゃって。
あ・・お代いくらですか、払います。」
無理やり笑顔を作って言ったけど
雄輔さんは真面目な顔して言った。
「無理すんな。これは差し入れ。
早くよくなるんだぞ。あと、困ったら
いつでも電話しろ。な?」
って、メモにさらさらとケータイ番号を書いて
テーブルの上に置いた。
そして、親指でそっとあたしの頬に触れた。
涙をぬぐってくれたと気付いたのは
彼が玄関のドアを閉め、ポストに
カギを落とした時だった。