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「うそ・・・もう出来てんの?
あんた、何もん?」
これでいいですかと雄輔さんに手渡した書類を見て
いつぞやと同じように雄輔さんは
目を丸くした。
「ちょっと慣れてるだけです。」
そう言って、立ち上がろうとした時
ピキン!
激痛が走った。
いったぁあああい!
思わず近くにあるものを捕まえようとして
ギュっと捕まえたものは・・・・・
「あ…すみません・・・!」
「いや、大丈夫か?」
思いっきり雄輔さんの胸に倒れ込み
抱きついてしまった。
真っ赤になって慌てて離れようとしたけど
またピキッ!と痛みが来て
思わずもっとギュっとしがみついてしまった。
「動けないんです、ごめんなさい、どうしよう・・・」
軽くパニックになってそれでも動けなくて、
真っ赤になってうろたえるあたしに
雄輔さんは笑いながら言った。
「役得役得♪別にいつまででもオレはいいけど?」
いや、そういうわけにはいきませんって・・・
「んじゃ、残念だけど、動かすからな。
ちょっと我慢しろよ。」
そう言ってそっとあたしを動かそうとして
体に腕をまわした。
「何やってんのよ!あなたたち!」
突然片桐さんが、血相変えて怒鳴った。
「お店が忙しいのに、こんなとこで
何やってるかと思えば!
ちょっと!どういうつもり!」
そう言ってあたしの肩をグイッと掴んだ。
「きゃぁ!!!!」
痛い、痛い、痛い!
痛みで何も答えられない。
触られるととんでもなく痛い!
と、
次の瞬間ギュっと体を抱き寄せられ、
「触んな!」
と、雄輔さんの大きな声がした。
「何よ!雄輔のバカ!」
片桐さんはそのまま事務所に外したエプロンを投げ捨てると
さくら堂をほったらかしにしたまま
店を飛び出して行った。
・・・・・・・・・・・・
あの・・・・・・・
違うんですけど・・・・・・・
しかもお店・・・・・
誰もいないのはまずいんじゃ・・・・?
そう思ったものの、なにも言えず
動くことも出来ず、
呆然と片桐さんの後ろ姿を見送った。
雄輔さんに抱きしめられたまま。