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頭が痛い。
体が動かない。
ああ・・・まただ・・・
前の会社を退職した後のあのもって行き場のない
空虚な気持ち。
どうしても動かない心と体。
あたし・・・ダメだな・・・
部屋に帰ってベッドに倒れ込んだきり
全く動けなくなった。
指先一つ動かそうという気力がない。
涙も出ない。
周りが、ガラスで囲まれて自分だけ
別世界にいるようなそんな気持ち。
届かない。
声も心も。
誰にも。
翌日になっても、何のやる気も起きなくて
涙がこぼれた。
イヤだ。もう、何もかも。
辛うじておばさんにメールを打つ。
「少しだけ休みをください。」
そして電源を落とした。
誰とも関わりたくない。
ここにじっとしていたい。
社会人として失格だって分かってる。
でも、もう限界。
いろんな意味で疲れた。
せっかく頑張れてたのに。
自分一人ならずっと頑張れたかもしれないのに。
人に心を預けると、何でこんなに
辛い思いばかり・・・
もう、誰も信じない。
もう誰も、好きにならない。
もう二度と傷つきたくない・・・
何を見ているのか分からないような自分の目。
ただ、必要なことだけは機械的にこなしてる体。
パジャマのまま、水だけを口にして
布団にくるまった。
このまま、なにもしたくない・・・
誰ももう、構わないで・・・
そうして過ごした2日目の昼頃
いきなり玄関のドアがガチャリと音を立てた。
え?
カギは掛けてあったはずなのに・・・
「ったく・・・何やってんだよ。このバカ。」
後ろ手にドアを閉めながら入ってきたのは雄輔さんだった。
「何で・・・?」
潜り込んでいた布団を思わず引き上げて顔を隠す。
「起きろ!いつまで心配させんだ!」
「きゃ!」
一気に布団を引き剝がされた。
全くの無防備でさらされるパジャマ姿。
恥ずかしすぎる・・・
後ずさりしながら必死に逃げ道を探す。
そんなあたしに雄輔さんは逃げ道なんて
全力で封鎖した。
そう、思いっきり爆弾を落として。
「何一人で折れてんだよ。バーカ。」
あっという間に腕の中に抱き寄せられて
その言葉をあたしは
雄輔さんの温かい腕の中で聞いた。
「お前一人くらい、オレが守るから
心配すんじゃねー。一人で悩むな。」
あんたが悩ませてるんですけど・・
との思いを込めてじとーーっと横目で見てしまう。
「オレが愛してんのはお前だけだかんな。」
耳元でそう囁かれた途端
不覚にもクラッとした。
その甘い声に落ちたのが半分、
そして、絶食状態での貧血が半分。
あたしは、す――っと意識を手放し
崩れ落ちた。
そして、あせった雄輔さんがその後
お姫様だっこをしておろおろしながら
ベッドにあたしを寝かせ
規則正しい呼吸にほっとその頬を緩め
じっと優しい目であたしの寝顔を眺めていたなんて
知る由もなかった。