ゴールデンウィーク①
タイトルがなあ。タイトルにセンスがないなあ。
「二個目のクラスの取り方がわかんねえんだよな。」
「いまだに二個目のクラスを取った奴の話は聞かないよな。下級職極めればいいのかな。」
「それ中級職がでるだけだろ。俺はファイターのクラスも取って魔法剣士みたいになりてえんだよ。」
様々なクラスを組み合わせて、なんて触れ込みだったのに、いまだにどのプレイヤーもクラスは最初に選んだ一つだけだ。
「まさか未実装じゃねえだろうな。」
「うわ。それ最悪だろ。」
それはマジで勘弁してほしい話だ。
運営、仕事しろよ。
「王都の北門と東門の閉鎖は、次のアップデートで解放されるのかな。」
「それもわかんねえよな。そうそう、南の方はいくつかの街を越えると砂漠になってるらしいぞ。」
「そうなのか?俺は南街道でのゴブリン狩りしかしたことないからな。」
南の街道を進んで行くと村があるのは知っているが、その先にはまだ進んでいなかった。
今日は昨日稼いだ資金で装備集めをしてから、南の村まで行ってみるつもりだ。
すると、前の席から声をかけられた。
「何の話してるの?」
「ああ、ゆーちゃん。最近康治とはまってるゲームがあってさ。その話で盛り上がってたんだよ。」
「わたしゲームとかしないからなあ。」
彼女は石井優花、このクラスになってから、つまりは高校に入ってからの友達だ。
勘違い系男子筆頭の俺と、煮え切らない系男子筆頭の隼人が、普通に接することができる数少ない女子の一人だ。
「確かに、想像できないよな。ゆーちゃんがゲームしてるところ。」
おっとり系の彼女が、格闘ゲームやRPG、ましてやリアルに剣を振り回す「Another World On-line」をやる姿は想像できない。
「あ、でも、オセロなら得意だよ。」
「ゆーちゃん、ゲーム違いだよ、オセロは。」
あと、ちょっと天然はいってる。
「そうそう、二人はもうゴールデンウィークの予定たてたの?」
「俺らは部活やってないから、基本的にはフリーだよな。」
「ああ、そうだな。ゆーちゃんは合宿だっけ?」
たしかゆーちゃんは吹奏楽部だったはずだ。肺活量がどうとかこうとかって、運動部並みに走り込んでる。
吹奏楽部は、毎年ゴールデンウィークに強化合宿、別名地獄のロードワークが行われている。
そこで辞めていく部員も毎年出るらしく、吹奏楽部員の登竜門とかなんとか言われてるらしい。
言ってるのは二、三年の吹奏楽部員だけだが。
「そうだよー。でもね、最後の二日はお休みなの。」
今年は五連休、つまり三日間も学校に泊まり込みで走り込みさせられるのだ。本当にお疲れ様です。
「だからね、もしも予定空いてたら、どこか遊びに行きたいな。」
「まあ、せっかくの休みだもんな。草野さんたちと行くんだろ?」
草野さんというのは、ゆーちゃんがいつも一緒にいるグループの一人で、気が強い、男勝りな美人さんだ。なんとなくゆーちゃんの保護者っぽい雰囲気だ。
よくよく考えてみたらうちのクラス、結構女子のレベル高いんだよな。
「え?あ、あ、うん。そうだね・・・。」
あれ?俺今何か変なこと言ったか?
明日からゴールデンウィークとあって、午後の授業が終わると皆ソワソワしている。
そういう俺もその一人だ。
「明日からはゲーム三昧だな。」
最終日は隼人と近くのプールに遊びに行くことになっているが、後の四日は完全フリーだ。
「えー、長い休みだけどもな、あまり羽目を外しすぎることなく・・・。」
担任の退屈な話が続いている。
周りのクラスはもう解放されたのか、廊下が騒がしくなってきている。
「おいおい、早くしてくれよな。」
こっちは早くログインしたくてうずうずしてるんだ。
「・・・では、気をつけて帰るように。」
「起立!」
クラス委員の大きな声が響く。
きっと彼も早く帰りたいのだろう。
「礼!」
まるでスタートの号令がかかったかのように教室から人が飛び出していく、あるいは仲の良い者の元に集まっていく。
「さて、早く帰ってログインするか。」
土原に声をかけようかと思ったが、メール、もしくはログインしてたらメッセージで誘えばいいだろう。
パーティープレイは楽しいが、隼人はソロでスキルレベルを上げたいらしいし、今のところゲーム内の知り合いはいないから、リムを誘うしかない。
スキルレベルとクラスレベルの両方を上げないと新しいスキルは得られないらしいから、これからはその辺も意識して、スキルを多用していった方がいいかもしれない。
登場人物たちの評価はどんな感じなのだろう。
男子高校生の頭の中って、こんなだった気がするんだけど。
いつか感想をいただけて、人気のキャラが出てきたりしたら、それに応じて登場を増やそうかな・・・という妄想。