ゲーム開始
なんで文頭を一文字スペースにしてるのに反映されないんだ・・・。
恥ずかしい。とんでもなく恥ずかしい。俺以上の勘違い野郎はなかなかいないだろう。告白かと思ってたら、ゲームの誘いだったなんて。
しかも、あのあと交換したメアドを眺めて、ちょっとニヤニヤしてしまう非リア充系男子の自分が自分で気持ち悪い。
「いやいや、あと1時間で稼動開始だ。今はこっちだろ。」
「Another World On-line」では、自分のリアルの姿をベースに、髪の色や瞳の色、身長、体重なんかをカスタマイズできる。
顔を弄ることもできるけど、難しいのと、良く言えば作り物っぽく、悪く言えば整形したっぽい顔になるから、俺は自分ベースでいくつもりだ。
「種族はヒューマンでいいかな。」
種族はヒューマン、エルフ、ドワーフ、魔人の四つだ。
ヒューマンは平均的、エルフは魔力と敏捷特化、ドワーフは体力と腕力特化のキャラだ。
魔人は全ステータスが高い代わりに、レベルが上がりにくくて扱いづらい、おまけにNPCの商店が使えないなどの欠点も多いピーキーなキャラだ。
「クラスはとりあえずレンジャーだな。」
クラスとはいわゆる職業のことで、複数個選択可能だ。各クラスの上限レベルは上級職が10、下級職と中級職は20で、下級職を20レベルにすると中級職のレベル1が選択可能に、中級職をレベル20にすると上級職のレベル1が選択できるようになる。
様々なクラスを、合計100レベルまで、好きに選択できるが、上級職は下級職と中級職選択中しか選択できないし、中級職は下級職選択中しか選択できない。取得自体は無制限なので、たくさん取得しておけば他のメンバーに合わせた選択ができるってわけだ。
ちなみに初期に取得可能なクラスはファイター、レンジャー、ウィザード、プリーストの四つから一つだけで、クラスを取得するには様々な条件があるらしい。中には特殊職や、種族固定職とかいうのもあるらしい。
ちなみにクラスレベルは他人から閲覧不可、種族レベル(普通のゲームのレベルみたいなもの)は他人から閲覧可になっている。
「キャラ名はコージでいいか。ああ、稼動開始が待ち遠しい。」
キャラメイクは送られてきた専用ヘッドギアを、パソコンに繋いでホームページから行う。なんと作り直しや、複数キャラの保持ができず、一つのヘッドギアに一つのデータになっている。
「世の中も進歩したもんだよな。」
ポロリーン、とマヌケな着信音が鳴った。メールの相手は・・・土原だ。
「キャラメイク終わった?私はリムってキャラ名にしました。田中くんは?」
よく考えたら、事前にキャラ名を知らないとゲーム内では連絡のとりようがなかった。名前さえわかれば「メッセージ機能」なるもので連絡がとれるのだ。メールみたいな機能で、運営からのお知らせが届いたりもするらしい。
「俺はコージにしたよ。今から待ち遠しい。」
返信すると、すぐにメールがかえってきた。
「私も待ち遠しくて、ヘッドギアつけてすでにベッドの上です(笑)起動したら眠るみたいな感覚って言われてるけど、どんな感じか楽しみかも。」
眠るみたいな感覚なら、睡眠の代用になるかなって思ったけど、そう都合よくはいかないらしい。「睡眠したことにはなりません」って馬鹿でかい赤字の注意書きがしてあるし。
「そのまま寝ちゃって、ゲームしそこねたりして。」
「うわ、盲点だった。座って待ちます(笑)」
メールしてるうちに稼動開始時間が迫って来た。
「いよいよか、横のスイッチを押して・・・。」
スイッチを押すと、電子音と共に意識が飛んだ。