隣のあの子もプレイヤー
「康治、早く帰りてえよ。早くプレイしてえ!」
「落ち着け隼人、まだ昼休みだ。」
俺は田中康治、隣で騒いでるのが幼稚園からの親友、違った、悪友の伊澤隼人だ。
俺たちは初回生産一万台、購入権は完全抽選の話題の新作ゲーム、「Another World On-line」の当選をさっき知ったばかりだ。
昼休みに携帯を開いて「当選しました」メールを目にした時は、高校の合格発表の時よりずっと嬉しかった。
今は弁当を食べながら、雑誌に公開されている情報を元に、今後のプレイスタイルを話し合っている。
「やっぱり俺は魔法職がいいな、VRMMOってことは、リアルに魔法を使う体験ができるんだろ?ロマンだよな、男のロマン。」
「じゃあ俺は前衛職か?前衛は特にプレイヤースキルに大きく依存しますって書いてるし、不安なんだが。」
「康治は運動神経いいから問題なさそうだけど。ああ、なんでもいいから早くやりてえ。」
二人で盛り上がってると、ふと視線を感じたので隣を見る。
するとクラスメートの一人がこっちを見ていた。
いや、見てるっていうか、めっちゃ見てる。凝視してる。
授業が終わって帰ろうとしてたら、隣の席の女の子に呼び止められた。
「田中くん、ちょっといいかな?」
彼女は土原定理、天然キャラで愛されキャラのクラスのムードメイカーだ。
「あ、えっと、何かな。」
「ちょっと話したいことがあるんだけど、来てもらってもいい?」
そう言って連れて来られたのは空き教室、近年の少子化の影響は我が校のクラス数を各学年8クラスから各学年6クラスへと減じさせた。この空き教室はその影響だ。
そう言えば昼休み、彼女はめっちゃこっち見てた。あんまり話したこともないのにめっちゃこっち見てた。そしてこのシチュエーション、間違いない、告白される。俺、告白される。いや、でもダメだ。断ろう。いい加減な気持ちで付き合うとか、ダメだよな。
ぶっちゃけ心のゴリラがウホウホ言ってるけど、少し黙らせよう。うん。
「あんまり話したこともないのに、どうかなって思ったんだけど・・・。」
そう言いながらモジモジしている彼女はめっちゃかわいかった。よし、付き合おう。問題なし。めっちゃ付き合う。めっちゃ付き合うって何やねん。さっきはごめんよ、心のゴリラ。
「田中くん、私としてくれないかな?」
「え、えええ!?」
あれ?通り越した?付き合う通り越して突き合うまでいっちゃった!?
「さっき伊澤くんと話してたよね。「Another World On-line」、私も当たったの。」