元魔王と元勇者の会話
僕は宿屋で眠ろうとしたが、どうにも眠気が襲って来ずに僕はベッドから飛び起きて宿屋の外に出る。その途中、パテカニア様やユメを起こさないように慎重に歩いていた。2人を起こすと厄介なのだ。ユメは多分夜這いに来たのではないかと勘違いして襲ってくるし(実際、海の旅館で泊まっている際にそう言った事があった)、パテカニア様は怒らないかもしれないが父親であるセドーマ様は怒りますので。勿論、セドーマ様も起こしたらいけないのだが、それについては関係無かった。何故ならば、外にセドーマ様が居たからだ。勇者のレイン・ワードマリアと一緒に。
2人揃って月夜を眺めている。僕は彼らに気付かれないように隠れる。興味深かったからだ、元勇者と元魔王の会話なんて多分一生に一度見られるか見られないかと言うような、そう言った物だ。しかも、両方とも男性で普通だったらただの男同士の会話だが今は片方は女性になっている。元勇者(♂)と元魔王(以前は男だったが、今は♀)の会話なんて言う物は多分レア中のレアだろう。
(これは小説のネタとして、売れる!)
そう考えた僕は、彼らの会話を聞く事にした。なーに、どんな些細な情報でも聞き逃さないように昔から聴力は鍛えていたからこれだけの距離があればちゃんと聞けるだろう。
「で、どうして今頃帰って来たんだ。レイン」
「それについては、何もないのでして。たまたま会っていただけなのでして」
おぉ、良く聞こえる。これならばちゃんと内容も聞こえますね。
「……それならばいいのだ。もしや、わしらを裏切って、人間側の王国側の味方として私達に立ち塞がるかと思って」
「それはないのでして。この姿では魔物として王国騎士団に排除されるのでして」
「あのベータの転生もそれなりに役には立っているのか。けれども、情報は提供すべきだ。今の敵は魔王であったわしではなく、それ以外の謎めいた存在なのじゃ。故にここは一時協力すべきじゃ。もう前のような、勇者と魔王との睨み合った関係は関係無くやるべきじゃ」
元魔王が元勇者に対して共闘を願い入れる……。良い展開だな、楽しくなってきた。
「関係ないな。元はクロス・セレネジェルが勇者を諦めたから僕が勇者を継承しただけの話なのでして。僕自体は魔王に無茶な因縁は持っていないのでして」
「そうですか……ならばそれはちゃんと協力して欲しい物だな」
だな……と言ってセドーマ様とレインがこちらに来たので慌てて隠れる僕。これは良いネタになりそうだなと思う僕であった。




