改造勇者パーティーとスケルトン
龍の谷。ドラゴンが多数存在するとされているこの谷にはドラゴンが住居として沢山の洞窟を作り上げており、その洞窟の多くは過去に使われたきりで今は誰も使ってはいなかった。そのうちの1つ、大昔に大型のドラゴンが作り上げた洞窟で2匹の魔物が居た。
1匹は和服を着たドラゴン。背中からは緑の邪竜の翼が生えており、その尻からは9本の緑の尻尾が生えている。竜のような鱗の肌にも関わらずその身体はとても妖艶であり、見る者を虜にしそうな艶やかである。そしてその腰や背中には何本もの刀を差している。そしてその腕は明らかに人間のそれであり、指先には金色のマニキュアが塗られている。
その和装ドラゴンは洞窟に飾ってある2体の人間が入っている培養装置を見ている。1体は女性のようであり、そしてもう1体は男性のようであった。そして女性が入っている装置には普通の培養装置ではありえないモーターが回転していて波が発生していた。男性の方はそう言った事はなかったが、洞窟の中だと言うのに特別に日が当たるように開けられた隙間から男性が入っている培養装置目がけて光が差していた。
「それにしても、奇なり。わざわざ洞窟に光を入れる理由も、培養装置に波を作る理由も、理由を知らずんばただの無意味な行為としか思わざらなりけり。これでは怨敵に見つかった際に、すぐに理解されると言う物なり」
と、和装ドラゴンはそこに居るもう1匹の魔物に眼を光らせる。
そいつは骨しかなかった。生きた骨、スケルトン。『原子』の二文字がプリントされた白衣を着たスケルトンだった。そのスケルトンは笑いながら、和装ドラゴンに返事を返す。
「そうかな? 研究者と言うのは無駄な事を積み重ねて、無駄な事から経験を得て、無駄な事から成功すると言うのが定石だよ。つまりは無駄=成功のための一歩と言う事だ。本当に駄目なのは、無駄にもならない、どうしようもないような物だけさ。
これには色々と無駄な部分も多いけれども、それ以上に無駄じゃない部分もある。無駄だけでないだけかなり優秀だとぼくは思うね」
と、スケルトンの言葉に対して和装ドラゴンも頷く。
「確かに……。
必要な部位が無い事はない。確かに必要かもしれない。ならば、無駄に論じる必要性は皆無成り」
「でしょでしょ? 分かってるね、『人』」
「そうでもないさ、『原子』」
と2匹の魔物は言い合う。
「じゃあ、頼んだよ。『原子』。
次は君の番なんだから」
「あぁ。研究成果を邪魔する産業スパイには直々に罰を、このぼくが罰を与えるとするよ」
「楽しみだ」
「楽しみにしておくれ」
2匹の魔物はそれぞれに笑い合っていた。




