魔王軍、再建計画?
「さて、ベータ。現魔王城はどうだ?」
ひとしきり暴れた後、もうどうにもならない事にようやく分かって貰えたセドーマ元魔王様はようやく納得してくれたようである。いや、セドーマ様は転生したので、元セドーマ元魔王様と言うべきだろうか? なんとも言いづらい……。やっぱりセドーマ元魔王様とでも言いましょうかね。
「はい。セドーマ・アアアアア様。
魔王城四天王は全員死滅しまして、それに伴い他の魔王城に在留していました魔物の約75%は死亡、15%は逃亡、生き残ってこの魔王城に在留しているのは約10%程度と言う所ですかね。セドーマ・アアアアア様」
「おい、ちょっと待て、ベータ。決して我の苗字はアアアアアなどと言うどこぞのRPGで付けられる適当な名前じゃなかったぞ」
「そうです! それだったら私の名前も、パテカニア・ヴェルダッハからパテカニア・アアアアアになっているですよ! 全く持ってそれは嫌です!」
あっ、姫様も嫌なんだ。別に姫様に言った訳では無いんだけれども。
「考えてくださいよ、セドーマ・アアアアア様。
世界的には勇者、レイン・ヘルメンと女魔法使い、ミト・アイ、それに賢者、クロス・セレネジェルの3人によってセドーマ・ヴェルダッハ様はやられた事になってるんですよ。そんな中、本名なんかで歩いていると凄くややこしいですよ。
今のセドーマ様、前と違って鋼の肉体とかは持っていないんですから」
「まぁ、そうじゃな。仮の名前は必要かの……って、それとアアアアアとは関係ないだろうが!? せめてこの身体のモデルとなったレガシーのアイで良いから!
セドーマ・アイ! これから我の名前はセドーマ・アイで統一するとしよう!」
「アイお父様……ですか。良い名前ですー」
「はぁ……それならばそれで」
とりあえずセドーマ様は、これからはセドーマ・アイ様となった訳ですか。とりあえずこれから人前とかの目がある時は、ヴェルダッハ様と言う言い方よりもアイ様とお呼びしておきましょう。そこは注意しておきましょう。
「しかし今の我の成りでは、魔王様と信じて貰えそうになさそうじゃな。今、ちゃんと自分の呼びかけに応じて来れそうな者、何人居る? ちなみに我は先に申した通り、0じゃ。我の仲間の重鎮達も死んでおるじゃろうし」
「私は……20体が限界です。ゴブリン10体にハーピー5体、エリンギリン5体ならばなんとか……って所です」
「僕は30体が限界。個人的に囲っているフェンリル15体とワーキャット15体ならばなんとかなりますし。時間さえあればウッドゴーレム量産も何とか……」
ちなみに今、出た魔物の説明。
ゴブリンとは猪のような顔をした小柄な身体の、斧を持った魔物である。豚の魔物だからそんなに頭が良い訳でなく、数で押し切る攻撃を得意とする魔物である。『強い者には基本忠実』と言ういかにも下級魔物と言うのを体現した魔物である。
ハーピーとは手や腕が鳥の翼となった人型魔物。主に女性型が多いとされる、鳥人間とも呼べる魔物である。ちなみに知能指数によって微妙に名前が変わってきて、鳥並みの低い知能の者はハーピーバード、人間並みの高い知能を持つ者はハーピーレディーと分類訳したりしていたりもする。
エリンギリンとはキノコ型の魔物である。麻痺や毒などを司る魔物であり、いつもへらへらと笑い顔を向けているのが特徴の魔物である。攻撃力は低いけれども、そう言う状態異常は得意とされる魔物である。
フェンリルとは氷を操る狼の魔物である。主人には忠実だが、敵には寒い吹雪を食らわせる大きな氷の魔物である。飯さえ食わせておけばだいたい手伝ってくれるから僕は重宝している魔物である。
ワーキャットとは猫耳と猫の尻尾を生やした若い女性の魔物である。スタイルの良い者や可愛らしい者が多く、非常に好戦的で、それでいて懐きやすい。良い物を高く買わせるにはそう言った、魅力的な女性が売った方が売れやすい。だから僕も重宝しているんだけれども。
「ともかくベータ。魔界城を再建をするしかないの。悪いが手伝ってくれるか?」
「いえ……遠慮して貰えます?」
「なんでじゃ! ホムンクルスは魔王から生まれし作りし生命体! 故に創造主であり親である魔王には逆らえぬはずじゃが……」
セドーマ様、何を言っているんでしょう? 確かに『魔王』はホムンクルスに対して逆らえない命令をする事が可能である。だけれども……今のセドーマ様は
「セドーマ元魔王様。今はあなたは魔王城の主である魔王の称号はありませんよ? 絶対的な命令でないならば、金が絡まず、金を儲けられず、金が出ない物なんてやってられませんよ」
「お前! ベータ、非道だ! 今の状況でも金儲けしか考えられんのか! 今ほど絶対命令権が欲しいと思った事は無いわ!」
「流石、ベータ……。どんな状況でも動じないです。ここは見習わないと……です」
「いや、パテカニアちゃん! こいつのそう言う所は見習っちゃ駄目! 絶対、駄目だから!」
……はぁ。仕方ないです。
「じゃあ、取引です。もし魔界城再建が完了したら、その際の財産の20%を僕に譲る。それさえ守って貰えるのならば、協力もやむを得ません」
「……本当、こいつ嫌じゃよ。でもこいつもそれなりに強いんじゃよな」
当たり前です。腐っても僕は四天王の1人の息子ですからね。それなりの戦闘能力はあると自負していますよ。
「何せ金を守るには自らを強くして、自らで守った方が効率的ですからね。それで僕は自身を強くなるよう特訓に耐えて来たんです」
「こいつ、最悪じゃ! 強くなると言う目的が俗物すぎるぞ!」
「それに泥棒を捕まえたら出る報奨金も、魅力的ですし」
「重ねて酷いの! ベータ!」
とりあえず、そんなこんなで僕、金の事さえ考えていれば生きていけるベータ・デーメオン、魔王の1人娘、パテカニア・ヴェルダッハ様、そして転生した元魔王、セドーマ・アイ様の3人は魔界軍復興に着手したのでした。
「……やっぱりアアアアアの方が」
「そのネタはもうやめい!」
次回予告(仮)。
魔界軍復興のために着手するため、行動を始めたベータ達一行。
彼らがまず目指す先は、一の四天王の息子、アクリア・バイアルパを探して山登りを開始する。
そしてその山の頂上に辿り着いた時、彼らの見た物は……
次回(仮)、『第2話 顔芸勇者? いえ、喋れないだけです』。




