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魔王の娘と四天王の息子  作者: アッキ@瓶の蓋。
第4話 海だよ! 全員集合!

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勇者だよ! 地味に活動してます!

 レイン・ヘルメンは勇者である。

 戦闘技能や肉体能力が優れていないレイン・ヘルメンが、魔物達の魔王軍を相手するにはどうするか。それはアイテムを集める事である。



 ある時はとある国の姫に取り入って、国家の中でも最重要武器であるアイテムを借り受け。

 またある時は盗賊団が奪って行った、超戦闘級のアイテムを奪い取り。

 そしてある時は武器店で売っている、超掘り出し物のアイテムを買い取り。

 そうやって、彼は自身の力の助けとなるアイテムを持って行った。



 どんな人間だろうと、彼はアイテムを貰う為に仲良くしていった。

 獣と人間の交わったやましい存在だと言われている獣人、人間と大変仲が悪いエルフ、国を捨てたけれども敵である事に変わらない魔族など。自分で持てるアイテムならばどんな相手だろうと接していった。

 またどんな人だろうと、アイテムを悪用している人間が居たら勇者となって向かって行った。

 王家に(つら)なる貴族、英雄扱いされている軍人、大手商家の店を継いでいる長男など。アイテムを酷く悪用している人間ならばどんな相手だろうと臆せずに向かって行った。



 そう言う面で言えば、一番勇者らしい、勇者として活動していった者と言えるかも知れない。



 そんな元勇者のレイン・ヘルメン、今の名前はレイン・ワードマリアと名乗る彼は魔族の街、ディオアの酒場にて酒を飲みながら情報収集に明け暮れていた。



「何故こんな事に……なのでして」



 そう飲みながら、ちびちびと植物酒を飲むレイン。人間界と魔界、勇者時代は遥かに別物に感じていたが実は同じ物だと知ったのは、このアラクネアと言う植物のような魔物の姿になった後の話である。

 同じ仲間であったミト・アイとクロス・セレネジェルは人間界の常識として、『魔族=悪』と言う考え方で全く話すらしなかった。レインにしても、彼らの考え方には全く持ってほぼ同意であり、時たま出会う獣人やエルフ、魔族の人は例外的な存在として思っていた。

 だからこそ、こうやって――――――同じ魔族として接して見て彼らが決して人間界で言われているような絶対悪では無い事を理解した。



 善人が居れば悪人も居る。

 意地汚い奴が居れば綺麗な奴も居る。

 千差万別、十人十色。魔族にも色々ある。それが知れただけでも魔物になって良かったと思う。そうでないとやっていけない。



 レイン・ワードマリアは敵であった魔界軍の魔王、魔王の娘、四天王の息子と共にサキュバスの1人を勧誘しに向かった。その時にレインはその勧誘しに行ったユメさんに2人で会ってこう言われたのだ。



『勇者よ。この私で欲情しちゃ、い、いけないんですからね!?』



 まず間違いなく、彼女は誰かを好きである。恐らくだけれども、四天王の息子であるベータと名乗っていたホムンクルスだろうけれども、



「趣味悪そうなのでして」



 正直、あのホムンクルスは底が知れない。普通、金が欲しい、欲しいと言っている奴は何かしら欲しい物があったりして金が欲しいと言っているはずである。なのに、そんな訳でも無くただただ金を欲しがる彼の神経はどうかしている。

 あのスタイルが良いサキュバスのお姉さんはレインの初めての相手になるかもと思っていたが、とんだ計算違い。



 魔族になってしまった自分では、人間の女性と恋をするのは難しいだろう。なにせ未だに人間界では『魔族=悪』と言う風習が強く根付いてしまっているのだから。

 人間の女性と恋をするために魔王を倒したと言うのに、今度はその魔王の配下の者に魔族にされて、魔族しか愛して貰えない身体になってしまった。



「とまぁ、そんな事は追々考えるなのでして。今、重要なのはこのワードマリアの身体が重要なのでして」



 今のレインの元となった魔族、ウインド・ワードマリア。

 元魔王、今は可愛らしいアイの身体のセドーマは、ウインド・ワードマリアと言う魔族がどう言う人物か教えてくれる際に奇妙な事を言っていた。



 銀の花。

 アラクネアは植物が進化して生まれた魔物であり、魔族。それ故に自然界、ひいては魔界に存在しない植物の花は咲かせない。なのに存在しないはずの銀色の花を持つアラクネア。



 それは金の花の髪飾りとして今もレインに受け継がれていて、さらにアラクネアには似つかない風車のような4枚の羽もある。



「何かあるなのでして」



 酒場は噂の申し子。噂を辿るならまずここから。噂を集めるのならばここ。

 そう言う訳で、レインは噂を得ようとさっきから酒を飲みながら情報を得ようとしているのだが……



『おいおい、風車だぞ、風車』



『あぁ、得体もしれねぇ……。あんな風車を付けるなんて……』



『しかもアラクネアの癖に植物酒を飲んでいるわよ』



『共食いじゃない! いや、共飲みかしら!?』




「あぁ、失敗したなのでして。折角、ここで新しい情報を得て、パテカニアちゃんに可愛がってもらおうと思ったのになのでして」



 あぁ、残念。なんたる不幸。

 魔王の娘、パテカニア・ヴェルダッハに新しい情報を得た事を伝えてカッコつけて、そのまま惚れさせる、レインの中ではかなり頭の良い作戦が不幸にも終わりそう。



 あぁ、このためにあのパーティーから無断で抜けたのに! これじゃあ、ただの恥をかくために出て行っただけじゃないか! えぇい、こうなったら飲む! 飲んで、飲んで、飲みまくるぞー!




『ヤケ酒よ! ヤケ酒だわ!』



『あの兄ちゃん、肥料まで頼み始めたぞ。酒場に肥料はないのに』



『あぁ、あのお兄さん、女の人に向かって行った! ……そしてフラれた』



『そうだよねー。あんなんじゃフラれるわ』



『『『『『『だよねー』』』』』』



 えぇい、うるさい!

 レインはそう思って、酒場で飲み明かしていた。



 レインが酒場に居るのは憂さ晴らしとかではない。単に情報の集まりが良いのが、ここだからである。前までは本当に酷かった。

 アイは魔法以外は本当に駄目で情報収集に向きはしないし、クロスも賢者でまず酒を飲む事を禁止されていた、と言うか自分にそう念じて一切飲まなかった。故にレインがこう言った情報収集まで行っていたのだが、勇者時代のレインは”喋れない”。

 身振り手振りを使って情報を聞き出す事しか出来ず、それではろくな情報は集まらないので、こうして聞き耳を立てて情報を得るのが主だった。今は喋れるから大丈夫かと思ったら、あの猫又族の女性に話を聞こうと思ったら、一蹴されてしまった。



「むー……。情報を得るのは大変なのでして」



「情報とは得る物ではなく、買う物であろう。情報を取得するにはその人間の外を見るのではなく、情報を取得しようとしている人間の内を見なければならぬ。それが情報収集の極意であると教えてしんぜよう」



 と、そこに1人のドラゴン族の女性がレインに近付いて来た。

 和服を着た美人ドラゴン。背中からは緑の邪竜の翼が生えており、その尻からは9本の緑の尻尾が生えている。竜のような鱗の肌にも関わらずその身体はとても妖艶であり、見る者を虜にしそうな艶やかである。そしてその腰や背中には何本もの刀を差している。そしてその腕は明らかに人間のそれであり、指先には金色のマニキュアが塗られている。


 あまりにも美しいそのドラゴン女性にレインは見惚れてしまっていた。



「……? どうした、”ウインド”? 人の顔をじろじろと拝見したりするなど、お主の人間性からするに可笑しかろう。それに楽器も無いとは本当にどうかしたのか?」



「……!」



 その言葉にレインは聞き惚れていた。いや、聞き驚いていた。



 ウインド。この身体をそう呼ぶのは、恐らくこの身体の仲間だった者。それに金色のマニキュアと人間の腕と言うのもドラゴンとしては可笑しい。



(このウインド・ワードマリアと同じ奴だと考えるべきか。そしてウインドと呼んでいると言う事は、彼女はまだこの身体がレインの者だとは知らない。ならば、そこを突く!

 仲間の、ウインドの振りをして情報を聞き出す!)



「いや、悪い。楽器はこの前敵に破壊されてな。あれ以来、調子が出ない」



「ほー。お主の命の次に大事かろう楽器を……のう。それでいつもと様子が違うのか。納得しよう。

 と言う事は、もしや我の名前も忘れてしまったとかは無いのう?」



 名前が分からなくても可笑しくない状況だと思われているらしいので、とりあえず愛想笑いをしてごまかすレイン。



「はぁー……。まぁ、良いわい。ならば今日は久方振りに飲みなおして話しあかそう。

 では、我の名前くらいは思い出してくれんとな。我の名前はヒトビト。ヒトビト・ドラケピアじゃろうが」



「あぁ、そうだったたな。ヒトビト。さぁ、飲み明かそうじゃないか」



「えぇ。お誘い、受け奉る」


 こうしてレインは情報収集のため、ヒトビトと飲み会を始めるのであった。

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