愛は金にはならない
夜、宿屋。僕とレインは2人で部屋でトランプをしていた。
ちなみに僕達、魔王一行が居るのは元勇者レインが見つけた中級層の人が入るようなホテル。本当はもっと安い宿でも良かったのだが、それだと警備が弱くて裏社会の者とかに僕の金を奪われる可能性があったし。それだったら警備がそれなりに良くてお金が取られない、ぎりぎりのラインの所のホテルを選んだ。まぁ、レインが見つけたからお金は僕の方で払わせてもらった。勿論、出来る限りお金をかけないように値切らせてもらいましたけれども。お金以外の物で少しゆすりはしましたが、それは魔界城近くで良く見かける魔石なので良いけどさ。
ちなみに取ったのは二部屋。僕とレインの一部屋と、セドーマ様とパテカニア様の一部屋。こう言うのにしたのは見かけ上の性別である。正直言えば、1人は身体は女性、心は男の人が居ますがそれをこっちの部屋にやると宿屋の人にあらぬ誤解をされてしまうので、止めにした。もう一部屋やれば、その部屋にセドーマ様を泊まらせるけれども、それをするとお金が一部屋分無駄にお金を払わないといけないしね。それにまぁ、セドーマ様ならば娘であるパテカニア様に手を出したりはしないだろう。
……しないと信じたい。信じてますよ、セドーマ様。
「スペードの2ペア。これでどうなのでして」
「残念。5のフルハウス。またしても僕の勝ちだ」
それを聞くとレインは「はぁー……」と溜め息を吐いて、5枚のトランプカードを床に落とす。それと同時に僕も床に放り投げる。
「ベータ、強すぎやしないかなのでして? さっきからポーカーをしているけど、そっちの方が明らかに勝率が高すぎるのでして……」
「お金がからむ事で僕は努力を惜しんだりはしない」
「無駄な、努力なのでして……」
ちなみに今、あの魔王親娘は同じ部屋でお風呂に居るらしい? まぁ、それに関しては何とも言えん。つーか、知ってても何の金にならない情報など無い方がマシであるのだから。
「まぁ、賭博のしないトランプは僕の中でもかなり楽しめる物だよ。
アクジキやパテカニア様はすぐにやられてね。ウサギも慣れれば勝てたからね。あいつとの戦いによって君にも余裕で勝てるほどの技術を僕は手に入れたんだよ」
「へぇー……。そう言えば、今から会いに行くって言うユメはどうだったのでして?」
「……」
僕は口を閉ざす。
「な、なんでいきなり口を閉ざすのでして!?」
「……いや、ユメはトランプはしなくてね。基本、見ているだけだったよ」
「なんか非常に怪しいのでして!」
いや、別に何も問題は無いんだよ? 本当だよ?
「――――――――たださ、僕はあのユメが一番苦手だったんだ。だから明日も出来るなら会いたくないって思っているんだ」
「いったいユメとはどう言う人物なのでして!?」
レインの中でユメの価値観が上がってる気がする。けれども本当は違う。
ユメはそんなややこしい存在じゃない。ユメはもっと天然で、素直で、女らしく、純真である。だからこそ僕は―――――彼女が苦手なんだ。




