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魔王の娘と四天王の息子  作者: アッキ@瓶の蓋。
第2話 顔芸勇者? いえ、喋れないだけです

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勇者? いえ、それも過去の栄光

「さて、セドーマ様にパテカニア様。勇者、レイン・ヘルメンが持っていた道具は回収しましたし。後はどうします? このレガシー?」



「「剥ぎ取るのは決定事項なんだな(なんですね)」」



 ……。だって僕は人間じゃない。僕はホムンクルス、人の形をした人でない、ただの悪魔。そんな僕に人間的な道徳心も、理性も、どこにも無いんだから。



「まぁ、とりあえずわしと同じようにすれば良いんじゃない? 『転生壺』の合成をさ」



「良いの? 相手はお父さんを倒した勇者なのに?」



 まぁ、確かにそうだ。僕やパテカニア様は会っていないとはいえ、流石にセドーマ様からしてみたら自分を殺した敵。そんなに早く許してしまって良いのだろうかと考えるのはまずないと言う事か。



「何故かの。こいつをそこまで憎めんのじゃ、わしは。

 なんでか、分からんがの。魔王として殺される時もこいつの攻撃からは必死さが伝わって来たし、それにこの身体。ミト・アイじゃったかの? どうもこの身体になってこいつを見ていると、何だか……哀愁が感じられての」



「哀愁、ですか」



 それは肉体記憶と言う奴だろうか? にわかには信じられないが、死んだはずのミト・アイの精神が彼女の肉体には宿っていると言う事か?



「まぁ、僕は基本金儲け以外は|上司(魔王様達)には逆らわず、ただ従うのをモットーとしていますからね。それにこの人間も同情する所が無いと言ったら嘘になりますからね」



「どう言う事だ、ベータ?」



「セドーマ様は言いましたよね? こいつの攻撃からは必死さが伝わって来た、って。実はもともと、レイン・ヘルメンは勇者になるはずはなかったんですよ」




「え? 勇者だよね?」



「本当は勇者の血統を受け継いだのは、賢者の方。クロス・セルネジェルのセルネジェル家。しかし、セルネジェルは攻撃的な才能は無かった。故に他に2人メンバーを迎え入れる事にしました。

 その1人が当時人間界に置いて最も魔法の才能が強かったミト・アイ。そして当時から物に愛されざまざまな武器を手に入れていた商人の息子、レイン・ヘルメン。

 そして国王様は国から伝わる国宝、身体能力が10倍になる靴、『増大の靴』と無詠唱で魔法を発動出来るようになるマフラー、『宵闇のマフラー』を託す事にした。しかしその際に王様は国の呪術者に呪いをかけさせた。喋れなくなる呪いと本心を悟らせない2つの呪いを『増大の靴』に、そして恋を終わらせる呪いを『宵闇のマフラー』に」



「つまりは言いたい事をきちんと喋らせないようにするって事と、恋愛できなくする呪いって事か? しかし、なんでまた……」



「この2つの国宝、それなりにヤバい筋で手に入れてたみたいです。それもかなりばれるとまずい筋です。それを喋られると国王の信頼ガタ落ちなヤバい筋らしくて。魔法使いと賢者にそれはばれずに済んだらしいんですが、肝心の勇者がそれを知ってしまいまして。自身の保身のために喋れなくしたみたいです。

 そして恋を終わらせる呪いは勇者が一箇所に定住してしまって、そして魔王を助けに行かなくなるのを防ぐためらしいです。恋で冒険を止めた勇者は何人も居て、恋愛トラップで死んだ勇者も何人も居たので」



 まぁ、魔王軍も必至だからな。ちなみに恋愛トラップは四天王の1人、サキュバスのアイ・ヘルタハ様の得意とした手だ。最も今回の勇者はそんな事が効かないと分かってからはしていないけれども。そんな事はともかく、国王は卑劣ですね。全く……。



「壊れた剣はともかくとして、マフラーまで捨てていたのはそれが理由じゃな」



「えっ?じゃあ、なんで靴は履いたままにしたの?」



「恐らく脱げなくする呪いがかけられておったんじゃな。マフラーは恐らく、魔王(わし)を倒さなければ取れなくする呪い。そしてその靴は……死、かの?」



「まぁ、死ぬまで脱げなくするのは本当らしいですね。これは後で呪いを消して売っておきますよ」



「売るのは確定ですか……」



 いや、売らないと。何事も使える物は使っておきませんとね。



「とりあえず、これ」



 と、僕は先程手に入れた死体を用意しておく。巨大な銀の花を頭に咲かせた、ちょっと珍しいアラクネア。死体だし、まぁ良いでしょう。



「それ、使うのかの?」



「えぇ、まぁ。アクジキはここに居ますから。ここは頼みます、アクジキ」



「あぁ、分かったからの」



 包帯ぐるぐる巻きのアクジキはそう言う。アクジキには後で包帯の代金を請求しておこう、っと。まぁ、上乗せで良いんだけれども。



「じゃあ、行きます」



 僕はそう言って勇者、レイン・ヘルメンのレガシーとアラクネアのウインド・ワードマリアの死体を『転生壺』の中に入れた。



 中からアラクネアと思わしき、レイン・ヘルメンだと思わしき、2人の悲鳴が響いていた。



「ぎゃあああああああああ! 死ぬ――――――――! 絶対、死ぬ―――――――!」

「死ぬのは~一緒~。全ては~死んで~終わる~。でも~死ぬのは~嫌~!」



 ……一応、ご愁傷様、ですね。

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