器用? いえ、僕は憧れない
『▸A:攻撃を食らうが良い! アイテム連打!
B:蓮華・蓮劇・蓮華劇!』
レイン・ヘルメンはそう言う黒いモニターにそんな文字を出しながら、両腕にアイテムを構える。左手には黒色の長刀、『炎火雲砥』、右手には白色の銃、『アブラゼミ』。そして腕に付けられたのは火炎に発生して攻撃する『火炎石』で作られたブレスレットが数種類。
『炎火雲砥』は攻撃するだけで火花を作り出して攻撃する刀、そして『アブラゼミ』は火炎を長続きさせる油を放つ銃。そして『火炎石』は炎を見つけると共に光線を発射する物体。
あの3つから放たれる攻撃は言いますと……
「「「火炎攻撃!」」」
『 A:正解!
▸B:正しい選択だ!』
勇者は『アブラゼミ』で地面を油塗れにする。そして『炎火雲砥』で地面を攻撃し火花を発生させる。炎は油を伝ってこっちへと向かって来る。そして彼の腕に付けられた『火炎石』が光り輝き光線を発射する。
「えぇい! ブラックホール!」
セドーマ様が闇の黒い穴を開け、そこに炎は吸い込まれる。
「アクアレザー!」
残った炎もパテカニア様が作り出した水のレーザーによって消し飛ぶ。
『▸A:ちっ!
B:見たか! これが器用貧乏な俺の戦い方だ!』
ピクッ。
僕の目にその文字が飛び込み、僕の頭にむかつく文字が刻まれる。いや、刻まれてしまった。
「……てめぇ。器用貧乏だと! 馬鹿か! 器用と貧乏の関係性は無い! 僕に貧乏と言う文字を見せるな!」
「ベータがどうでも良い所で怒っとる!」
「良いか! 器用貧乏と言う言葉があるが、僕は器用貧乏なんて認めてない!
器用だろうと貧乏じゃない奴は大勢いる! 沢山いる! それなのに器用だから貧乏と言う変な理屈を僕に押し付けるな!
アイテムよこせ! 金よこせ!」
「最後のただの、脅迫です!」
あぁ、むしゃくしゃしてきた。
僕がむしゃくしゃすると共に身体の体温がどんどん下がって行く。ホムンクルスの身体で本当に良かった。炎だったら、あいつの持っている紙幣を燃やしてしまう所だ。その点はこのホムンクルスの身体に感謝しよう。
「器用貧乏には憧れない! 器用だっても幸せになりたい! 金が欲しい! お前の金が、僕は欲し――――――――――――い!」
僕の身体から青いオーラが立ち込める。
あまりの僕の怒りによって、身体に収めきれない魔力が僕の身体からはみ出しているのだろう。僕の身体から出た青いオーラは辺りを凍らせて行き、辺りにあった植物も凍らせてしまった。
「なっ! てめぇのせいで怒りすぎて近くにあった素材が売り物にならなくなってしまったじゃないか! どうしてくれるんだ、てめぇ!」
『 A:逆恨みにも程がある!
▸B:僕の家は金持ち(笑)』
その文字に僕の怒りは限界を達した。
「響いて凍れ! フリーズメルト!」
僕は銃から超ド級の吹雪を放ち、勇者に攻撃する。
なんだか変な悲鳴が聞こえた気がするが気にしない。
こうして勇者は死んで、ただのレガシーへと変わったのであった。




