37話 念話とコネクトオーブ
ある程度支度が済み、皆は一度アルレンセスに戻った。
そこでレイラからこんな提案があった。
異世界の扉を出せる人が他にもいた方がハルト無しでも移動が可能になるから便利なのではないかというものだ。
もっともな話だ。
だが管理を疎かにするとルシアが紛れ込んでいた時の様に誰かが入り込む恐れもあるのでハルトは迷っていた。
そこへナターシャが別の案を提案した。
念話のスキルを付与できないか?といったものだ。
魔族の間では今は主流となったコネクトオーブを使い連絡を取ることが多いが、この魔道具が生まれる元になったスキルがあり、離れた場所でも会話が可能になる念話と言うスキルだそうだ。
その話を聞いてルシアが手を挙げた。
「わたしそれ使えるかも」
なんとルシアは既に念話が使えるそうだ。
そういえば……。
初めにルシアと話したときに頭の中に声が聞こえたっけ……。
その時の感覚をイメージしながら全員にまとめて付与を試してみた。
すると魔法適正の高い者は皆、念話のスキルを習得することができた。
ハルト以外にもナターシャ、ルナ、セバス、ユキ、リン、マリア、エレン、フィル、そして意外なことにこの場に御茶を用意しに居合わせたライラも習得に成功していた。
念話と、ついでにコネクトオーブが世界を跨いでも通じるか試すために、一度ルシアとロンドを連れてあちらの世界の開店前の店の一室に移動した。
もう異世界への扉も使い慣れ、イメージした場所に扉を生成できるようになっていた。
「ルシア試してみてくれるか?」
「はい。では試してみます」
ルシアはルナに念話を試してみた。
「あ、聞こえる」
どうやら成功みたいだ。
次にロンドからルナにコネクトオーブを使って通話を試みてもらった。
微かに聞こえるようだが、とぎれとぎれで何を言っているのかまではわからなかった。
どうやらコネクトオーブの力では流石に世界の壁を越えることは出来ないらしい。
検証も済んだので一度街に戻ろうとしたその時、コネクトオーブから声が聞こえてきた。
「聞こえますかハルトさん。プルフラです。聞こえたらお返事いただけますか」
「!?」
急に聞こえてきたプルフラの声に3人は驚いた。
「ああ、聞こえる」
「よかった、先ほども通話を試みたのですがどうやらうまく魔道具が作用しませんでしたので」
なるほど、皆で向こうに行っていたタイミングで話しかけてきていたのか。
「プルフラさんから連絡があったということはもしかして?」
「ええ、皆様をサタナキア様に紹介したいと思いまして連絡しております。明日お迎えに伺おうと思うのですがよろしいですか?」
明日は店の開店があるからなぁ……。
うーん。
迷っているとロンドがハルトの胸に拳をポンとあてて頷いた。
「いってこいよ。大事な話なんだろ?店のことは俺らに任せとけって。俺も明日は手伝いに来るさ。おらぁこれまでもこの街で店を構えてきたんだ、客の扱いにはなれてるから心配すんな」
「……わかった。助かるよロンド」
ロンドの拳にハルトは拳を合わせながら応えた。
「どうやらそちらでの話はついたようですね。では明日の朝、リーザスの街の北東にある教会跡地にて落ち合いましょう。あそこには街の者も滅多に訪れないはずです」
「わかりました。ではまた明日」
話を終えると3人はすぐにアルレンセスに戻り、今あったことを皆に伝えた。
ここで人員を3つにわけることにした。
魔王領へ向かうのはハルト、ルナ、ルシア、シン、ヒナタ。
子猫達の選抜は、何があるかわからないから万が一の戦闘に備えて身体能力に長けた者を選んだ。
という説明をハルトはした。
もちろんシンは天眼持ちだという点で採用。
ヒナタは実際には、やんちゃすぎて店員として置いていくにはやや不安が残るからという理由だ。
商店の管理はロンドとナターシャとレイラ。
店員として子猫達の中でもしっかりしているユキ、リン、マリア。
そして給仕兼実演販売としてライラにもハルトが戻るまでは店に居てもらうことにした。
アルレンセスに残るのはセバス、レナとメイド達3人。
レナには皆が居ない間の畑の管理を、セバスにはアルレンセス全体の管理を任せた。
エレンとフィルはルッツ達と合流し、店の宣伝に一役買ってくれるそうだ。
レイラは商業ギルドの動きを把握するために別で動くらしい。
こうして各自の明日に向けて準備を済ませ、遂に魔王領へ足を踏み入れることとなった。




