遺言
※しいなここみ様主催『華麗なる短編料理企画』に出品しています。
僕がこの世を去ったとしても
湿っぽい葬儀は勘弁してほしい
出来れば参列者みんなでカレーを作りながら
ワイワイと賑やかに送ってくれるとうれしい
祭壇に豪華な花なんていらない
湿っぽいBGMも勘弁してほしい
ただ僕の大好物の君のカレーだけは
祭壇に供えてくれるとうれしい
『人生最後の食事はカレーがいい』なんてよく言ってたけど
どうやら先生はゆるしてくれそうにもない
だから君にだけこっそり頼むんだ
これだけは叶えてくれるとうれしい
最後のお別れの時があるだろ
棺桶の中にこっそりカレーのスパイスを忍ばせてほしい
僕の骸が焼かれて骨になっていく時に
カレーの香りに包まれていると想像するだけでうれしい
皆が僕の骨を拾う時
辺りにはカレーの香りが漂っていることだろう
皆で『最後までカレー好きのあいつらしいよなぁ』なんて
笑い合いながら拾ってくれるとうれしい
僕は先に向こうに行ってしまうけど
君にはできるだけ長生きしてから来てほしい
そのあいだに君好みのカレーが作れるようになっておくから
向こうで一緒に食べる時を迎えられたらうれしい