分かりにくかった場合、あとがきを読んでください
大都市エデンの中央に坐する『知恵の大神殿』。
そのさらに中枢にはスキルツリーを管理する神官の中でも最高責任者とされる大神官の執務室がある。
当代の大神官は、とても若い女性である。
あくまでも最高責任者としては若いというだけで、幼い少女というわけではない。
二十代後半の女性である。
重責を担うだけの実力と才能のある彼女だが、現在は老け込んだかのように沈んだ顔をしていた。
彼女の手元にはほかの大神殿にいる、他の大神官たちからの手紙が届いている。
そのどれもが警告や苦情を伝えるものであり、はっきり言ってめちゃくちゃ怒られていた。
「こんなことになるなんて……私だって考えていなかったのよ……」
元をただせば、自分が悪い。
ある意味では過食者以上に罪深い。
大神官であり『真実』を知る身でありながら、勇者の装備を四天王に取りに行かせる、なんてしてはいけなかった。
だが五歳の時に引き取り、健気にも成長していくチエを見て、彼女の負担を軽くしたいと考えてしまった。
その考えに四天王も同調した。
その五人が賛成してしまったので、チエも安心して許可をしてしまった。
四天王は勇者の装備が封印されたダンジョンに入り、それぞれが装備を持ち帰った。
それはとても素晴らしいことだった。
だが誰もがボロボロで死にかけていた。
持ち込んだ回復アイテムを使い切り、危うく死ぬところだった。
無傷で帰ってくると信じて疑わなかったチエは、四人が強がって笑いながら戻ってきたとき、自分の浅慮を呪っていた。
それでも、そこで終わっていればよかった。
まさか過食者に装備を盗まれるとは考えていなかった。
その装備が古代神たちのもとへ奉納されるなんて知らなかった。
チエがそこに二人で向かうなんて、聞いていなかった。
わかっていたら、何もかも説明していたのに。
「なんでこんなことになるのよ……」
沈んでいる彼女の部屋を、小気味よく、リズムとともにノックする者が現れた。
返事も聞かずに勝手に開けて入ってきた。
とても上品で堅い服……をこれでもかと着崩している女性だった。
普通に着たほうが楽ではないかというほどの着方である。
レア系後万能職賢者を集めている組織『三帽』に所属するキャリアー系レア万能職賢者、勇者四天王が一人クエスチである。
この大神殿でもかなりの有力者なのだが、それでもこの部屋に勝手に入っていい理由はない。
「クエスチ……勝手に入るなと言ったはずです。もちろんノックをしても同じです」
「う、はは、はは、はは。すみません、注意されてたの忘れてました~~!」
「それからすぐにドアを閉めてください! この部屋には重要書類が多いんですよ!」
「そうですよね~~この前みたいに大事なものが盗まれちゃうかもしれませんよね~~~」
「ぐ……」
クエスチは後ろ手でドアをゆっくり閉めると、ふざけながら現状を話し始めた。
「アレからもう四年……いや、五年でしたっけ? 時がたつのは早いですねえ。あの時は……もう笑っちゃうほど大混乱でしたねえ! そのあともチエちゅわんが一人で旅に出ちゃうし、噂のソロヒーラーを仲間にして装備を回収し始めちゃうしで……知恵の大神殿の権威台無し! あははははは! ジュラムとガイアお嬢様は自分を鍛えるために過酷な修行ばっかりしてるし、ティアさんは希少な回復アイテムの素材集めに奔走するし! みんな大変でちゅねえ!」
「あなたはお気楽に観光をしていると聞きましたよ。各地の大神殿からも、貴方が訪れたと聞いています」
「ええ、見聞を広めてきました! 賢者ですから! あははは!」
からかうように笑うクエスチは、トーンを変えないまま本題に入り始めた。
「久しぶりに戻ってびっくりしましたよ~~! 三人とも、めちゃくちゃ自分を追い詰めているじゃないですかぁ! こりゃあもういつ爆発しても不思議じゃないですね! あなたにも反抗しちゃうかも!!」
「……それでも私たちは、チエ様の言葉に逆らえません」
「でもその割には、いろいろと葛藤しているご様子……」
彼女が何を知りたがっているのか、大神官はわかっている。
それこそほかの四天王や神官たちからもせっつかれているからだ。
気になったからと答えを知りたがる浅知恵どもには、大神官もいい加減我慢の限界である。
「私たちには話せないんですよね。でもさすがにそろそろ限界では? 私だけでも教えてくださいよ~~、ね、いいでしょ? ここだけの話ってことで」
「今すぐ部屋を出なさい、さもなくば……」
ここでクエスチのトーンは一気に真面目になった。
「私は神の名前に気づきました」
その言い回しを聞いて、大神官は目を見開いて驚いていた。
「やっとこっちを見てくれましたね、大神官様。私は自分を賢者だと思ったことはないんですが、なんの裏付けも取らずにここへ来るほど馬鹿じゃないんですよ。ちゃんと情報を集めて、自分なりに調べられる範囲で調べてからここに来たんです」
「……続けなさい」
「気づきの発端はコレです」
彼女は一冊の本を取り出した。
非常に分厚く、大きい本だった。
それこそ鈍器にも使えそうな重さが見て取れる、片手で持つには難儀しそうな本であった。
賢者専用装備、賢書。その中でも最高位とされる『フォース』である。
現在は彼女が所有者であり、これを持っていること自体はなにもおかしくない。
「私ね、これを最初に手に取った時……へ~~としか思わなかったんです。印象に残ったのは、この本が今まで触ったこともない感触だってこと。あとは……表紙が樹皮っぽくて、中身のページに葉脈みたいなのがあったことぐらいですねえ」
気楽に語るクエスチだが、大神官はそれを黙って聞いている。
無理もあるまい、真実へ確実に近づいているのだから。
「で、どっかで見たことのある樹皮で葉脈だな、と思いました。私は植物学者でも何でもないですけど、園芸も趣味じゃないんです。だから逆に……どっかで見た樹皮で葉脈だなあ、と思ったらすぐ気づきました。どっちもスキルツリーと同じだったんです」
「それをおかしいと思いましたか?」
「全然、じぇんじぇん。ほかの四天王の最高位武器を見て、それぞれに同じような樹皮や葉脈があってもそんなもんだろうと思いましたよ。なんせスキルツリーですからねえ、我らのホーリーシンボルですからねえ。むしろ普通だと思いました」
大神官は『ここまでの材料』で気づいたのか、と勘繰っている。
そんなに優秀じゃないですよ、とクエスチは否定した。
「スキルツリーの勇者を守るために集まるレアクラスの面々の専用武器が、全部スキルツリーを意匠にしているなんて……そうでしょうねえ、としか申し上げようがない。私がおかしいと思ったのは、ダンジョンの最奥に安置されていた勇者の盾を手に取った時ですよ」
「……!」
考えもしなかった、という顔で大神官は汗をかいた。
なるほど、気づいて当然だ。自分の考えが甘かった。
「私の本と感触が一緒でした」
クエスチは当時のことをよく覚えている。
とても可愛らしい少女だったチエに代わってダンジョンに潜った。
艱難辛苦を乗り越え最奥にいたり、勇者の盾の前に立った。
ああこれでチエちゅわんに感謝される、セクハラしても許してもらえる。
そう思って触った時の衝撃と言ったらない。
「ほかの三人は気づかなかったでしょうねえ。籠手をしているってのもそうですけど、ティアさんは自分の武器が弓で、回収したのは護符。ガイアお嬢様は自分のが鎧で、回収したのも鎧。ジュラムは自分の武器が剣で、回収したのが兜。それぞれ感触が一緒でもおかしくない。でも……私の本と勇者の盾が同じ素材ってのはさすがに普通じゃない」
軽薄な彼女であるが、さすがに他人の専用武具を触るほど無思慮ではない。
だがそれも、何の理由もなく……ならばの話だ。
「こういっちゃなんですが、あの時の大混乱は都合がよかったので、他の人の専用武具もペタペタ触ってみました。やっぱり同じ感触でした。そして……気になってしまって、大神殿のスキルツリーに実際に触ってみました。それも同じでしたよ」
あの時。
勇者の武具が過食者に盗まれたとき。
この女はそんなことをしていたのか。
「私はここで一度納得しましたね。勇者の装備を含めたレアクラス専用武具はすべて、スキルツリーと同じ素材でできている。ってことは、田舎の神殿にもあるスキルツリーを加工すればレアクラス専用武具が作れちゃうかもしれない。そう思われるだけで大問題だ。たくさんあるスキルツリー全部に警備を配置するなんてほぼ不可能ですもんねえ」
「……はい、それが理由です」
「ええ、ここがゴールですよね。でも過程が不十分」
衝撃の真実であったが、まあそういうこともあるだろう。
どれもが神の持つ特別な素材で作られたんだろうなあ、で終わっても不思議ではない。
だがここで彼女は自分の後ろを見たのだ。
自分はたまたまこの事実に行きあたってしまったが、神殿はそれを何としても防ごうとしているはずだ。
「誰がどの程度、この情報を知っているのかわかりません。ですが絶対に、何かの形でこの情報を遮断しようとしているはず。そしてそれ自体は大々的に行っている。私は察しましたよ……コレを防いでいそうな掟は一つしかない」
「……神の名前を調べてはいけない」
「そうです。私たちは神の名前を知りませんし、調べてもいけない。で、ちゅ、よ、ね? もしもこの掟が私の気づいた真実に至らせないための掟ならば……そこから想像できる神の名前は一つ」
クエスチは大神官の前にある机に肘を乗せて、体重をかけた。
「スキルツリー。我らの神の名前は、スキルツリーです」
大神官の沈黙が答えだった。
「もちろんこれは仮説でした。確たる情報は『感触』と『葉脈と樹皮のパターン』だけです。これをこのまんまいってもしらを切られる可能性があったのでぇ、他の大神殿を訪れて、飾られている特別な武器を直に見てきました。確認できた範囲でのことですが、それぞれの神殿のホーリーシンボルである木と同じ樹皮、葉脈でした。さすがに触ることはできませんでしたが……後に図鑑などで確認したところ、逆に樹皮や葉脈が描かれていませんでした。もういっそわざとらしいほどにね」
「……そうです。他の神々も、同じ理由で名前を隠しています。ホーリーシンボルの名前がそのまま神の名前であることを隠しているのです」
「ではやはり……」
大げさに驚きながらクエスチは奇妙な踊りを踊った。
「神は樹であり『神殿のホーリーシンボル』も『専用武具』も、神の体である枝や葉っぱ、樹皮を加工して作ったものってことですね?」
「はい」
「やった~~! 当たってた~~! うれちい! すっきりした! 間違ってなかったんだ~~!」
しばらく喜んだあと、彼女は再び大神官に顔を近づけた。
「コレ、チエちゅわんは知ってますよね?」
「はい」
「あの子ウソをつくけど、態度でバレバレですもんねえ。私たちに何かを隠していました。でも罪悪感はなかった。私たちに隠していても問題ない、悪いと思うようなことではなかったからです」
神殿と協力している四天王は、全員が最高位の専用武具を持っている。
今更各地のスキルツリーを盗んで回ろうとは思うまい。
またスキルツリーが文字通りご神体だったとしても、納めている相手が変わるわけではないので特におかしいことはない。
周囲に教えてはいけないと言われていたが、その周囲にとってどうでもい話だったので、チエは隠していることに罪悪感を受けなかったのだ。
「でも、そのチエちゅわんも知らないことがあって、貴方たち大神官たちはそれを知っている。そして……その情報差が原因でとんでもないことになっている。そうですね」
クエスチは震える大神官の手に自分の手を重ねた。
「ええ」
「私はあなたの味方です。ここで素直に話していただければ、残る三人の暴走を止める手伝いをします」
大神官の躊躇は数秒だけだった。
もうここまでわかっているのなら、自力で正解にたどり着きかねない。
それならば話した方がいいだろう。
ジュラム、ガイア、ティア。
この三人は今からでもチエを追いかねない。
それはそれで問題になる。
「では、ここからさきは他言無用。この部屋の外に持ち出さないでくれますか?」
「はい……大神官様。ティアさんもそれでいいよね~~!」
いきなりおちゃらけを再開したクエスチは、部屋の中の明後日の方向に話しかけた。
これには大神官も驚くが、もっと驚いたのは部屋に隠れていた面々である。
「アンタ……アタシらが一緒についてきていたこと、気づいてたの?」
「だからわざとらしく、注意されるまでドアを開けてあげたんじゃん」
「……食えない女だね」
一人はティア。
スカウト系レア後衛職竜猟師であり最高位竜弓『ロード』の所有者。
顔にタトゥーを刻んでいる長身の女性である。
「も、もうぢわけありません、だいしくゎんさま! ワタクシ! ワタクシ……チエ様が心配で! つい!」
一人はガイア。
レア前衛職豪鎧士であり、最高位豪鎧『ロコモティブ』の所有者。
非常に時間をかけてセットされただろう髪型をしている一方で、顔をくしゃくしゃにしておびえている女性。
「……いろいろと言いたいことはあるけど、話を続けてほしいね」
一人はジュラム。
レア前衛職魔剣士であり、最高位魔剣『スパイラル』の所有者。
切れ長の目をしている美しい女性だったが、非常に不機嫌な顔をしている。
「それとも、ボクらがいたら話せないの?」
「……もう隠す意味もありません、続けます」
何もかもクエスチの考えた通りに進んでいるが、悪い結果ではない。
このまま話を進めれば、彼女らも理解してくれるだろう。
「まず先ほどの話ですが……クエスチの推論は少しだけ間違っています」
「どこがですが?」
「スケールです」
ホーリーシンボルも専用武具も同じ素材でできている、というのは正しい。
それが神の体というのも正しい。
だが厳密ではない。
「各地の神殿のご神体……いわゆるスキルツリーは、我らが知恵の樹の細い枝を地面にさしているものです。それに対して貴方たちの持つ専用武具は、太い枝を圧縮加工したものです。これらはいずれも枝葉神器と呼ばれています」
クエスチは勇者の装備とレアクラスの専用武具を一緒くたに考えていたが、実際は大きく異なっている。
大きさが異なっているのだ。
「そして勇者の武具は……神の本体、幹を根ごと五つに割って加工したものです。これは文字通り根幹神器と呼ばれています」
「!?」
これには先ほどまでしたり顔だったクエスチも、不機嫌そうだったジュラムも驚いていた。
ガイアなど大いに驚きすぎている。
「ええええええ~~!? そ、そんなことあります!? ワタクシはさっきの話を聞いても、てっきり、その、神であるスキルツリー様は……幹はそのまんまなんだと思っていました。枝を刺したり武器にするのならともかく……幹が割れてるとか、死んでるじゃないですか!」
「アタシも同じ意見だねえ。つまりあれかい? 神様をだまし討ちにして武器に加工していましたってオチかい?」
ティアは罪悪感を受けた顔をしていたが、大神官はそれにあきれていた。
「あなたたちの持つ、太い枝を加工しただけの枝葉神器も、壊そうと思っても壊せていないはず。幹を割って加工するなんて人間にできるわけがありません」
「ああ、そりゃそうだ。それじゃあなんで神様は武器になってるんだ?」
「樹々が協議した結果、協力してそのようになったそうです。これは私の先代から引き継いだ話でもありますが、チエ様にも聞いて確認したので確かです」
この場の四人がダンジョンの最奥から持ち帰った勇者の武具も、チエが得ていた勇者の剣も、神の本体を分けたものだという。
そこには意思があり、話もできるらしい。
自分たちは神に触れていたのだ。
四天王は今更ながらかつてのことを思い出していた。
「分かれた根幹神器をそろえた者は、神から代理人として認められ、絶大な力をふるうことを許されます。勇者もその枠の存在であり、クラスという知恵の樹の信徒特有の枠に収まっていません」
チエが、勇者が強いのも当然だ。
彼女は神の体をそのまま武器として振り回していたのだ。
そりゃ強いに決まっている。
「通常勇者と呼ばれる正式な役職名は『スキルツリーの代理人』または『天罰ノ王』といいます」
この世界の勇者が『過食者を討つ者』であるのなら、天罰ノ王という役職名は極めて正しい。
勇者よりもしっくりくる名称であった。
「ほかにも心理の樹カバラの代理人は啓蒙ノ王、伝説の樹ユグドラシルの代理人は布教ノ王、文明の樹ツウテンチュウの代理人は木工ノ王など……それぞれの樹の力の一部を好きなように使うことが許可されています。そう……好きなようにです。天罰ノ王であるチエ様も、やろうと思えば貴方たちへスキル没収という特権を使用できるのです」
過食者を討ち、本来の持ち主へスキルを還元するために、天罰ノ王はスキルを没収する力を授かっている。
だからこそこの場の四天王も含めて、万民は『過食者にだけ有効』だと勘違いしている。
実際にはスキルビルダー全員に有効であり、やろうと思えばレアクラスだろうがなんだろうが無力化できてしまう。
チエがその気になってしまえば……つまり四天王を同行させたくないあまり、四天王に嫌われることを覚悟でスキル没収をしていたかもしれない。
そんな悲しいことをさせるわけにはいかないからこそ、大神官は追跡を止めていたのである。
「とはいえ、天罰ノ王以外はそうそう現れることはありません。現にあなたたちも樹の代理人という制度……勇者に並ぶ存在など聞いたことがないでしょう? それだけ稀なのです」
天罰ノ王は警察みたいなものである。
犯罪者を取り締まるという仕事の関係上、比較的頻繁に出番がある。
だがほかの王たちはそうそう出番がない。
必要性がない限り、樹は王の選出をしないのだ。
「チエ様の勘違いは……そこです。根幹神器をそろえた者に、神は強大な力を与える。これが知恵の樹特有の概念だと勘違いしていたのです。だからこそ古代神のもとに『二人』……自分ともう一人だけを連れていくという問題行動をしてしまった!」
本来チエには関係のないことだったので、スキルツリーも大神官も『ほかの王』についてまったく教えていなかった。
だからこそ彼女は、知らない間に『ほかの王の試練』が現れるように動いてしまったのだ。
「古代神と呼ばれる四柱の神々は、元をただせばアメノミハシラと呼ばれる樹。かの樹は己を四つに切り分け、それぞれの根幹神器を神として自立させたのです。そして四柱すべてと調伏契約した者を代理人として認めるようにしていました」
過食者もチエも知らないことだった。
オオカグツチもオオワダツミもオオハニヤスもオオミカヅチも、元は同じ神だった。
アメノミハシラという樹の幹や根を四つに切り分けて生まれた神だったのだ。
「調伏契約を結ぶには、全力を出した神を倒す必要があります。つまり神が会わなかったり全力を出さなければ、どれだけ強い人間でも調伏契約を結べないのです。アメノミハシラが『今の時代に自分の代理人が必要だ』と思った時だけ、本気で人間を試す……そういう仕組みでした」
神は奉納品を断ることができない。
これもまたルールで決まっている。
過食者が勇者の武具を奉納してきたのなら、アメノミハシラの分神たちはそれを受け取るしかない。
そんな神々のもとへチエが現れたら全力で相手をするしかない。
そしてそのチエの同行者が実力を示せば、アメノミハシラの分神たちも調伏契約を結ぶしかない。
チエが、この場の四天王を連れて行けば……。
四人それぞれと契約をする、という形で王の選出を防ぐことができた。
しかしチエは相棒であるスモモ・ヒロシだけを連れていった。
ヒロシがまったく活躍しないなら見て見ぬふりをできたが、彼は勝利に大いに貢献した。
……彼は四柱全員と調伏契約を結ぶことになる。
つまりアメノミハシラの代理人としての条件を満たすことになる。
「アメノミハシラの代理人、その王としての名は……」
今回の話の問題点をゲーム風に言うと……。
樹はフラグが立つとイベント『王になるための試練』を開始します。
人間が『王になるための試練』をこなしていくと根幹神器が手に入ります。
一組をそろえると、樹の代理人、王になります。
ココ重要!
イベントが起きていない状態でも、根幹神器をそろえれば王になれます。
最重要
アメノミハシラの代理人の力は、世界を滅ぼせます。