第六話
「そろそろ10時か…あのコスプレばばぁが連れ戻しに来る時間だなぁ」
フィリスが空を仰ぎながら呟く。
空色のキャンバスには今日も明々と燃える太陽と綿菓子のような雲が広がっていた。
なんの変哲もない普通の日常である。
12年前までは毎日勉強 勉強 勉強の生活だったのだが,丁度12年前の秋頃にフィリスは初めて城を抜け出したのである。
この超鉄壁を誇るクランセイス城だったが,今は亡き13代目クランセイス国王のアルファンドがフィリスにこっそりと抜け道を教えてくれたのである。
そのお陰でフィリスは毎日こうしてぶらぶらと街を散歩できるのだ。
この抜け道を知っているのは今はフィリスだけで,他の者たちもこの抜け道の存在には気が付いていない。
そんな抜け道はこんな所から続いている。
クランセイス城でのフィリスの部屋は丁度2階,その為フィリスの部屋の真下はがやがやと賑わう厨房に続いている。
実はフィリスのベッドの下にあるフィリスがやっと通れる位の穴があり,この穴は10代目国王,シュガールが寝る間を惜しんで掘った秘密の穴なのだ。(シュガールがフィリスのように勉強が嫌いだったのは言うまでも無い)
この穴を抜けると厨房の天井裏に行ける。
そこから大きな梯子つきの通気口を上に上っていけば1階と2階のほぼ中間である屋根に出られる。
厨房はジュゥジュゥという調理の音やコック達のお喋りで常に賑わっているので気付かれる事は無い。
そこから門番の交代の時間を見計らって勇気を振り絞って大ジャンプ!をすればあっという間に脱走完了である。(高さはかなりあるのだが)
この穴の存在を知らない城の者達(現国王ファルティーダを除く)はやれ誘拐だ,やれ拉致だのぎゃぁぎゃぁ騒ぐのである。
当の本人は自分の意思で逃げ出しているというのに。
シイハです~
只今Rura 始まりの物語(読みきり)を執筆中です。
出来上がり次第公開するので,興味のある方はドウゾ。
ちなみにこの話はフィリスがまだ7歳だった頃の物です。あ,でも本編と同じく,神業的に上手いわけではありませんので…むしろ下手なのですが…
興味のある方は読んでください。といってもまだ執筆中ですが(汗)