第五話
「あらぁ~,フィリス君じゃない~っ。こんなお店に何か様?」
ルフィシャが引きつりまくりの笑顔でフィリスのほうに歩み寄る。
「今日も誰かさんとは違って優しいおじさんにご馳走してもらおうと思って。朝ごはん食べずに家出てきたから腹へってさ。おじさん,パンケーキ頂戴ー」
ルフィシャは必死に目で父にやめてやめてとアピールするが,人のいい父のことだ。
そのルフィシャを無視して厨房から出来立てのホットケーキをフィリスのほうに差し出した。
ほかほかと白い湯気と共にメープルシロップのいい香りがフィリスの肺一杯に広がった。
「いただきまーすっ!」
ルフィシャをあざ笑うかのように黙々と食べ続けるフィリス。
ルフィシャは一発かましてやりたい気持ちを必死に押し殺していた。
それからフィリスはぺろりとホットケーキ3枚を当然のように平らげ,店を出て行った。
ルフィシャはその背中を恨めしそうにじっと見つめながら明日こそは絶対に追い出してやる!と意思を固めた。
そしてひとまずその事は忘れ,「ご注文をお伺いいたします」といつもの0円スマイルでウェイトレスの仕事に戻った。
「ふー,食った食った。」
フィリスはとりあえず満たされたお腹をさすりながら収穫祭の準備でにぎわう商店街をのんびり歩いていた。
家である城に帰る気はさらさら無かった。
城に帰っても朝から晩まで帝王学の勉強ばかりで退屈すぎて死にそうだからだ。
かといって帝王学の教師もただ指をくわえてフィリスの帰りをじっと待っているわけではない。
いつも10:00を過ぎると城からフィリスを連れ戻しにやってくる。
何故10:00なのかと言うと,いつも9:30~10:00にかけて“ウサ耳探偵もえぴょん☆”という番組が放送されている為,その人はそれを毎日見逃すまいと観賞している。
いわゆる“オタク”なのだが意外とその素顔はフィリス以外の人間は知らなかったりする。
あと45分でおやつの時間だ…
って言っても私、おやつ全然食べないんですけどね☆