第26話
『フィリヴァス・アンドーレ・クランセイス…光のルラの継承者…ね。全く,あのクソ貴族がここまでして手に入れたい人物がこんな厄介者だったとは。ま,戦利品である魔宝剣を鞘から抜き取ることの出来ないカスには自分で解決出来ないって事かしら。』
日の光が差し込む長い回廊を,その少女はただ無心で歩いていた。
真っ白な純白の如き長髪の毛先はくるんとカールし,そのカールしている部分にあたる毛先は極僅かに銀に光っていた。
丸く大きな一重の海色の目に生気まるで無く,ただ目的を与えられて動くロボットの目よう。
そして真っ白な薄いワンピースから覗く細い手足は白雪のようだ。
その白雪のような両手には,黒々と不吉なオーラを放つ真っ黒な手錠が掛けられていた。
しかし少女はまるでその手錠の拘束の事を忘れているかのようにただただ歩き続ける。
「ここは二階ね。確か標的が居るはずの部屋はこの上だったはず。」
少女は感情の一切こもらない声でそう呟くと,腰に帯剣してあった剣の柄に右手を回した。
「…大丈夫,ルラが何?私は自分の仕事をするだけ…そう,私はもう失うものなんて無いもの。」
少女の声は微かに震えていた。
今まで何も感じていなかったはずの心が刹那にきゅっと縮んだ気がした。
そして吐息のようにかすれた声で何か呟くと,歩く速度を速めた。
「もしかしたら…ルラの力なら…本当にそうなら……」
少女の漏らした言葉には,まだ少女本人でさえも分からなかった自身の願いが意味深に刻まれていた。
っと。
少ないですかね?
いやぁ,もう1つの物語(精学)を進めていまして…
人間,新しい物好きで困ったものです。
…自己責任だけど…