第23話
冷たい
辺りの冷気で自分の体に鳥肌が立つのが分かった。
「ん……」
重い鉛の様なまぶたをゆっくりと開けたハルトは,あまりの衝撃に言葉を失った。
「ルキ…ト…!?」
辺り一面の銀世界の中,身を射る凍てつきの息吹が吹雪いていた冬空の下。
その空の上にハルトはウェハースの様に軽くなった感覚と共に浮いている。
その空の下では2人のまだ幼い子供が分厚いコートに身を包み,互いの剣を交えていた。
キンッ!
「あっ!」
1人の子供の剣が弾かれ,どすっと雪の積もった地面に突き刺さった。
「ハルト,もう少し集中しろ。今日は何か他のものに気取られている様子だったぞ。」
フードで顔は見えなかったが,声のトーンからして少年だという事が分かった。
「だって…今日は私の誕生日だったのに…ルキト気付いてくれないんだもん。」
剣を弾かれた少女がパサリとそのフードを脱いだ。
「私…!?」
ハルトはその少女にも少年にも覚えがあった。
幼い日の自分達,今見ているのは過去の現実――
銅のツインテールに銀の瞳――紛れも無く過去の自分
「ばーか,忘れるか。はい,プレゼント。」
少年がコートのポケットをガサガサと掻き回し,小さな白い木箱を取り出した。
少年が自分で巻いたのだろうか,真っ赤なリボンはぐしゃぐしゃで結び目がほどけかけていた。
「うわぁ!何これ?」
それでも幼かったハルトは好奇心に目を輝かせ,夢中でパズルを解くかのようにリボンをほどく。
そしてほどけたリボンをコートのポケットに押し込み,木のふたをそぉっと開けた。
「綺麗…」
箱の中には真っ赤なクッションの上に乗ったチョーカーが入っていた。
黒い皮ひもに細かなチェーンで繋がれた小さいながらも美しく澄んだ石が付いていた。
「キルト,これ何の石??」
ハルトが少年に問うた。
すると少年は「あー,それはな」と一泊置いてから少し度が過ぎたような声で自慢げに説明する。
「その石はアクアマリン!海の水っていう意味なんだ!!」
ふぅ。
これはハルトさんの過去のお話です~
ルキトとキルト ややこしいですな~