第21話
『これ…火蜥蜴召喚して全部灰にしてやろうか…』
再び鉛筆を持ってからまだ10分も経っていないのに,フィリスはやはり乗り気ではなかったようだ。
この前フィルという魔導教師に教えて貰った召喚魔法で四精霊の一角,火蜥蜴を呼び出してこのプリントの束を燃やしてやろうかと本気で思う。
しかしその気配を察したのか,ハルトが釘を刺す。
「くれぐれも,楽してこの課題を終わらせようなんて馬鹿げた事はするなよ。例えば四精霊の一角,火蜥蜴を召喚してこの束を燃やす…なんて事はやめろよ?その時は私が容赦なく斬るぞ。」
読まれてる…しかも完璧に……
「そんなこたぁしねーよ。したくてもできねぇだろ,俺魔導師じゃねーし。」
「四精霊位並の剣士でも呼び出せるであろう。」
参りました 白旗ハタハタです。
「うぅ…分かりましたよォ!やりますっ!!」
フィリスが二度目のヤケクソモードに入る。
「ふふ,頑張れよ。さてと,私は王子の昼食を貰ってくるとしようか。」
ハルトはふっと微笑むと立ち上がった。
そしてフィリスの居る一室を出て行き,しっかりと自分の魔力で外側からロックを掛けた。
「これじゃ逃げれねーじゃん。」
フィリスはぐでぇ~と机の上に溶けると,もうほとんど考えられない頭をフルに回転させて数字の問題に向き合った。
『…さっきから妙な殺気を感じているのは…気のせいか?』
ハルトは食堂へと続く長い廊下を歩きながらフィリスと離れてから感じる妙な殺気に警戒していた。
普通は敵が居るときはそれなりの気配とやらが感じられるのだが,その気配に敏感なハルトでさえ肝心の気配が捉えられなかった。
『どういうことだ…気配も魔力も感じられない,しかし殺気だけは感じる…まさか…気配を消して…』
「貴方は強いのね,私と互角に闘えるのかしら。」
ハルトの背後に感じたのは気配 先程まで完全に掻き消されていた気配だった。
そして高く響く鈴の音のようなコロコロとかわいらしい声。
「何!?」
ハルトがとっさにその右手を柄に回す。
しかしその剣を抜くより一瞬早く,ハルトの背に衝撃が走った。
「…私が望んだのは貴方みたいな弱者じゃないの。」
ハルトの視界がどんどん黒い闇に沈んで行く。
意識が完全に途絶える一瞬前,ハルトは真っ黒な邪気の光が漂う黒い宝石を見た気がした。
ちょ~っと無理矢理感があったでしょうか(汗)
まぁ,そこら辺はスルーで…
また勉強します(反省)