第19話
「……分からん…何や,この自然魔力の乱れは……」
ヒユリがぐぃーんと背もたれに背中を押し付ける。
ギシィと椅子が音を立てた。
「…待てよ,自然魔力を乱すのは強大な魔力…そんな魔力を発してんのはルラと…あとは……」
ヒユリが眠そうに目をこすった。
それでスイッチが入ったかのように次々とあくびが漏れ出してくる。
「うわぁ~っ,眠い眠い…そろそろ寝よかなぁ……」
ヒユリが白衣の袖で目から溢れ出た涙を拭った。
バチッッ!
いきなり画面がぶれだし,何かに揉み消されたかのようにぶつっと消えた。
『ここで合ってるのかな,リーダーから抹殺依頼が出てるヒユリって人が居る研究所的なところは。』
ザ…ザザ…ザザザザッ!!
ヒユリを囲むようにして映し出されていた画面が刹那にぱっと灯り,1人の少年を映し出した。
緩くカールの掛かったふわふわの茶髪に大きく愛らしい焦げ茶色の瞳。
そして畏怖を感じさせる不敵に上げられた口角が,その少年の愛らしさを全て消し去っていた。
「なぁるほど,そういう事ね。」
ヒユリが本能的に危機感を感じ,椅子から立ち上がる。
周りの空気がピンと張った釣り糸の様に張り詰めた気がした。
『何が分かったのか知らないけどさ,今の君は魔力を凄く消耗していて殺りやすそうだ』
少年の発した声が複数の画面からスピーカーの様に流れ,狭い一室の壁に反響して響き渡る。
「消耗か,確かにヤバイな。今の俺。」
ヒユリがフゥと顔の横で両手のひらを寝かせ,やれやれというようにため息をつく。
『無駄口はそこまでだよ。バイバイ,天才さん♪』
「な…」
ドガァッッ!!
少年の弾んだ声を最後に,ヒユリが居た一室が爆音の煙の中に埋もれた。
どういうことだっ,私が出ていないぞ!!
くそぉ,レギュラーの座を渡さなければいけなくなるとは…
次こそは絶対に活躍してやる!次回,私の勇姿を見てやってくれっ!!