第18話
「兄ちゃんを犯罪者扱いするなぁ!」
「でも実際にお前の兄は悪に手を染めたであろう。」
ハルトの間違ってはいない言葉にコルトは「だって…!」と言葉を濁した。
答えが見つからないのだ。
そんな状況を見かねてか,「あ…あのぉ~?」とキルトがハルトとコルトの中に割り込む。
「これ以上長居すると迷惑そーなんで…帰りますね。」
キルトは「何言ってんだよ兄ちゃん!」というコルトの口を塞ぐと,フィリスたちに一礼し,パンッという破裂音と白煙と共に消えてしまった。
「移動魔法?すげーなアイツ。」
フィリスはほぉ~と感心しながらキルト達の消えた一点を眺めている。
「…さてフィリス。そろそろ勉強の時間だぞ。」
妙に弾んだハルトの声が冷気となってフィリスの背筋をつーっと撫でた。
「あ,確か俺今日―――」
「情け無用!今日は朝までその頭に知識を叩き込んでやるからな」
ハルトの手がフィリスの襟ぐりを引っ掴んだ。
「助けて――――!!」
引きずられながら発せられたフィリスの叫びが,もうすぐお昼時を告げようとしていた空に響き渡った。
「…うむぅ~…何かがおかしい……」
薄暗い個室に灯る画面の灯火。
画面には色とりどりのグラフや記号などが映し出され,その形状を絶えず変形させていた。
「おかしいんや…でも何がおかしいんや?」
その円形に並んだ画面の中心に居る,口を尖がらせながらなにやらブツブツ呟いている男性はさっきからあーでもないこーでもないと1人でブツブツ議論を交わしていた。
「ここがおかしいんか?いやいや,そこは正常や。じゃぁここか??ここも異常なところはないで?」
周りの画面が変化する度に少年の白衣の袖に埋もれた右手辺りがチカッと黄色に光る。
真珠のように淡く輝く白い毛髪は一つ一つが思い思いにはねており,アフロ…とまでは行かないものの,一度くしを通した程度では直りそうに無い。
そしてこれまた存在感の無い目尻がシュッと切り込まれた灰色の瞳の下には,深々と徹夜を物語るクマが出来ていた。
服装は明らかに大きいであろう白衣で,椅子の下からダラリと垂れているはずの足さえ白い布に隠れ,床に着いているほどだった。
ヒユリ 自称:天才の名を欲しいままにする神童
ここ,魔宝大陸管理機関最高権威者の魔導師だ。
得意な魔法は魔宝虎目石を使った魔法,情報処理。
あまり表に出たがらないのでその正体を全て知るものは未だ居ない。
ヒユリという名前は男女共用で使えるな。
便利な名前だ。
しかし魔宝大陸管理機関最高権威者とはまた長い名前を…
シイハは意味を分かって使っているのか??