第17話
「ルラアァああぁぁ―――――!!!??」
空気を切り裂くかん高いルフィシャにも劣らぬ声がフィリスの耳を劈く。
余りの大声に鼓膜がぶぅーんと震える音まで聞こえた。
「うるっせ!誰だこんな声出したのはっ…ってクソガキ――!てめぇ俺のことなめてんのかョ!あぁ!!?」
フィリスが完全にブチ切れながらフィリスを指差して大声をあげた少年を睨みつける。
その少年はというと,口をぽっかりあの字に開けて硬直していた。
「ル…ルラって…今お前ルラって言ったか!?」
「なんべんでも言ってやるよ!ルラルラルラルラルラっ!俺の剣の総称くれぇ何度でも言ってやるわっ!」
フィリスがヤケになって少年にほぼ怒声と化した声を浴びせる。
少年は何を思ったのかフィリスを指していた腕をダラリと下げ,「ほ…本物なのか…?」と漏らす。
そこでやはり適わない相手だということを悟ったのか,既に光を失った剣を背の鞘におさめ,フィリス達の前で両膝を着いた。
「ぉ?なんだなんだ??この偉大なるフィリス様――」
「王子,度が過ぎていますよ。立場をそろそろ自覚して下さい。」
ハルトに発言を遮られ,ちょっぴり口を尖らすフィリス。
「お…俺の…兄ちゃんの剣を…取り戻して欲しいんだっ……頼むっ!」
少年が両手を地面に着き―――
『土下座―――!!?』(全員の心中)
「や!その…とりあえずそれやめよう!そして立とう!!」
フィリスがわたわたと両腕を振り回しながら少年を宥める(?)
そうして立つには至らぬものの,やっと顔を上げた少年にフィリスは今度は飛び上がりそうになった。
少年の顔は涙と鼻水でぐしょぐしょに濡れていたのだ。
「王子が泣かした…」(超小声)
「断固としてちげぇよっ!」
ハルトがぼそっと漏らすがフィリスに聞こえてしまったようで,フィリスが顔を真っ赤にしながらハルトに妙な言葉で反論した。
「お…お前…なんで泣いて―――」
「コルト!やっと見つけたっ,ってオージ!!?」
高々と聳え立つ城門の遥か上を飛び越して1人の少年が砂煙と共にフィリスの前に降り立った。
若葉色の肩の高さまでの長髪に山吹色の大きなくりくりの瞳の恐ろしい程の身体能力を持った少年が慌ててフィリスの前に跪き,低頭する。
「弟がとんだご無礼をっ,本当にすみませんでした!罰なら私が代わりに引き受けますからどうがお許しを!!」
コルトという少年の兄らしいフィリスと同じ年頃の少年が必死にフィリスに頼み込む。
「や,別に何もしてねーし。てかむしろ退屈しのぎになったっつーか……」
フィリスはどうしてよいやら分からず,頭をポリポリと掻きながらとりあえず相手にとて不都合ではないであろう返答をする。
「コイツ…何処かで見た気が―――あぁっ!!」
なにやら考え込んでいたであろうハルトが突然声をあげた。
「思い出したぞ!確かこの前紅薔薇が潰した殺し屋の下っ端の…キルト!」
ハルトの言葉がキルトの胸にぐさっと突き刺さり,バツの悪そうに顔をゆがめる。
「うぅ…過去のことは触れないで下さい…てか俺1人も殺してないし,傷つけてないし…それに一度も依頼受けたこと無いし…むしろ仲間(?)から常に殺傷的な目を向けられてた気が―――」
この少年は裏の世界で活動していた殺し屋,悪魔の翼に所属(?)していた下っ端の少年で,ついこの前釈放されたばかりの元犯罪者。
殺し屋――と一口に言っても依頼数は0で,しかも組織に余り関わっていなかった為,無罪として釈放されたのである。
少年の正体がやっと分かったな。というより少年の兄の方が初登場にして私より目だっていた気がするのだが…
次回はキルトの剣についてか。(多分)
というより,コルトというのはコルクみたいな名前だな。
シイハの思考能力の無さが分かるネーミングだ(笑)