第16話
「…王子…髪色戻ってますよ,貴族特有の金髪に」
フィリスはハルトのその言葉でむぉっと険悪な表情になり,急いで自らの剣を見た。
一点の濁りの無い氷のごとき透明な剣腹は,大きくて太く,黒に金の模様が入った大きな柄がその透明度を一層際立てていた。
「またかよ,水晶。俺の髪を元に戻すなぁっ!」
フィリスが自分の剣を叱りつけるようにその剣腹をコツンと小突く。
しかしその剣はまるで「そんなもの知るか」と言うかのようにその白きオーラをより一層強めた。
「コイツ…主に逆らいまくってねぇか?お前も反逆罪として牢屋ぶち込んでやろぉか??」
フィリスの魔宝剣…クリスタルはそんな主の言葉に反応してか,スッと一瞬で幻想のように消え去った。
クリスタルが消えた途端,フィリスの髪色が紙に滲んだインクのようにじわっと元の黒に戻っていった。
「流石は聖玉の剣ですね,その態度も持ち主に似て偉そうで偉そうで…」
ハルトが「ぷ」と右手を口に当てながら震えた声で喋る。
笑いを堪えるのに必死のようだ。
それでフィリスに何かじと~っとした視線を向けられたので,ハルトが慌てて「失礼」と軽く低頭する。
フィリスの剣,クリスタルはクランセイスに古くから伝わる聖玉の白の剣だ。
ルラとはクランセイスの古の言葉で“聖玉”という意味を持ち,また強大な力を持った魔宝から剣の形に削り取った最強の魔法兵器の1つだ。
ルラは二つの相反する宝石が対になっているといわれ,そのうちの1つのフィリスのクリスタルの主な能力は“浄化”
その浄化能力のせいでフィリスが魔力を使って染めた髪の魔力が一時的に分解・無力化され,元の金髪に戻った ということでである。
もう1つのルラの存在は現在地 能力 主全て不明。
本当にあるのかという事すら囁かれている魔宝だ。
えっと…今日はハルトさんは急な用事で出かけているので,紅薔薇部隊隊長の私が後書きを勤めさせて頂きますね。
昨日のハルトさんの予想通り,少年は不明の一方です。
う~ん,今回の回でなんでフィリスの髪色が戻ったのかーと,ルラの簡単な説明をしました。分からなかった場合はシイハに文句を送りつけて下さい。
もう1つのルラ,一体誰が持ってるんでしょうね?っていうかまだ誰にも触れられてなかったりして。
では,私もそろそろ剣術の修行で副隊長に付き合わなければならないので。
……あれ?私の剣何処に置いたっけ!!???
うわああぁぁぁ………