第10話
「と…とにかく…王子の首が危ないかもしれません!これはクランセイスの危機,ここは隊長として救出に―――」
「こらクルーラ。まだそんなくだらない妄想を膨らませているか!」
クルーラの発想をカッと一喝した凛と響く美声にクルーラは縮み上がった。
先程のクルーラの叫びをも凌駕する気迫に心臓をぎゅっと掴まれた感覚だ。
「ハ…はっハルトさん!?」
クルーラが顔を真っ赤に染めて慌てて後ろを振り返る。
不思議な色を放つ銅の毛髪は綺麗に腰の位置で切り揃えられ,キリリと硬く結ばれた唇がその女性の底無き強さを表しているようだった。
切れ長の銀の瞳からは溢れ出るほどの美しい光が漏れ出しているようで,初対面の者はこの不思議な輝きに見入ってしまうだろう。
「良くない妄想はその辺りで留めておけ,常識だぞ。」
ハルト・グレイス・グライトアール
フィリスの帝王学教師の超が付くほど真面目な教師だ。
しかしこの人の個室にはアニメのフィギュアが所狭しと並べられており,クローゼットには手作りのコスプレ服が無数に並んでいる。
この部屋の事を知っているのは一度無断で入室したフィリスぐらいで,クルーラは愚か国王でもこの秘密を知らなかったりする。
ハルトの父がグライトアールの街をおさめていた役人という事もあり,容姿は貴族とは程遠いが,その知識と剣術でフィリスの専門教師となったいわば天才的な頭脳を持った平民貴族――ということになる。
サブタイトルを入れ忘れると全部消えるんですね~(汗)
やっちゃいましたぁ(泣)