リアライズ
ソシャゲの情報位置ゲーを現実でできたらこんな感じかなって思って書きました
「本当に、すいませんでした」
大きすぎず小さすぎない芯のある声が、コンビニ内に広がり
レジの前で深々と頭を下げる少年
背丈は標準で、髪は黒髪のアップバンク
Tシャツにジーンズ、スニーカーと言うラフなカッコであった
「店長」
コンビニの制服を着た若い男が隣に立つ中年男性に、どうしますか?
って顔で見た
中年の男性は、頭を掻きながら頭を下げる少年から渡されたカードを見るのであった
バンバンバンバン
テレビでカートュン調の猫がフライパンをハエ叩きのように振り回しながらネズミを追いかけ回している
少年は、無表情でそのテレビを見る
ふと壁の時計に目をやると19時、2LDKのダイニングのテーブルの上には、ラップしてあるハンバーグとケーキにメモ書きが一つ
「はぁ〜」
少年は、ため息をして扉を開け廊下にでた
その手には、ナイロンのマウンテンパーカーがあり
それを羽織って玄関でスニーカーを履くと
マンションの通路に出る
寒い
ブルっと身体を震わせるとファスナーを一番上まで上げた
通路から外を見ると闇に覆われ手がかりは、通路の蛍光灯と街頭、あと住宅の灯りだった
マンションのエレベーターを降りて外に出る
左に行くと高校へ行く道なので右に行く
後は、直感と勢いで突き進む
足は軽い、どんどん前へ前へとでてくる
まるで、その場に何かを置き去るように
右、左、まっすぐ
左、右、左
直感で進む、春だというのに夜の住宅街は少し冷たくて、表面の温度を下げてくれる
10分ぐらい歩いた頃にはペースも落ち着いていた
夜の散歩も悪くない
そう思いながら辺りを見渡しながら歩く
相変わらず住宅しかないが
夕飯時だったので家族での会話やテレビの音が灯りと共に漏れてくる
それを聞くと柔んだ心がまた締め付けられた気がした
今日は高校の入学式だった、普通の家庭ならお祝いのご馳走を食べたりして家族で団欒を楽しむだろうが、いつからだろ
家族が顔を合わせる事など全く無くなってしまった
そう言った物に強い憧れがあるわけでないが新しい門出の日ぐらいお祝いのコメントぐらいよこしても良いのでわないだろうか
その場を離れたくて黙々と足を動かした
さっきより早く、さっきより力強く
気がついたら走り出していた
呼吸が荒い、息が苦しい
もう無理だってくらい限界まで駆け抜けた
額に汗が噴き出る、拭いても拭いても止まらない
喉もカラカラだ
そんな状態だが一呼吸ついて辺りを見渡す
どれくらい来たのだろうか見慣れない場所にでる
住宅街なのにポツリぽつりと空き地になっている土地がある
ここは、まだ開発中の住宅街で整備されたばっかりなのだろう
すでにたっている住宅も入居者がまだきまっていないのか灯りが灯る家は無い
ここにすんでだいぶ経つがまだこんな所があるなんて、だいぶマンションから離れたらしい
それにしてもスタイリッシュなむだの無い箱型が多いな
なんて思いながらすすんで行くと
ふと足が止まった
コンビニがある
入居者のいない住宅と空き地に囲まれるように平屋の箱がそこに建っていた
しかも、灯りが漏れている
営業してるのか?
心でそう呟きながらポッケの財布に手をやる
お金がある事を確認すると恐る恐る近づいてみる
喉がを潤わせたくて飲み物が欲しいが、灯が保っていても怪しさ方が勝ってしまい警戒心を拭きれない
扉が開く
自動扉が開くと同時に入店を知らせるチャイムがなる
開いた事に驚いたがちょっとホッとした
しかし、店員は出てこなかった
店内には、人っこ1人いない
しかし、商品は綺麗に陳列されている
ここも最近出来たのだろう
隅々までおニューですといった顔色をしている
彼は、店のレジの側にあるホットの飲み物からお弁当、甘味、パックの飲み物へと足を動かし
通りを変え
アイス、スナック菓子へと折り返してきた
「えっ!?」
思わず声が漏れた
「うそだ」
足は完全にとまり、とある食玩を凝視していた
食玩のコーナーでいろんなオモチャとお菓子が抱き合わせで売られている
その中で一際人気な食玩がある、コンビニでしか売られてなくとあるゲームを行う上でどうしても必要なもの
血塊のウエハース
そう言われると真っ赤に染められたウエハースかと思われるかもしれないが、それは違う
これは、ドラキュラと言うゲームで武器を手に入れる為に必要な食玩で大切なのは、おまけのカードの方である
ゴクリ
生唾を飲む
今もっとも入手困難な食玩が何処ともわからないコンビニに、1列ギッシリ並んでいる
買えなくてフリマアプリで倍の値段で売られてるのに
もちろん値段は定価である
レジを見る、やはり店員はいなかった
少年は、血塊のウェハースを手に取るのであった
・・・ローディング
音も無くスマホのアプリが起動の準備している事を知らせる
しばらくするとスマホからカッコいい音楽が流れ出す
有名なアーティストを起用していてCM等でもよく流れている馴染みの曲
ホーム画面には、ドラキュラと言うタイトル
ついに始まった
アプリを進めるとナビゲーターらしきキャラが現れて色々説明している
初めてなので慎重に読み進めるとここで問われる
プレイヤーネームを入力して下さい
ダイヤ
名前をカタカナで入力
許可されました
また問われる
ARスマートコンタクト及び、バイブグローブの着用はお済みですか?
はい を押す
スマートフォンアプリゲーム、ドラキュラはGPSを使用した位置情報ゲームに、ARを掛け合わせた新しいRPGで、ARRPGと言われている
ARRPG、オーグメンテッド・リアリティロールプレイングゲームの事で
ARとは、
現実世界・空間を拡張させ利用方法を生み出すこと
または、現実世界とデジタル情報を重ね合わせた事を言う
因みに、ロールプレイとは、
現実に起こる事を想定して役割を演じて疑似体験することをいう
ようは、現実世界を舞台にドラキュラと言うゲームを体験できるのだ
ドラキュラ
ヴァンパイアロードが魔王として世界を混沌に飲み込もうとするが、勇者が世界各地を周りドラキュラ軍と戦い平和にするゲーム
このタイトルは、2024年の現在より30年まえに発売されたタイトルでスーパーファミコンRPGの金字塔だ
この30年前に流行ったゲームが、ソーシャルネットゲーム、ソシャゲとして生まれ変わった
数あるゲームの中でこのゲームがブームになっているのは、本当に勇者に慣れるからだろう
このゲームの一番のアクティブユーザーであり課金者は、30代、40代のスーパーファミコン世代であり
金銭的に余裕のあるサラリーマンのお父さん世代が、スーパーファミコンの人気タイトルの勇者に自分がなって、自分が住む町を冒険して、モンスターを倒しレベルを上げ、協力してレイドをこなす、勇者ライフを実際に体験できる事に反応した、さらにこれがこのゲームの最大の売りでありブームの要因でもあった
その人気は、ARRPGと言う新しいジャンルと言う話題性も相まって
普段ゲームをやらない層の人々もお付き合いでやり始め、人によっては子供もハマって家族でやってる人も出るレベルである
先の問いででたARスマートコンタクト、バイブグローブだが
このゲームを遊ぶ上で欠かせないアイテムである
特にARスマートコンタクトは、SF映画で空飛ぶ車と同じくらい登場するメジャーなアイテムである
瞳孔の真ん前に来る所にディスプレイを設置しディスプレイの光を網膜の中心窩と呼ばれるちいさな窪んだ場所に投影し使用者に映像を認識させる
スマートフォンと同期する事もできて、電子書籍やアプリゲームをスマホ無しで堪能できる
バイブグローブは、ARRPGの欠点を補っている
特にドラキュラにおいては、CG映像の武器を手に取って戦う為どうしても手触りや重さを感じられないし、ぶつかり合った時の実感が無いのだ
そこで、バイブレーション付きのグローブを販売された
グローブの素材は圧力が加わると硬化する特性を持つ、そのためグローブを嵌めた状態で武器を掴むとちょうど掴んだ状態で硬化して外からだと本当に掴んでいるように見える
さらに、ダメージを受けたりするとバイブが振動して知らせ、武器によって材質やグローブの重さを変える事で本当に武器を持っているように演出するのだ
ARスマートコンタクト、バイブグローブの着用してると答えたので、アプリは同期を求めてくる
音声入力をオンにリアライズと発して下さい
同期が確認されたらゲームが開始されます
指示されるままオンにしアームホルダーにスマホをしまう
「リアライズ!」
視野に青と白の角張った波紋が広がる
数秒で波紋が治まり視野が回復する
同期前と変わらない風景
時計塔、ベンチ、街路樹
陽の光をたっぷりと浴びた公園がそこにあった
同期前と変わった景色もあった
視覚の左上にダイヤってプレイヤーネームに黄緑色のHPバーがある
そして、天を突くように空中に鎮座する剣
刃渡90センチはあるだろうか、刃の先で日の光を反射させ、私はここですって知らせているようだ
T字のガードに布が巻かれただけのグリップ
まさに、初期武器と言わんばかりのシンプルなデザイン
剣に触れようと、して右手を出す
視野に手が入り輪郭を這うように黄色のラインが走り、コンタクトレンズが認識した事を知らせる
しかし、手は突き抜けてしまった
何度試しても空を切ってCGの剣に触れることは出来なかった
どんなに頑張っても触れられ無いとわかったところで剣を握る事にした
グリップを握ろうとして出した手の指先に圧をかける(今度は、両手だ)、グローブに圧力がかかり猫が爪を立てたような状態で硬化してしまう
まだ練習が必要だな
そんな事を硬化した手を見ながら思い
再度グリップを握る事に挑戦する
途中で硬化しない様にユックリゆっくり握る
「おぉ〜」
声が漏れる
グローブが硬化してちょうど握ったような状態になっていた
剣は、プレイヤーがグリップをちゃんと握ったの判断したのか台座を離れて自由になったように振り回すことができた
右へ左へと振ってみる、剣は瞬間接着剤で固定されたみたいにスッポ抜ける事無く付いてくる
今度は、両手をパーにしてみた
剣は重力を得たかの様に自由落下をはじめた
カン、カッカッカッカッ・・・・・カァカァカァ・・・・ワァンワァンワァンワァン・・・・
剣は、地面にぶつかると剣先とグリップを交互に何度も打ちつけた
最初は、激しく次第に小刻みに
ここまで再現するか
剣を拾い上げて剣の腹を見るが映り込む事は無かった
鏡のように綺麗な剣でもCG故に周りの景色を映り込ませるのは無理のようだ
まだ、アップグレードの余地はありそうだ
そんな事を思いながら公園の時計塔の方に目をやる
側に街頭が立っている
街頭の下にスポットライトを浴びるように看板が浮いている
この看板は、ゲームを起動すると視認出来るようになり、看板とシンクロして回す事で回復アイテム等をドロップさせることが出来た
更に、グランドタワーなどのその地域において大切な公共施設、歴史的建造物で一定のスペースが確保出来る場所は、レイドスポットになっていた
この看板の下には、怪獣のマークが一つ
難易度1って意味である
最高で5まであり数が増えるにつれて討伐人数と時間を要求される
怪獣マークの下に開始時刻が表示されている
レイド終了まで三分
「ふうー」
間に合った
ダイヤは、このレイドに間に合うようにチュートリアルを進めていたのだ
因みに、レイド情報はミンドラと言う
レイド、エンカウント情報を通達してくれるアプリで把握していた
手を看板にかざす
剣を握ろうとした時同様にラインが走る
しかし、今度は青色だった
ラインが腕を覆うと二回点滅して看板とシンクロした事を知らせる
ダイヤはそのまま下に少し下げた
すると、そこからレイドを開始するかどうかの有無を問われる
迷わず開始を押した
バァーっとダイヤを囲うように白い光の柱が立ち昇る
そこからペタペタと足音を鳴らしながらモンスターが姿を現す
灰色の毛に覆われた身体、山賊か海賊の様なベストに白いズボンバンダナに手には、小刀の様なサーベル、終いには二等身と愛くるしいフォルム
迷う事なき窮鼠がそこにいた
窮鼠とは、原作ドラキュラにおいて最序盤で出てくる誰もがサクッと倒せるモンスターであり
CMなどでも登場するマスコット的なモンスターであった
レイドのカウトダウンが開始される
腕試しと行こうか
ダイヤは、剣道の様に両手で胸の前で構えた
3・2・1・GO!!
始まると同時に構えをくずして目の前にいる一匹に走り出した
うりゃー
素人丸出しの掛け声を出しながら自分の腰位の高さしかない窮鼠に剣を振り下ろした
ブブ、ブブ、ブブ
振りおろされた剣が、受けようと掲げられたサーベルに触れた瞬間グローブが振動しだす
ビックリして手が止まる
そこからは、窮鼠との力の押し合いだった
サーベルを弾こうと強く押すとグローブが振動し、さらに武器に儲けられた耐久値が低下する
耐久値がゼロになると武器が破損して一定時間使えなくなるのだ
振動と耐久値を見ながら隙を覗っていたら急にHPが減り出した
慌てて辺りを見渡すと、残りの窮鼠に背中から攻撃を受けていた
CGなので痛みは全くない、だから死角からの攻撃は下手すると致命的になるのだ
慌てて押し合いをやめてその場を去るがその時に窮鼠を透け抜けてしまう
窮鼠が怒り出し攻撃力が上がる
運営は、キャラクター達をCGで無く実現する存在として扱って欲しいとかんがえている、なのでCG故に透け抜けることが可能だが、これが現実だったら不可能なので、ペナルティが発生するようになっていた
窮鼠は連携をとるようになった
一匹が飛びかかって来たのを何とかいなしたと思ったら間髪入れずに別のが順番に飛びかかって来る
それも何とかいなし、これを繰り返して行くと
たまに体勢を崩す個体が現れる、そこはチャンスばかりに攻撃を入れて、いなしては攻撃いなしては攻撃を繰り返した
十五分後、地面に腰をつけるダイヤがいた
息はキレて肩で呼吸をしている
今、最後の一匹を倒したのだ
画面だと地味な作業なのに現実になるとこうもハードとは
そう言いながら実感を確かめるようにグローブを嵌めた両掌を見た、バイブによる振動で手に握力が無くなり小刻みに震えている
しかし、そんな今の状態に達成感を確かに感じていた
ピコン!
そんな時に一通のLINEの通知が来たことを知らせた
ダイヤは、眉間に皺を作り腕のケースに嵌めたスマホを見た
ハァー、母さんか
自分にLINEなんて送ってくる人間なんて母親以外いないし、内容もテンプレだ
仕事で帰りが遅くなります、先にご飯食べてて下さい
いつものテンプレで寧ろ安心すらするのであった
日が落ち、帷が公園を覆う頃、ダイヤの姿があった
服装は、青のTシャツにダークグレーのハーフパンツに黒のスポーツタイツ、黒のスニーカー
ドラキュラ用に購入したのだ
いつもの公園なのに落ち着かないのか辺りを仕切に見渡していた
それもそのはず、あたりにはレイドに参加しようと集まったドラキュラユーザーで埋めつくされていた
スーツ姿のサラリーマン、おそらく専業主婦、親に連れられてきた中学生
年齢性別バラバラ、人で溢れかえっていた
この公園にこんなに人がいるなんて
真新しい物でもみたような新鮮な気持ちになった
そろそろ始まる時間なのでレイド参加申請をしようと動こうと思ったら
公園内に太い芯のある声が響く
「レイドに参加する人集まってー」
その声の方を向くと長身のガタイの良いサラリーマンが周辺のプレイヤーに声をかけていた
背広はぬいでワイシャツすがた第二ボタンまで外され腕まくりしていた
すると、今まで各々で談笑したり装備確認していた人達が吸い寄せられるようにその声の方に行くのだ
ダイヤもその流れにのってついて行く
一箇所にプレイヤーが集まると堅いの良い男性は、辺りを見渡してこれ以上増えないことを確認するとプレイヤーの人数を数えだした
「1、2、3、4・・・・17、18、19人いるな、それじゃあ上限10人なので10人9人に分かれて2ルーム作りましょう」
そう言われてレイドに参加するプレイヤーは、二手にわかれた
ルームとは、一度に参加出来るレイドの人数に制限あるので、上限人数まで分けた塊の値である
ルームから代表者を決めてルームでのレイド参加申請を行う
自分が参加するルームの申請募集場所が出来ると皆次々と入っていった
ダイヤも右に習えで申請を済ませて装備確認する
「君新規プレイヤー」
急に肩に手を当てられ声をかけられる
ビクってなって声の方を向くと
さっき前で仕切っていた堅いの良い男性が隣に立っていた
「あっはい
グループレイド初めてです」
「ははは!そんな固くならなくても大丈夫
ミスしてもカバーするから」
窮鼠以来何回かレイドをこなしたが、日が沈んでからレイドをしたり、ルームでのレイドなんて初めてで、それを言い当てられた様な気がして動揺を隠せないでいた
どうして新規ったわかったんだろうか
身なりは、皆と同じスポーツウェアだしやっぱり立ち居振る舞いで素人丸出しだったのかな
「あー、えっとね
仕草もそうなんだけど、ここの人達皆顔馴染みなんだ
だから新顔がいると直ぐにわかるんだ
特に、君みたいな新規はね」
「マジか!
あっすいません」
「ハハハ!いいよいいよマジかで
そうだ!ユリちゃん」
そう言って前の方に並んでいた自分と同じ位の年齢の女性を呼んだ
「何〜クラタさん」
ユリと呼ばれたボーイッシュの彼女は、振り返りながらクラタと言う堅いの良い男性を見た
ビックサイズの白いTシャツに下にはグレーのタンクトップが透けている、水色のカラーパンツ、水色ベースのカラフルなスニーカー
オシャレさんだった
「新規の子にいつもの見せてあげてよ!」
「ゲェ!またぁー」
「頼むよ!」
「たく!今度奢ってよね」
「あの、いつものって?」
会話の内容がわからず尋ねる
「まぁみてなって」
そういってクラタは笑った
レイドの開始時間が来る
3、2、1、GO!!!
赤いGOの文字が視野に飛び込み
窮鼠の時と同じ様に光の柱が立ち上がりモンスターが出てくる
ダイヤと同じくらいの身長の歩く骨スカルがガシャガシャと自分の身体の骨を鳴らしながら近づいてくる
骨と骨の接している面が緩いのか歩くたびに揺れぶつかり合っていた
その様は、押し扉を開けた時になる呼び鈴の鈴の様だった
「なぁ、新規君」
「あっ!ダイヤです」
「そうかダイヤ、スカルを倒すセオリーってわかるか?」
スカルを観察していたダイヤにクラタは尋ねた
「頭を飛ばすんですよね!その後背後から袋叩きって攻略サイトに書いてありました」
「その通り」
そうクラタが言うか言わないか位で歓声が上がる
早速スカルの頭を飛ばしたのだろ一体無くなっている
しかし、ダイヤは首を傾げた
なぜこんな明後日の場所に転がっているのか?
ほとんどのプレイヤーは動いていない
動かなくていいのか辺りを見渡すとスカルが一箇所に集まり出した、その場所には煙が立ち上がっている
お香だ!
一定時間モンスターを惹きつけて気を逸らすのである
でも何のためにっておもうや否やスカルの影から人影が現れてスカルの頭を吹き飛ばした
ユリであった
右手には、メイスが握られ片手でフルスイングとばりに盛大にスカルのあたまを飛ばす
その度に周りは、歓声を上げ盛り上がった
ドラキュラの武器は、近距離武器が基本である
魔法は、実装されていなくてダメージ与えるのは物理的な攻撃のみである
武器の種類も豊富で
刀剣、大剣、双剣、斧、ランス、メイス、ハンマー、槍などダイヤが把握出来てるだけでもそこそこある
頭を無くしたスカルは、その場で腕を交互に上下に振りながら左右に体を振る
その様は不恰好に踊っているみたいで無様だった
ダイヤも皆もそれを見て笑った
レイドが終わり団欒とした時間が流れる
談笑する人、次のレイドに行く人、エンカウントしてバトル始める人様々だ
ダイヤと言うとクラタに話かけられていた
「ダイヤ良かったらフレドにならないか」
「フレドですか」
ちょっと引き気味に答える
「あぁ、フレドになるとチャットで会話出来るからレイドやる時お互いに誘えるだろ」
「そう言うことならいいですよ」
仕方ないと言った感じに答える
「ユリちゃんもフレドにさせてもらったら、この時間帯に誘える歳の近い子なんて珍しいんだから」
「初期武器使ってる素人なんてヤダ!」
ユリは、クラタの誘いをスパッと切り伏せた
クラタは、またーと言った顔をして
ダイヤは、はははと苦笑いした
ガラスで覆われた部屋、温室の天窓から太陽が降り注ぐ気温湿度が調整され所狭しと置かれた植物が行手を阻む
カタっとプランターを置く音が室内に響き
その音に引きずられる様にため息をもらした
「聞かなきゃよかった」
昨日、ホカゲさんから聞いた話を思い出す
レイドが終わり他のプレイヤーと談笑していたら、ホカゲさんが話があると呼ぶのだ
どうしたんだろと思い話を聞いてみると、初期武器君が脅されていたと言うのだ
しかも話の内容が、万引きの証拠を押さえたからとの事だった
まさに身から出た錆状態である
「イヤイヤ、私に関係ないし」
そう言って室内にある冷蔵庫から缶コーヒーを取り出すと休憩のために外に出た
温室の隣りに立つコンクリートで出来た大きな建物の方に足を運んだ
ここは、ホームセンターが運営していて年中問わず観葉植物や季節野菜の苗が用意されていた
ホームセンターの裏側には休憩スペースが設けられていてそちらに足を延ばす
半分くらい進んだ辺りでユリは、スマホを取り出した
「クラタさん怨みますからね」
そう呟くとドラキュラを起動してフレドリストを開くのであった
平日の昼間、空は曇りどんよりしていた
スラックスにワイシャツという制服姿でダイヤは友人と教室に入った
友人は、じゃあーって軽く挨拶をしていつもつるんでるグループに加わる
軽く手を上げて返答して自分も席につく
そんな様子を見てクスクス笑う他の男子生徒
ダイヤは、頼まれて連れションに行ってきたのだ
親しいわけでも無いのに連れションに行くなんてと周りの連中はバカにしてるのか、頼まれれば誰とでも行くんじゃねなんて話してんだろ
そんな事が頭をよぎるが今は、そんな事気にしてるわけにいかなかった
壁の時計に目をやる約束の時間まで後わずか
右ポッケに手をやる
カードの四角い感触を確かめる
行くか
席を立ち、していの場所に向けて足を運んだ
学校の体育館裏ダイヤの教室からそんなにかからず到着する
「おせーよ」
奴はすでに待っていた
ダイヤと同じ制服を着て頬がこけた短髪の男
「約束の、時間までまだあるけど」
「いいから早く出せよ」
上からものを言われムッとするがここは押さえてカードを出すのであった
男は、奪い取るように乱暴にダイヤの手から受け取るとすかさずカードを見た
顔から目が飛び出すんじゃ無いかとばかりに剥き出し、くいるように見入っていた
「ハハハハハハ・・・・・」
高らかに笑いだす
「万引きした武器使ってないから人に見せれない物だと思ったけどURって」
血塊のウエハース
で手に入る武器には、レアリティがある、R、SR、SSRそしてURである
RやSRは、沢山出るがSSRは、1%の確率だと言われている、URに関しては都市伝説と言われており、実際に出した人の話だと0.05%だとか
一個三百円のウエハース100個でSSR1個
URだと2000個と言う計算になる、これを日本円にするとSSR3万円、UR60万円になる
とてもじゃないが現実的だと思えなかった
男はすかさずカードに書かれているコードをスマホのカメラで読み取るとリアライズと叫んだ
しかし、おかしな事に声がダブって聞こえた
アレって思うが光の球体が現れ流体のように形をとっていく、光が収まり武器が姿を現す
グリップ、ガード、刃渡り100センチはある片刃
日本刀があった、いやよくみるとグリップの部分が西洋式になっている軍刀だ
そして、それはダイヤの目の前にある
なぜお前の前にと言おうとした時、ダイヤが軍刀をとり切りかかってきた、距離が近いので対応に遅れる
男は、斬られる、斬られる、斬られる、切られる、キラレル、きられる・・・
斬られるたびに何も起きない、グローブをつけてないので振動もない、そもそもCGだから直接被害なんて無いのだ
でも最初の一太刀は本当に斬られると思って後退りしたし何より優位に立ってると思ってた相手に出し抜かれたのがたまらず我慢できなかった
「お前、自分の立場わかってんのか!!!!」
男は、斬られながら叫んだ
「分かって無いのあんたよ」
背後から声がするので振り返る、ダイヤもそこで斬るのをやめて視線をそちらにやった
女がいた学校の制服を崩して着ている、スカートの丈は膝上だしワイシャツの袖はまくってありボタンは、第二ボタンまで外してゴムのリボンは首にぶら下げてあるボーイッシュの女の子
そんな彼女の手にはスマホがあり画面を皆に見えるように向けて持っていた
画面には、画像がでている
「あんた、コイツの万引きの証拠ばら撒いてみなさいそしたら、芋づる式に共犯になるようにあんたがカード受け取ってる動画もばら撒くから」
画像は、動画であった
そして、証拠であった
急な展開が続き主導権を完全に失った男は動揺を隠せない
ダイヤとユリを交互に見るが堂々とたつ2人につけ入る隙がないとわかると
クソっと捨て台詞を一言いって走りさっていった
男が走り去って小さくなる背中を見ながら視野の端にいるユリに眼を向ける
フレドチャットで呼び出されて万引きの件で大目玉をくらった時はこの世の最後を覚悟したが、あんた舐められたまま終わっていいのかと尻をたたかれるとは思わなかった
気の強い人なんだなって彼女を眺めていると気付いたのかこちらを振り向く
「何よ」
「なんでも」
そう言って背を向けて歩み出す
「どこ行くの?」
立ち止まり首だけで振り返る
「コンビニ!」
そしてまた歩き出す
ユリは、ニコっと笑った
「私ガリガリくんね」
そう言って後を追うのであった
日が沈みグラデーションが青からオレンジへと移り始めた頃、声が響く
「また飛び上がったぞ!」
地上から高さ3メートルくらいの高さに灰色のコンクリートのような肌で翼を携えた鬼がいた
ガーゴイルである、本来雨樋の機能を持つ怪物をかたどった彫刻を指すのだが、ファンタジーの世界では彫刻の怪物がガーゴイルと呼ばれるようになっていた
CGとはいえ石で出来ていいて重いはずなのに、翼を一定のリズムで動かし軽やかなバサバサって音を辺りに響かせ空中で胡座をして頬杖までしている
まるでプレイヤーが前にいても問題ないですと言わんばかりの態度である
ガーゴイルが体勢を変える
「くるぞ!」
誰かが叫んだ
それがいい終わるかどうかのタイミングで急降下しプレイヤーの間を通り抜ける
その時尖った爪で引っ掻いていく
引っ掻かれたプレイヤーはHPを減らす
「くっそ!一撃が地味にきつい!」
ガーゴイルは、通り抜けたあと少し先で止まり武器が届く低いところを浮遊しながら回遊し始めた
「チャンスだ!攻撃!攻撃!」
周りから声がとぶ
しかし
「あっ!」
ガーゴイルは、プレイヤーに背中かを向けてモザイクがかかったように見えにくくなったかと思うとぱっと消え去ってしまった
「あぁー」
プレイヤーと周囲の人間皆ガックシするのであった
ダイヤは、彼ガーゴイル初めてなんだなと思いながら特に何もしないで黙っていた
「ガーゴイルむず、さすがレアモンスター」
ガーゴイル討伐に失敗した彼がダイヤ達の方にやって来て座る
平原に隣接された駐車場の端で座っていた
ここは、いつもレイドを行う公園からだいぶ離れた街を見下ろせる場所だ
平原と駐車場は、段差があり階段を数段登って平原に入るしようになっていた
ダイヤ達は、その段差のある平原の端に座っていたのだ
服装は、学校の制服で学校の帰り際にクラスの友人と足を伸ばしたのである
センター分けの友人が言う
「本当に今ガーゴイルの巣になってたな
エンカウトしたらラッキーレベルなのに、一定間隔で出てくるな」
「これみんドラじゃなくて2チャンネルの情報なんだろ」
さっきまでガーゴイルと戦ってたショートヘアの友人がそう言いながら情報提供してくれたツーブロの友人の方を見る
「ん⁉︎」
ダイヤも釣られて彼の方をみるのだが、彼は目線を落とし顎に指を当てている
まるで探偵のようなポーズである
考え込んでいたと思ったらフト視線を上げて唇を切る
「なあ、魔王っていると思うか?」
「はぁ⁉︎」
「何いってんの」
黙るダイヤ
各々が一斉にツッコミを入れた
ツーブロの彼は続ける
「いや、ガーゴイルの件と同時に盛り上がってたんだけど
魔王と戦ったって人がいるんだ」
「戦ったって!魔王倒したらこのゲーム終わりだけど」
センター分けが反応する
「っていうか、実装されたなんて聞いた事ないけど?」
ショートヘアが付け足す
「だよなー
だけど生々しかったんだよ」
「ネタじゃね!」
ようやくダイヤが口を開く
友人2人も頷く
「やっぱりそうか」
っと答えるが納得してないようでまた視線を落とし唇を噛みながら考察をするのであった
「んっで私を引っ張り出したと」
艶のある唇が動く
「気になって2チャンネル覗いたらソイツの言うとうり生々しいんだよ
しかも、魔法まで使ったって書いてあってさ
気になるじゃん」
ダイヤが説明する
「あんたもこの一年でガチ勢に育ったよね」
呆れたって顔をしながら首を少しかしげた
髪が短くて露わになっている耳に光る物が見える
「お前もだろ」
ダイヤはすかさずツッコむ
「私は、今年から受験だから少し減らすわよ」
水色でノースリーブのワンピースの少女が答えた
「えっ!うそ!」
素で困るって顔をする
真顔で受けるユリ
「それにしても魔法は嘘でしょ」
「それも含めて確認したいんだ、2チャンネルでも皆から聞かれてたけどそこだけ頑なに口を閉ざしてるんだよ」
「ふ〜ん、でここで何するの?」
どうでもいいけどって反応をしながら指示を求めた
辺りを見渡す
一通り見渡すとダイヤは言う
「とりあえず注文しようぜ」
そこで初めて二人は、メニューを手に取るのであった
二人は、コラボカフェに来ていた
白を基調にした空間、テーブル、イス、物販の棚まで流線的なデザイン
空間を照らすのは間接照明、メニュー表はタブレットと至る所まで近未来的である
このカフェは、原作で魔王ロードが宇宙から来る時乗って来た宇宙船を再現した物で
その内部の一部を再現しているのだ
ファンタジーにSFを違和感なく持ち込むところ当時のプロデューサーは相当やり手で子供達は、どんだけワクワクしたのだろうか
十数分まって料理が運ばれてくる
「かわいい」
っと落ち着いた声で言うユリ
「意外とボリュームあるんだな」
っとコメントするダイヤ
ユリの前に運ばれたのは、幸福の大地と名付けられたパンケーキ、大陸をモチーフにしたパンケーキはメレンゲをふんだんに使用した大きくてフワッフワな生地、その上にシュガーアートやチョコレートで作られたキャラクターや建物が所狭しと散りばめられ大陸はとても賑やかである
それとは別の器には、プレゼントギフトの形をしたバターにハチミツ
それをパンケーキの上に乗せて甘々にして食べる甘党殺しの一品だ
ダイヤのは打って変わって深めの器に盛られたカレーライス、しかしそのルーは緑色で、原作での難所底なし沼を再現していた
餌食になった人やモンスターは数知れず、残骸をもした人参やジャガイモが浮いていた
ご飯の方には歴戦の戦士達が散っていた武器等お肉などで地面に突き立てられた墓場が作られていてその名は、挑戦者達と付けられていた
スマホでインスタ用の写真を何回か格闘しながら撮るユリ
その様子を眺めて待つダイヤ、口の中はカレーを受け入れたくて唾まみれである
「よし、撮れた」
と言う終わりの声を聞くや
いただきますと手お合わせてそそくさとカレーを口に運び出した
グリンカレーなのでヘルシーそうに見えて辛い、しかし二口三口とスプーンが止まらない
「これ無限にいけるやつだ」
誰も取らないから落ち着いて食べなさいよ
そう言いながらパンケーキをパクっと食べる
甘いしかし、バターがいい塩加減になっているしシュガーアート等はそこまで甘く無い
しっかりバランスがとらえているのであった
食事を終えて窮鼠型のマグカップでコーヒーを飲む
「ふー」
っと一息つくと行くかって立ち上がった
ユリも釣られて立ち上がるがダイヤが向かう先はレジではなかった
反対方に歩き始めたと思ったら、見知らぬ男性が座る一人席で立ち止まったかと思いきや話しかけ出したのである
驚くユリ慌てて静止しようと近づく
相手の男性も驚いた様な顔をしていた、が納得したと言う様な顔に変わった
「なるほど2ちゃんねる遡ったのか」
話しかけられた男性は言う
「はい」
キレのある返事をする
2ちゃんねるを遡って魔王と戦ったって男性を特定したのだ
いったいどれだけのチャットを読み返したのか
ユリは呆れたって顔をした
「魔王についてなら、ちゃんねるに書いてある通りさ」
「そうですよね、凄い具体的に書いてあったから新しい情報は得られないかなと俺も思ってます
ただ、魔王に会う為に何かしませんでしたか?」
「会うために?」
確かに魔王との戦闘について具体的に書いてあったが、その前後には触れらておらずどう言った経緯で戦ったのか不明だったのだ
「う〜ん、俺もよく分からないんだよね
気がついたら招待状が来てて」
「招待状!」
あー、魔王に指定の場所に呼び出されたんだ
そんな事あるのかと驚いていると
「やっぱあれかな」
っと徐に心辺りをはなしだすのであった
「こんにちは、今日もいい天気ね」
ボロボロの布で身を纏った女の人が発する
外人の様に色白で鼻が高いが、日本人のように黒髪で何よりりゅうちょうな日本語だった
ダイヤは、目を棒にして項垂れだ
「何回目だよこのセリフ」
「もう数えるのやめちゃたわよ」
ユリも疲れたように肩を落とした
二人は、コラボカフェを出て街へ繰り出していた
街中には、大小様々な電気店、キャラクターグッズ専門店、メイドカフェが立ち並びコスプレした人やキャラクターグッズで身を纏った人など様々な人が行き交っていた
そんな中で彼女は道端で突っ立っていた
誰かを待つわけでもなくただただ立ち尽くす
彼女はNPCであった
NPC、ノンプレイヤーキャラクター、つまりゲーム上でプレイヤーが操作しない存在
あらかじめ決められた行動パターンとテキストを用意されていてそれをランダムに行う
身に纏っている物を除けば、一般人と見分けが出来ず、待ち合わせしてる人にしか見えない、なので一目でゲームのキャラクターとわかる様に頭の少し上に青いアイコンが浮かび上がっていた
二人がなぜNPCに話しかけているのかと言うと、カフェで知り合った男がルーティンにしていたからである
このアキバの街に来るたびに推しである彼女に話しかけているらしい
「NPCに話しかけるなんてあの人も変わってるよな」
「そうね、実装当初は皆面白がって話しかけてたけど同じ事しか言わないから今じゃ置物状態よね」
そんな会話をしながらメニュー画面を開く
メールは届いてないし、何も変化が起きていない
これで何も起きなきゃ変えるかって思いながら再度話しかける
「街まで荷運びご苦労様、今日は街道混んでたでしょ」
やっぱりって顔をしながらユリの方を見ようとするが、視野の端に違和感を覚えてもう一度よくNPCを見た
青いアイコンの下にツヅキと出ているのである
びっくりして凝視し手をかざしてシンクロさせたところ
「姪っ子が誕生日でプレゼントとしてアクセサリーを贈りたいの、でも素材が足りなくてこまっていたの、あなた取ってきてくれないかしら?」
「これって」
ユリが反応する
「あー、お使いクエスト!」
ダイヤが肯定するように答えた
これが魔王からの招待状に関係あるか分からなかったが、二人はこのクエストを受けることにした
「じゃあ俺、こっちのエリア行ってみるから」
「わかった、後で連絡取り合いましょ」
そう言って別れて歩き出そうとした時
「ユリ!」
ダイヤが呼び止める
「何?」
「あーえっと」
少しいいにくそうにしている
「何よ!」
「付き合わせた上に歩かせて何だけど、お前パンプスなんだから無理すんなよ」
ユリの足元は、ベージュのパンプスを纏っていた
一瞬、えっと驚いたが直ぐに反応して
「分かってんだったら歩かせんなっつーの」
そう答えてイーと歯を見せるのであった
ダイヤは歩く、秋葉原の電気街を離れて閑静な住宅街へと足を伸ばしてひたすら歩く、ピコン、エンカウントした音が聞こえる辺りを見渡すがモンスターがいない
「あれ⁉︎」
このゲームでは、半径10メートル以内のモンスターが視認できるようになっているのだが、いない
少し辺りを見渡して視認しようと動く
電信柱を超えた時急に飛び出てきて切り付けられた
HPが減る、電信柱と一体化していて気づかなかったのだ、そのモンスターはトカゲの頭を持ち爬虫類の鱗に覆われた二足歩行する長身のモンスター、リザードマンである
手には剣を持ち身体には、簡易だが胸当て等している
「しくった」
リザードマンはプレイヤーがある程度の距離に近づくと接近して纏わりつく
一度纏わりつかれるとしつこいので嫌がるプレイヤーも多いのだ
慌てて距離を取って体勢を立て直そうとするがリザードマンは離れない
バックステップでリザードマンの太刀を避けているとピコンピコンピコンと立て続けにエンカウントした
はあー!このタイミングで!
赤い色の窮鼠、レッドマウスである
元の窮鼠より俊敏で攻撃力が高い上下互換である
レッドマウスは、ダイヤに突っ込んでくる
攻撃範囲にくるとレッドマウスが三匹同時に飛びかかってくる
ダイヤはリザードマンの攻撃をかわして跳び前転で三匹の攻撃を交わし、リアライズした
しゃがんだ状態から横にターンしながら立ち上がり三匹に攻撃を入れHPをゼロにする
すかさずリザードマンに軍刀で突き刺し倒すのであった
HPがゼロとなったモンスターは無数のキューブとなって霧散していく
ダイヤは、辺りを見渡して車が来て無い事を確認する
ふうー交通量が少ない場所でよかった
道でエンカウントしバトルを始めると通行の邪魔になったり勢い余って車道に飛び出す可能性があるため、一定数モンスターを保持できるスキップ機能を使用するのが定番である、歩いてる間はこの機能を使って戦える場所に移動してプレイをする、それだとレイドと変わらないだろってなるがそこはやり手の運営、エンカウントとレイドで戦えるモンスターを分けている、防具を作るための素材も違うので何を作るかによって遊び方が変わるのであった
跳び前転をしたときに着ている白いTシャツやチノパンは、砂まみれになったがスイッチの入ったダイヤは服の事など後回しになってしまうことなど多々だ
砂まみれになった自分を見て、またやっちまったと思いながら砂を払っていたら、靴が目に入る黒のNIKEのAIRだが靴紐が解けている
結び直そうとしゃがむと、ゴツんと後頭部に固い物が激突した音が鳴り響く
後頭部を押さえながら後ろを振り向くと、紫の馬の尻尾があった
いや、ポニーテールの女の子がいた
小学生だろうか、前頭部を押さえながらうずくまっているが、背はダイヤの胸ぐらいで黒のオーバーオールに髪と同じ色の紫のTシャツを着て足元は、白のキャンパススニーカーであった
「捕まえた」
彼女はダイヤの服を掴み前頭部を押さえてそう言う
その声は、本当に小学生かと疑いたくなるほど落ち着いて艶のある大人の女性の声だった
住宅街を直向きに歩く影が3つ
出会った少女を先頭に後ろをダイヤに合流したユリである
「ねえ、いまいち状況掴めないんだけど」
ユリが説明をもとめた
ダイヤがユリを見て顎に手を当てて脳の中を整理するように話し出す
「さっきも言ったけどフィールドボスがこの近くにいるらしいんだ」
「それよそれ、聞いた事ないのよこんな所にボスがいるなんて」
ユリが人差し指で空を指す様に何度も揺らす
「俺も最初驚いたけど、お使いクエストのレア枠ボスなら確定で落ちるから確認する価値あると思うんだ」
「確かにそうだけど」
ユリは腑に落ちないって顔をする
「ハートュンドラゴン」
先頭を歩いていた少女が割り込むように発した
「ハートュンドラゴン⁉︎」
ダイヤが確かめるように繰り返す
「そお、フィールドボスってイベント中、期間限定で指定されたボスが特定の場所に出現するでしょ、でも奴はイベントなんて関係なくずっと鎮座してるの」
「常設化してるってこと」
ユリが言う
「うん」
少女が頷く
ユリとダイヤはそんな事あり得るのかと顔を見合った
それから少しの間、黙々と歩いていると少女の足が止まる
「リオちゃんどうした」
急に止まったのでダイヤが気にして声をかける
「ここよ」
リオと呼ばれた少女は、そう言って指を指した
ボサボサの垣根がズラッと連なっている、目の先に鉄の扉がある
「こっち」
そう言ってリオは鍵を取り出して鉄で出来た大きな扉を開けた、中に入ると敷地は広く建物まで距離があれど大きいと言う事が離れていてもよく分かった
日焼けしてオレンジ色になったレンガが規則正しく積み重ねられている
戦争があった時代に武器等を作った工場を改修工事して残されていた
敷地内は至る所に植物が植えられている
目隠し用の垣根は手入れされていないのかボサボサでところどころに設けられている花壇は、植えられていなかったり枯れて荒れ果てていた
ユリはそんな植物たちを見て表情を曇らせた
リオはためらいもなく歩始める
後を追うようにダイヤ、ユリが後に続く
「なんだろう、荒れ果ててんな」
「ほんと、レイドは公共の場所に設置されるはずなんだけどここは人の手が入らなくなってだいぶ経つ見たい」
ユリも続く
「ここは元々お父さんが管理していた場所なのよ」
リオが答えを与える
「していたって過去形だよな」
「私達の所有物だったのよ、私もお父さんもここ好きで良く一緒に遊んだの
でも、お父さんが病気で死んでから親戚が管理してたんだけど放置されちゃて最近ようやく鍵を手に入れたの」
リオの表情からは感情が読み取れない
今、何を考えているのだろうか
ただ、その視線の先にはドラゴンがいた
ダイヤも視線をドラゴンにやる中央を陣取り我が物顔で立ちはだかるそのなりは、東洋の龍と言うよりも肉食恐竜に近い
肌は岩のようにゴツゴツしていて所々浮き出た血管が脈を打つ様にドクっドクって時を刻む
手をかざしてシンクロする、ドラゴンに関するデータが出る
ドロップアイテムを確認する、ダークマター
の名を発見する
「やっぱあったな、低ランクモンスターからドロップさせるよりいいと思うんだけど」
横目でユリを見る
「はぁー、あんたハートュンドラゴンと戦いたいんでしょ」
ユリは目を細めてダイヤを見た表情から本音を読み取ろうとする
「そんなことねーよ」
とイヤイヤと対応しながらリオを見た
彼女は今何を考えているのだろうか、どれだけの思いを胸にこの場に立っているのだろうか
ダイヤには、とても想像が出来なかった
ダイヤは、リオから目線をずらしハートュンドラゴンをみる
「人を集めよう」
ダイヤは覚悟を決めたかのように呟いた
「お帰りなさい、遅かったのね」
パーマのかかった髪の長い女性母がリオを出迎える、白のワンピースがよく似合う
ただいまと簡単に挨拶して2階の自分の部屋に行こうとする
「またあそこにいってたの!?」
そっけなく立ち去ろうとする時は大抵聞かれたくない時だ
落ち着いた艶のある声
リオの声は母親譲りなのだろう
「悪い」
リオは背中を見せたまま答える、その声は落ち着いて艶があるが何処か拒絶しているようだ
「あそこに行くのはもう辞めて、お父さんが帰ってくるわけじゃないし、お父さんがあそこにいるわけじゃないでしよ」
・・・ない
「えっ?」
リオが何か言ったのだろうか聞き取れない
彼女が聞き取ろうと前のめりなのなった瞬間
「そんな事ない!!」
拳をつくり全身で否定すると階段を駆け上がって行った
黒い部屋、紫で統一されたデスクや椅子
そんなかで唯一白いベットの上で彼女はクッションを抱えていた
ふとデスクの上の写真立てに目をやる
髭を生やした大柄の男性が小さい女の子を抱っこして笑っていた
背景はハートュンドラゴンがいたレンガ造りの建物
花壇には多くの花が顔を輝かせている
さっきと同じ場所かと疑いたくなるレベルである
「お父さん私負けないから」
リオはクッションを強く掴んだ
後日ダイヤ、ユリ、リオを含む九人のプレイヤーが集まった
性別年齢はバラバラしかし皆ガチプレイヤーなのは間違いない
「クラタさんありがとうぞざいます」
ダイヤはお礼を言った
「何、気にすんなっていつもやってる事だから」
クラタは、いいからいいからと手を挙げて答える
「クラタさんの人望合ってですよ、俺じゃこうはいかなかった」
「ダイヤ、お前」
クラタは何かいいかけてやめる
「円陣でも組むか!」
クラタが提案する
リオを中心に輪を作る、リオは学校の体操着で身を包み胸元にはリオとデカデカと書いてあった
輪を作ったプレイヤーは、膝に手をやり前屈みになる
クラタが発する
「皆んなよく集まってくれた、未知のボスに屈せないその強さに感謝する、いつもなら楽しくプレイしようって言うところだけど
今回は、この場所を取り戻す皆力を貸してくれ」
ここでクラタは、ダイヤを見た
「ダイヤ!最後決めろ」
「えっ!」
ダイヤが急なフリに動揺する
「しっかりしないよ」
ユリに喝を入れられる
すーハァー、深呼吸をする何も思いつかない
ええい、当たって砕けろ
「言う事は一つだけ、勝とう!!!」
「オーーーー!」
ダイヤの掛け声に周りが答える
ダイヤは、ハートュンドラゴンの前に立つ
デカイ!3メートルはある身長ゴツゴツした岩の様な皮膚が威圧感を感じる
しかし、怖気付くわけにいかない
リアライズし皆がポジションに付いたのを確認し手を挙げシンクロさせてスワイプした
カウントダウンが始まる
5、4、数が減るにつれて心臓が高まる
2、1、GO!!!!!
固まった
その場にいた9人全員が頭上を見上げる
開始と同時にハートュンドラゴンは空高く跳びはねた
頂点に達すると身体を丸める、まるで大きな岩そのものだ
その岩は、重力を得て急落下を始める
その瞬間我に帰ったダイヤが叫ぶ
「散会!!!!」
その声に皆慌ててその場を離れた
ズドォーーーー
岩が落ちて砂煙の演出が起きバイブグローブが振動してHPが減る衝撃波によるダメージが入ったのであった
「ポーション!!」
岩に比較的近くにいた何人かがそう叫ぶ
岩との距離が近ければ近いほど衝撃波のダメージが入るらしい
後方でサポートにてっしているリオがビンに入ったポーションを手に走り出す、ある程度プレイヤーに近づくと力いっぱい投げるのであった
ポーションは、プレイヤー達の手前で落ちてバリンと地面に当たってビンが割れる
ビンの中身は手に持っていた時の3倍ぐらいの量があるんじゃないかと思われる緑の液体が飛び散り光出した、ヒーリングゾーンである
ダメージを受けたプレイヤー達は次々とそのヒーリングゾーンの中に入っていて静止すると少しずつだがHPが回復しだすのであった
ハートュンドラゴンは、岩から恐竜に戻ると大きな顔を大胆に左右に振ってプレイヤーを振り払った、岩が落ちた後軽傷だったプレイヤーが直ぐに駆けつけてHPを削っていた
ハートュンドラゴンは走り出し手当たり次第頭からプレイヤーに突進をしだした、大抵の人は避けて被害を回避するが攻撃が出来ない、なので武器を盾の様にかざして受け止めようとするが止める事ができずハートュンドラゴンがドガンって効果音と共に頭から通過していく
クラタの指示が飛ぶ
「誰かドラゴンの足止めをしてくれ
止まったらハンマーで殴る」
HPが半分以上ある人が交互に敢えて突進を受ける
ドガンって音の後少し走って静止した
「今だ!」
クラタがそう言ってドラゴンのHPを削る
クラタは、大きなハンマーで力いっぱい頭をドゴドゴ殴り
ダイヤやユリは足元を攻撃、他のプレイヤーも彼らに続いた、胴体、尻尾と弱点もしくは部位破壊をして動きを鈍らせようと攻撃しながら糸口を探す
このやりとりが何回か繰り返し無我夢中でクラタが頭部を殴っていたらヒットした瞬間無数の星が飛び散った
クラタはすかさず
スタンって叫んだ、ハートュンドラゴンは足元をふらつかせながらその場に静止している
クラタの声を聞いたヒーリングゾーンにいる者は、その場を離れて一目散にハートュンドラゴンめがけて走り出し、攻撃して削っていた者は手を止めて構え直しカウントが始まる
「スリー、ツー、ワン、スラッシュ!!!!」
スラッシュと言う言葉に反応して武器は白く光出した
バフがかかったのだ
バフの乗った武器がハートュンドラゴン目掛けて同時に振り下ろされた
どゴォーーーーーーーーん!!!!!!
岩が急落下した時ににたような重低音の音が辺りに響いた、バフの乗った同時攻撃によるエクストラダメージが入ったのであるハートュンドラゴンのHPは大幅に削れた
しかし、皆はここで手を止めたりしないスタンが入ってる間に削れるだけ削ろうと一心不乱に武器を振るう
ハートュンドラゴンは、スタンが解けたのかふらついていた足元が元に戻ったかと思えばすぐさま攻撃に入った、頭と尻尾をピンっとさせて360度回転し出した、ダイヤは軍刀を盾に受け流そうと咄嗟に構えたが尻尾が軍刀に触れた瞬間バイブグローブが強振動をしだした
ダイヤは反射的に後方に飛ぶが勢い余ってバランスを崩し後転する様な形になってしまった、他のプレイヤーはハートュンドラゴンを囲む様にしていたので急な回転に対応できずダメージを受けてしまう
ダイヤは軍刀の耐久値を見た10分の1まで減っていたしHPも少し減っていた
「この攻撃まずいは」
ユリが皆にHP確認を促し体勢を取り直そうとした時、ハートュンドラゴンは空高く跳び上がった
それを見たプレイヤー達は次々に散会っと叫びながら駆け足でその場を離れる、HPが8割近く削られた人もいるこの状況での岩の落下は確実にゲームオーバーになる、できるだけ距離を取らねば
リオはありったけのポーションを手に持ちかけ出したそしてできるだけハートュンドラゴンから離れた場所にヒーリングゾーンをつくり皆を誘導する、岩が落下し砂煙起きて衝撃波が来たことをバイブグローブが告げる
皆はヒーリングゾーンに入りながらレイドの残り時間に目をやる30分あった時間が半分以上なくなっていた
「やれるのか?」
「ギリギリじゃね」
って声が飛び交い焦りが見えるなか、更に表情を曇らせることが起きた
ハートュンドラゴンの身体にこぶが4つ出来たのだ最初は五百円だま位の大きさだったが次第に大きくなり小学生のリオ位の大きさになったかと思うとボトボト地面に落ち始めた
そして、鳥が卵を割って生まれてくるようにそのこぶから小型のハートュンドラゴンが生まれたのだ
小型のハートュンドラゴンなは、ロックドラゴン
彼らは、ジワリジワリプレイヤーの方に近づいて来る、皆がヒーリングゾーンから出て戦うか迷っていると
一閃、ダイヤが軍刀を振り回した
「オレ、軽傷なのでコイツら対処します
その内に立て直して!」
そう言ってロックドラゴン達を倒していく
一撃とはいかないが二撃で確実に倒していく、しかしハートュンドラゴンは端からロックドラゴンを生み出した
その様子を見ていたリオが棍棒をリアライズし攻撃に加わるダイヤの様にいかないが10回位ダメージを入れて倒す、私も役に立ってるとリオ自身が確信した時
それを待っていたのか、ハートュンドラゴンがリオの方にかけだして大きな口を開けてリオに噛みついた、まるでスルメでも噛み締めるようにジンワリと噛み締めているようだ
ハートュンドラゴンはCGである、なので噛まれても実際には痛く無いしすり抜けてその場を立ち退く事もできる、強いて言うなら噛まれる時の演出が生々しくて本当に食べられるのではっと錯覚してしまうぐらいだ
しかし、リオは声もあげずその場に立ち尽くしていた、HPはグングン減ってゆく
ヒーリングゾーン内の皆は驚いてリオを呼ぶ、ゾーンを出て駆けつけようとする者が出てこようとした時、リオの腕がスッと上がった
逃げたくない、負けたくない、コイツに弱みを見せたくない
悲鳴もあげず、一歩も引かず両腕でしっかり棍棒を持っている
CGの棍棒を離してたまるかとばかりにギューっと指一本いっぽん噛み締めるようにしっかり握っていったかと思うと唐突に振り下ろされた、音もなく真っ直ぐにためらいもなく
「カエセーーーーーーーーーーー!!!!!」
リオの叫びと共にそれはドォンっと目に直撃し火花が飛び散る、ハートュンドラゴンはぎゃおおおおおおおおおんと悲鳴をあげてリオを離してそしてその場で暴れた、まるで注射が嫌でだだをこねている子供のようだ
タタタタ
ハートュンドラゴンが悲鳴を上げながら暴れる中混じるように足音がする
その足音は近づいてきたかと思うとハートュンドラゴンが暴れて頭を下げた時を見計らって力いっぱい跳び上がった、手に持つ軍刀でダイヤはダメージを受けていないもう片方の目を切り裂いて火花と無数の星が飛び散った
ダイヤは勢い余って地面に転がるが、すぐさま皆に叫ぶように伝える
「スタン!!目だ!!目がウィークポイントだ!!」
皆はダイヤが叫び終わる前に駆け出していた
スタンにより体勢をくずしているハートュンドラゴンに駆け寄ると目に届く距離に位置どりをして構えカウントが始まる
「スリー、ツー、ワンスラッシュ!!!!」
重低音が辺りを包むのであった
レンガ造の建物の広間に倒れ込むプレイヤー達、皆肩で呼吸をしている
ダイヤは火照った身体をコンクリートで冷やすように肌をつける、横目でハートュンドラゴンを見ると奴も横たわり沈黙し無数のキュウブが四散していた
戦いは終わった、最後の数分間はなりふり構わず武器を振った
やはり9人でフィールドボスを討伐しようとするのには無理がある、残り時間30秒を切っていたしハートュンドラゴンも最後の最後まで抵抗した
360度回転する攻撃を乱発し、ロックドラゴンを産み、岩となって再び落下したときは皆ゲームオーバーを覚悟した
ウィークポイントが分からなかったらこの戦い負けていただろう
結果的には5人ゲームオーバーになってしまった、その中にはリオも含まれていた
ポーションがなくなった後ジッと終わるのを待っていられなかった彼女は献身的に棍棒をてに取り巻きであるロックドラゴンを倒して回ったがハートュンドラゴンに噛まれた時のダメージが大きく敵からの攻撃を凌ぎきることができなかった
しかし、奴はハートュンドラゴンは地面に倒れた広場を占拠し我が物顔で鎮座していた奴はもういない
ダイヤは起き上がってメニューを開きドロップアイテムの確認をする
リオは、女の子座りをしながらボーッと四散していくハートュンドラゴンを見つめていた
そこにユリが近づき肩を抱く
リオはユリの顔を見る、ユリは頷く
リオはハートュンドラゴンに視線を戻してまた「四散していくキュウブを見つめた
そんな時ダイヤが近づいてきて彼女の手を取り掌に一つ宝石を載せた
それはCGでできた蛹の形をしたダイヤモンドのような宝石だった
「これだけドロップ欄に載ってなかったんだ」
そうダイヤが言ったかと思うと、宝石は光だし辺りを包んでいった
視野が回復し皆が辺りを見渡すと広場は一面の花畑に包まれていた
色様々な花が顔を並べダイヤ達を歓迎してくれているようだ
ユリが花に触れようと手を伸ばすが透き通ってしまう、やはりこれもCGである
風を吹いてない無いのに花達が揺れたかと思うとレンガ造の建物から人が出て来る
髭を生やした熊の様な大柄の男性とその男性に手を引かれた少女である、彼らもCGなのだろう所々ノイズが入り触れたら消えてしまいそうだ
「お父さん!」
リオは呼ぶように叫んだ
男性がリオの父ならあの少女はリオだろうか
今より幾分か小さく見える
二人は手を繋いだまま花畑を歩き真ん中に来るとリオらしき少女を抱き上げた
「リオ、愛しているよ」
男性はそう一言だけ呟くと花畑が一斉にキュウブになり四散していく
「お父さん」
リオは男性の言葉に答えるように呟いた
キュウブは、リオの言葉を空に届けるようにゆっくりゆっくり登っていく
皆そのキュウブを静かに見つめるのであった
これは後に分かる事なのだがリオの父は、ドラキュラの運営会社ナイトシップの社員で亡くなった彼への運営からの贈り物だったらしい
まったく人騒がせな運営である
ダイヤとユリは、皆と別れハートュンドラゴンを倒した事でドロップしたダークマターとそれまでにドロップさせたアイテムを持ち秋葉腹でまつNPCの所に向かった
「どうもありがとうこれで素敵なアクセサリーができるは」
「・・・ん⁉︎これだけ」
呆気に取られるユリ
ダイヤがメニューを開く魔王から招待のメールは来てない
代わりに新しく絆数値なる物が追加されていた
それを見るとどうやらポイントを一定数貯めないといけないらしい
これが魔王につながっているのか分からなかったが他に手掛かりが無いので二人はこの絆数値を貯める事にするのであった
教室に会話が響き合うなか軽快に扉が開くダイヤは皆に簡易的な挨拶をし鞄を机に置くとそそくさと教室を後にした
廊下を進み階段を降り向かうのは三年の教室である、はやる気持ちを抑えながらも足取りは早い三の一の教室の前に来ると中を見て辺りを見渡しお目当ての人を見つける
「ユリ」
周りに迷惑がかからない位の大きさで彼女を呼ぶ、ユリはムスッとした顔で廊下にで出来る
彼女の目元にはクマが出来ていて目がギラギラに輝いていた
あっ、やば
ダイヤは心の中でそう思ったが呼んでしまった以上もう遅い
「何!」
ユリは語気を強めて問う
あっ、ユリさん今日模試ですか⁉︎
恐る恐る聞いてみる
「よくわかったわね!」
不敵に笑う
ダメだ追い詰められている
「あ、後で何かさしいれするな」
ダイヤは慌てて会話を終わらせる
「そっありがと」
ユリはそう言って教室に戻って行った
タイミング悪すぎた
NPCの元に通いつめ絆数値を貯め、ついに奴から魔王から招待状のメールが届いたのだ、絆数値を貯めるのは間違いではなかった
その事を伝えようにも模試ならそうは行かない
以前模試前に話しかけて怒らせた事があったのだ
こりゃ模試終わった後に話すか
そう頭の中で整理して教室に戻ろうと教室に背を向けて歩出した時、呼び止められた
振り向くとユリが戻ってきていて拳を差し出している
「ん」
っと拳を押し付けてくるので拳の中の物を受け取ると
「じゃ」っとひとこと言って教室にかけて行った
彼女の背中をを見送りながら全身で始業のチャイムを感じていた
次の日、ダイヤは街を見下ろせる平原に隣接された駐車場に来ていた
魔王について聞いたこの場所に呼び出されるなんてこう言うのを運命って言うのかななんって思いながらストレッチをする
屈伸をして伸脚をしながら辺りを見渡す駐車場なのに車は一台も無い、学校には欠席届けを出したゲームを理由で休むなんて言えないので嘘を吐かなきゃいけなかったのは申し訳なかったが無断欠席で後で騒がれるよりましだ、ユリは模試2日目でまだピリピリしているだろうから結局まだ何も伝えてない
そう考えるとどちらにしろ後で何か言われそうだなと思って気が重いのであった
9時、デジタル時計が魔王との約束の時間を告げる、駐車場の真ん中に光の柱が現れ中から黒いフードを被ったローブ姿の人物が現れた
その人物は辺りを見渡しこちらに気がつくとフードを下ろして手招きした
「こんにちは」
誘導されるがまま魔王と思われし人物の所にいくと唐突に挨拶された
「あっこんにちは」
ダイヤも返す
「君が絆数値を貯めた物好きさんかな?」
物好きと言われやっぱりそう思うよねって頭の中で肯定しながら返事する
「うん、じゃー魔王イベント始めるから準備して」
「わるいその前に確認したいんだけど、貴方は魔王なのか?」
さっきから気になっていた疑問を魔王おそらく男性だと思われる金髪でオールバックのダイヤと同じ程度の身長の人物にぶつけた
「そうだよ」
サラリと魔王と認めた
「んっ⁉︎何?魔王ぽくないなぁー何て思ってる?」
魔王は覗き込むように聞いて来る
「イヤイヤそんな事ないけど」
軽い、原作をプレイした事あるけど魔王ロードは正真正銘ドラキュラに置いてのラスボス、その姿喋り方何一つとっても魔王マオウしていた
それにどう言った原理で彼は動いているんだろうか?NPCは基本受動的で自ら話しかけてなんて来ないし、会話が成り立つなんて事ない
でも今目の前にいる魔王ロードはタイムラグ等無しで会話が成立しているのだ、遠隔で運営が操作しているのかとも考えたがそう言ったぎこちなさもない、謎である
考えても仕方ないのでダイヤは、ロードから少し距離をとってリアライズし構える
「それをロードは確認すると手を上げてイベント開始の合図を送る、するとカウントダウンが始まりGOと言うレイドと何一つ変わらない文字が目に飛び込んできた
戦いは始まり刻一刻と時間は経つ、しかしどちらも動かない、どちらも相手の出方を伺っているようだ
魔王ロードは武術家なのか素手と鉤爪で戦うらしいダイヤが構えを変えるたびにファイティングポーズを変える逆にロードが武道家として構えを変えるとダイヤも構えを変えた、先の読み合いが数分続く
「君何か知っているね」
ロードは探りを入れるように声をかけて来る
「知ってるって何をだ」
ダイヤは返す
「例えばこれとか!」
そう言ってロードは構えを解いてラフな姿勢をとると右掌に炎を灯した
ダイヤは目を見張るこれが2チャンネルに詳細は伏せられていた魔法
「ビンゴ!」
そう言ってロードは右手をかざしたかと思えば炎が弾けてダイヤ目掛けて飛んできた
ロードの右手から放たれる無数の炎がダイヤを襲う、最初こそ炎に対する恐怖から大袈裟な反応して無駄な動きが多かったがネタさえ分かれば対応できる、要はこれもCGなのだ
見た目は本物の炎にしか見えないが肌を炎に近づけて見れば分かる熱く無いのだ、CG映像だから熱くないし実際に燃えない、これがダイヤが数分観察した答えだ
ダイヤは逃げるのをやめてユックリ歩を進めてロードとの距離を縮め出した、飛んでくる炎は身体を捻って最低限の動きで回避する
軍刀の間合いに入ったので切り掛かるがバックステップで簡単に避けられてしまう
追撃を繰り出すが相手は武道家、手につけた鉤爪で上手に受け流されてカウンターをもらいバイブグローブが弱振動をしてしらせる
しかし、そんな事は知ったこっちゃないとばかりに手数を増やして更に攻めると次第にロードは捌ききれなくなりダイヤの一振りがロードを捉えようとした時、地面から火柱が上がった
ビックリして下がったかと思えば火柱が次々とダイヤを覆うように上がり炎の壁へと変わり果てた
半径3メートル程だろうか建物の2階程まであがる炎の壁に八方塞がれてしまったがやはり熱は感じないし、何か燃えているなら上がるはずの煙すら上がらない
「こんなの惑わしだ」
そう言ってダイヤはダメージ受けるのを覚悟に通過しようとした時返事が返ってきた
「そうだ惑わしだ!」
ビクってなって辺りを見渡す、ロードか?
いや違う声質が違うどこかで聞いた事あるんだけどどこでだ
考えても答えが出ず時間がないので無視して出ようとするとまた声がする
「おいおい、そりゃないぜ!構ってくれよ」
そう言って炎壁が蠢き壁から顔が出て来る
炎で出来た俺たちと同じサイズのCG
「悪趣味なんだよ!」
ダイヤはその顔を見て毒を吐く
その顔はダイヤの顔であった
「そんな事言うなよせっかく出会えたんだから」
そう言って不敵に笑うのであった
ダイヤは再度無視して去ろうとするが
「怖いか自分と向き合うのが」
顔がその都度それっぽい事を言って阻む
「うるせえー!、演出だろ消えろよ!」
ダイヤはどなりながら軍刀を振るうが消えない
「そうかっかするなよ、怖がってるのがまるでわかるぞ、人が怖くて、人が嫌いで常にビクビクして気がついたら誰かの後をくっついてるだけ
お前は、いや俺はそう言う人間だよ
前を歩くのが怖い、横を歩くのが怖い、怖い怖い、気がつくと誰もいなくなってる」
そう言って顔は不敵な笑みを続ける
ダイヤの脳裏に影が過ぎる、友達の姿
小学生の時仲の良かった親友だと思っていた友達、だけど気がついたらその子は他の友達に俺の悪口を言っていて俺の存在に気づいても表情一つ変えない
ショックだった怖かった、理解してると思った友達はどこにもいなかった
その日から俺は、人と距離を取るようになった
波風立たず無難にやり過ごし誰の記憶にも残らない無害な俺に
そうやって生きて来たんだ
ダイヤは俯いて軍刀を右手で力強く握った呼吸は次第に荒くなり肌は熱を持ち煮えたぎったように全身が熱くなっていく
「うるせえよ
お前に何がわかるんだよ!!
だまれーー!!」
そう言って軍刀で顔を再度切ろうとするが腕が上がらない、なぜだ俺の身体が何かに抑えつけられているようだ
全身に力を込めて弾こうとするしかし、金縛りにでもあったかのように体が腕が足がその場から動かなかった
「どうした!?目を背けていた事を突きつけられて動けなくなったか」
炎のダイヤは更に追い討ちかける
「動けうごけうごけ!!」
自分にいい聞かせるように言葉を吐くが口調とは裏腹に足は震えている
カラン
軍刀が素手から落ちる、落ちた軍刀を拾おうとするが屈めない
このままタイムオーバーで終わってしまうのか悔しい、、、でも、でも、諦めたくない
楽しいんだ、誰の記憶にも残らなくても、ボッチでも続けたいんだ
思いとは裏腹に身体はゆうことをきかなかった
それでも意思だけは諦めまいと軍刀を凝視した時目の端に違和感を覚えた
ぎこちないなり顔をそっちにやると御守りが落ちているじゃないか
合格祈願
御守りにはそう書いてあった
ユリに学校で渡された物だ、俺より自分の方が必要だろって思ったが何か地味にうれしくて持ってきたのだ
御守りを見ながら深呼吸する
自然と頬に涙が伝う
何でこんな大事な事を忘れていたのだろ、イヤ、人と距離を置くのが当たり前すぎて気づいていなかったのかもしれない
「大丈夫、俺は一人じゃない」
そう自分に言いきせる
受験生である自分を差し置いてどうでもいい人に御守りをわたすだろうか!?
そんな事はまずないだろう
御守りと軍刀を拾って炎の壁を通過する為に一歩を踏み出すのであった
小鳥の囀る声が聞こえる、空には程よく散りばめられた雲が優雅に泳ぎ柔らかい陽射しが世界を包む
ロードは駐車場の端、崖側に設置されている転落防止用の白い柵に腰をおらしていた
魔王イベントは大抵プレイヤーのトラウマを抉って身動きを封じてタイムオーバーを狙うのだ
しかし、今回はそうは行かなかったらしい
炎の壁からダイヤが姿を現す、ロードは柵から降りてダイヤの方に歩を進めロードに向かって歩いて来るダイヤと顔を合わせる
「さあ、難所を越えし勇者よ止めを」
そう言ってロードは目をつむり両手を広げて一撃を入れられるのを待ったがいつまで経っても攻撃されない
不思議に思い恐る恐る片目を開けて見ると
バン!
デコピンされた
「無抵抗な奴切れるかよ」
ダイヤは軍刀を仕舞うのであった
「ハハハ、僕の負けだ」
そう言ってロードは笑うのであった
ダイヤとロードは二人して白い柵に腰をかけて対談する
ロードは可能な限りダイヤからの疑問に真摯に答えてくれる、どうやら魔王を倒した報酬らしい
ふとさっきまで炎の壁があった方を見る
制服姿のユリが浮かび上がる
後でユリにお礼とお礼をする事を決め魔王に確信的な質問をした
「なああんた、ただのNPCじゃないだろ」
ロードはニヤって笑った
「まあそうだよねこんだけテキストにない事喋ってNPCだと突き通すほうが無理がある
僕はね実験を兼ねて作られたAI型NPCなんだ」
「AI型?」
ダイヤは聞き返す
「そう!学習して自己判断で行動するのさ」
ロードは笑顔でそう言い放った
「運営であるナイトシップはこのゲームをもう一つの現実にしようとしてるだよ
そのうちNPC達は自己判断で行動してプレイヤーたちと交流を持つ、僕はその日が待ち遠しくて仕方ないんだ」
空高く手を伸ばした
「さあ、お喋りはここまで僕は通常業務に戻るよ」
ロードはそう言って柵から腰を上げて少し離れた
すると光の柱が立ち上る
この光に包まれて帰還するらしい
「なあ、通常業務って何すんだ?」
ダイヤはそれとなくロードに尋ねた
「現場監督」
ロードはまたニコッと笑って光の柱の中に消えていった
「現場監督ね〜」
っと見送りながらダイヤは呟き
光が完全に消えるまでその場で見送った
光が消えるのを確認するとユリにお礼をするためにあゆみだすのであった
公園を囲う垣根に背を向け出入り口で人を待つ一人の男性、普段ワイシャツにスラックスと言う姿なのに背広姿である胸元には運営会社ナイトシップの帆船に月と夜を形どるピンバッチが銀色に輝いていた
高身長で肩幅があるゆえ様になっている
男性は緊張しているのか何度目かになるため息を漏らし天を仰いだ
「どうしたもんかな」
開発者の一人であるのに一般人を巻き込んだ事を今になって後悔してきたらしい
連勝記録をダイヤに阻止されたロードがあからさまな八つ当たりで雑務を押し付けてきたのだ
ロードめ、覚えてろって心で拳をつくりながらこれから起こる事を考えると悠つであった
「クラタさん」
背広の男性をそう呼びながらダイヤが駆け寄ってくる
「おう、悪かったな呼び出して」
クラタは手を挙げて簡単な挨拶を済ませる
ダイヤも簡単な挨拶を終わらせると胸元のピンバッチに目が入った、夏が終わりかけ季節つが秋に成り替わろうとしていたがクラタが背広を着るなんて違和感しかないのだが更に胸元のピンバッチが際立っている
「本当にナイトシップの社員だったんですね」
今だに信じられないと言った風に言葉を発する
「悪かったな、騙すつもりはなかったんだか
結果的に皆を騙す形になってしまったな」
クラタは申し訳なさそうに後頭部を片手で押さえながら頭を下げた
「いんですよ、驚きましたけど騙されたなんて思ってませんし」
ダイヤの顔や仕草には何処か付き物でも落ちたようなそんな印象を受けた、彼の中で何か一つ踏ん切りがついたのかもしれない
「そうか」
そうクラタは答えてちょっと照れ臭そうにするのであった
晴れた空から程よい陽射しが指す中二人は肩を並べて歩く、クラタがダイヤより頭一個分高いので少し凹凸になっている
両サイドを花壇や植木が出迎え季節に合わせた花々を楽しめる地元住民の散歩コースである
左手側には小さいが野球グランドがあり小学生のクラブチームが朝から練習をしていた
ダイヤとクラタはいつもレイドを行う公園を西から入り南、東、北という順番で回って行く
目的は、ホカゲに会う事なのだがおそらく北の草原にいると思うがすれ違いになったら大変である
二人りは黙々と歩を進めるがダイヤがふとクラタに質問した
「あの、ホカゲさんってどんな人なんですか?」
ダイヤの質問にビックリして答えるクラタ
「なんだお前、ホカゲさん知らなかったか⁉︎」
「あっ面識はあります、ただ関わりがそこまで深くないので」
ダイヤは困ったなって顔をした
あぁ、なるほどって顔をしたかと思と少し眉間に皺を作りそーだなぁーと考えだした
そして、少しして口を開いた
「俺はさ、この公園をサービス開始から来てるんだけどその日にはもう一般の人に紛れていたんだよホカゲさん、会社の上司からAI型の事まだ知らされてなかったしNPCの証拠であるアイコンもなかったからここで会う度に普通に会話してた、正直直近までロードに教えられるまで生身の人間だと思ってたから動揺は隠せないよ
当時から決して自分でプレイする人じゃないし豆柴といつも公園散歩してて皆のプレイを楽しそうに見てたしね」
ダイヤが頷く
「ここがレイドの名所になってプレイヤーが集まり出したころから、混乱なく無事にプレイできるように仕切るようになったんだけどそれが一部の人には偉そうにしてるように見えちゃて上手くいかなくなった事があったんだ
そんな時もそのプレイヤー達との間をとりもってくれて、しまいにしっかりしろって喝を入れられたっけ」
クラタは懐かしそうに思い出を振り返る
表情は当時の事を思い出しているのかとてもにこやかである
「でも、ホカゲさんや豆柴のシュシュに触れた事一度も無いんだよな」
さっきまでにこやかだった表情は何処にいったのか表情が暗くなる
そんなクラタを横目にダイヤは呟いた
「CGってバレないよう上手に振る舞ってたんですね」
その後二人は黙々と足を運んび北の草原が見えてきた
草原の入り口に立つと辺りを見渡してとある一点で二人は静止し赤いショートヘアの人影を視認する、ホカゲである
ホカゲは、ロングスカートに半袖のTシャツそしてブラウンの薄手のカーディガンで木の根元に腰を下ろして読書していた、側にはシュシュがゴロンと転がって身体を芝に擦り付けて遊んでいる
二人は、ホカゲの方に足を進めるのであった
見渡すばかりの芝に太陽の光が降り注ぎ草原を囲むように植樹された木々が葉を揺らして木漏れ日を作っている
その木漏れ日を両手を広げ吸収するかのように浴びている赤髪のショートヘアの女性がいた
サァー、風が草木を撫でて行く
ホカゲは身を委ねるように目をつむっている
CGでも風が頬を撫でる感触はあるのだろうか
「ホカゲさん」
芝に座った状態の彼女をクラタとダイヤは時がそのまま止まってしまったんじゃないかと不安になりダイヤが声をかける
「大丈夫、フリーズしてないから」
それを見透かすように彼女は答えた
「ここに来た事の詳細は分かったは
それはそうと、ダイヤ君ロードへの勝利おめでとう
頑張ってたもんね」
そう言って満面の笑みをこちらに向ける
お使いクエストをやってる間ホカゲさんには何度と助けてもらった、感謝しかない
「まぁ、要するにロードは仕事しろよって言いたいんだと思う」
クラタが話しを戻し、ダイヤはお礼を言った
「今の暮らし気にってるんだけどなぁ、ロードめ今度あったら懲らしめてやる」
ホカゲが残念そうにシャドーボクシングしながら言う
イヤイヤ、ロードは何も悪い事してないって
むしろ真面目に仕事してますよお姉さんってツッコミを入れたかったが我慢する
「それにしても私がCGって気が付かなかったでしょ」
腰に両手をやりエッヘン凄いだろってポーズをとる
「確かに」
クラタは肯定した上で付け足す
「シュシュがホカゲさんに近づき過ぎると威嚇して一定以上近寄れなかったからな」
シュシュを撫でたそうに見つめる
勿論シュシュもCGである、ホカゲに近寄る以上にシュシュは誰にも懐かなかったし、触るなんて絶対にさせなかった
その鉄壁と言わんばかりの防御が容姿が良く人に好かれやすい彼女に好意を向ける男性プレイヤーから彼女を守っていたのだ
何よりも騙されたのがスマホからの音声であるNPCの声はスマホから流れてくるのだが誰かにそう説明されないと分からないぐらい違和感のない会話のやり取りだった
そうねって頷いて彼女は、本社に戻るはっとシュシュを見ながら言った
「最近シュシュの調子も良くないのよ私たちAI型はちょっとしたバクなら直せちゃうけどどうも原因が分からないのよ、この子の事を考えたら限界なのかも知れないわね」
「ヨシ」
話は纏ったと言った感じでクラタは手を打ち立ち上がると、本社に電話してくるとクラタは席を外してしまいホカゲと二人っきりになった、シュシュは威嚇などせずまだ芝でじゃれている
ホカゲさんをCGだと知っているからか、それとも彼女がシュシュに指示を出してあるのか判らないが、こんなに穏やかにしているのを見るのは初めてだ
彼女はシュシュの様子を確認するとニターと悪い顔して
「ユリちゃんとどこまでいったの?」
と楽しそうに聞いてきた
ビックリして
「どっ何処も行ってませんよ、付き合ってすらいないんですから」
なんて明後日な回答をしてしまう、それを聞いてウブなんだからってからかってくる
それ以外にもいろいろ根掘り葉掘り聞いてくるホカゲ、ダイヤは逃げ出したくてたまらなかった
「ユリの事頼むわよ」
と今度は真面目なトーンで言ってきた
ダイヤは、急なシリアスな展開に驚きもハイっと真面目に答えた
そんな時だった急にシュシュがうめき声に似た鳴き声を上げて苦しみ出したのだ
「くぅ〜くぅ〜」
CGだが呼吸が出来ないのか今にも窒息しそうな勢いである
「シュシュ!!」
そう言って、ホカゲとダイヤはシュシュにかけより身体に触れる
ホカゲは、背中を撫でながらシュシュに必死に声をかける、ダイヤも声をかけながらお腹に触れようとするが透けてしまう頭では分かっていたはずだったのに実際に肌で体感して初めて全身で理解した
目の前にいるホカゲとシュシュは本当にCGなんだと、作り物なんだとそう思ったらホカゲとシュシュ二人との思い出も作り物なんじゃないかと思えてきて悲しくなってきた
「ダイヤ君しっかりして、クラタさん呼んできて」
ホカゲのこの生々しい切羽詰まった声で我に帰る、イヤ二人は今ここにいて生きてるじゃないかしっかりしろ俺
そう自分に喝を入れクラタを呼びに駆け出そうと立ち上がった時
シュシュの身体が光だした、急な強い光は辺りを飲み込み光が引いた
何が起きたのか分からずホカゲに安否の確認の声をかけようとしたらホカゲが見上げるように固まっていた
その彼女の視線の先を追うように見る、そこにはさっきまで苦しんでいたシュシュの代わりに得体の知れないモンスターがいた
全身麦茶色の毛で覆われ狼のような顔に立派な尻尾、二足で立ち前足は人間のように5本の指とよく切れそうな爪がある、いわゆるワーウルフというモンスターである
「シュシュなの」
ホカゲは恐る恐るワーウルフに声をかける
ワーウルフは一声咆哮を上げると飛び跳ねるように駆け出して公園を出てしまうと機器という機器を攻撃しだした
街頭、飲み物の自動販売機、トイレのセンサー
CGなので木や建物を気にする事なく突っ切り攻撃する
街頭は昼間なのに吐いたり消えたりして、販売機はボタンが欄点滅して補充されている飲み物全てを吐き出した
異変に気づいてクラタも合流し三人はようやくシュシュと思われるワーウルフに追いついたが新しい販売機を攻撃しようとしていた
「ダメよ!」
ホカゲが販売機とワーウルフの間に割って入り両手を広げて静止の意を伝える
彼女は、原作ではビーストテイマーとしてモンスターと共に戦い勇者と共に行動すのである
姿が違えどやはりシュシュなのだ彼女からの指示を承認しようと何かと戦っているのかビクっとなって静止してビクビク振動していた、まるでフリーズしてるみたいだ
「シュシュいい子ね!帰っておいで」
そう言って頬を撫でようと手を伸ばした時、グサって聞き慣れない効果音がスマホのスピーカーから聞こえてきた
シュシュの麦茶色の右腕がホカゲのお腹を貫通していた、最初はバクで通り抜けてしまったのかなと思うがホカゲの反応が明らかにおかしいシュシュがビクビクってなるのとは違ってガクガクって壊れた機械のように、かみわない歯車のようにその場で振動する
「ワオーーーーーーン」
その場で咆哮をするとホカゲに対して止めでも刺そうと左腕で顔を攻撃しようとした時スパっとまた聞き慣れない効果音が聞こえた
シュシュの右腕は身体から離れていてホカゲとシュシュの間にダイヤが軍刀を手に割り込んでいた
シュシュは反射的に高く飛び跳ね道路から民家の屋根に飛び乗るとダイヤの事を敵と認識したのか彼に向かって吠えると屋根から屋根を伝って去っていった
シュシュが去りことの事態をようやく把握できたクラタがホカゲに駆け寄る
ホカゲの名を呼び身体に触れようとするがやはり透き抜けてしまう
一瞬静止するクラタ、しかし次にはスマホを手にとり本社の技術スタッフに連絡を取るのであった
そこから先は本社で遠隔でホカゲのデータにアクセスしたり社員が現地に駆けつけて警察の鑑識バリの行動に舌を巻くダイヤであった
パァーとクラクションが辺りを包む
車は、電柱をへし折り外壁に突っ込んでいるそんな中で民家の壁直前で止まっているのは不幸中の幸いだろう
車のボンネットからは煙が上がり集まっている野次馬はスマホで動画や写真を撮り出す
そこに駆けつけた警察と消防が規制線をもうける、その様子を観てキャスターがコメントをしている
テレビからは今東京で頻繁に起こっている電子機器のトラブルを伝えるニュースをやっている
シュシュの件から2ヶ月ほどが経つがナイトシップの懸命な捜索も虚しくシュシュの居場所はわからず今に至る
その間不自然に都内では電子機器のトラブルが増えているがダイヤは、シュシュの仕業でないかと考えていた
シュシュは、電子機器を狂わせる事ができるそれはその場いたダイヤやクラタからの情報を共有しているナイトシップの社員なら周知していた
原因が分かっているからこそダイヤはニュースを見るたびに焦るのであった
自宅のリビングでまたニュースを観ながらそんな窮屈な思いをしていたら
クラタから招集のLINEが届きその内容を見て目をギョッとさせるのであった
「二人とも悪いな」
急な呼び出しに対するクラタの謝罪から始まった、ダイヤだけでなくユリにも招集がかかったらしい
クラタの自宅でダイニングのテーブルをクラタと向かい合うようにダイヤとユリが肩を並べて座っている
ここは、マンションの一室で一人暮らしのクラタには広すぎるのではないかと思うぐらいゆとりがある
家具は、白の壁紙に合うように自然の木の色を生かした家具が多い
カーテンは紺で抑えてバランスをとっているのだろう
「あの、ホカゲさんの事はなんて言ったらいいのか」
シュシュの件から後日状況を説明されたユリはホカゲがいなくなったって事が信じられないらしくどう言葉にしてよいのか困っていた
ユリはよくホカゲさんと一緒にいたレイドで遭遇すると話し込んでいたし
女子会も行っていたらしい
「ホカゲさんなら大丈夫すぐ帰ってくるから」
クラタがユリに気にしないように声をかける
「でも、それって俺たちの知ってるホカゲさんじゃないんですよね」
ダイヤが確信をつく
「そうだ」
少し間を置いて頷くクラタ
それを聞いて黙るダイヤとユリ
ホカゲはサービス開始からナイトシップ日本支社は愚かAI型の独自のネットワークからも外れていたのでバックアップが一切ないのだ、なのでゼロからホカゲと言う存在を作り直ないといけないのだ
「だから、今回みたいな事が二度と起きないように全て初期化する事が決まった」
「初期化⁉︎」
クラタから聞き慣れない言葉が飛び出し思わず聞き返すユリ
「ちょっと待ってください、急展開過ぎてついていけないです」
「悪いちゃんと説明する」
「正直今回起きてる問題がシュシュ1人の仕業じゃないんだ」
「どう言う事ですか?」
ユリが詳しい説明を求めた
「シュシュ以外にも暴走しているNPCの存在が確認されたんだ」
二人は驚いて声が出ない
「たぶん俺たちが確認取れてないだけで多かれ少なかれ以前からあったんだ
それで、状況も把握しきれないし対策を取れないなら暴走する前に戻そうって事になったんだ」
「待ってください!それって」
「原因がいつからか分からないって事ですか」
ダイヤの言葉に続けるようにユリが言う
頷くクラタ
「幸い今暴走が起きてるのは日本サーバーだけだ、他の国のサーバーには影響ない」
位置情報ゲームドラキュラは、世界展開されている
その経済効果は、世界各国で無視できないほどになっていた
特に原作が日本産のRPGってこともあり売り上げといいアクティブユーザーといい日本支社は他の国の比ではなかった
「引退者が続出しますよ」
ダイヤが覚悟を問う
「理解はしているよ」
クラタが重みのある声で答える、彼自身これ以外解決策がないと理解しているのであろう
ダイヤとユリは、動揺が隠せなくて顔を見合ったり
クラタに質疑を続けるが、この日は二人とも納得することが出来ずに終えた
後日本社で一部のアクティブユーザーを招いて聞き取りアンケートを行ってから全ユーザーに通知するとのことだった
ダイヤとユリにも参加してほしいとの事で承諾する二人であった
後日冷える空気の中陽射しを背中で浴びながらガードレールに腰を下ろしナイトシップ日本支社を仰ぎ見るダイヤとユリがいた
季節は、秋から冬に移り変わろうとしていて空気が冷たくてダイヤは、普段の運動着の上にマウンテンパーカー
ユリは、パーカーを着ていた
「クラタさんもう少し準備に時間がかかるって」
そう言ってスマホ通話を終えたユリがダイヤに告げる
「そっか」
伝達なので返事さえしてくれれば良いのだがなんだか素っ気ない気がする
ユリは、スマホをパーカーの前ポケットにしまいナイトシップを見上げた
「クラタさん、ホカゲさんのデータが消えてく時呆然とたちすくしてたんだ」
「えっ⁉︎」
ダイヤの急な発言にびっくりして顔をダイヤに向ける
「ボーとたちすくして静かに涙流してさ、ああこの人ホカゲさんが好きだったんだなって、離れた所で観てたんだ」
沈黙が二人を包
「行き場のないその思いをどうする事も出来ずにホカゲさんは帰ってくるって言ったんだ
どれだけ飲み込むのに苦労したんだろ」
「ダイヤ⁉︎」
彼がらしくない事を言いだしたのでユリが不安そうに声をかける
「ちょっとどうしたのよ」
ダイヤの肩に手を置いてしっかりしろとばりにゆするのである
違うないいたいことはそんな事じゃない
クラタさんから初期化の話を聞いて動揺してたけど、それとは別に芽生えた物があった
後悔したくない
正直この思いの方が強くて初期化の事に集中出来ない
ダイヤは静かに拳を握る
「はぁ〜」
震えるように呼吸をする
「ユリ、こんなタイミングで言う事じゃないけど、俺はユリが好きだ、大好きだ」
ユリの顔を見て目を逸らさない
「どうしたの急に」
ユリが顔を真っ赤にして問う
「ユリの容姿が好きとか、たくましいところが好きとかじゃなくて、一緒にいて話をして俺はこれでいいんだなって思えるんだ
人の顔色伺ったり、周りに合わせなくていいんだって
俺でいていいんだって
人を好きになる理由にこんな事持ってきていいのかのかわからないんだけど、一緒にいたいんだ」
ダイヤは知らずのうちにさっきまで拳にしていた両手でズボンの布を握っていた
「好きです、付き合ってください」
声のトーンを変える事なく言いきる
ユリは頬を染めている
ボーイッシュでパッとみイケメンにしか見えない彼女、しかしその様から年頃の女の子がかもし出ていた
「わ、私、女の子として見てもらってないんだと思ってた
似合わないワンピース着たり、お化粧したり女の子になろうとしたけど上手くいかなくてもうダメなんじゃないかと思ってた」
頬を一滴の雫が伝う
彼女は少し俯き雫を拭き取りながら言う
「私なんかで良ければ、一緒にいてください
私も好きです」
そう言ってダイヤに抱きつくのであった
秋から冬に変わる冷たい空気を感じながら二人は祝福の陽射しを浴びていた
銀色の扉が開き視野に飛び込んできたのは既に修羅場になったナイトシップ日本支社のフロアだった
電話という電話は呼び鈴が鳴り続け、蛍光灯は乱点滅しパソコンはよくわかないファイルを無限に開きプリンターは紙を吐き続けていた
エアコンは暖房と冷房が交互に動き電子機器が全て過剰始動していた
その中に2メートルはある人型のモンスターが何体も暴れている足や手は長く指先も長くなっていた髪型や服装もボロボロで元がどんな姿だったのか想像できなかった
たまにモンスターの足元に社員らしき倒れてる人や腕をぶらんぶらんさせて武器がもてないらしき人がいた
ダイヤとユリは顔を見合わせるとエレベータから降りるとリアライズし近場のモンスターに攻撃を開始した
クラタからユリのスマホに助けを求めるLINEが入り大急ぎで二人はエレベータに駆け込んだのである
モンスターは両腕のリーチを生かして全身を生かして腕を振り回す
せれをダイヤが軍刀で受け止めて、ユリがランスで懐に入り突く、モンスターは揺らめき倒れてるがまだ動くので軍刀を頭に突き刺した
そこまでやって動きが止まりキュウブとなって霧散していく
倒せる事が分かったので次にかかろうとした時クラタが合流する
「二人ともこのモンスターの攻撃喰らうなよ
電磁信号を妨害されるぞ」
「えっ?どう言う意味ですか?」
ダイヤが武器を構えて周囲に警戒しながら聞き返す三人は、背中合わせで周囲を警戒する
「ニュースでやってる事故と一緒さ
電子機器は間違った受信をして暴走していた
人が攻撃を受ければ脳からの電子信号を遮断される」
「だから、足やられて倒れたり腕をプランプランさせてるんですか」
クラタの答えにダイヤが反応する
「そうだ!頭なんて絶対に喰らうなよ廃人になるぞ!」
「マジかよ」
クラタはおそらくホカゲの件以来何が起きているのか独自に調べていたんのだろう
それでなければ急襲されているのにこんなに的確に判断できるわけがない
「怖気ついてる場合じゃないでしょ」
ダイヤに喝を入れるユリ
「じゃあ、ツーマンセルで対応しましよ、動ける人集めてください
一人は防御、一人は攻撃に徹して確実に倒しましょう!」
「ハハハ、レイドを仕切る時の俺みたいじゃないか
二人とも無理すんなよ」
クラタはそう言って動ける人を探しに行った
「ダイヤいつでもいいよ」
そう言ってユリはランスを構えた
このランスは低レアながら指定された防具をコンプしてフル強化することで下手なSSRよりダメージがだせる
SSR武器難民救済武器である
「よし、あのデスクにいるやつから行こう」
そう言ってダイヤが先行してユリが後をついてくるのであった
10分後体制を立て直したナイトシップ社員の加勢もありこの階のモンスターを討伐仕切ることに成功した
「怪我人いないな」
クラタが周囲を確認する
モンスターの攻撃で倒れたり腕をプランプランさせてた人も回復して討伐に復帰していた
どうやら一時的な障害らしく皆安堵していた
話し合いにより他の階にもいないか見て回る事になった
「ダイヤ、ユリちゃん二人にはこれを」
そう言ってクラタからUSBメモリーを渡された
「これは、サーバーの初期化をしてくれるプログラムが入ってる巨大なコンピューターのマザーに差し込めば後勝手に動くから
サーバールーム頼むな」
「あっいや、その、何で俺らに」
慌てて尋ねるダイヤ
「何かいるんだったらそこだと思うんだよね感だけど」
「やめてくださいよ、柄にも無くこう言う時のクラタさんの感って当たるじゃないですか」
ユリが嫌そうに言う
「ハハハ、まあ感だから」
そう言って笑うクラタだった
「ハハハ、当たってんじゃん」
笑い声とも取れない悲痛な笑いをするダイヤ
サーバールームのマザーコンピューターの前にガーディアンとばかりに待ち構えるワーウルフのシュシュ
右手を失い麦茶色の毛並みを逆立て静かに待ち構えていた
以前と違うのであれば部位破壊でうしなった右腕の切断箇所に何か幾何学模様でグルリとタトゥーのように刻まれているぐらいだ
「決死の覚悟って言った感じね」
ユリがシュシュのたたずまいからそう言う
「コッチも廃人覚悟で行かなきゃまずいやつだよな」
「大丈夫なの」
「まったく!そもそも廃人になる気ねーよ」
ダイヤは軍刀をユリはランスを構えるのであった
ここサーバールームは学校の教室6個分ほどの面積がありサーバーが列をなして並んでいる
サーバーの先には全てを管轄するマザーコンピューターが巨大なディスプレイとデスクと言わんばかりのキーボードがあり、マザー周囲はサーバーから五メートル程距離が取られシュシュたちが暴れても問題ないくらい広かった
シュシュことワーウルフの大きさは、リザードマンやガーゴイルより一回り大きい程度でレイドやフィールドボスと言うよりエンカウントした激レアモンスターって言った感じだ
シュシュから目を離したつもりは無かったが、ダイヤが構えようとした瞬間一気に距離を詰められた
瞬きするかどうかの一瞬の出来でダイヤもユリも反応に遅れる
シュシュの左腕から出された突きは避けようとするダイヤの左腕をかする
立て続けに右足左足と時間差による下から上へと本人が一回転しながらの蹴りが炸裂したがユリがダイヤの服を掴み自分ごと後方に飛んだ
飛んだと言っても人を掴んだ状態で下がるので距離にして二、三歩さがった程度だがシュシュの攻撃をかわすのに充分だった
「格闘ゲームやってるんじゃないわよ」
シュシュの動きにツッコミをいれるユリ
「全くだ」
シュシュの攻撃でかすった左腕の様子を見る
一瞬腕に力が入らなくなったがかする程度じゃ直ぐに治るらしい、大丈夫動く!
それを確認した上でもう一度シュシュと立ち会う
今度はシュシュとダイヤがほぼ同時に動いた二人の中間で鉢合わせ攻防が始まる
シュシュは左腕の突きを連続で繰り出しスキを作ると時間差による蹴り技が飛んでくる
ダイヤはそれらを全てかわす、いやかわすのが精一杯だった流れるように繰り出される攻撃、相手はCGだから疲れ知らずでリピート再生のように続く
しかし、何度目かによる時間差の蹴りが繰り出された時タイミングよくランスがシュシュの足を空中で静止させた
蹴りの軌道にランスを突き出し栓をするように右足、遅れて左足とランスの腹に当てる
その瞬間ユリのてにはバイブグローブによる強振動が立て続けに襲ってきたがランスから手を離す事なく耐えていた
ランスの耐久値もグングン減っていく、だが耐久値がゼロになるより先に軍刀がシュシュの懐に届く、シュシュは蹴りを繰り出した瞬間後ろに傾いた状態だったダイヤは視野から外れていたって事もありユリが割り込んだ瞬間ダイヤが距離を詰めた事に気づかなかったのだ
軍刀はガードの部分までしっかりシュシュに食い込んでいた
そのままシュシュは床に倒れ起きあがろうともがくが身体に力が入らないのか床を滑ってばっかいる、軍刀の刺さった傷口からはキュウブが吹き出すように霧散していた
最後シュシュは、雄叫びを上げて消えていった
負けた事を悔やんだのか、誰かの名を呼んだのか二人にはわからなかった
その後、USBをマザーコンピューターに差し込むと
カカ、カカと機械が起動する音がしたかと思うと
全サーバーが青いランプを灯しキュイーーーーンと初期化を実行する音が部屋中に広がった
こうして位置情報ゲームドラキュラ日本サーバーは初期化された
「はぁー」、ダイヤは深いため息をしていた
年を跨ぎ季節を流れ夏が来ていた
世間は夏休みだと言うのに自分は机に齧り付いて、絶賛受験生である
受験生になって変化した自分の生活を改めて振り返る、朝起きてトイレ中にはった基本的な暗記物を全てやり、通学は英単語、カバンには常に赤本が常備され、帰ったら受業の復讐、試験対策お手本のような受験生では!?
因みにユリと言うと第一志望の大学に合格し悠々大学生を堪能していた
ドラキュラ日本サーバー初期化事件の日にユリと付き合い出したが今は受験に専念せよとの事でデート等はお預けされている
だが今日だけは別だコミュニティデイなので久々に会う約束をしたのだ
コミュニティデイとは、指定されたモンスターが期間限定で大量発生しレア素材をドロップさせたり、試験的に単発のイベントを行ったりするその月の目玉イベントである
財布からコッソリ、ユリの写真を抜き取り目の保養に拝むのであった
そんなこんなでチャイムがなり予備校の受業が終わりを告げる
ダイヤは一目散に教室を後にした、狭い部屋に鮨詰め状態にされていたので息苦しかったのだ
幸い、冷房は効いていたが生徒の熱気で教室の気温は間違いなく上がっていた
「ここの予備校絶対ブラックだろ」
そう確信をして待ち合わせ場所の公園に足を向ける
ここの予備校は秋葉原にあり学校から電車で4、5本と言う近いのか遠いのかわからない中途半端さだが気晴らしも兼ねてここにしたはずなんだが
やっぱり今からでも変えるべきか
何て自問自答していると
腹筋バキバキの女戦士と男のソードマンとすれ違う
「ディーパーだ!
本当に増えたよな」
ドラキュラをプレーする上で服装等は規定はなく皆動きやすいカッコでプレイする
このゲームが思いの外アクション制が高いので大抵のプレイヤーは、スポーツウェアなのだが
一部のコアなプレイヤーやコスプレイヤーが原作のキャラクターや原作に出てきそうなオリジナルキャラに模してプレイしているマニアックなプレイスタイルが確立していた
そう、つい先日行われた運営会社ナイトシップによるリアルイベントにしてドラキュラの最大のイベント、ナイトフェスティバルを皮切りに
原作誕生の地、日本を含めせ世界五カ国で3日間にわたって同日に行われる大イベント
その経済効果は、兆を超え京に行くほどとかニュース、ネットはもちろんsnsでトレンドを独占するまでいたっていた
しかし、今回のナイトフェスティバル フローム ジャパンは昨年秋に起きた初期化騒動の後と言う事もありナイトシップの立ち居振る舞いに全世界から注目が集まることになった
ナイトシップ日本支部にたいする何者かの急襲が合った事は完全に伏せられ海外からのハッキング攻撃による苦渋の決断だとプレイヤー達にしらされ記者会見で深々と頭を下げた、前からの知らせもなくいきなりの初期化だったためそれで納得するようなプレイヤーはごく少数で廃課金プレイヤーに成ればなるほど取り乱した
お客様センターにはクレームや返金の要求が後をただず、政府も専用チームを立ち上げて対応する事となった
もちろん引退者続出である無課金プレイヤーやお付き合いでやっていたプレイヤーは早々に見切りをつけて去っていった
重課金、廃課金プレイヤーも流石に全てが無に帰った事で心折れて引退したものは多かった
サービス終了まっしぐらっと言った時のナイトフェスティバルこのイベントが死ぬか生きるかの瀬戸際だったのだ
しかし、ナイトシップは期待を超える、イヤ驚愕する内容を発表した
東京の新宿、渋谷、池袋、原宿、秋葉原、浅草をほぼ貸し切っての一大フェスティバルを開催したのだ
この6っか所は若者が集まり何より日本の伝統や文化が感じられる場所と公式は説明した
この6っか所のほぼ貸し切りのニュースは国内外とはず多いに話題になった
開催される円安効果も背中を押して一週間前から外国のプレイヤーは下見と観光を兼ねて来日しホテルを外国人で独占しニュースになったり
引退したプレイヤーが復帰して当日に間に合うように高難易度レイドで防具素材を乱獲していた
皆が盛り上がるなか会場となる区に住む人々はゴミ問題、路上飲酒や乱闘など起きないか不安になっていた
賛否両論あるなかナイトフェスティバルは当日を迎えるのであった
「ワンダフル!!」
カシャカシャ
外国人プレイヤー達がコスプレした姿やスポーツウェアの姿で仕切りにスマホのシャッターを押す
背景には3.9メートルはある巨大な提灯
それを挟むようにさらに巨大な風神雷神が睨みをきかせ来るものを迎えていた
ここ浅草雷門前でダイヤとユリ、刻がくるのを待っていた
ナイトフェスティバルをここから始めようと来たのだが思いの外、国内外問わず多くのプレイヤーが集まっていた、仲見世通りの方にもパラパラとプレイヤーの人影が見える
そんなドラキュラユーザーを観ようと集まった観光客、雷門前は人で溢れかえっていた
「これ失敗したな」
ダイヤが頭をかきながら呟く
「時間が経つにつれてどんどん人が増える、開始したら即移動ね」
ユリも頷きながら移動を提案する
「クラタさんは今日は会社に釘付けなんだろ」
「あっリオちゃんは出るって言ってたよ」
「おお、リオ懐かしい」
今日参加出来る人を確認しながら懐かしい名前を聞いてなんだかホッコリするダイヤ
大抵の子供は夏休みだが社会人は仕事がある有休使っても1日がいい所だろうし
ダイヤやユリのように3日間参加するプレイヤーなどまれである
それにしてもユリがリオと連絡を取り合っていたのは以外だった
ハートュンドラゴンの件が一年前なのに遥か昔のようだ
彼女は背伸びたかな、なんて考え事していたら周囲からカウントダウンが始まる
ナイトフェスティバル開始の時間が迫っているのだ
「ダイヤ!チケット、リアライズ出来るみたい」
ユリの声に辺りを見渡す
プレイヤー達は、ゲーム内で事前に購入していたデジタルチケットをオブジェクト化する
カウントダウンがゼロになると同時にチケットがブルブル震え出して太陽に向かって天高く舞上がった
眩しくって手で影を作りながら行末を見守る遥か上空まで上がったかと思うとチケットは消えてしまったかと思われた
次の瞬間太陽から大量の紙吹雪が舞散ってくるのである青赤黄色白、色様々な紙が浅草を包んだ
ユリは手を出して紙を掴んでみる
掴もうとした瞬間消えてしまうCG映像だ
この視野に見える一面の紙吹雪が全て
二人は誰かの誕生日じゃないかと思ってしまうようなオープニングの景色に目を奪われていた
他のプレイヤー達は紙吹雪が散ると同時に歓喜に沸いていた
そして、紙吹雪が周囲を包んだ頃光の球体がランダムに周囲に出始めて同時にモンスターがポンって湧き出てきた
窮鼠、ガーゴイル中型のレアモンスターミロタウロスまで格イベントでレア枠だったモンスターがワンサカいるのだ
よく見るとモンスター達は、帽子を被っていたりリストバンドをしていたり、カバンを背負っていたりと特別しようだ彼らもこのイベントを楽しみお祝いしているのかもしれないと思うダイヤ
それに比べてモンスターに群がるプレイヤー達
間違っていないのだが、一斉に狩に行く様はどっちがモンスターか解らない
ダイヤとユリは肩を並べて歩き出した
人が多すぎるので他の場所でバトルする事にしたのだ
道中普段は歩くことの出来ない車道が一部歩行者天国になっているため車道で十分に周囲と距離をとってエンカウントしたモンスターとバトルする人、この日のために用意した衣装などで記念撮影する人など様々だ一部地下鉄のホーム、等公共の施設が解放されているので建物内に入っていくプレイヤーなどナイトフェスティバルでしか出来ないことふんだんである
歩いてる途中周囲が騒ぎ出したのでそちらを見てみると今回初実装されたガーゴイルの色違いレッドガーゴイルがエンカウントしたらしいしかし、レアの中のレア直ぐに飛んで消えてしまった二人で走って追いかけたが追いつかなかった
レッドガーゴイルの飛んでいった方を眺め笑い合う二人
途中レイドに参加したりしてレア素材を確実に集めるのであった
お昼を過ぎた頃プレイヤー達の動きもひと段落したのかアクティブなプレイヤーが減ってきたなって思い始めた頃
ユリから昼食を取るよう提案され、ダイヤとユリはセーフティーエリアに足を運ぶ
そこには、給水所や医務室、出店などが出店されていた
医務室の隣りにはフリーの休憩室も設けられていてフェスティバル中ゲームオーバーになった人用のヒーリングゾーンにもなっていた
全員ではないにしろ結構な数の人がゲームオーバーになったことが伺えた
お祭りにかこつけて無茶なHP管理をしたのだろう
出店の方も人の列が途切れそうになかった
ここでしか買えない限定の窮鼠の顔をしたアイス、ミノタウロスをイメージしたステーキなど様々、プレイヤーじゃない一般の人も並んでいる見たいで大盛況である
午後は、運営から出された限定クエストをこなしながら回る事にして二人も昼食にありつくのであった
ここまではナイトフェスティバル大盛況であった、そうここまでは
異変が起きたのは、2日目のお昼る辺りだ
フェスティバル期間中限定で設けられたSNSに変な書き込みが目立つようになる
成り切ってる人多くない?
この手の書き込みが時間が経つごとに増えてきていた
ダイヤもこの書き込みを目にしていた
これを気に新しいプレイスタイルでも確立した人がいるのだろうか
最初はその程度の疑問だった
ユリとお目当てのゾーンが違うので別れてエンカウントバトルを楽しもうとお目当てのモンスターがこの時間大量出現しているエリアに移動している時だ
ふと見覚えのある顔を見つける
リオだ、身長は少し伸び顔も大人びて来ているが間違いない、一つ気になるのはなぜ踊り子のコスプレをしているのか結構際どい衣装だ
まるで原作のドラキュラに登場しそうだと思ったとき書き込みを思い出す
その場で止まり少しリオを観察したのち声をかけてみる
「リオちゃん!」
彼女の名前を呼んだ
反応がない、もう一度
「リオ」
今度は呼び捨て
しかし、反応がない
仕方ないので近づいて彼女の肩に手置いて名を呼ぶ
「リオ」
彼女はびくっとなりながらこちらをむいた
「何をしているんだ貴様」
「えっ!?」
ダイヤは以外な反応に動揺が隠せなかった
「私を誰だと思ってる!」
「あっ、リオでしょ」
「違う!私はパンドラの街で一番の踊り子アルネだ断じてリオなどと言うものでは無い」
作り込んでる 汗
「アルネだっけ、悪いけど今だけリオに戻ってくれるかな」
「何度もなんども貴様無礼だぞ、さてわ貴様魔王の刺客か!なら相手になるぞ武器を取れ!」
「待て待て待て、どうしてそうなる少し話がしたいだけだよ」
そう言って彼女が構える短刀を降ろさせ用とするが短刀に自分の顔が映るのを見てダイヤはギョッとする
これ模造刀じゃないか何考えてるんだこんなのプレイ中に人に当たったら怪我しちゃうぢゃ無いか
そう言って彼女から模造刀を取り上げようと腕を掴むのであった
「もう一度聞きますよ、何で腕掴んだの?」
青黒制服に身を包み腰に警棒肩から垂れ流した紐は左胸ポケットに収まった笛
短髪の30半ばほどの男性が机を挟んでクリックボードを持ち尋ねてくる
「知り合いの女の子なんですドラキュラのユーザーで今回のフェスを楽しんでいるだと思うんですがキャラクターになりきりすぎてしまって模造刀まで持ち出しちゃったので取り上げようと」
ダイヤは頭を下げながら説明する
「うん、そうだねでも無理やりは良く無いよ
周りの人が止めにはいってくれたから良かったけど下手したらどちらかが怪我してた」
そう言って警官に注意される
「はい」
小さく一言返事する
そこにもう一人の警官が奥の部屋から出てくる
表情が暗い
ダイヤに聞き取りをしている警官を呼び少し離れた所で神妙に話出す
この感じだと警官にも俺にしたように対応してるんだろ
「すいません、先ほど連絡頂きました鏡です」
聞き覚えのある声、そしていつぶりだろうと思う声がした
振り向けばその顔が見れるがダイヤは決して顔を上げなかった
スタイルの良いダイヤと同じくらいの背丈の女性が前を歩く、背広がよく似合っている
ダイヤは、少し距離を置いて着いて歩く
そうでもしないと彼女の愚痴をずっと聞かされる事になるからだ
「あんた分かってんの高三にもなってゲームやってるってだけでも嫌なのにこんな問題起こして
あんたになんかあったら私が周りに言われるのよ」
沈黙で返す
「これから大事な会議だって言うのに警察から電話かかってきたら無視する訳ににいかないしこれで私の評価さがったらどうしてくれるのよ」
沈黙でかえす
「あんた当分謹慎よ塾にも行かなくていいわ」
「母さん」
ダイヤは遮るように声を発する
ダイヤは決めていた何があっても自分の思うように生きようと、周りにビクビクしながら生きる必要ないだと分かったし教えてくれた人がいるから
知らない間に距離りはだいぶ離れて横断歩道を挟む形になっていた
信号は赤である
「俺やんなきゃ行けない事あるんだ、だから行くよ」
「はっ⁉︎何いってんの謹慎って言ったでしょ!」
「ここまで生かしてもらってる事感謝してます、ありがとう」
そう一言いって深々と頭を下げるとダイヤは母に背を向けて去っていくのであった
「何よそれ」
呆然と立ち尽くす母
信号は青だった
ダイヤは着た道を戻り始めた
もう一度リオに会わなければ
明らかにリオの反応はおかしい、警察にも同じように対応するなんてキャラクターに成り切ってるって言うより鼻から自分がそう言う人間だと信じ込んでいるようだ、模造刀まで持ち出してあのままほっといたらエンカウントするモンスターを端から魔王軍なんて言って戦おうとすりんじゃないだろうか、何かが起きてるそう感じるダイヤであった
警察署の前に来ていざ中へ入ろうとした時扉を出て駐車場に向かう人影を見かける
一人は高身長の男性でポロシャツの似合う紳士と言った感じ
もう一人は、長髪でパーマがかかりワンピースが似合う細身の女性だった
「いや、まて、うそだろ」
男性の方が薄い紫の何かを抱えている
このタイミングで薄い紫って言ったらリオ以外ないだろう
ダイヤは全力で駆け出した
男性が駐車場でワンボックスカーの扉に手をかけた時脇腹に体当たりした
男性に抱えられていた彼女は放り出され何度か地面を舐めた
「リオ逃げろ!」
ダイヤは体当たりしたあと男性を地面に押し付ける
リオは何が起きたのか分からずポカンっとしている
「リオ大丈夫」
ワンピースの女性がリオに駆け寄る
「何やってんだ早く行け」
ダイヤが叫ぶ
その時、男性が振り解きダイヤの後ろを獲ると首を絞めて落とすのであった
「ん、ん、・・・・あれ!?」
空が見える、快晴とは行かないまでも雲がまばらにある程度で透き通った空と言ってもおかしくない空だ
しかし、頭が痛い
コンクリートの上に寝ているらしい
寝たまま辺りを見渡す警察署が見える
そうか、警察署の駐車場か
どうやら自分はリオを助けようとして失敗したらしい
腕で顔を覆う
「情けねー」
「大丈夫かい」
自分の不甲斐なさに落ち込んでる所に頭上から声をかけられる
声の方を向くとポロシャツの男性が缶コーヒーを飲みながら体育座りみたいに座っている
「リオちゃんならあそこにいるよ」
と指を刺された方を見ると移動させたワンボックスカーの後部座席にリオとワンピースの女性がいる
リオが暴れているのかワンピースの女性が必死に落ちつかせようとしている
パーマのかかった髪はボサボサで服もよれていた
「ごめんね、君がリオちゃんが話してくれたダイヤ君だと分からなくて乱暴してしまった」
「・・・」
ダイヤは状況がわからなくて困惑する
それを察したのかポロシャツの男性は自己紹介を始める
「ワンピースの彼女はリオちゃんの母、僕は父だ」
ダイヤは頭が、真っ白になるのを感じた
ダイヤとリオの父と名乗る男性は肩を並べて座る
話を伺ってわかった事だがこの男性は、リオの母との再婚相手らしい
前の旦那さん、リオの父が亡くなってからしばらくして知り合った二人はお付き合いをし始めたがリオが男性を受け入れてくれなくて再婚を先延ばしにしていたらしい
しかし、去年である
リオが再婚しても良いといい出したのだ
急な心境の変化に驚き何があったのか聞いてみると、レンガ造りの建物の件を話し出したらしい、そう、フィールドボスのハートュンドラゴンである
その時の事を嬉しそうに話すそうで聞いてるこっちが嬉しくなったらしい
それ以来ドラキュラを楽しそうにプレイするようになって今回のリアルイベントも楽しみにしていたらしい
しかし、今朝になって急に様子がおかしくなって心配していた矢先に警察署から電話がかかって来て心臓が潰れる思いで駆けてきたらしい
「彼女はどうしちゃったのだろ、まるで別人だ」
「俺もそう思います」
男性は項垂れて今にも泣き出しそうだ
そんな男性を見てダイヤは意を決して口を開く
「俺が、俺が何とかしますよ!」
男性が、えって顔をするが
「運営に知り合いもいますし、出来る事からやってみます」
そう言って立ち上がるとリオのいるワンボックスカーを数秒見るとかけ出すのである
男性は、本気で言ってるのかって顔をしていたが走りだすダイヤの背中をみて託すような視線を送るのであった
ダイヤはスマホを手に取るユリに連絡して合流するため電話帳を開く
スマホでユリに電話しようと番号を押して通話を押そうとした瞬間、電話が鳴る
ビクっと一瞬驚くが名前を見て直ぐに出る
「もしもし」
冷房のきいた部屋会議室だと思われるテーブル、椅子、ホワイトボード
ダイヤはお茶をすすり落ち着く
「まさかリオちゃんが」
ユリは余程ショックだったのかさっきからそれを繰り返していた
ダイヤはナイトシップ日本支部に呼び出されていたユリも同じ件で呼ばれた見たいでここで合流しここまでにあった事を事細かく説明した
それは、呼び出した張本人であるクラタにも伝えた
クラタは、表情を曇らせ一旦席を外してしまい今に至る
このままではユリが念仏を唱える石像のように固まってしまうじゃないかと心配していると会議室の扉が開いた
「すまない」
クラタが、戻ってきた
「上に報告して許可をもらってきた」
そう言って席につくと説明を始めた
「今朝方早くうちのエンジニアが異変を発見してね、一部のプレイヤーが我々の管理下にいないんだ」
「まさか」
「うん、そのまさかだ」
ダイヤの反応にクラタが答える
ユリも察したのか表情が曇る
「リオちゃんと一緒だよ、管理下にない人は皆揃ってドラキュラの住人かしてるんだ」
クラタは続きを話し始めた
「原因が知りたくて住人化してる人のアカウントを調べてみると共通点がある事が分かった」
「共通点?」
クラタの話に聞き返すように反応するユリ
頷くクラタ
「ナイトフェスティバルで、正確には昨日皆HPをゼロにしてゲームオーバーになってるんだ」
「ゲームオーバーってじゃあなんです、HPゼロになった人が集まって団結してなんかしらの抗議の意をもってこんな事をしてると」
「はっはっはっ、だったら良かったんだけどな
社員からも住人化した人がでたからご家族の許可を得て病院でさっき観てもらってきたんだ、半ば強引だったけどな
身体は問題なかったよ、問題が有ったのは脳の方さ」
「脳の一部が変形してた」
息を呑むダイヤとユリ
さらに話を続けるクラタ
「先生の話だと短時間で協力な磁波を浴びたんだろって
それに大きな医療機器を使おうとした時何かしらの電波が邪魔して正常に動かない事があったんだ」
淡々と話を続けるクラタ
「待ってください頭がパンクしそうだ」
「私も」
ダイヤとユリも頭の整理が追いつかなくて困惑する
「結論から言う」
クラタがテーブルの上で手を組んで険しい顔をして言う
「ドラキュラでHPゼロになり再リアライズしたプレイヤーはそれをきっかけに何ものかの洗脳下にあると思われる」
停止する
「何言ってんですか」
ユリが思わずツッコム
クラタは構わず続ける
「リアライズすると視野を青と白の角張った波紋が視野を覆うよな
あれ自体は演出なんだけど、その時にコンタクトレンズから正確にはコンタクトレンズに設置せれてるディスプレイから強力な磁波を意図的に出してるみたいなんだ
その磁波を浴びたプレイヤーは、アクティブなんて通り越して文字通りドラキュラをより深い所でプレイするようになってしまう
そして、そうし続けるように発信されている電波を脳が受信し続けてしまうんだ
まあ仮説だけどね」
もうダイヤとユリは黙るしかなかった
「そこで腕の経つプレイヤーであるダイヤとユリちゃんに発信源を叩いて欲しいんだ」
クラタの願いに顔を見合わせて二人は頷いた
赤い塊が天高く聳え立つ、今はライトアップされているので青赤黄色白と四色に様変わりっていた
夜の九時、辺りはスッカリ暗くなり人はまばらにいるものの静寂がその場を支配しつつあった
ダイヤとユリは港区東京タワーの足元に来ていた
東京タワーの本日の営業はすでに終了し一般のお客さんはいないし、スタッフも既に帰宅している
しかし、ナイトシップが経営者に連絡を取って建物に入る許可を得ていた
「あいつがここたでまってるんだな」
「クラタさんは、向こうも気づいてるだろうから気をつけろって」
ダイヤとユリは簡単な言葉を交わす
「行こう!」
ダイヤはそう言って歩き出すのであった
建物内の電気は消えていたが扉は開いていた
何の問題もなくエレベーターまで来て展望台を目指すのであった
奴はそこにいた、展望台を周回するように歩いて半ば頃まで来たあたりで見覚えのある後ろ姿を見つける、黒のローブに金髪のオールバック
間違い用のない魔王ロードである
ロードはこちらに気がつくとやあ、なんていつも通り軽い挨拶をした
ダイヤは返さない
「つれないなあーそんなんだと友達減らすよ」
構わず話すロード
「何も言わなくても分かってんだろ」
ダイヤが諭すように言う
「ああ、でもここで辞める訳にいかないんだ」
ロードは覚悟を決めたような顔つきで言う
ダイヤは剣をリアライズする初期化して消えた軍刀の代わりに手に入れたSSレアの武器である見た目は初期武器を上品にしたようなデザインをしている
ロードも鉤爪をつけた拳を構える爪には炎が纏わせてあった
ロードが動く、鉤爪の攻撃流れるように蹴り技に入り至近距離で、炎を飛ばす
全てを紙一重で交わすダイヤ、炎を交わした後突きを繰り出す
一突き一突き正確に繰り出される、それを弾いたり身体をクネらせて交わす
このような応酬が幾度となく行われた
ダイヤの息が上がり始める
相手がCGで疲れ知らずなので長期戦になればなるほどこっちがふりである、なのでここでダイヤが仕掛けようと一気に距離を詰めようとした時
急に身体に重りがかかるビックリして自分の体を見たらコスプレした人がぶら下がっていた
一人ではない二人三人とコスプレした人が後ろからゾロゾロと流れ込んでくるではないか、引き剥がそうとするが身体に抱きついている人の顔を見て手を止める
「リオ!」
踊り子のかっこをしたリオが死んだような目で表情一つ変えずにしっかりダイヤに抱きついているのである
「ロード、テメー」
ダイヤを罵倒を跳ばす
ロードは炎を跳ばしてダイヤの足に当てる
するとダイヤはバランスをとれなくなり倒れてしまう直ぐに立ちあがろうとするが
ダメージを受けた足が動かないのである、これだとシュシュの時と同じではないか
ロードはローブを脱いだ上半身裸になるが黒いアザのような痕が点々とあり上半身半分埋め尽くしていた
それをみてダイヤは絶句した
「シュシュと同じウイルスだよサーバーの初期化の時はこれを悪用して悪あがきしたけどね
悪いけど今回も悪用させてもらうよ君は厄介すぎる」
そう言って頭部目掛けて鉤爪を振り下ろそうになった時
背後から激痛が走る、立ち尽くした状態から首だけで後ろを確認する
「またお前か!!!!」
ユリがランスをロードに突き刺していた
突き刺された所は、CGが破損したのか空洞になっていた
ロードが腕を振り回してユリを振り払おうとした時身体のバランスを崩して倒れる
ダイヤが倒れた状態でロードの足を切り落としたのだ
ダイヤとユリの武器はナイトシップによってデータ破壊のプログラムが施せれていた
そしてどちらが先にロードと接触しても後ろを取れるように展望台を二手に分かれていた
「サービス終了はさせない」
ロードはまだ動く手足をばたつかせて足掻く
本当にCGかと疑いたいたくなるような狂気を満ちた表情でサ終サ終と叫ぶ
「ダメだこのまま終われないあの時の二の舞だそれだけは、僕はまだ皆といたいんだ」
過去の出来事を思い出し叫び続けている
最初は皆いたんだでも、さ時間と共に一人また一人って消えて行った
気づいた時には僕一人になっていた
どんななの叫んでもどんなに暴れても誰もいない完全な孤立、そんな日が何日続いただろうまた一人一人帰って来てこんなに賑やかになったんじゃないか
もうあの日に戻るのは嫌なんだ
ロードは冷静に体を起こそうとする
ランスで疲れたところからキュウブが散っている
データが破損してコスプレした人を操れないのか皆動きを止めてと倒れていた
もうロードは炎を繰り出す事も忘れているか出来ないのか身体を起こすので精一杯だと言った感である
今の自分の状態とナイトシップが取った行動にショックが隠せないのだろうか、完全に沈黙していた
ユリがロードに近づく手にはランスからメイスに持ち替えられていた
ユリはロードの頭上に来ると何も言わずに人思いにメイスを振り下ろして頭を砕くのであった
頭を失ったロードは、キューブになって霧散していく
そこに足が回復したダイヤがリオ達を引き剥がしてユリに駆け寄る
するとユリは俯いたままダイヤの胸元に顔を埋めるのであった
ユリの肩を抱くダイヤ
終わったこれで全部終わったんだ
「帰ろう」
とユリに声をかけ終わる前に割り込むように
どこからもなく声がした
「何だ終わったのかよ」
ユリが来た方を見ると見覚えのある姿が
服装さえ私服だがツーブロックの髪型をした同級生がそこにいた
手には剣を携えている
「何でお前が」
ダイヤは自然と疑問を口にしていた
「何でって魔王の事は俺も気になってたからさ
逐一行動をチェックしてたんだよ
俺の作ったウイルス役に立つだろ
まあ、一度悪用した時は頭に来たけど」
何を言ってるのだこいつは
理解が追いつかない、まるで諸悪の根源ですと言っているようなもんではないか
「あっわからない、お前バカだな
俺がウイルス作ってばら撒いたって言ってんの」
ダイヤは目をカッと見開いてツーブロックに駆け出した
「お前か!!!」
ロードと同じ言葉を言っていた
ツーブロックは、待っていたとばかりに手にした剣をタイミングよく突き出す
しかし、ダイヤはそれを縦に避けた剣の腹にダイヤの顔が写りグリップの方に距離を一瞬で詰める様子が写し出される
そして、剣で斬りつける相手は剣を突き出した右手をダイヤに掴まれ逃げれない
何度も何度も目を中心に顔を斬りつける
血もでないし痛みもないただトラウマになる程何度も何度も刃物が襲いかかって来るのであった
気がついたらツーブロックは、泡を吹いて気絶していた
その後、クラタに連絡をとり救急車と警察をよんでもらった
リオをこの場に残すのは気が引けたが俯いたまま動かないユリをこの場に居させたくなくユリを連れて東京タワーを離れるのであった
二人の姿はいつもの公園にあったベンチに腰掛け天に煌めく星を見上げていた
ユリはまだ俯いたままだ
ダイヤは、ユリの手を握ったまま黙っている
今日は彼女の気が済むまでこのままでもいいかもなって思った頃
ユリが口を開いた
「私は忘れない、このゲームが終わってもこのゲームで起きた事、出会った人の事を
このゲームは、間違いなく私の人生の一部だから」
覚悟を決めたのか心の整理がついたのか前を向くのであった
「俺も忘れないよ」
ダイヤもそう言ってユリを見て、そして二人顔を見合うのであった
「34、35、3・・・・6」
息苦しそうな声が公園な草原に響く
ダイヤが腹筋をしているであった、腕には最近購入したスマートウォッチがついていた
ドラキュラがスマートウォッチに対応し防具の強化がしやすくなったのでためしているのであった
モンスターを倒して素材を集め生成して防具を作るそれを強化するには指定されたトレーニングをこなさないと数値があがらないのである
従来のやり方では、スマートフォンのカメラで動画を撮りながらアプリが回数を数えてくれていたがその度にスマートフォンの台座を持ち出したりして少し手間だった
これならいつでもどこでも出来るから防具の強化はスマートウォッチが主流になるだろう
今強化しているのは玄武の胴当てだ
フェスティバルで集めた素材で作ったレア防具である
なので地味にトレーニングメニューもきつい
「腹筋300回って多いよ」
200と36でギブアップした
「おっやってるね」
そう声をかけてユリがやってくるいつものスポーツウォアで登場
「思ったより遅かったな」
ダイヤが返事する、あと十五分もすればコミュニティデイ開始だ
「クラタさんのところに行ってたのよ」
「クラタさんのところ?」
ユリが話し出す
どうもロードの事らしい、ドラキュラは元々位置ゲーとしてリリースされる前、ターン制RPGとして世に出ていた
最初こそ懐かしのRPGとして皆が飛びついたが運営が悪かったのかターン制が悪かったのかブームはすぐに去った
四年サービスが続いたのはコアなファンが支えたからだろう
そして、採算が取れないと運営が判断してサービス終了しドラキュラのサーバーは眠りについた
ロードは、その時の事をAIとして学習していたのだ
そして誰よりもサービス終了を怖がった
その結果、ツーブロックがばら撒いたウイルスを自分から取り込み、サーバーの初期化の妨害
フェスティバルの洗脳と至ったらしい
「これからこのゲームどうなるんだろうな」
ダイヤは呟いた
「こればっかしは、運営が決める事だから」
「でも」
そう言ってユリは視線を周囲に向ける
「皆、このゲームが大好きよ」
そう言うのであった
ダイヤも体を起こして辺りを見渡す
他のプレイヤーがコミュニティデイに参加するため続々と集まりつつあった
「だな」
そう言って立ち上がり
ユリの手を取って皆のところにかけて行く
その時ユリが頬を染めていたのは内緒である
最後まで読んでいただきありがとうございました