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黄昏の魔子  作者: 四季織姫


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色王街へ向けて

 ワルプルギスから一週間後。

 ティア先生の私室、つまりは保健室に呼ばれていた。

 要件は単純だった。

 ティア先生との茶会だった。

 薬品の匂いがする場所でのお茶会というのも乙なもので優雅な時間になるはずだったのに。

 お茶を飲んだ後に待っていたのは地獄だった。

「みんなで君を教育することになったからね。まずは君の力がどこまで成長したのかを教えてもらおうかな?」

 ヒュンっと何かが高速で飛んできた。

 おかしいな?

 さっきまで優雅にお茶を飲んでいたはずなのに?

 というよりもなぜこの学園の先生は僕に対してこんなにも厳しいのだろうか?

 いささか疑問である。

 さて、いきなり弾幕戦に突入した今でございますが皆様元気に過ごされていらっしゃるでしょうか?

 なんて現実逃避もしている暇もなく戦いが激化している。

「祈里君、避けてるだけじゃ君の実力がわからないじゃないか。さぁさぁ、反撃しておいで。」

「そんなこと言われても。」

「魔人や天使の力を使って見るんだ。私はそれが知りたいんだよ。」

 仕方ない、使うか。

 僕は魔人と天使の力を同時に使う。

 すると、以前と同じように背中から右翼が生え、左目が赤く染まっている。

「なるほど、明らかに人ではなくなっているね。実力はいかほどか。楽しみだなぁ、全力で来ていいよ。」

 お言葉に甘えて全力でいかせてもらう。

 魔法陣を展開し攻撃の構えを取り、結界と光の盾で防御の構えを取る。

「なるほど、実に固く鋭い攻防だ。これは簡単には突破できないかもね。」

「かもじゃなくて、実際できませんよ。」

「おやおや、どうやら報告と違う部分があるようだね。報告ではゾーンのような状態に入って人格にも変化があると書いてあったんだけどね。」

「確かに今日は落ち着いていますね。あの時より体が重い気がしますし。」

 喋りながらでもティア先生は確実に攻撃を入れてくる。

 保険医とは思えないような肉弾戦に持ち込んでくる。

 最初の弾幕はなんだったのかと思いたくなるほどの強さであった。

 なんとか直撃は避けているが、明らかにレベルが違うのでこのままでは負けてしまうかもしれないとすら思えてしまうほどだった。

 体の一部を掴まれ、引き剥がして、放り投げて、放り投げられての繰り返しであった。

 どんどん押し込まれてティア先生の貼った結界の端まで到達してしまった。

 肩が壁にぶつかった瞬間の一瞬の動揺をティア先生は見逃してはくれなかった。

 顔面に膝蹴りをもろにくらい、意識が吹っ飛んだ。

 意識の暗闇の底で何かが語りかけてくる。

 その姿がだんだんと見えてきた。

 僕に話しかけてきたのは先日倒したばかりのディザイアだった。

「おい、初世祈里、お前、俺に勝っておきながら、あんな一教師、たかが魔女に負けているんじゃねぇよ。」

「そうは言うが基本スペックも違うし、体術の腕前も違うんだよ。」

「逆に聞くがそこを埋められたら勝てるのか?」

「それはもちろん。」

「なら、力を貸してやる。」

「いいのか?そもそもできるのか?」

「魔女の一人が言っていただろう。お前の体は俺たちの力に適性があるんだよ。まぁ、頑張れや。」

 そう言って、意識の海の底から僕は這い上がってきた。

「はあはあ、殺す気か⁉︎鬼教師。」

「安心してください。私は保険医ですよ。まして魔女なんですからこれぐらいの戦闘の傷はすぐに治せます。と言うか、君も魔女の血を含んでいるんだから傷ぐらい治っていくでしょう。」

「確かにな。」

「あらあら、随分表情が変わりましたね。お目目も右が青色になったんですね。それにこの魔力の感覚は魔神ですか?」

「ああ、あいつから力を貸してもらった。魔力だけじゃないぜ、基本スペックから体術の熟練度まで大幅パワーアップだ。」

「あらあら、それはいいですねぇ。倒し甲斐があると言うものです。」

「教師のセリフじゃないぜ、それ。」

「それにしても口調が変わりましたね。やはり、強い力の影響か力の元の持ち主の性格に寄っているのでしょうか?」

「さぁ、知らないねぇ。今はただ、あなたと戦うことが楽しい。それだけが僕を支配している。」

 確かに自分でも口調が変わってきている気がする。

 と言うよりも気分が上がってきている。

 肉弾戦の方も明らかに僕の力がティア先生に追いついているような気がする。

 互いに何度も一撃を打ち込み、受け止め、その繰り返しを続けている。

 肉弾戦でその実力に追いつけたのならば、魔法の方ではすでに実力は上だと思っているので、体術に魔法を上乗せする。

 炎の拳に氷の大地。

 魔法を駆使して、ティア先生を追い詰める。

 後一歩押し込めたら勝てるだろう。

 そう考えたらやることは一つだけだった。

 天衣神威、以前使った際には魔女達から神の領域に踏み込んだ技と呼ばれたが、それと同時に未だ人間の部分を残したいのならあまり乱用するなと釘を刺されたものである。

 そんな技を今使おうと思っている。

 と言うか、もう使っている。

「さぁ、今の俺は神憑っているぜ。」

「へぇ、それが今の祈里君の最強なのかな?」

「ええ、まぁ、そうっすね。これが俺の最強です。」

 大量の魔法陣を描き上げて、物量で押し込む。

 今度は俺が攻める側に立った。

 そして、六天龍を召喚し、量と質、両方で敵を追い込むことができた。

 しかし、六天龍の魔法の威力でティア先生の結界が壊れてしまった。

 そこで、ティア先生による教育が終わった。

 片付けを終えてもう一度、お茶を淹れてもらう。

 ふー、落ち着く。

「いつも思うのですが、魔女の方々が淹れてくださるお茶はすごく美味しいのですけど、何かコツでもあるのですか?」

「うーん、そうねぇ、愛、かしら?」

「うーん、聞いた僕が間違いでした。」

 愛とか言われてもわからんて。

「愛とか言われてもわからないって顔したでしょ。」

「魔女には思考を読む力でもあるんか?」

「あるのかもねぇー。」

「うざいなぁ。」

 さっきまでは義務感で戦っていたはずなのに、急に殺意が湧いてきた。

 愛だの何だのほざいた後で、ぬらりくらりした発言。

 本当にムカついてきて仕方がない。

「帰ります。」

 踵を返す。

「待って待って待って。まだ帰らないで。まだ話したいことがあるの。」

 話したいことって何だろうか?

「祈里君の力はね、魔力を用いたものなの。魔人も魔神も天使も。だから、魔力切れだけには注意してね。特に天衣神威を使うと意識が活性化されてしまうから、バンバン魔力を使って大事な時に魔力切れを起こして死んでしまうこともあるんだから。いくら、三人の力と魔女の血によって魔力量が増えているとはいえ、ね。」

「力の使い方には気をつけろってことですよね。」

「つまりはそうだね。それさえわかってくれるのなら、ここに、初世祈里に対して星を与える。」

「ありがとうございます。」

 星を受け取り、僕は部屋から出る。

 部屋の外では、黄昏が待っていた。

「なにしているのですか?黄昏。」

「何、可愛い我が子を待っていただけさ。」

「で、何か用ですか?」

「いやいや、一緒に帰ろうと思ってね。」

「はいはい。」

 僕はそう言って、黄昏の手を掴む。

「ん?どうしたんだい?」

「何って、一緒に帰るんでしょ。」

 そう言うと黄昏は本当に嬉しそうな顔をしてこちらの手を握り返してくる。

 二人で横に並んで、僕らは家に帰っていく。

 そう、ただただ普通に。

 そうして今日もただ日常が終わる。


 数日後、逢魔の魔女に呼び出された。

 何事かと思っていると、これからの僕の人生についてだった。

「君は我々の中では次期十三冠にする予定なんだよ。」

「はぁ、それについては以前お聞きしましたが。それについてなにか?」

「しかしだよ、君はまだ十三冠の地位や実力にははるかに遠い。だから、君には強くなってもらわなくてはいけない。」

「強くですか?」

「そうだ、そして素晴らしいことに君にはその資質がある。」

「資質ですか?」

「ああ、思い出して欲しいのだが、君には魔王の種子がある。」

「まさか、色々な力を吸収しろってことですか?」

「理解が早くて助かるよ。そのまさかだ。それに吸収するのはただ強い存在ではない。」

「では、誰ですか?」

「現十三冠の皆様だ。」

「た、食べるんですか?」

「いやいや、彼らの魔力の一端に触れさせてもらうなり、それを喰らうなりして力を分けてもらうのさ。」

 逢魔の魔女の考えることは尋常ではないと思った。

 だが、僕には逆らうことはできない。

 下手なことを言えば、色々な意味で殺されかねない。

 ただ、十三冠の皆様の魔力を喰らうということは。

「どうやって、十三冠の方々に会うのですか?というか、許可は降りているのですか?まさか思いつきではないですよね。」

「そんなわけがないだろう。」

「ですよね。」

 それはそうか。

「そして、会う方法だがな、当然あの方々の街をまわってもらう。ついでに各街の特色や魔法を勉強してくるといい。魅了魔術や錬金術など、色々なものがあるぞ。それで?行く気になってくれたかな。」

「いや、行かないといけないのでしょう。」

「まぁ、そうだが。」

「じゃあ、行きますよ。」

「ああ、頼んだよ。」

 そうして、僕らの長い長い遠征が始まることになった。

 メンバーはいつもの五人である。

 初めての行き先は色王街アイル・ヘイトである。

 僕らは準備を進めて、色王街に足を向けることになった。


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