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黄昏の魔子  作者: 四季織姫


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スタンピード part3

戦いの合図かのように両者の視界の端で爆発が起こる。

 次の瞬間、互いの拳が互いの頬に触れていた。

 そのまま、お互いに吹き飛ばされる。

 すぐに両者立ち上がり、魔法の行使に入る。

 祈里は火と土属性の魔法を放つ。

 土属性の魔法で足場を崩し、体勢の崩れたところに火属性の魔法を叩き込む。

 修行の成果がここに来て出て来たようだ。

 タルタロスと戦った時より遥かに威力が上がっている。

 一方、ディザイアは闇属性の魔法で応戦する。

 威力としてはややディザイアの方が強いだろうか?

 速度は断然、祈里に軍配が上がる。

 たとえ、魔神であっても実力者二人の魔力操作には追いつけないということだろう。

 攻防は永遠に続いている。

 速度の人間と威力の魔神。

 この対比は拮抗していると言っても過言では無いだろう。

 だが、このままでは人間である祈里の方が先に体力切れを起こすことになるだろう。

 と、祈里とタルタロスが思った時、ディザイアが手を止めた。

 祈里達は当然不思議に思う。

 それと同時に楽しい時間を急に終わらせたことに腹も立てている。

「どうした?もうおしまいか?お前はまだまだ余力があるはずだが?」

「逆にお前はもう疲れ始めているな?」

「うるさいな。まだまだいけるさ。」

「それに全力が出せていない。」

 祈里は痛いところをつかれたのか、黙る。

「どうだ?そこの魔人にも言ったが俺とともに来ないか?俺の力を分け与えたらお前は全力で戦えるようになるはずだ。お前だって辛いだろう、強者と全力で戦えないというのは。だから一緒に来い。」

「断る。世界を支配することしか興味のないお前について行く気にならない。」

「そんなことはないさ。俺は強い奴と戦うのが好きだ。だが、この領域まで来てしまうとここまで楽しめる奴と会うことすら珍しい。」

「そうであってもお前と行くつもりはない。」

「そうか、なら全力が出せるようにお前の仲間を殺すか。もっとも残虐で醜い死に様というものを見せてやる。」

「あ?」

 祈里は見たこともないような顔をしている。

 祈里は想像してしまった。

 友が無惨に殺される瞬間を。

「そうだ、もっと怒れ。祈里、お前の全力が俺はみたい。」

 タルタロスは今、二つの思考に飲まれていた。

 祈里様の全力が見たい、でも、いやしかし、それはあまりにも危険すぎる。

 この二つの思考が頭の中を駆け巡る。

 逆に祈里の頭の中は目の前のクズを殺すことしか考えていなかった。

「僕の…友達と歩む…この道のための…贄となって死ね…このクズが」

 祈里は周囲を灰燼と化す煉獄の炎を作り出す。

 まさに怒りの炎であった。

 周囲の木々は灰すら残さず燃え尽きている。

「すごいじゃないか。その炎なら俺のことを殺せるかもしれないな。」

「かもじゃねぇよ。文字通り殺してやるさ。灰すら残さず消えてしまえ。」

 第二ラウンドが始まった。

 魔神の攻撃を全て燃やし尽くし、祈里は魔神に向けて炎を向ける。

 祈里は龍のような形の炎を作り、魔神を追いかける。

 魔神はその炎を蹴り飛ばす。

 魔神は炎のような無形物に触れられる力があるようだ。

 時が経つにつれて祈里の怒りが増していく。

 もちろん、今の祈里の怒量は炎の火力に直結する。

 ので、祈里の炎は尋常ではないものとなっている。

 ついで、理性も飛びかけている。

 そのような状態で勝てる相手ではない。

 魔神との戦闘は当然劣勢になって行く。

 炎を消す手段とは何か?

 当然、水が挙げられるだろう。

 しかし、魔法は違う。

 魔法の炎を掻き消すのに使われるのはより強い炎である。

 魔神の黒い炎は怒りに呑まれた祈里の炎を喰らうには十分なものであった。

 広範囲に広がる祈里の炎の中心を穿つ魔神の黒き炎。

 貫通した魔神の炎に直撃するかとタルタロスが思った、その時、光の盾が現れた。

「あ?ああ、天使か。」

「どうして、天使がこんなところに?」

 魔神と魔人、お互いに声を出す。

 両者の会話から察するに、戦場に舞い降りたのは天使なのであろう。

 天使は自我を失いかけている祈里に話しかける。

「初世祈里君。聞こえるかい?怒りに呑まれてはいけないよ。戻ってくるんだ、出なければ友を守ることも、敵を倒すこともできないよ。」

「あ、ああ、ああああ。」

 崩壊しかけていた祈里の自我が戻り始める。

「あなたは、誰ですか?」

「僕かい?僕はサンダルフォン。君に魔神、敵を倒す力、友を守るための力を与えようとやって来たんだ。」

「友達を守るための力?欲しい。」

「そう言うと思ったよ。君の中にいる魔人の力も完全に操れるように僕が調節してあげよう。」

「そうしたら、あいつに勝てるのか?」

「そうだね、あとは君の頑張り次第だ。」

「やってやる。必ず勝つ。」

「なら、手を出すんだ。僕の力を貸してあげよう。これは君と僕との契約だ。生涯、ちぎれることはない一本の糸だよ。」

 光の球の中で天使と祈里は契約を交わす。

 そして、光の中から現れた祈りは数分前とは似ても似つかなかった。

 魔力はもちろん、姿さえ違う。

 左目は魔人のように赤く染まっており、背中には天使の右翼が生えていた。

 よく見ると、虹彩の形も違う。

「相変わらず、待っていてくれるんだな。ディザイア。」

「当たり前だろ、数分前のお前よりもさらに強くなるんだぜ。そんなもの、面白いに決まっているじゃないか。」

「らしいな。お前。」

 両者、一歩また一歩と前に歩き出す。

 やがて、互いの間隔が二十メートルほどになったところで、魔法を放ちあった。

 今回は魔神の炎を祈里の炎が喰らい尽くした。

「ほぉ、本当に強くなっているらしいな。魔力制御量も詠唱速度も今までの数倍以上だな。これなら本当の殺し合いが楽しめそうだ。」

「なぁ、ディザイア。僕はもうお前を殺すことさえ興味がない。」

「何?どう言う意味だ?」

「文字通りだ。今はただただこの力の波が心地いい。」

「はっ。あははははは。そりゃあ、いい。完全に入ってやがる。」

「入ってる?何にだ?」

「ゾーンにだよ。テメェは今、自分の力に酔っていやがるのさ。」

 すでに祈里の耳には魔神の言葉が通らない。

 実際のところ、魔神の言う、酔っているという言葉も的を獲ているのかもしれない。

「まあ、いいか。どうでもいいや。」

「まさか、戦うのすら嫌がったりしないよな?」

「安心しろよ、そんなことにはならないから。」

「ならいい、戦ってさえくれるのなら俺はなんでもいいぜ。」

「じゃあ、そろそろ再開しようぜ。お前だって待つのも退屈して来た頃だろう。」

「ああ、そうだな。」

 そう言って、二人とも右手を前に出す。

 同時に術式が展開し、魔法が放たれる。

 今まで劣っていたはずの魔法の威力で祈里が勝るようになった。

 あらゆる魔神の魔法が祈里の魔法に打ち消される。

 今まで魔力制御が乏しく、威力が低く、分散していた魔法が一つの塊になって放たれている。

 当然、威力は今までの比ではない。

 それは魔神も理解はしていた。

 だが、分かった気でいただけだ。

全くもってその力の一端さえも理解できてなどいない。

 それほどまでに今の祈里の力、魔女の血、魔人の目、天使の羽、の効果は度し難いものであった。

 一瞬の攻防で魔神の左手がもげた。

「ふふふ、あはは、楽しい、楽しいなぁ。」

「お前も十分イカれてるなぁ。」

 笑い出す魔神に対して祈里は感想を告げる。

「これで終わらせてやるよ。心炎。」

「テメェこそ死ね。これこそ俺の御業、死望。」

 両者の御業がぶつかり合う。

 大きな爆発が起こり、二人友が巻き込まれる。

 先に顔を出したのは祈りだった。

 爆発の煤を被って汚れてはいるが怪我はほとんどなかったようだ。

 遅れて顔を出す魔神。

 姿を現したと思えばすぐさま闘争を図った。

 ゾーンに入っている祈里が逃すはずもない。

 ただ、普通の魔法ではすでに届かない距離にいる。

 だから、祈里は魔法で弓矢を作り出し、追撃を図る。

 弓矢に炎を纏わせて放つ。

 その矢は魔神の羽と腹を貫通した。

 腹に風穴が空いた魔神はそのまま落ちていく。

 落ちる先にいたのは洞爺であった。

「逃げろ!刀弥。」

 咄嗟にこれから起こる事に気が付いた祈里が叫ぶ。

 先ほどまで人の形をしていた魔神は液体のように広がり、刀弥に覆い被さる。

 忘れていた、魔神達は魔力体なのだから、その姿を自在に変えることができるのだ。

 飛び散った魔神だったものが全て刀弥の口の中に入っていく。

 魔力の嵐が発生する。

 その中心には当然、刀弥がいる。

 嵐が晴れると刀弥の姿が変わっていた。

 羽が生え、目が赤く染まっている。

 乗っ取られた。

「ふははは、良い、実に良い。この体は実に心地いいぞ。」

「テメェ、やりやがったな。」

「さぁ、祈里、この体は君の友達の体だろう。どうするんだい?」

「テメェをぶっ飛ばして、取り返すさ。」

「それでは第三ラウンドと行こうじゃないか。」

 そう言って、魔神は刀弥の腰に差さっていた刀を抜く。

 刀は魔神の魔力に充てられて変色している。

「いい刀だ。そうだな、こいつは地獄巡じごくめぐりと名付けよう。おい、祈里、こいつの記憶を見たぞ。お前も刀を振れるんだろう。だったら、こいつで勝負しようぜ。これもまた一興じゃないか?」

「勝手に刀弥の記憶を見たことには文句があるが刀で決着をつけるのはいいぜ。記憶を見たぐらいで真似できるような代物じゃないことを教えてやる。俺の得物の名は常世渡だ。」

 向き合い、刀を抜く。

 じり、じり、と地面を踏み込む音がする。

 祈里が先に動き出す。

 祈里の振り下ろしを防ぐ魔神。

 離れた瞬間、間合いを詰める魔神。

 左右からの斜め切り、初撃は避け、二撃目は受け止める。

 初めは互いに異なる攻撃を加えていた僕らであったがだんだんと攻撃のリズムと技が揃い始める。

 天星葉月、天から降り落ちる葉っぱのように音もなく振り下ろされる斬撃である。

 日振月保、日の丸を月の満ち欠けのように三十の種類を持つ斬撃である。

 月華水光、水面に映る影が波紋よって消え去るような透明な斬撃である。

 月蝕夜光、月を蝕む月食のように相手を喰らうような斬撃である。

 まさに互角の戦い。

 に、見えるがその一挙手一投足に差が出ている。

 そして、ここでさらに差が開く一手を用意する。

「天衣神威。これでもう、お前は俺には届かない。」

 天衣神威の影響だろうか?

 祈里の一人称が変化している。

 そんな疑問を抱く暇さえ与えず、祈里は魔神に対して猛攻を掛ける。

 刀弥から習った十の連続技を叩き込む。

 一虎顎、振り下ろしの一つ。

 二振光、横薙ぎの二つ。

 三突李、突きの三つ。

 四葉咲、袈裟斬りの四つ。

 五楼星、円の字の五つ。

 六陽華、逆二重袈裟斬りの六つ。

 七刀武、七連突きの七つ。

 八紋字、八の字斬りの八つ。

 九楽刃、撫でるような振り下ろしの九つ。

 十天翔、斬り上げの十。

 を、何度も繰り返し打ち込んでいく。

 すでに魔神はボロボロになっている。

 その光景を見て、祈里は静かに笑っていた。

「天衣神威、やっぱりこれを使った今の俺は文字通り、神憑っているぜ。」

「嘘だろ、この俺がこんなガキに。」

「だから言っただろ、お前のように模倣しているだけのやつに俺は倒せないってさ。」

「ああ、そのようだな。だがお前はまだまだガキのようだ。だから、こういった手にだって引っかかってしまう。」

 魔神はそう言うと閃光魔法を発動させた。

 祈里は視界をやられ、もがいている。

 魔神は刀弥の体を乗り捨てて、祈里の方へ向かう。

 祈里は咄嗟に結界を張るが魔神の体はそれをすり抜けてしまう。

 防御の手段を失った祈里はなす術なく魔神に侵入されてしまう。


 祈里の中に侵入した魔神はそこで異様な存在に出会った。

「何をしに来た?小童。」

「お前は一体誰だ?」

 初世祈里の体に入り込んだはず、魔神はそう考える。

 だからこそ、入り込んだ相手の魔力の深淵に触れることになるのは理解できる。

 魔力の深淵にはその人間の本質が映る。

 だが、そこにいたのはあの男ではなかった。

 着物を纏った初世祈里と同じ顔を持つ、それではない何か。

「俺の名はデスピア。」

「デスピア?お、お前はまさか。」

 魔神はそれだけ言い残し深遠に喰われた。


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