暫しの休養
目が覚めると、自宅のベッドの上にいた。
横には黄昏がいる。多分、看病とかしてくれていたんだろう。
「おや、目が覚めたかい。意識はしっかりとしているかい。」
「はい、大丈夫です。」
「そうか、それは良かった。」
黄昏はすごく安心した顔をする。
その顔を見ると、僕も無事に帰ってこれたことをうれしく思った。
「アリス先生、僕、魔物に負けてしまいました。」
「ああ、聞いたよ。」
「それに、友達も巻き込んでしまって。」
「それも聞いたよ。でも、団体行動だったんだし、ハプニングだったんだから仕方ないことだよ。」
「でも、僕は強くなりたいんです。今回のことで僕はそう強く思ったんです。」
「みんな、同じことを考えるんだな。」
「みんなとは?」
「君の友達も同じことを言っていたよ。」
ローグたちが。
「今回、君は自分ひとり残ろうとしたらしいな。それが、みんなを刺激したんだろう。」
「そうですか。」
「本当に強くなりたいんだったら、今度、学校が始まったら、友達を連れてきて、アンリの研究室においで。アンリにはこちらから話を通しておくから。」
「わかりました。」
あれから二日が経ち、学校へ行く許可が下りた。
学校へ行くとみんなが駆け寄ってきた。
「祈里、よかったよ。無事で。」
「いや、洞窟の外ででもあったよな。」
「でも、あの時はすぐ倒れちゃったし、心配していたのよ。」
ユンがそう言う。確かにあの感じじゃ心配されてもしょうがないか。
「あ、そういえば、アリス先生がアンリ先生の研究室にみんなでおいでって言っていたんだよ。」
「アリス先生が?アンリ先生の研究室に?なんで?」
「いやなんか、みんなも強くなりたいってアリス先生に言ったんでしょ。」
「言ったけど、それと関係があるの?」
「そうらしいよ。」
「アルル達も?」
「メルル達も?」
「うんうん。そうらしいよ。」
ということで放課後になった。
みんなでアンリ先生の研究室に向かうことになった。
研究室にはすでに黄昏もいて、紅茶を嗜んでいた。
というか、かなり決まっているな。紅茶を飲む姿。
「来たね。祈里のお友達たち。ようこそ、研究室へ。」
「いや、ここは私の研究室だからな。なんであんたの部屋みたいな雰囲気を出しているんだよ。」
「失礼します、アンリ先生。」
「いや、私をスルーしないでくれ。」
「それで強くなる方法を教えてもらえるのですか。」
「ああ、とっておきの方法でね。名を、『御業』という。」
「御業だよ?」
「御業です?」
「さぁ、とりあえずここからはアンリ君説明よろしくお願いしますよ。」
「はぁ、御業というのはな、魔法と魔術の両方の性質を持つものだ。よって、魔法師でも魔術師でもそれぞれ一人一つずつ持っている。今も言ったが一人一つずつ持っているため、個人魔法や個人魔術ともいわれている。威力は通常魔法や魔術の数倍。これだけでも使う価値があるが他には希少な特性の魔法も存在する。通常魔法には全く近しいものが見当たらない魔法もあったりする。また、これは血族によって系統は遺伝するが全く同じものは存在しない。また隔世遺伝のような感じで先祖返りのような現象も起こったりする。そして、この御業の面白いところは当人の魔法の適性とは異なる属性のものが発現することもあるというものだ。」
御業、本当に面白いもののようだ。威力だけでも数倍というのだから、確かに強くなれるのだろう。
「さて、ここからは御業の発現方法だ。自分の御業を知るには深く集中する必要がある。例えば、瞑想とか効果的だな。何ならここで挑戦してみるといい。私や黄昏もいるしちょうどいいだろう。」
ここでちょっと気になったことがある。
「ちなみに御業ってどんなのがあるのですか。」
「んー、本来御業はとっておきの必殺技だからな。人にいちいち話すものじゃないんだが。まぁ聞かれたので答えることにしよう。私の御業は植制と言って植物を自在に操ることができる。」
「私は、というより魔女は時制と言って、万物の時間を操ることができる。」
ということは、もしかして洞窟で見たナーシャのあれは御業だったのだろうか。
だとしたら、あの強さにもうなずけるというものだ。
「まぁ、とりあえずやってみろ。強くなりたいんだろ。」
「はい、頑張ります。」
「ここで、禅でも組んで集中してみろ。」
先生の言う通りみんなで禅を組んでみる。
「よし、禅は組んだな。ゆっくりと水中に身を沈めるような感覚だ。ゆっくりと意識を沈めていくんだ。すると、自分の魔力の中心を見つけられるはずだ。それを見つけられたら、後は見えた者に従えばいい。大丈夫何かあったら私たちが何とかする。」
先生の言う通りに意識を沈めて集中するすると、体内の魔力であろう、大きく静かな波を感じる。それがだんだん小さくなり、凪いでいるように感じられる。
すると、中心に大きな珠のようなものを見ることができた。
これが、魔力の中心というやつか。そこから道のようなものが続き、魔力の塊がある。
これが魔法だろう。
それに触れると何かが自分に流れ込んでくる。
それが文字のようになって、概念になる。この御業の名前と力の概要だろうか。
「心炎」
これが僕の御業か。
「ほお、祈里が一番か。それに一発で御業を掴んだか。やはり才能があるんだな。」
アンリ先生の声にゆっくりと目を開く。
それから、三十分もすると、次々と意識を戻してきた。
その間はみんなそれぞれに眉間にしわを寄せたりして苦悶の表情を作っていた。
一時間で全員の御業の獲得が完了したようだった。
「よし、全員、御業を習得できたな。全員無事習得できたようで何よりだ。頑張ったな。これで、今年の魔法演武祭はうちのクラスの優勝だろうな。」
「?何のことですか。」
いったい何の話だろう。
「え、祈里君。知らなないの?二学期のはじめに魔法演武祭って名前の大会があるのよ。外の世界で言うところの体育祭に近いものだよ。」
「ホワイトの言う通りだ。この大会で優勝したクラスの担任は賞与が出るんだよ。いい飯が食べられる。」
「生々しいなぁ。それにアンリ先生は食に困っているんですか。」
ひもじい思いでもしているのだろうか。
ちょっと嫌だなぁ、担任のこういう話聞くの。
「これから、夏休みの間に御業の鍛錬をすれば、そもそもこの時期から御業を使える人間の方が少ないからなかなりのアドバンテージを稼げるだろうな。何なら、私がお前らの魔法の強化に付き合ってもいい。どうする。」
「お願いします。」
「私たちからもお願いします。」
「ああ、了解だ。ビシバシ指導していくぞ。」
もう少しで夏休みだ。そしたら、魔法実習漬けの毎日が待っていることだろう。




