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満天の星空の下

「そんな怖い顔しないでくださいよ~」


男は腰を引かして包帯だらけの手のひらでヒイラギに悪意がないことを伝えた。


「半分は人間ですよ。 半分はあなたの”お仲間”・・・」


男はヒイラギをじっと見てから、再び大きな柊の大木を見上げた。


「あなたこの”ひいらぎ”の精霊ですよね? そこまでハッキリ人に見える精は珍しいです。」


ハッと気づいたようにヒイラギたちに向き直りペコリと男はお辞儀をした。


「申し遅れました・・私、ミコトと申します。 」


ヒイラギは男の名前を聞くと肩の力を抜いた。


「ミコト? その名、聞いたことがあるぞ。 昔、うっかり毒花と融合して死ねなくなった人間がいて、この世界を徘徊していると・・・お前のことか・・・?」

「う・・・うっかりって・・・」


ミコトは恥ずかしそうに頭をかいた。



陽はどっぷりと山の向こうにつかり辺りはすっかり真っ暗だ。

子供たちはもうそれぞれの家に帰り夕食にありついている時間だろう。

柊の大木の下で提灯ちょうちんを灯すミコトとヒイラギの姿があった。


「ぷはー まさか酒までありつけるとは・・・」


ミコトはぐい飲みに、再び酒をつぐ。

あぐらの前には村のものが用意してくれた、にぎり飯が4.5個ある。

ぐいっと酒を飲むたび、チビチビとにぎり飯をかじるミコトをヒイラギは微笑して見ていた。


「お前、なぜ一所ひとところに落ち着かない。見たところ悪い者ではないようだが。」


ぐい飲みを置いて大きく両手をのばすミコトにヒイラギは呟くように聞いた。


「融合した毒花の毒が強すぎましてね・・・あまり長くいるとその場所に毒が染み付き、植物は枯れ果て動物は病にかかり、水は腐っていきます。しかし、三日程度なら何も害もないので問題ないんですがね・・・・」


ヒイラギは大木に寄りかかり上を向き枝の隙間から見える夜空を見た。


「では一年中、旅をしてるのか・・・・色々と見聞していそうだな・・・・」

「ええ・・・まぁそれなりに・・・・」


ミコトが美味そうにグイっとまた酒を飲んだ。

ヒイラギはゴクリと生唾を飲み込み、ミコトの方に座り直した。


「して・・・世間はどうなっておる・・・人間の世界の方だ。」


すっかり酔っ払ってきたミコトは目が座り気味だ。


「・・・妙ですね。 あなた未来が読めるって、この里で評判ですけど・・・それ位、お見通しなんじゃないですか?」


ヒイラギはミコトから目をそらし唇をかみ締めた。

ぐっと拳に力を入れたかと思うとミコトの胸倉を掴んだ。


「いいから話せ!! 酒飲ませんぞ・・・!」

「はぁ・・・」


ミコトは胸倉を掴まれたまま大きくため息をついた。


「今はまた・・・戦乱の時代ですよ・・・国獲りだか何だか知りませんが、たかが縄張り争いなのに・・・・」


ヒイラギは思わず掴んだ拳から力が抜けた。


「何万という軍勢が毎日のように一斉殺しあっています。・・・・・本当に愚かですよ」


ぐったりとしな垂れるようにヒイラギは、ぺたりと座り込み、地面を見た。


ミコトは、濃い紺色の中に輝く満天の星空の下、真っ黒な山々の地平線から下の所に、遠くの家々の明かりが点々と見える風景をぼーっと見た。


「ここ良い・・・ 子供があんなに笑っている所は久しぶりです。・・・あなたの予言のおかげでしょう・・・・・」


ヒイラギはヒザの上にあった拳をギュッと強く握った。


「それが・・・問題なのだ・・・・」


ヒイラギの表情は暗く深刻だった。ミコトはまたため息をついて酒つぼ持ち、中身を確かめるように振った・・・・

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