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「聖女様の逃避行」代行します  作者: 猫の靴下
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6.王都に逆戻り

4日目。


朝、鐘がなって起きようとした。眠すぎて目がなかなか開かない。

布団の中でもぞもぞしてから、何時かもわからないので確認しに宿の食堂まで下りていく。


「遅かったね。急いで朝食食べないと間に合わないわよ」


うぅ、そう思うならおこしてくれよぅ。

慌ててスープを飲み干し、パンをくわえて走って停車場までいく。

王都の上品な宿屋の住人は目をまるくしておどろいていたようだ。

しらないっと。


あれ?馬車が2台ある。

どっちだろう?

先頭のはすぐにも出発しそうだ。たぶんこっちだな。


「すみませーん。港町いきますか?」

「おう。もう出るよ。はよのってくれ」


よかった合っていた。

後ろのはラージ街に戻るほうだった。あぶないあぶない。

クッションを空気で膨らませて背中にあてる。これで少し楽になった。


王都近くは道も綺麗だがそれでも揺れる。

馬車と並走して馬に乗った護衛の人が一人いる。めったに獣とかでないそうだ。

盗賊あたりがでてもこの街道なら一網打尽になるはず。



ガタゴト、ガタゴト、ガタゴト。



2頭立ての乗り合い馬車は5人乗っている。

若そうな夫婦、木刀を杖がわりにしているお爺さんと孫、そしてなんちゃって聖女の私。

で、この夫婦の奥様が妊婦らしい。

途中でお腹がはってるのか、いとおしそうになでている。


「ご懐妊ですか?おめでとうございます。あの、触ってみてもいいですか?」

「お嬢さんも興味があるのね。どうぞ」


そっと触ってみると動いてる!

おおー!!生命の神秘だ。


「元気ですね。お母さんあまり蹴飛ばさないでいい子にしてね。なでなで」ほんのり私の手が温かくなった。あれ?


「なんだかすごく楽になりました。ありがとうございます」

「ほお?『癒しの手』をお持ちですか。これは珍しい」旦那様が興味深くのぞき込んできた。


私に魔法はないが、もしやペンダントのせいか?

これはやらかしたか?

いやでもこれくらいならさすがにばれないだろう。


ピコンと『回復のスキルレベルが上がりました』


あれ?なんかでたような?

キョロキョロしたが周りは何事もないようだ。誰も不思議な顔していない。

もしかして私だけに聞こえたのだろうか。



木刀持ったおじいさんの子供も覗きに来て「僕のおじいさんも治してほしい」と言ってきた。

うーむ。どうしよう。本物の聖女じゃないから治すほどは出来ないかもしれないなーと迷う。


「これこれ、無理をいってはいかんよ。『癒し手』ならば神殿で高額の寄付をしてはじめて受けられる治療じゃ。

 わしも何度か治療を受けたが少し楽になるだけで結局治らなかったんじゃ。」


そういって腰をさする。

もしかして私でも少しは楽になるんだろうか?

言いかけるとおじいさんは私の前に手を出して、「いらん」とジェスチャーした。


「いいかねお嬢さん。国に目を付けられてしまうと死ぬまで閉じ込められて使いつぶされる。

 このセルベス国はそういう国だからの。覚えておきなさい」


ひええええええええ。

怖すぎる。

エリスさんのためにがんばってアピオス国に逃げよう。


護衛のソルトさんは馬にまたがって鼻歌を歌っている。

ひんやりした空気がすぐになごんだ。


御者の人が「ソルト、ちょっと先見てきてくれ。馬がおかしい」と言っている。

前方になにかいるらしい。


ソルトさんは馬足を速めて前にいく。

馬車は完全に止まってしまった。

なんだろう?大きな獣だ。


手負いのオオカミのようだ。

誰かが倒しそこなったようで、矢が体に刺さっている。


ソルトさんは怖がる馬を下りて、大きな剣で戦うようだ。

攻撃をかわしながらうまく間合いをとっていく。

闘牛士のようだ。いやあれは牛じゃないけど。


狼ってあんなに強かったんだ。

体も大きいのでソルトさんが吹っ飛ばされそうになってる。

それでもなんとかとどめを刺したと思ったら、右から子狼が襲ってきた。かろうじて避けたが左側にも、もう一匹。

ソルトさんの足にガブリとかみついた。



やばいよやばいよ。どうしよう。

私何もできないよ。



御者と木刀のおじいさんが駆けつけて行って2匹の子狼をたたき伏せた。

おじいさん強い。


「お嬢さんちょっと手伝ってくれないか?」


ソルトさんの左足が血だらけだ。

止血をするために足をおさえてほしいそうだ。これはひどい。

足を布でぐるぐる巻きにして止血をしてから馬車にのせる。


他の乗客は冷静に狼を馬車の荷台に乗せている。

狼の死体も一緒の馬車にのせるんかい!!


ソルトさんを馬車にのせて急いで王都にもどる。この場合は一番近い街に行くのが正解だ。

だれも文句を言わない。

ソルトさんの馬もおとなしくついてくる。いいこだ。



みなが真っ青で無口になる。

狂犬病とかないだろうな?

私は一生懸命ソルトさんの足が治るように祈った。

なにやらピコンピコン頭の中でいってるけどうるさいので無視して祈る。



私たちは王都に戻り、明日の朝責任もって出発しますと伝えられた。

どうしましょう?泊まるとこ探さないと。

ギルドにいき、事情が事情なのでとギルドの2階にある部屋いくつかを開けてもらった。

夫婦とおじいさんたちも同じく隣同士だ。



私は、疲れて部屋に入ったとたんベッドにダイブした。

就活以来の疲れっぷりだわ。

そう思った時にはもう夢の中だった。


あ、ご飯たべてない。

夢の中でおもったら食べ放題の夢を見て満足だ。




優里は無意識に聖女の力を使ったことに気が付いていなかった。

ソルトの足はわずかな傷跡を残して翌日にはほぼ治っていたのである。


そしてソルト本人も布でぐるぐる巻かれていたので痛みが少ないくらいにしか思っていなかった。


治療院に運ばれて初めてユーリがやったことに気が付いたのだった。

大量の出血で包帯が血だらけなのに傷がほとんどなかったのだ。

もし、少しでも面白かったと思っていただけたのなら、

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