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M04.お助けキャラに助けられ

「私、一応学校の先生をしているのよ。だから、というワケでもないのだけど……弱いものイジメはよくないと思うのよね」



 なんということでしょう。こんなに俺に都合よく事態が動いていいのだろうか。なんにせよこれで生き残れる確率は格段に上がったと言えるだろう。この流れ、存分に利用しなければなるまい。



「そうか。ならば―――いや、まずはこのバカ騒ぎを黙らせるほうが先か。俺はこれから魔獣を片付けるつもりだが……?」


「なら、ここはひとまず共闘といきましょう。あとのことはお茶でも飲みながらゆっくりと。どうかしら?」


「そうだな、緑茶とかがあると嬉しいな」


「緑茶でもほうじ茶でも、一通り揃ってるわ。それじゃあ、前衛は私が引き受けるから、援護はよろしくね?」


「任された」



 強敵が一時的とはいえ味方になり、しかもそのあとの話し合いの約束まで。なんというご都合主義展開。やはり俺のこれまでの人生、真面目に生きていた神様からのご褒美なのかもしれない。でもそれなら転移そのものを防いで欲しかったです。


 さて、気持ちに余裕ができたことでようやく感応の加護を試すことができる。桜色のフレームが前を引き受けてくれたことで後ろで安心してコソコソできるので、ここは一気に強化してしまおう。


 ここはやはりフレームの強化だろう。前世で……いや、転生したワケじゃないのに前世という言い方もおかしいのかもしれないが、ある意味では生まれ変わったようなものだからな。とにかく、前世で大好きだったハイスピードロボットアクション系のイメージでフレームの性能を上書き決定です。


 特にスピード系は大事だろう。超加速はもちろん、瞬間的にブーストすることによる緊急回避。ロックオンした敵を自動的に正面にして円の動きをする機能。とりあえずいま思いついたのはこれくらいか。


 あとは武器を使ったときの反動についてもだ。バズーカのときも腕が痺れるかと思ったが、アイテムボックスに放り込んだ武器の中にはアンチマテリアルとかいうライフルの化け物みたいな武器もある。まぁ、バズーカは本来両手でしっかり構えて使うところを格好つけて片手で撃ったせいもあるんだろうけど。


 でもどうせなら、ダブルトリガーやりたいもの。ということで腕力、というよりも射撃の安定性についても上書き。これでスナイパーライフルで突撃、いわゆる凸砂スタイルもできるだろう。それが必要になる状況があるのかどうかはわからないが。


 とりあえずはこんなものか。あまり魔改造し過ぎても俺のオツムのCPUが悲鳴をあげることになりかねない。せっかくいかにも強キャラな年上レディが協力してくれるんだし、ここはじっくり落ち着いて戦うべきだろう。



 ◇◇◇



 ゴブリンの次はミノタウロスときたか。いきなり強くなりすぎじゃないですかね? そして、フレームのライブラリに登録されている情報によると、あの牛さんは中型二足種といって特に珍しくはないザコ敵らしい。マジですか。



「正面は私が引き受けるわ。貴方はフォローをお願いね?」


「了解した」



 FPSを始めたころを思い出す。プレイに慣れている友人が今回のように前に出て、俺は左右からくる敵の動きに注意する。もちろんほとんどの敵は友人が見敵必殺の勢いで処理していたのだが、それでもボチボチ俺の出番は残されていた。


 まぁ、あれは友人が上手い具合に俺に敵を残してくれていたのだろう。しかし、そんな教育上手な友人のおかげで正面以外の敵にも意識を向けるという戦い方を学ぶことができたのだ。ありがとう友人。こんな形で役に立つのは喜んでいいのか悩むところだけど。


 しかし、こうなるとマシンピストルでは火力が足りないな。ゴブリンですら数発ブチ込まないと倒せない。かといってバズーカでは桜のサムライを巻き込んでしまう。と、なれば……さっそくスナイパーライフルの出番か。


 さすがに連射はできないが、左右交互に使うぶんには充分使いやすい。ゴブリンと、いつの間にか現れたハウンドタイプ……犬っぽいヤツ、それから小型の恐竜みたいなラプトルタイプ。どれも一撃なのでサクサク倒せる。


 どうせなら空中を飛び回って、とかも憧れるんだが……いまは止めたほうがいいだろう。空を飛ぶことに夢中になって援護が疎かになる未来が見えてしまった。


 女神の加護を持っているとはいえ戦闘はたったの2回しか経験してないんだ。さすがにこれで“実は俺って強いんじゃ?”なんて調子にのるのはアホだろう。丁寧に、丁寧に戦おう。



 ◇◇◇



 魔獣の討伐は特別トラブルもなく完了した。桜の貴婦人、超つおい。いやぁ、序盤のお助けキャラの如き無双ぶり、まさにお見事としか言えない。もしかしたらあの太刀筋が俺に向けられたかもしれないと思うとゾッとする。


 で、いまは貴婦人がドイツの軍人さんたちとお話をしているところだ。もちろん俺は沈黙を貫く。ここで余計な口出しをしても百パーセント邪魔にしかならないだろうし。



「おまたせ。それじゃあさっそくだけれど、帰りの船に招待させてちょうだいな。まぁ、船といっても潜水母艦なのだけれど」



 ◇◇◇



「この部屋は盗聴されてないから安心してくれていいわよ。氷鯨のクルーは海軍の中でも融通が利く人たちばかりでね。まぁ、そうでなければ貴方のようなイレギュラーを迎え入れたりしないわよねぇ」



 ザ・貴婦人。やはりお婆ちゃんと呼ぶのにはためらうレベルの美人さん。さすがにお世辞でもピチピチガールとは言えないぐらいの年齢は感じるが……これで戦場で刀を振り回してたというのがまた。ギャップ萌え? ちょっと違うか。



「お気遣い、感謝します」


「いえいえ。それにしても、想像していたよりもずっと若いのねぇ。それであれだけ動けるなんて、いったいどんな人生を歩んできたのか、とっても興味があるのだけど?」


「そう、ですね……俺、いや、私もどう説明したものか難しくて」


「あら? 別に言葉遣いをかしこまる必要はないわよ? さっきも普通に喋ってたでしょう」


「アレは戦闘中だったので。私は目上の人にはなるべく丁寧な言葉を使いたいんです。敬語とまでいくとだいぶ怪しいんですけどね」



 かつて職場の上司から教わったことだ。正しい敬語なんて使えなくても、丁寧に、相手を敬おうと心がけていれば自然と態度に現れるものだと。そうした気持ちは案外伝わるものだと。上司ガチャはSRだったと自負してます。


 しかし困ったことに、いくら気持ちが伝わるからといって、いきなりパラレルワールドの話を始めるのは無謀ではなかろうか。俺にしてみればこの世界はファンタジーの塊なんだけど、この世界の人にとってはありふれた日常なんだし。



「とりあえず確実に言えることは……この世界に、私という個人を証明するデータは一切存在しないハズです。仮に貴女が世界中の情報を手に入れる能力を持っていたとしても、見つけることは不可能でしょう」


「初めから存在しないのではそうでしょうね。ほかに確実に言えることは?」


「性別は男で、年齢は……たぶん、16歳ぐらい、だと思います」


「自分の歳もわからない。ということは、誕生日もわからないのかしら」


「はい」


「フレームの奏従士としての訓練はどこで?」


「わかりません。いつの間にか操縦できるようになってました」


「それで納得しろと言われても困ってしまうのだけれど」


「そう言われても。こうゆう言い方、ちょっと自惚れてる感じがするのであまり言いたくないですけれど、たぶんどんなフレームでも乗りこなせますよ。たぶん」


「ふぅん……どんなフレームでも、ね……」



 疑い、というよりは面白いモノを見つけた。そんな雰囲気をヒシヒシと感じる。これが真面目なカタブツキャラだったら怪しさ満点の俺なんて拘束されて独房みたいな場所に監禁されていただろう。


 もしかしてアレかな。いわゆる自分が面白ければオッケーな天才肌タイプの人なのだろうか。君の正体なんてどうでもいい、重要なのは私を楽しませてくれるかどうかよッ! みたいな。



「……あら。あらあらあら。私ったら、肝心なことを忘れていたわ。ごめんなさいね? ……コホン。初めまして、私は日本の首都エリアにある学園都市“天輪学園”で理事長を務めている斎藤一葉よ。よろしくね?」


「あ、はい。えーと、私は……たぶん日本人の、最上天山(もがみ てんざん)、です。たぶん」


「最上くん、最上くんかぁ。うーん、でもせっかくだから天山くんって呼んじゃおうかしら。貴方も私のことは一葉ちゃんて呼んでくれていいわよ?」


「わかりました、一葉ちゃん」


「……あら、あらあら。ウフフ♪」



 クックック、この俺がその程度のネタ振りで怖じ気づくとでも思ったかッ! せっかくなので呼んでみたけれどけっこう恥ずかしいなコレ。でも喜んでくれたようでなによりだ。


 ちなみに名前はマジなヤツです。どうせ偽名使ったところで速攻で見破られるだろうし、それなら素直に本当のことを言ったほうが警戒されないだろう。同姓同名がこの世界の日本にいる可能性もあるけど、だからなんだって話だし。



「私としては、あまり危険な存在を日本に持ち込みたくはないの。でもね、最上くん。君のようなワケありのイレギュラーを放置するワケにもいかないのよ。当然よね? あんな場所に誰にも気づかれずに潜入できるんですもの」


「……なら、どうしますか? 私が話せることなんて――あぁ、あのタンカーの下層で見つけた危険物の情報なら喜んでお話しますけど。是非とも巻き添えが欲しいと思っていたので」


「あら、やっぱりアヤシイ研究してたのね。まぁ、それはそれで詳しく聞くとして。とにかく、まずは一度、貴方は私の監視下に置かせてもらうわ。そのほうが面白いことになりそうだし」



 おっふ。やっぱ自分が面白ければオッケーな天才肌タイプの人でしたか。

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