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M02.転移者、エンゲージ(難易度ベリーハード)

 結局、鉄パイプは1度も出番がないままお役御免となってしまった。一応エーテル・フレームの機能としてアイテムボックス的なシステムがあるので持ち歩くことはできるんだが……。うん、念のため持っていくか。投擲に使ってもいいかもしれない。


 あとは武器を適当に選んでしまおう。とりあえず大物用にバズーカっぽい物を左手で掴みウェポン・インストールと心の中で唱えてみる。


 するとバズーカが光の粒となって消え、代わりに左手の甲の部分にスコアが刻まれる。あとは必要になったときに実体化させてブッ放すだけ。ね? 簡単でしょう?


 この調子で次々と武器をインストールしていく。と、言いたいところだけれど容量に限界があるから全部は持ち歩けないようだ。感応の力でいじるか? ……うん、拡張しよう。でもなにが切っ掛けでトラブルに巻き込まれるかわからないからな。拡張するのはアイテムボックスにして、そこに放り込もう。


 うん。これなら外見からは大量の武器を持ち歩いてるとはわからない。


 とりあえず左手にもうひとつバズーカ。これで左手の武器スロットは終わり。右手にはマシンガンと……あれ、マシンガンじゃない? マシンピストル? なにが違うんだろう……まぁ連射できる武器ならそれでいいや。あとはショットガンと……ナイフ? 一応持ってくか。マシンピストル、ショットガン、ナイフ3本で右手の武器スロットも終了。


 あとは左肩に追加装甲。気分は宇宙世紀の量産型の緑のステキな一つ目小僧。右肩にはブレードを。これは腰に装備した場合、とっさのときに自分の右腕が邪魔で振り抜けない可能性を考えてだ。


 そして左背部にはレーダーを実体化した状態で装備。索敵範囲は狭いが情報の更新速度が優秀で、各種センサーも豊富に揃っているヤツをチョイスしてみた。更新速度は俺としては大事なポイントだ。なにせゲームでもちょくちょく敵の姿を見失うことがあったからな。頼れる物は機械に頼ってしまえばいい。


 右背部にはショートレンジミサイルを実体化。有効射程はマシンピストルより外側で、バズーカとぼちぼち同じくらい。どの程度使いこなせるかはわからないが、背負ってるだけでも警戒してくれるんじゃないかという期待を込めて。


 こんなところか。


 一瞬、予備の弾薬をと思ったんだが、そもそもエーテル・フレーム用の武器に弾薬は必要ないようだ。人間の霊気を弾薬代わりに使うらしい。


 もちろん、だからと言って無制限に使えるワケではない。使えばパーツは消耗するし、霊気だって空になれば人間がダウンしてしまうみたいだし。その辺りの配分は戦いながら……か。うん、やっぱり難易度高過ぎませんかね? チクショウ。



 〈〈ウェポンデータ、チェック完了〉〉


 〈〈エーテル粒子量、再調整完了。フィールド形成開始〉〉


 〈〈……奏従士(シンガー)の登録を完了。初期設定が完了しました〉〉


「ありがとう。フレームを戦闘モードに切り替えてくれ」


 〈〈了解。メインシステム、戦闘モードを起動します〉〉



 フレームを中心に、周囲に球体状のバリアのようなものが現れた。主に射撃武器からの攻撃に対して反応し、軽減あるいは無効化するようだ。実にありがたいことに、こうしてバリアを張ってるだけでは霊気の消費はほとんどないらしい。まぁ、それはエーテル・フレームの標準的な仕様みたいだけど。



 ……ん? アラート? ほぅ。どうやら倉庫の内部に魔獣さんが現れるようだ。物理的に侵入してくるのではなく、妖気とやらの濃度が高まると実体化する仕組みか。こりゃまた厄介な性質なことで。


 ホバー移動を試しつつ、指定された倉庫の奥のほうへ移動してみる。なるほど、微妙に空間が歪んでるし、フレーム越しにもイヤな気配がしっかりと伝わってくる。


 とりあえず使いやすそうなマシンピストルを実体化して構えて……と。



「「―――、―――ッ!!」」



 パッと見たところはファンタジー系の定番モンスター、ゴブリンって感じだな。初心者の相手としてはちょうどいいかもしれない。……人に近いシルエットに弾丸をブチ込むという微妙なプレッシャーさえなければ。


 えぇい、撃たねばこちらが撃たれるのだッ! やるしかないッ! 相手は素手だから撃たれるというよりは打たれるが正しいけどなッ!


 両手でしっかり構えて―――食らえッ!!



「「―――、―――ッ!?」」



 よしッ!


 さすがはファンタジー、血肉が飛び散るようなことはなく、光の粒(たぶん魔力?)になって消えていく。これならグロ表現による精神的ダメージは気にしなくても大丈夫そうだ。


 残りのゴブリンも向かってくるが慌てることはない。下手に右往左往せずに、しっかりと大地を踏み締めて引き金を引くだけ。



「目標をセンターに入れてスイッチ……ってねッ!」



 ◇◇◇



 魔獣を倒すにつれて場の妖気が薄まり、ついにはゴブリンたちも実体化できなくなった。視界に表示されているレーダーからも妖気の濃い部分はなくなったし、これで初戦は勝利ってことかな?


 さて、これからどうしたものか。


 ……逃げ遅れた人でも助けて、恩でも売りつけるか? 選択肢を増やすという意味でも悪くないとは思うんだけど。


 よし。レーダーに内蔵されている生体センサーを起動して、対象を人間に設定―――お、かなり微弱だが人間の反応アリときたか。生命反応が弱いのは心配だが、戦える状態ではなさそうというのは俺には好都合だ。


 怪我している可能性を考えると医薬品のひとつでもあればいいんだけど……探してる間に手遅れになられても後味が悪い。この倉庫は純粋な武器庫っぽいからな。この世界でも共通かわからないが、赤十字のマークの箱でもあればよかったんだが。


 とにかく現場に向かうとしよう。フレーム装備の人間とかち合わないことを祈りながら。



 ◇◇◇



 センサーを頼りに船の底のほうへとやってきたワケだが……なに? 俺は幸運と不運が交互に訪れるような運命にでもあるのかな?


 微弱な生命反応……ね。そりゃシリンダーに浮かんだ脳みそなんて生命反応は微弱でしょうよ。このクソッタレが。



「……いや、暴れるのは後回しだ。情報を集めるのが先だ。思い込みと先入観でドイツという国全てを憎むのは避けたいからな」



 反射的にバズーカを実体化させようとしたのを抑え込んだ自分を褒めてあげたいくらいだ。すまない、何処の誰かもわからない人たち。あんたたちの尊厳を守るまえに、もう少しだけ時間をくれ。



 情報端末をかたっぱしからハッキングしまして……感応の加護を使ってディスクにガッツリと書き込んで。中身の確認はあとにしたほうがいいだろう。どうせロクでもない研究をしていたのは確実だろうし、それを知ったせいで頭に血が上る可能性だってある。


 俺は戦闘のプロじゃないからな。いざというときに理性を感情が塗り潰す可能性はかなり高いという前提で間違ってない、ハズだ。


 ……あぁ、まったく。これがゲームなら、もっと考えることの少ないミッションから始まるだろうに。いきなり世界の闇の部分を知る羽目になりそうとか、手加減無用もいいところだ。もう少し夢や希望を見せて欲しかったなぁ。


 とにかくこの場には1秒だって長居したくはない。さっさと後始末をしてしまおう。



 ……バズーカを構えたときに、いくつもの“感謝”の感情が伝わってきたのを感じ取ったのは俺が感応の加護を持っているからだろうか。


 本気で彼らの冥福を祈ったのはただの自己満足でしかないが、一応これでも女神の知り合いがいるからな。多少はご利益があると信じてみるさ。

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