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空に描いた虹の向こうに。  作者: 相沢 毬藻*
第一章:失ったものはどこへ消えたのか。
7/9

僕と同じ少年

 鳥っぽいような豚っぽいような、そんな食感の肉はお世辞にも美味しいとは言えなかった。当然といえば当然だ。調味料などこんな所には無いのだから。


「お前、気がついたらここに居たって言ってたよな?」


 食べ終わった彼は僕に話しかけて来る。


 口に頬張ったままの僕はこくんとうなづく事で返事をする。

 肉が硬い訳では無いのだが、どうもかみ切りにくく、彼のようにすぐに食べる事が出来ないのだ。


「目を覚ます前の記憶はどうだ?何かあるか?」


 僕は首を振った。

 勿論嘘だ。でも、そこを探られると転生者である事が露見する可能性がある。だったら無いことにした方が安全だ。


「……なるほど、お前は『神子』だな?」


「……」


 ざわざわと木の葉が風に吹かれて擦れ合う音が響く。


「無言ってことは肯定と捉えていいんだな?」


 どうして……


「どうしてわかったの……?」


 思わず、尋ねてしまう。

 彼に対して、僕が神子であることがわかるような発言をしていないはずだ。

 何で分かったのか、単純な好奇心。


 彼はその琥珀色をキラリと輝かせ、ニヤッと笑って話す。


「まず気になったのはお前のその服装だ。こんな森の奥深くにいるというのに、泥1つついていない。明らかに不自然だ」


 僕の服を指さす。

 白いワイシャツに黒いスキニー。

 この世界に来る直前の服装を、僕の体に合わせて縮められているようで、違和感はない。森の中に居るのに全く汚れていないことを除けば。


「2つ目、お前はその年でこの森にたった1人でいた。かなり危険な獣もいるこの森に、大人が一人で行かせるわけがないし、そもそも行かせない」


「君だってそんなに歳は変わらないだろ?」


「俺は強いからいいんだよ」


 何言ってんだお前、とでも言いたげなジト目でこちらを見る。


「えっと……そうですか」


 見ているのが辛くなり目をそらす。

 そういうお年頃なんだろう。


「……なんかムカつくけど、次行くぞ。3つ目に、お前を見つけた状況が『神子』の伝承とそっくりだったんだよ」


 神子とは、文字通り神様の子供という意味だ。

 伝承の内容はこうだ。


 ある日夫婦は、道端に身綺麗なこどもがたおれているのを見つけた。その子供は記憶がなく、ただ神様の子供だと名乗った。その夫婦はその子供を自分達の子供として育てることにした。すると、突然たくさんの幸運が舞い込むようになり、その夫婦と子供は幸せな生活を送った。


「よって、俺はお前が神子だと考えて鎌をかけてみたんだか……どうやら当たってたみたいだな」


 ……ということは、まんまと乗せられてしまったわけか。

 まぁ神子である事がバレても、転生者であることがバレなければいいのだが。


「お前顔に出やすいな、考えてること」


 子供の体になった影響で、感情の制御が効いていないのかもしれない。


「それで、僕が神子であることがわかったわけだけど、どうするの?」


 正直、僕にとってバレたことよりもこの先のことが大事だ。

 僕はこの世界のことが全くわからない。出来れば、誰かと一緒に行動したい。


「そうだな……とりあえず、近くの村まで行ってゆっくり考えるか。ここじゃ長話は危険だからな」


 彼は座っていた石から立ち上がると、こちらに手を差し伸べ


「俺の名前はエリアス、お前は?」


 僕はその手を掴み、答える。


「僕は……アオイ」


 そうして、僕の異世界での生活は、エリアスとの出会いから始まった。

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