第六夜
こんな夢を見た。
夢の中で私は、雨の子だった。
両親である雨は自分たちの身分を隠して生きており、私も自分が雨の子ではないと振舞っていた。
「雨なんて最悪」。そう言ってクラスメイトのTちゃんはため息をついた。
ね、と彼女に同意を求められ、私はただ頷く。
両親は雨が降ってはいけないと、運動会にも入学式にも来なかった。
今日は良いじゃない、と私は心の中でつぶやく。今日は雨が降ってはいけない日ではないではないか。
そう思ったが、Tちゃんにとっては重要な日だったらしい。
「新しい靴を買ってもらったのに、履いて来られなかったもの」
「濡れたら乾かせば良かったじゃない」
別の子がそう言ったが、彼女は首を横に振る。
「ママがダメって言うの。キャンパス地だから色落ちするって」
あぁ、と周りがため息をつく。
「雨なんてこの世からなくなっちゃえばいいのに」
Tちゃんの言葉に、周りは苦笑している。
「そんなこと言わないでよ」
そう言ったのは、雲の子だった。
「雨が降らないと、身体が重くて怠くて堪らないわ」
そう言った雲の子は、少し太めの身体を揺する。
「それにずっと晴れだと、あなたの両親だって過労死しちゃうわよ」
そう言われたTちゃん――太陽の子は、まぁね、と肩をすくめた。
「ま、たまには雨が降らないと海がなくなっちゃうしね」
「私、雨の音が好きよ。あの匂いも、湿った空気も」
そう夕闇の子が言い、朝露の子も同意した。
それでも私は、自分が雨の子だとは言い出せず、人の子の振りをしていた。
何故なら彼女たち全員も、自分が自然の子であることを隠していたからだった。




