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夢千夜  作者: コトヤトコ
6/7

第六夜

こんな夢を見た。

夢の中で私は、雨の子だった。

両親である雨は自分たちの身分を隠して生きており、私も自分が雨の子ではないと振舞っていた。


「雨なんて最悪」。そう言ってクラスメイトのTちゃんはため息をついた。

ね、と彼女に同意を求められ、私はただ頷く。

両親は雨が降ってはいけないと、運動会にも入学式にも来なかった。

今日は良いじゃない、と私は心の中でつぶやく。今日は雨が降ってはいけない日ではないではないか。

そう思ったが、Tちゃんにとっては重要な日だったらしい。

「新しい靴を買ってもらったのに、履いて来られなかったもの」

「濡れたら乾かせば良かったじゃない」

別の子がそう言ったが、彼女は首を横に振る。

「ママがダメって言うの。キャンパス地だから色落ちするって」

あぁ、と周りがため息をつく。

「雨なんてこの世からなくなっちゃえばいいのに」

Tちゃんの言葉に、周りは苦笑している。

「そんなこと言わないでよ」

そう言ったのは、雲の子だった。 

「雨が降らないと、身体が重くて怠くて堪らないわ」

そう言った雲の子は、少し太めの身体を揺する。

「それにずっと晴れだと、あなたの両親だって過労死しちゃうわよ」

そう言われたTちゃん――太陽の子は、まぁね、と肩をすくめた。

「ま、たまには雨が降らないと海がなくなっちゃうしね」

「私、雨の音が好きよ。あの匂いも、湿った空気も」

そう夕闇の子が言い、朝露の子も同意した。

それでも私は、自分が雨の子だとは言い出せず、人の子の振りをしていた。

何故なら彼女たち全員も、自分が自然の子であることを隠していたからだった。

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