第五夜
こんな夢を見た。
夢の中の私は、地獄にいた。
死んだばかりの私は、特に酷い罪を犯したわけではないので(多少はあったけれど、許される範囲なのだそうだ)有罪ではないと、言われていた。
しかしながら、その後に私は有罪判決を言い渡されてしまった。
罪状は、死後恋罪。死んだあとにまで人に恋をするのは、いけないことなのだそう。とはいえ、ただの恋なら少しだけの罰で良かったのだと、私の足に括りつけられた鉄球は言った。
「よりによって、相手が閻魔様とはねェ」
私は、足に重しをつけられたまま、さらし者になっていた。次々と訪れる亡者達が、私を気の毒そうに見ていく。
私の頬には、赤い字で罪状が書かれている。
一目見た閻魔様は醜い顔で、疲れた顔で、緑の肌とターコイズブルーの髪を持っていた。
「死んでなお何かを求めるなんて、アホだよお前は。普通はみんな、執着を落として行くのにさァ」
鉄球は延々と喋り続ける。
「閻魔様と、どうなりたいんだよォ?」
私は少し考えてから、呟く。
「…髪を、解いてあげたいし、肩を揉んであげたい」
そう言うと足首の鉄球は深くため息をついた。
「お前はまだ言うかい。何かをしてあげたいなんて、この世でいちばんつまらなく自分勝手な欲求さァ」
「自己満足は、世の中でいちばんの、罪さァ」
鉄球はそう言うと、ぐゆぐゆと大きさを増していく。
「永遠に罪を背負って、地獄にいればいいさァ」
はい、と、私は言う。
鉄球はいつの間にか、閻魔様になっていた。




