第四夜
こんな夢を見た。
夢の中での私は、未来にいた。目の前には私よりもだいぶ背が高く、のっぺりとした顔の(私から見て)未来人が座っている。足をもつれさせたように交差させた座り方は、恐らく足の長い未来人特有の座り方なのだろうと、夢の中の私は納得した。
「それでは、20xx年にはまだ犯罪があったのですね」
未来人は光る玉を撫でながら、私に問う。えぇ
と答えるとフムフムと未来人は頷いた。
「という事は、kamiさまは、まだ存在に気づかれていなかったということですね?」
「かみ、さま?」
私が問い返すと、未来人はその私の反応で分かったと言うように、再び頷いた。
それから、私にkamiさまについて、説明をしはじめた。
「人は、不安があるから犯罪に走るのです。kamiさまの言う事を聞いていれば、不安はありません。故に犯罪はありません」
「不安が、なくなるのですか?」
「えぇ」
未来人は言う。
「人間の3大幸福の、睡眠、性行為、食事がきちんと満たされるのです。他に不安など、無いでしょう」
「…お金は…」
「数千年前に消滅致しました」
「名声は…」
「皆がきょうみを示すのは、kamiさまのみです。他人には、興味がありません」
「地位は」
「kamiさまの前では、皆平等です」
ふむ、と、私はそこで考える。どうやら未来は私から見るとひどく退屈そうだ。
「では未来の楽しみとは、何ですか?幸福とは、何ですか?」
私の問いに、未来人はうっすら笑った。
「先祖をこうして呼びだして、過去よりはまともな生活をしていることを、喜ぶことです」
そう言った私の子孫は、心底幸せそうに見えた。




