悪役令嬢になったから大人しくしようと思ったけど、正ヒロインの各種イチャイチャイベントに耐えられなかった結果
「あー、マジかこれ……」
気付くと私は乙女ゲームの悪役令嬢に転生していた。鏡に映る自分の姿を見つめる。長い睫毛に真っ白な肌。流れる様な金色の髪。
この金髪豚野郎はエルレーナ嬢。所謂、ゲームで破滅させられる腹黒悪役令嬢だ。
「こいつ確か最後はギロチンで公開処刑されるやつじゃん……」
よりによって割とエグい処刑方法で殺される悪役令嬢に転生してしまった。ギロチン……痛いのかな……勘弁して欲しい。
確か処刑されるのは3年後か……。いわゆる正ヒロインを嵌めて王子様と一緒になろうとするけど、2人の愛の力に敗れて地獄に落ちる……まあありがちな展開が待っている。
……まあ結構好きな作品なんだけどねー。結構やり込んだ。
ぶっちゃけ言うと結構頭がお花畑な作品ではある。向こう見ずな王子様にお花畑なヒロイン。そしてお馬鹿な悪役令嬢。
まあしかし王道なシナリオにベタ甘なシーンを加えれば名作たり得るものだ。
……私は若干イライラしながらやっていたが。何でこうしないんだ! そんなアホなヒロイン幾らでも潰せるだろうがっ、この阿保悪役令嬢っ、と何故か悪役令嬢目線で周回をしていたものだ。
良く乙女ゲーム仲間にも、何でそんな悪役令嬢に感情移入してるの……怖いよ、とドン引きされたなぁ。性格悪いから仕方ないと思うよ……と心外な納得をされていたが、失礼な話である。
まあリア充はくたばれと思うが別に乙女ゲームの中までカップルに嫉妬していて悪役令嬢を応援していたわけじゃないからな。本当だ。
わざわざ妄想のチャートを作って悪役令嬢による王子様調教ルートとか考えてないからな。深い考察の上に導き出したりしてないからな。
とは言えわざとクソプレイして悪役令嬢を勝たせるのも面白くなかった。悪役令嬢視点の乙女ゲーとかないのだろうか。
「まぁ……転生しちゃったもんは仕方ないし、ギロチンされない様に大人しくしよ……」
選択肢は頭に入っている。大人しくしてれば平気でしょ。ギロチンは嫌だからなぁ。
ーーーー3年後。
「ああ、どうか踏んでください……エルレーナ様」
「どうしてこうなった……」
足元で跪く、全裸の王子様を見ながら呟く。何という事でしょう。あの王子様が3年で変態マゾ豚に。
……やってしまった。目立つつもりはなかった。だけどつい王子様とヒロインの山程ある各種イチャイチャイベントにイラつき……王子様を調教してしまった。なお正ヒロインはこの光景を目撃し、引きこもってしまった。気の毒である。
……ま、まぁ仕方ないと思うよ。だって目の前に蚊が飛んでたらイラっとして潰すよね。それと同じ……うん。
そ、それにさ私悪役令嬢なんだから役目を果たさないと世界に不都合がでると思うからさ……うん、仕方ない。
ヒロインも王子様も私も死んでないし……王子様幸せそうだしさ。別に良いよね、ただ、何故か周りから密かに極悪役令嬢だとか性悪女だと噂されるのだけは心外である。
ただ、ちょっとイラっとしちゃうだけなのだ。
「も、もっと下さい!」
「はいはい」
王子様のケツを踏みつけながら、私は確信した。案外これが真のハッピーエンドではないだろうかと。