10-7
≫下地島空港 管制塔≪
その時、下地島空港は、生き残っていた残敵の掃討と、避難する一般人を乗せる輸送機の監視ために、特戦群が浸透していた。空港ターミナル周辺を10式戦車や16MCVなどで固めた後、一気に強襲、制圧する作戦は、見事に成功。もとより、包囲された時点で逃げ場などない彼らになす術などなく、ましてや、篭城戦など到底不可能だった。
主力の普通科から奪還後の後始末を頼まれた特戦群は、残党を始末しながら、万一の再奪還を防ぐために防御陣を整えていく。管制塔最上部の管制室には、エプロン内の監視任務を引き継ぐべくソードたち第5班の4人が登ってきていた。
「……ここだな」
「おっしゃ。やっと最上部だ」
一番乗り、とばかりにインターは階段を駆け上がって管制室に足を踏み入れる。一部窓ガラスが割れていたが、通信機器類などは大した傷もなく、割れている部分から程よい風が入り込み、汗ばんでいた4人に涼しい癒しを与えている。ヘルメットを取って風にあたろうとしたインターを、ソードが止めた。
「やめとけ、狙撃がまだどこかにいるかもしれない。油断するな」
「ちぇ、やっと涼しくなれると思ったのに」
「もう少しの辛抱だ」
「輸送作業は順調みたいね。前任の班が言ってたとおり、障害もなさそうね」
ピクシーがエプロンの様子を見ながら言った。伊良部島・下地島の奪還宣言以降、急ピッチで進んでいた住民の避難活動。最初はC-2のみで行っていたものが、今では手空きになったヘリも使った大々的なものになっていた。安全が確保された道路を通じて、島内の収容地から空港に移送し、島の外に逃がしていく。C-2に乗せた人らはそのまま沖縄か本土に直行、ヘリに乗った人らは、一旦宮古空港に降り立った後、そこからやはりC-2かC-1に乗って沖縄や本土に飛んでいく。
その様は、まさしくゴジラ映画ではおなじみの大避難風景そのものだ。敵の妨害の様子もなく、それ以前に、周囲数キロは味方が完全に制圧している。猫一匹入り込む隙がないこの鉄壁の防御を突破できる力は、もはや敵には存在しないであろう。
眼下の光景を見ながら、ソードが任務を引き継いだことを無線で伝える横で、インターは、床にある黒ずんだシミを見て言った。
「床に血痕があるな。ふき取ったらしいが、まだ痕が残ってる」
「この窓の穴は、開戦初期にあったものだったのかもしれません。ターミナル内に、誰かいたのかも」
「開戦当時、ここは日本のLCCが訓練に使ってたはずだ。たぶん、その時担当にいた管制官あたりだろう。この弾痕もそれによるものとて見ていいだろうな」
「この卓にもふき取った痕があるわね」
「抵抗するまでもなく、さっさと殺しちゃったんだろうなぁ。お気の毒に……」
インターは目を細めて複雑な表情を浮かべた。相手は民間人。銃を持った相手に抵抗などできなかったはず。とんでもない“殺戮”をしてしまったもんだと、無線をし終えたソードは内心で憤慨したが、その時、彼の視界にあるものが入った。
「なんだこりゃ……?」
卓の下に軽く隠すように、黒い板のようなものが横たわっている。しゃがんで引っ張り出すと、出てきたのは液晶画面やキーボードが破壊されているノートパソコンだった。管制官の私物、というわけではないだろう。赤の他人の私物をわざわざ壊して隠すようなことはしない。恐らく、極東革命軍のものだ。
他のノートパソコンはほとんどが粉々にされているようだが、不自然なことに、これだけは破壊が不完全だったのか原型が残っていた上、隠していたらしいとはいえ、比較的ソードらの目に届きやすいところに置かれていた。
何とも妙な話だとは思ったが、「時間がなくて壊しそびれたんだろう」と、ソードはそこまで気にも留めなかった。それに、何れにせよここまで壊されていては、全く使い物にならないことには違いない。ピクシーがソードの手元を覗き込みながら訝しげに聞く。
「これもまた随分派手にぶっ壊れてるわね。ゴーストの連中の?」
「たぶんな。インター、どうだ?」
「ん~……」
コンピューター系に詳しいインターに渡して見せるが、彼もまた、壊れたノートパソコンのいろんな箇所を見ながら、苦い表情を浮かべた。
「こいつぁハードディスクじゃなくて、フラッシュSSDを使うタイプみたいだな。破壊された箇所からして、SSDは生きてるはずだが、画面もキーボードも派手にやられてる。全くもって使えんなこりゃ」
「何か情報が入ってるかもとは思ったが……流石に、俺たちへの漏洩を危惧したかな」
「いや、でもちょっと待てよ……?」
ふと、インターは電源のボタンを軽く押す。すると、驚いたことに電気が通り始めた。当然、画面は壊れているので、番組放送時間外にテレビ画面に出るテストパターンが大きく歪んだような、おかしな画面が表示されており、モニターとして機能していない。しかしそれでも、インターは勝利を確信したような晴れた笑顔を見せた。
「よし、電気は通ってる。ならこっちのもんだ」
「でもキーボードもマウスパッドも壊れてるわよ? マウスは手元にないし……」
「安心しな。俺に任せろ」
そういってインターは、内ポケットから一つのUSBメモリーを取り出す。白いカバーで覆われた一見普通のUSBメモリーだが、彼はそれをUSBポートに刺すと、3秒としないうちに抜き取った。差して抜いただけ。しかし、これで“ハッカーとしての”彼の目的はしっかり達成されていたのである。
「SSDが壊れていないなら、これで一発のはずだ」
「お前、またそれ持ち歩いてたのか……」
ソードが呆れた表情を浮かべてそういった。このUSBメモリーは、市販では売られていないインターの自作品だった。コンピューター系に強いインターは、常に複数のUSBメモリーを持ち歩いており、必要に応じて様々なUSBで以って情報の送受信やデータ収集をしていた。今回使ったのもまた新しいものだったが、最近入ったばかりの新人であるチェリーは、意味深に取り出したUSBメモリーを見て首をかしげる。
「差して抜いただけですけど、何したんです?」
「なに、ちょいとデータを抜かせてもらった。パソコンの中にあるデータは全てこいつの中だ」
「え、それだけでですかッ?」
「それだけ。と、ちょっとそこのパソコンを拝借して……」
インターは、室内にあった壊れていないほうノートパソコンを持ってきた。『下地島管制』と印字された黄色いテープが張られており、これが、管制塔に元から備わっていた別のノートパソコンであることを教えている。
電源を入れて、キーボードを軽快にタイピングし、ウイルスなどが入ってないかを素早くチェック。何もないことを確認すると、先ほどのUSBメモリーの上部にある小さなスイッチを横にスライドした上で挿入し、データを参照する。
「ほれ見ろ、データはばっちりだ」
「す、すごい……」
表示したファイルには、抜き取ってきたらしいデータファイルがずらりと並んでいた。今しがた使ったUSBメモリーには、挿入した瞬間フラッシュSSDの記憶領域に侵入し、データを一気に掻っ攫ってUSBメモリーに持ってくるというソフトウェアを組み込んであった。元々は、某世界的ハッカー集団に所属していたとあるハッカーが使用していた技術であるが、インターはそのプログラムを自分なりに組み上げ、こうした時に使っていたのだ。
「待ってろ、何か情報が入ってるかもしれない」
「セキュリティとかかかってると思うが、いけるか?」
「まあ、案の定ロックがかかってた。でも、こういうのはバックドアを仕掛けて……」
そういってまた軽快にタイピングし始めるインターを、チェリーは肩を抜かしながら唖然とした表情で見ていた。
「あの……あの人、ハッカーか何かなんですか?」
「実際その通りだぞ」
「えッ?」
驚いた表情をソードへと向けるチェリーだが、ソードは表情をこれっぽっちも変えず、さらに解説をし始めた。
「見ろ。今また新しくUSBを差したろ? あれはあいつ自身が作ったバックドア型のウィルスが入っていて、記憶領域の的確な場所に“裏口”を仕掛ける仕組みになっている。あとはあいつ自身がそのバックドアを通じて中枢に侵入して、データを参照するって寸法だ。データ自体は盗めても、データそのものにセキュリティロックがかかっていては意味がないからな。こういうときのための予備プランをアイツは用意してる」
「あの人、何者なんですか……?」
「就職するところを間違えた、ただの天才ハッカーよ」
「え゛……」
引きつった顔を浮かべるチェリーに、ソードは簡単に説明し始めた。
元々のインターの素顔は、小さな頃より、プログラマーの親の影響を受けてプログラミングの勉強ばかりしていたガッチガチの理系人間で、その過程で、ソフトウェア等も自作し始めていた。その後、その成果を生かしてハッカーとしての技術を養っていき、高校時代は、ラスベガスで行われたハッカー世界大会に日本代表の一人として出場し、見事日本勢初優勝に導いた。まさに、電脳世界での英雄とも言うべき人間であり、その能力は今なおも健在。最近ではハードすらも自作し始めた、コンピューターガチ勢であった。
「懐かしいな、そんな大会にも確かに出た。相手サーバーのセキュリティを突破した時の喜びといったらねえぜ。お前らも体験するべきだって」
「無茶言わないでよ」
「そ、それなのに、なんで陸自なんかに入ったんです……?」
「元々は防衛省のサイバー部門に入りたかったんだがな。なんか適正あるからってんでこっちに回されちまった。でもいいさ、こっちもこっちで、割といい職場だからな」
「冗談言いなさいよ、絶対入る“企業”間違えてるって……」
頭を抱えて呆れ顔でそう返すピクシー。チェリー以外は同期で特戦群に入った身ではあったが、今でも、この彼のハッキングの様子を見ていると、「やっぱり自衛隊なんかより別のところ行くべきだろう」という念が絶えない。元より、彼自身は戦闘技術に長けているわけではなく、世間一般で言うところの“専門職”のような扱いで入ったに過ぎないのである。本人はそれでも特段不満はないらしいが、絶対“天職”があるだろうと、常日頃から疑念の目線を向けられていた。
勿論、インターも将来的にはサイバー防衛隊に入って「ガッチガチのセキュリティを作ってやる」と豪語しているが、彼が許すなら、今すぐにでも彼はそっちに行くべきであろうと、ソードやピクシーらの意見は一致していた。恐らく、今日からはその輪にチェリーも入ることだろう。
インターがデータを洗っている最中、階段方面から別の声が聞こえてきた。
「おーい、そっちどうだ?」
「……あぁ、リーパーさんですか」
リーパーたちの部隊だった。後ろには部下が2人しかいないので、残りは下に置いてきたのだろう。代わりに、部下である“ベアード”の手によって、誰とも知らない怯えた様子の男が連れて来られていた。OD色の制服を着ているが、自衛隊のものではない。また、そこまで傷がついていなかった。
「……誰です、その男」
「途中でロッカーに隠れてたのを見つけてな。中国軍にしかない勲章つけてた」
「敵ですか」
「ああ。このまま下に連れて行くのでもよかったんだが、階級が高かったのと、回収した人員名簿確認したら、ここを統括している人間だったみたいでな。この部屋についてなんか知ってるかもしれない思って、試しに連れてきたんだが……」
ソードは、肩にかけてた肩章を見る。大校(大佐)の階級を示しており、ここにいた占領部隊の高官であったことは間違いない。重要情報を知っている可能性も十分あるとして、リーパーはここに強引に連れてきて、何か隠しているものがないかなどを聞き出そうとしたのだ。
……だが、仮にも軍人である彼が、そう簡単に口を割るわけもなく。隣にいた“ライアー”が中国語で尋問するが、目を背けるだけで何も語らない。リーパーとしてもダメ元で連れてきただけなので大した期待はしていなかったが、成果がないならないで肩は落としてしまう。
「まあ、しゃべるわけないか」
「大人しく情報本部にでも引き渡したらどうです? というか、本来は速やかにそうするって手順でしたし」
「一応、CPの許可は取っておいたんだが……、ま、このままじゃ埒が明かないのには違いないか」
するとその時、インターがソードたちのほうを向いて待ったをかけた。
「あぁ、すまん。待ってくれ、じゃあ最後にこれ聞いてくれねえか?」
「なんだ?」
リーパーとソードが覗くと、そこにはパスワードの入力を要求するテキストボックスが表示されていた。どうも、ハッキングソフトなどを使ってもここから先は流石に入れそうにないらしく、パスワードの解読にも時間がかかってしまうので、パスワードの内容だけでも聞き出せないかというのだ。下の注意書きを見るに、「参照レベル4の人のパスワードが必要」ということらしい。
「参照レベル4の軍人のリストだけは確認しました。大佐以上は全員です」
「つまり、アイツも入っているのか」
「はい。まあ、時間かけてパスを解読してからでもいいんですが、ヤバイ情報だったらマズイでしょうし」
「んー……でもなぁ……」
その当人が口を割らなければ意味がない。ライアーが中国語で何度となく聞くが、現在進行形で黙秘権を行使している。流石に、この場で吐かせるのは無理があるか。というよりは、その権限が自分たちにあるかも怪しいものであるし、問題になる前にさっさと連れて行ったほうが吉かもしれない。インターも、こればっかりはしょうがないかと、早々に諦めたことで、リーパーもここから彼を連れ出すことに決めた。
「じゃ、とりあえずコイツは下に――」
と、リーパーたちがさっさと連れて行こうとしたとき、
「あ、じゃあ私吐かせましょうか?」
「「「え゛え゛ッッ」」」
と、一人の女性の声と、男女混じった3人の濁った声が室内に響いた。だが、言った本人は3人の反応に首をかしげながらも、
「実際、時間をかけてられないような情報があったら厄介です。熱核兵器とかやらかした相手でもありますから、念には念を入れたほうがいいかと」
「んー、それもそうか。じゃあお願いして――」
「まままま待ってくれね? ちょっと待ってくれね?」
リーパーの言葉をさえぎる様に、ソードがチェリーを説得しにかかった。彼だけではない。すぐ隣にいるピクシーも、先ほどまでパソコンに付きっ切りだったはずのインターまでも。“事情”を知らないリーパーは、なんのこっちゃかわからない。
「な、なんだ。やってくれるならいいじゃないか。許可は貰ってるし」
「いやいやいやいやそういう問題じゃないのよ!」
「オッケー落ち着くんだチェリー様。尋問はちゃんと本土のほうでやってくれるから、な? な? この後の任務もあるから落ち着こな? な??」
「別にいいじゃないですか。ちょっと聞くだけですって。すぐ終わりますから」
「いやすぐ終わっちゃうような奴だとダメなんだってッ。この世にはハーグ陸戦条約とかジュネーブ条約とか捕虜取り扱い法とか色々とあるんだって。日本の信用とかその他諸々が太陽系飛び越えちゃうんだって。な? わかるか?? な???」
「何わけわからないこといってるんですか。さっさとやりますよ」
「いやお前なんでこういうときに限ってアグレッシv――」
しかし、ソードの言葉は届かない。そうなる前に男のそばに歩み寄ったと思ったら、肩膝をついてしゃがむ。青ざめた表情のソードが、尋常じゃなく怯えつつ、半ば諦めながらも止めに入った。
「な、なあ、やっぱりやめn「さっさとパスしゃべらんかゴラァ!!?」ひぃいいいいい!!!??」
室内に響き渡る“怒号”。窓ガラスが揺れるのではないかと錯覚するほどの絶叫の発生源は、今の今まで丁寧口調でどこか一歩引いた物言いをしていたはずの、“チェリー”その人だった。リーパーたちが一様に「ポカーン……」とする中、一見様は間違いなく勘違いするほどの凶変振りを見せたチェリーは、目の前にいる男の胸倉をつかんで、“ガチ切れ顔”で怒鳴り散らした。怒鳴られている彼も、「は???」と、完全に困惑しきった様子であった。
「テメェ中国語わかってるくせに何も言わねえってかァアッ!? パス教えろって言ってんだこっちァ! さっさと口割れや! こちとら手間かけたくないんじゃクソがァ!!」
「え、な、なな、なにこれェ!?」
リーパーが思いっきりたじろいでそう叫んだ。二人の部下と揃って完全にドン引きしている。ソードたちは「あちゃー……」といった顔で、頭を抱えてため息をついていた。
「だから言ったじゃないすか……アイツに任しちゃダメなんすよ……」
「あ、アイツ、何があったんだ? まさか、二重人格だったりするのか?」
「いや、人格は一つしかありません。もう一つのアイツとしか言いようがないわけです」
「じゃあ何だよ? あれじゃただのヤクザじゃんかヤクザッ」
「ヤクザですよ。正確には親のほうですけど」
「え?」
呆気とするリーパーら3人に、肩を落としながらソードが言った。
「アイツの両親、神戸の指定暴力団の幹部と、それと繋がってる武器密売組織の商人だったんすよ」
「え゛、マジ!?」
「マジです。その親の教育もあってか、暫くは滅茶苦茶人格荒かったらしいんですが、その両親の破局もあって田舎の親戚の家に預けられたらしいです。その後はちゃんと更生して、俺たちが知ってるような感じにはなりましたけど、時折、今みたいに素のほうが出ちゃいまして……」
「え、こっちが“素”なの?」
「素です。“こっち”が」
普段は大人しく素直なチェリーだが、これは実は仮の姿――というほど大げさではないが、理性を働かせた通常の性格はそうであるだけで、一度“リミッター”を外すと、本来の荒れた性格が表に出てしまうのだという。一度、5班の面子で外食に出かけた時不良“集団”に絡まれたことがあったのだが、その時にこの性格を出して、“拳を使わずに”“たった一人で追い払った”ことで発覚した。以来、彼らはこの状態になった彼女を“黒化”と呼んでいる。
「破局した時に縁切ったとはいえ、ヤクザと武器密売人が親だと企業就職も辛いってんで、滑り止めの自衛隊にどうにかして入ったに過ぎないんですが、アイツ、銃撃戦はまだしも、“格闘戦”はめっぽう強いでしょ?」
「あ、ああ、格闘徽章持ちだって聞いたが……」
「本人曰く“英才教育”って奴で、昔からそういうの叩き込まれたらしいですからね。ましてや、遠慮というリミッターを取った今のアイツは……」
「ヒィェ……」
「よく自衛隊入れたな。親にそういうのいると弾かれるんじゃなかったか?」
「実際そうなりそうだったんで、面接の時に必死にアピールしたそうですよ。面接の段階でもう身辺調査で知られてたっぽくて、親とは縁切ってもう清廉潔白ですって頭下げて。実際、何も犯罪とかは犯してなかったんで何とか入れてもらえたみたいです」
「うへぇ……」
完全に先輩としての気迫が消え去ってしまったリーパーであるが、どうしようもないと同情するソードら3人。女性は怒ると怖い、などという度合いでは済まないような光景を見せられては、さしもの屈強な男共であろうとも精神的に屈するしかないのである。
無論、今では自らそんな性格を出すようなことはしないし、むしろ好ましいことではないことは自覚はしているようであるが、しかし、必要に応じてか、もしくは、ブチ切れたなどで堪えきれなくなった場合は、やはり今でも出してしまうようである。今回は前者のほうであるが、リーパーたちにとっては想定外過ぎたのか、時折殴る蹴るまでし始めたのを見て、ついに物理的に距離を置き始めた。
「なあ、前々から思ってたけどさ」
「はい?」
「第5班、やっぱり面子濃すぎないか? 世界に勝っちゃった天才ハッカーのパソコンオタク、リンゴを軽々と握り潰すレベルの怪力美女、ヤクザな裏の顔を持つ新人美少女。そんで、傭兵だった親譲りの抜群の射撃センスを持つ“人間FCS”なお前ときてさ……」
「……まあ、自覚はしてます」
「はぁ……、これ、人権理事会には見せらんねえなぁ……」
「その前に警務隊から隠すことから始めましょうか……」
遠い目をしながらそう言葉を交わすソードとリーパー。彼らは改めて思った。彼女に、立場の弱い人間を預けることはしてはならないと。結局、この“甚振り”は5分もの間続き、男のほうが完全に折れてパスワードらしい言葉をしゃべった後、口封じとして一発顔面に蹴りを入れて気絶させてしまった。
完全なるワンサイドゲーム。どこからどう見ても、金をゆする女ヤクザと貧相な中年男性の構図にしか見えないのだが、そんな彼女は、終わった後妙に“すっきりした”表情をしていた。
「終わりましたッ」
「お、お疲れさまです……」
隊長のはずなのに自分から敬語になってしまうソード。この面子の中では一番下っ端の新人であるはずが、すっかり立場が逆転してしまっている。だが、彼女は気にすることもない。「たまには発散したほうがいいですね!」などと、よくよく考えると末恐ろしさしかない一言を述べて、パスワードをインターに伝えた。
かの男は、正確なものを伝えたらしく、伝えられた8桁の数字でファイルをアンロックできた。罠としての偽モノである可能性を考えてフォルダを漁ったものの、それらしいものはない。本物とみて間違いなかった。
「これは……文書か」
「枚数は多くないな。日付もついているが……」
中にはたったの5枚のみ。そのうち、今日の日付のものを見つけ、中身を開く。ちょっとした前文に、箇条書きで何らかの指示、もしくは連絡事項が記載されていた。
「ここにいる敵に対する、今日の分の指示内容みたいだな。えっと……」
そう大した量ではない。「执行(実行)」とだけ題されたその文書は、ワードテキストにして1枚分で済む容量だ。全員が画面を覗き込み、文書の内容を目で見つめる。どうやら、高台から送られてきたものらしい。時間は今日の早朝。F-35Aによる空爆が始まる30分前だ。
「『諸君らが保護した来賓に問題はない。殲-20に乗せた上で、突撃を実行させる。予定通り、諸君らの役目はこれで終了である』? なんだ、捨てられたってのか?」
「敵の反撃が妙に散発的だったのはこれだったんだな。これ以上の必死に抵抗は無意味だってことだ。あいつ等も、最初からこの結末になることを知ってたのか」
「来賓ってのは、報告にあった例の日本人パイロットでいいのか?」
「ああ、みたいだな。もう一人は……おおっとぉ、こりゃすごい。敵の総大将だとよ」
「リーダーが自ら乗るってのか。すげえなこりゃ」
J-20に乗る日本人パイロットについては既に情報を貰っていた。何か分かったら連絡を入れるよう言いつけられていたが、この文書を見る限り、彼は問題なく組織に帰順していることを示すのみで、特段目新しい情報はない。ただ、もう1機のJ-20には、敵軍の総司令官が自ら乗ると書いている。敵の司令官のプロファイルを存じていないので何ともいえないが、元空軍パイロットだったのだろうか。そこそこ歳は食っているだろうとはいえ、最新鋭機を操るほどの腕前だ。警戒が必要なのには違いないだろう。
前文は、ここに駐留していた味方を称える内容で締められており、その下に、今後の予定について箇条書きで書かれていた。
「えっと、これは……」
「抵抗の方針とか、高台側の今後の指揮方針とかかかれてますね。まあ、大したことないでしょう」
「なんか『美国航母』とかって書いてるんだが、攻撃するのか?」
「そりゃあまあ、するにはするんじゃないですかね。向こうだってそれくらいの展開は予想して――」
と、そこまでインターが言葉にした時だった。
「――ゲェッ、うそォッ!?」
すぐ隣にいたピクシーが驚愕した表情で叫んだ。すぐそばで甲高い声を出されたせいで、周囲の肩が一瞬震えたが、ソードがすぐに問いただした。
「なんだ、どうしたんだ?」
「下見てよ一番下! ヤバイの書いてる!」
「ヤバイの?」
ソードをはじめ、全員が一番下を見た。そこに書かれていた中国語を日本語に訳すと、このようになる。
「『熱核兵器の殲-20適合は無事完了した。これより敵艦隊に突撃する。我が中華民族に栄光あれ』……、えェッ!?」
ソードは前のめりになり、パソコンを持ち上げて画面を自らの眼前に持ってくる。何度呼んでも同じ文面。熱核兵器を、敵艦隊の攻撃に使うと書いてある。自らの目を疑った。まさか、身内間で嘘情報を流し合うことはないだろうとは思うが、しかし、ここまでありえない文面が並んで、おいそれと信じる人間はここにはいなかった。
「バカな! あれはここにはないと、俺たちがこの目で見たはずだ!」
普段冷静なリーパーでさえ、この取り乱し様である。敵の手にはないと信じていた熱核兵器が、なぜ今J-20に取り付けられているのか。J-20は熱核兵器を搭載することは本来できなかったはずだ。だが、ここで言う“適合”とは、間違いなくそういうことであろう。そのようにしか読めなかった。
「熱核兵器を使って、艦隊を潰すってのかッ?」
「ここで言う艦隊って、つまり、あの……」
「ああ、間違いない。“多国籍軍”だ」
「アメリカの空母がなんちゃらって、つまりそういう意味なのか!?」
だとすれば、事態は最悪だ。今、多国籍軍の艦隊は宮古海峡を通過している真っ最中であり、空母は当然その中心にいる。艦同士の幅は数キロ前後であり、もしその中心で熱核兵器が爆発しようものなら……。
「奴らの言い分が正しいなら、熱核兵器は350キロトンレベル。アメリカが配備してる350キロトン級のW78弾頭と大体同サイズだったと仮定すれば、形状にもよるけど、J-20のウェポンベイにはギリギリで入るかもしれないッ」
「でも入るだけだろ!? 強引に押し込んでやっとなレベルなはずだし、それに、北朝鮮はそこまで核兵器の小型化に成功してたのか!?」
「そこまでは知らねえぜ相棒ッ。でも、こんな身内の首脳間の文書のやり取りでわざわざ嘘を書く必要はない。ましてや、核兵器のことなんてデリケートすぎる! 冗談じゃなく本当だと見たほうがいい!」
「冗談じゃねえぞ畜生!」
ライアーは感情任せに近くの管制卓を拳で殴りつけた。そして、ハッとした表情を浮かべて、さらに言った。
「……まさか、最初から、これのためだったのか? 一週間も耐え抜いたのに、あとは用済みとばかりにここを捨てて、そして、今日は全然敵の航空機が飛んでこない……」
「そう見たほうがいいでしょうね。共産党政権の打開とかどうとか、そんなのは“大義名分”に過ぎなかったんです。全ては、こうなることを見越して、アメリカの空母を数隻でも潰すための……、“エサ”だった」
「仮に、今ここで空母がやられたら……」
「……間違いなく」
「アジアを中心として、世界の、軍事バランスが“崩壊”します。そして人類は、核兵器の力を思い出すでしょう」
インターの推測は的を得ていた。仮に艦隊中心部で350キロトン級の熱核兵器が起爆しようものなら、その圧倒的な破壊力で以って、米露の空母は全て破壊される。かの巨体といえど、熱核兵器の爆発を間近で受けて、ただで済むとは思えない。沈没するかどうかはさておいても、少なくとも、放射能で汚染され、艦橋は吹っ飛び、原子炉も大ダメージを受けてしまい、米軍自慢のダメコン能力を発揮しても、到底使い物にはならないだろう。損傷の度合いによっては、最悪、自走・曳航不可能として“自沈”の選択肢だって浮上する。
さらにそれだけではない。周辺の護衛艦はそれよりもっと小さいため、爆風などで転覆は確実。仮にそうでなくとも、起爆した際に発生した大津波によって、転覆か、最低でも艦内や、外に設置されたレーダーなどの機材は壊滅的被害を受ける。どうあがいても、絶望しかない。
どの艦艇も放射能まみれとなり、乗員らの被爆は確実。作戦の遂行など到底不可能であり、しかも、宮古海峡は放射能で汚染され、海空ともに通過できなくなる。そして、その放射能の風は、最悪沖縄にも……。
「政治的にも大ダメージだ。あの巨大空母はアメリカの軍事力、政治力の象徴。それが3隻も死んでみろ? ただでさえ対外介入には消極的な今のアメリカは、かつてのモンロー主義に逆戻りだぞ?」
「国民も黙っちゃいない。艦そのものはまだしも、乗員は膨大な数が死ぬ。一から育てなおすのには、何十年という時間と、超大国でさえすぐには用意できない程の大金が必要だ。しかも、今回はロシアの空母までいやがる」
「その全てが消え去った時、アメリカはこれをトラウマとして海に積極的に出なくなる。ロシアも軍事的な介入を躊躇し始めるはずだ。力の空白が生まれる」
「そうなった時、アジアの力の空白を埋めるのは……」
「――中国、よね?」
ピクシーがそう一言呟いた瞬間、全員が全ての目的を理解した。共産党への復讐にしては、北京への攻撃が中途半端。せっかく占領した伊良部島と下地島の戦力配置は素人同然。おまけに奪い取られるとなると今度は組織だった抵抗をする気配がない。戦略的にそれほど意味があるとは思えないハイジャック事件。台湾も、韓国も、攻撃はされど大それた占領行為などはされず自軍戦力を損耗させるだけ――。
全ては、繋がっていた。エサとしての伊良部島・下地島は、占領さえすれば最低限の目的は達成される。そこそこの装甲戦力を置いたのも、本気であるというアピールのための“演技”でしかない。台湾、韓国まで狙ったのは、複数の同盟国を狙うことでアメリカが確実に動くようにするためで、アメリカの旅客機ハイジャックも、アメリカに“本気を出させる”ため……。
そして、アメリカ軍の空母が、複数の護衛艦を連れて宮古海峡にやってきたその時、そこを熱核兵器で一気に屠ることで、アジアでの戦略バランスを大きく狂わせると共に、アメリカの軍事力を背景にした国際外交に大きな釘を刺す。自国民に大量の被害が出た時のアメリカがどうなるかは、ベトナム戦争を見れば一目瞭然である。時の大統領が違えば、真珠湾攻撃のような、モンロー主義から一転したブチギレ参戦もありえたが、今の大統領はその真逆。ここで、敵が得意のプロパガンダで「まだ熱核兵器はある」と豪語しようものなら、国民が動くより前に、大統領が動く。北朝鮮が核兵器戦力を持った瞬間、今までの方針を一気に変えて、首脳会談を持ちかけたほどだ。
仮にそうなった場合、アジアは軍事的空白地帯となる。穴を埋める誰かは必ず出てくる。
――それが、“中国”だ。
「今、中国軍は国連からの要請で大陸に引きこもってる。核兵器の被害は受けない!」
「宮古海峡を使えないのは痛いでしょうが、だが彼らには台湾海峡が残っています。波は荒いですが、戦略的には十分有効活用が可能なはずです」
「南シナ海にも入れる。シーレーンも、元から宮古海峡を通すようなルートは設定してないから……、待てよ、中国の受ける軍事的ダメージってそんなにないぞッ」
「政治的な信用は確かに失墜するはずだが、“それだけ”だ。それは時間を経てれば回復する。だが、一度作った諸外国の恐怖心はすぐには消し去れないし、米中の軍事力のギャップを埋める時間稼ぎには最適だ。仮にアメリカが軍事力を立て直したとしても、その頃には、中国はアジアどころか世界の盟主たりえる軍事力を持ってる!」
「奴ら、中国に反旗を翻すと見せかけて、中国有利の世界に変えようって腹積もりなのかよ!?」
ベアードは自らの感情のままにそう叫んだ。これしかない。彼らの真の目的は、これだったのだ。全ての説明がつく。何もかもが、ライバルとなる大国、アメリカの軍事的、政治的象徴である“巨大空母”を引き寄せるための、盛大な“茶番”だったのだ。そして、この“本番”が成功した暁には、ある程度の中国の国際的な信用の失墜を引き換えにはなるが、それでもほぼ自動的に、数十年にわたる、アジアを中心とした世界での政治的・軍事的な盟主としての立場が保障される……。
中国は空母を急ピッチで増強中である。人員確保も順調に進んでおり、いずれアメリカの機動部隊と相対する存在となるとは言われていた。だが、極東革命軍は、そうなる前に、アメリカの空母部隊を、一部だけであっても潰すことで、そのアジアの“主導者”としての立場を担保させようというのだ。
ソードは思い出した。開戦初日、彼らは動画でのメッセージの最後に、こういっていた。
“――さあ、我が祖国に、戦争を教えよう”
これは即ち、言葉通りの意味ではあるが、更なる少し違った意味もある。戦争とは外交の道具であり、外交を有利にするためのツールであるという“原点”を祖国に教示すること。そして、“戦争”というものをうまく利用することで、容易に世界の盟主たらんとすることができることを示すのが、彼らの真の目的だったのだ。だが、ソードには理解できなかった。
「(こんなの、教示なんかじゃない。人類が、長い年月をかけて歴史と共に作り上げてきた、今の国際秩序に対する“暴虐”だ!)」
こんな形でアジアを中心とした世界秩序が大混乱になってしまえば、その影響と傷は地球全体に深く入り込む。成功させるわけには行かない。ピクシーは、すぐにインターに問いただした。
「アメリカの空母は今どこ!?」
「今頃はもう宮古海峡入ってるはずだ! 島の奪還を宣言してもう2時間以上経つ!」
「すぐに反転させましょう! 敵の攻撃が来る前に!」
「いや、無理だ!」
チェリーの進言を、リーパーは顔にしわを寄せながら蹴った。
「多国籍軍は多国籍軍の命令系統で動いてる。こっちの一言で中止させるなんてできないッ」
「熱核兵器が飛んでくるんですよ!? そんな悠長はこといっていられな――」
「いや、そうもいかん! 多国籍軍ということは、複数の国の軍隊が集まってできた部隊だ。各国の思惑が複雑に絡み合ってるし、一国の判断で全て投げるなんてことはできない」
「しかも今は、アメリカの鶴の一声だって効果があるか分からない。軍の指揮系統には、ロシア軍も深くかかわっている。進むか否かで、絶対ロシアとアメリカは対立する。即決ができるような司令部の構成じゃない。今の国連安保理みたいなもんだ!」
「じゃあ、止められないんですか!?」
「止められないんじゃない、“止まらない”んだ! 今から引き返せって言ったって「今忙しい」って返されるのがオチだ!」
クソッ、最悪だ! ソードは内心で思いっきり頭を抱えて叫んだ。今更になって引き返せといっても、確かに向こうは聞く耳を持たないだろう。ただでさえ、日本側の事情のせいで本来の攻撃の予定を遅らせることになったのだ。またこのタイミングで帰れって言おうものなら、多国籍軍側から、それを構成する各国からなんて言われるか。まずもって、無視するのは当然であろう。熱核兵器云々も、証拠を今すぐ示すことはできない。この文書だけでは、こちらの混乱を狙った偽造データという風な疑いをかけられてしまう。
「でも、どうにかして阻止しないと! どうすればいいの!?」
インターに助けを求めるピクシーだが、言われても困るといった表情を浮かべるしかない。だが、それでもインターは、文面の最後が妙なのに気づいていた。この文面の最後には、自分たちの民族の栄光を称える言葉を最後に持ってきている。
「この最後の言葉、わざわざ書きますか? まるで今から死にに行くみたいじゃないですか」
「そりゃあ、使うのは熱核兵器だし、最悪死ぬ覚悟で――」
と、そこまで言った時、
「――待てよ? 350キロトン級の核弾頭を搭載できる空中発射型のミサイルって、確かなかったよな?」
リーパーは気づいた。そう。現代において、350キロトン級の核弾頭を搭載できるミサイル(巡航/対艦ミサイル)はほとんど存在しない。アメリカや旧ソ連が運用していた巡航ミサイルでもせいぜい200キロトン、フランスのASMPが300キロトン級のTN81弾頭を搭載できる程度で、350キロトンともなると、弾頭が重いわでかいわで大型化してしまう。かつてはメガトン級の核弾頭を搭載したミサイルもあったが、大きすぎて爆撃機に搭載するのが普通で、J-20なんていう戦闘機に搭載する用の小型のミサイルに搭載することはほぼ不可能だった。勿論、J-20が搭載できる兵器の中に、350キロトン級の核弾頭を搭載できるミサイルはない。
「じゃあつまり、適合したってのは……」
「お前の言葉を借りれば、文字通り“押し込んだ”ってことだ。ミサイルに搭載したって意味じゃない。文字通り“腹の中にくっつけた”んだ。大きさだけで考えれば、乗らなくはないはずだからなッ」
「ちょっと待って! それじゃあJ-20は“特攻”するしかないじゃない!」
「だから“突撃”なのさ、ピクシー。その言葉の通り、空母の真上に突撃して、“自爆”するつもりだッ」
「そんな……ッ」
そこまでして空母を沈めたいか。その執念を、ソードは理解することはできなかった。
だが、ミサイルを撃たないとはいえ、大きな脅威であるには違いない。腹の中に熱核兵器を抱えたJ-20は、いわば“有人の核搭載ステルス巡航ミサイル”というべき存在であり、見つけることが困難なステルスという利点を生かし、艦隊の懐に突っ込むことができる。死が約束された有人ロケットという意味では、現代版の『桜花』とも表現できようか。
だが、ミサイルとは違って速度は比較的遅い。音速もそうずっと超えられないはずだし、弾頭は重いので動きはどうしても鈍くなる。おまけに、ステルス機に強いE-2Dだって飛んでいるはずだ。ミサイルでないなら、対処のし様がある。
「す、すぐにCPに――」
「いえ、一々CPを経由していたのでは間に合いません。直接空の上に掛け合いましょう」
「空の上って……」
「チェリー、そこの卓の無線機使えるか?」
「え? え、ええ……破壊はされていませんし、予備電源は先ほどから入ってますので……」
「よし、ならちょうどいい」
時間がない。ソードはすぐに指示を出した。
「空自のガードチャンネルにあわせろ。『AWACS』を呼びだせ。俺が出る」
空の上では決戦が行われようとしている最中、
彼らは、更なる爆弾発言を聞くことになりそうだった……




