表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Guardian’s Sky ―女神の空―  作者: Sky Aviation
第8章 ―6日目 Day-6―
53/93

8-2

≫AM011:22 沖縄県宮古市 下地島さしばの里≪




 ――生憎の雷雨に見舞われた伊良部島・下地島にて、浸透作戦に従事している特殊作戦群には、新たな任務が与えられた。

 両島の熱核兵器の有無について結論が出る目処が立った今、それと同時並行に、『隠密占領/破壊任務』が付与されることになった。伊良部島・下地島両方にある、それぞれの敵の重要施設の一部を、隠密裏に占領し、少しでも情報を集めた後、必要とあらば破壊すること。また、状況に応じて、そこを利用する敵兵の始末も行われる。少しでも敵の戦力などを削ぎ、いよいよ明後日に決行されることになった、本格的な伊良部島・下地島奪還作戦に向けての下準備を行っていく。


 この時、第1深部偵察チーム・小隊第5班シノビの4人も、下地島の東部にある宿泊施設『さしばの里』の中にある、『レストランさしば』を奇襲するべく動いていた。『さしばの里』は、下地島では空港以外で唯一人が詰まる場所でもあり、元々は、訓練を行っていた民間航空会社の乗員や空港の職員の宿舎として用いられていた。現在は民間の宿泊施設としてリニューアルしているが、極東革命軍はそこにいた職員らや宿泊客たちを追い出し、隣の伊良部島にいる民間人の収容所に押し込めた後、伊良部島方面を監視する前線指揮所兼、司令塔たる下地島空港が使えなくなったときの予備施設、そして、一般兵士の宿泊場所として活用していた。つまり、下地島空港以外では、下地島の中で人の出入りが活発な場所というわけである。


 先ほどまで、夜間警戒に当たっていた部隊と入れ替わりで日中警戒部隊が出て行ったばかりであり、あわただしい空気がひと段落したところだった。ここを少数精鋭で攻め立て、一気に占領する。ここを押さえることができれば、すぐ目の前にある国仲橋を含む、下地島と伊良部島を結ぶ線の確保が容易になるはずだ。また、一部弾薬はここにも備蓄してあるらしいことが、事前の情報収集で判明している。


 まさに、下地島の警戒をする上での重要施設であった。ここを押さえて、伊良部島方面からの味方の進撃の障害を取り除くことが、4人に与えられた任務だった。


「――ていっても、これ、本当は明日の夜間にやる予定だったんだろ?」

「本当はな。でも、官邸側の意向らしい。よほど急いでるみたいでな」


 灰色の空から小さな槍のように降ってくる雨に打たれながら、愚痴のようにはき捨てたインターに対し、同情の念を抱きながらソードも返した。

 本来は、夜明け方に行う奪還作戦にあわせ、その数時間前の深夜帯に実行するはずだった。だが、例の能動的な攻撃禁止令を出したことで、予定が若干遅れてきているところであったがために、その分の遅れを取り戻すべくやれることは早いうちにやるという意味で、この命令をさっさと下したらしい。また、奪還作戦後の味方の動きを阻害する要因を、早めに消し去りたいという理由もある。


 こうした行動はタイミングが重要でもあるため、少々本来のやり方から外れたものであるが……しかし、幸いにして今は雷雨であり、視界はほとんど聞かない。わざわざこの日にこの任務を当てたのも、この気象条件を利用しようという目論見があった。

 『さしばの里』奇襲に参加するのは、ソード率いる第5班の4人と、リーパー率いる第1深部偵察チーム・小隊第1班ハチスカの5人の、あわせて9人。『さしばの里』を奇襲する部隊は、彼らの他にあと2個班、さらに、支援のために1個班が待機している。

 里を襲撃するには、人数的には明らかに少ないが、敵もすべての施設を使っているわけではない。指揮所として『レストランさしば』を、居住施設としてすぐ隣の『下地島コーラルホテル』を使っているのみだった。この二つを奇襲するだけならば、この4個班でも十分という判断である。

 全体を指揮しているのは、ソードたちと一緒に突撃する、第1班だった。


「(コンビ組むのがリーパーさんとこでよかったー……)」


 まだ比較的新米の類であるソードは、心底安心していた。今回、奇襲のためにコンビを組む第1班の面々は、特戦群の中でもベテランで揃っている。隊長であるリーパーも、普段からよくしてもらっている良き先輩であった。連携重視となれば、彼らに合わせて動けば万事問題ないだろう。心強い相方がチームになってくれたことを、天に感謝した。


「0925、あと5分」

「ハチスカリーダー、こちらシノビリーダー。アタック5分前。オンポジション。送れ」

『シノビリーダー、こちらハチスカリーダー。了解。5分前。ウェポングリーン。スタンバイ。送れ』

「シノビリーダー、了解。ウェポングリーン。スタンバイ。終わり」

『ハチスカリーダー、了解。終わり』


 頼もしい男性の声が無線で届いた。訓練でも聞きなれたその声は、至って冷静で真面目なものだ。

 第1班は『レストランさしば』の北東側から攻め込む予定で、ソードたち第5班は南側から攻める。人の出入りがほとんどなくなるタイミングを狙って、周囲を見張っている一部の見張りを倒し、一気に二つの出入り口に近づく算段だ。

 『レストランさしば』のほうは下地島空港と繋がる直通電話がある。早い段階で襲撃が悟られるのはよろしくないとして、ここを瞬時に落とす。他はその後だ。


「……0930。時間だぜ、相棒」

「チェリー、直近の見張りは?」

「小銃持った敵二人。レストランの最上部の窓に見張り一人」


 双眼鏡を持ったチェリーが伏せながら報告した。雨が強くなり、視界も悪くなってきた。音が響きやすいのが難点だったが、最小限の発砲でどうにか切り抜けるしかない。『下地島コーラルホテル』を襲撃する2個班も、準備が整った旨の無線が届いた。


「支援の3班は?」

「配置についたわ」

「よし。いくぞ。ゴーサインだせ」

「了解。ハチスカ、こちらシノビ。こちらは接近を開始する」

「ノブナ、こちらシノビ。接近する。レストラン最上部の見張り1。キル頼む」

『了解。ターゲット視認。5秒待て』


 その無線応答の直後、『レストランさしば』の最頂部にいた見張りの敵が、弾かれたように頭から倒れた。屋根に転げ落ちてこない。サプレッサーを装備したこともあってか、音はほとんど聞こえないばかりか、車軸を流すかの如き雨音に完全にかき消されてしまっていた。

 それを合図に、4人は白い物置小屋の影から飛び出し、素早く接近。『レストランさしば』の近辺はまともな障害物は、バラバラに植栽された大小の木々ぐらいしかないため、一度出たら止まらず一気に走る。サーペンティーン隊形で玄関前の駐車場にたどり着いた後、そこにいた2人の敵兵を、チェリーとピクシーが背後から奇襲。口と鼻を押さえつつ、喉元にナイフを力任せに差し込んだ。意識が遠のく彼らが最後に見たのは、緑色のヘルメットをつけて冷徹な表情を浮かべた、明らかに味方とは違う“軍人”であった。


 動かなくなった“遺体”は、隠す場所がすぐ近くにないため、そのまま出入り口まで持っていく。レストランの床は地上より1メートルほど上にあり、6段ほどの小さな階段を上がった先の出入り口は、屋根つきのテラスを兼ねていた。そこにあったはずの椅子やテーブルは、全て店内に持っていかれたらしくすっきりとしており、テラスから店内を仕切っていたガラス窓は、内部が見えないようにするためかカーテンらしきもので覆われていた。


 ――ゆえに、出入り口前まで近づいても、中の人たちは気づいていない。ソードたちにとっては実に都合がよかった。


 この出入り口のガラスも、新聞紙を水に漬けて隅々まで貼り付けることで、中が全く見えないようにするという徹底振り。電気が通っていないためか、自動ドアも作動しない。2人の遺体を出入り口のすぐ近くに置いておいて、突入のための隊形を整える。


「リーパー、こちらソード。こっちは配置についた。そっちは?」

『今着いた。今から食堂前まで行く。今サラとライラからの報告を待っている』


 サラとライラは、隣のホテルのほうの襲撃に向かっている班のリーダーである。同時襲撃でなければならないため、少しの間ここで待つ。息を潜め、内部がどうなっているか、インターが聞き耳を立ててみた。


「……玄関前は誰もいない。たぶんもっと奥だ」

「“ヘビ”使ってちょっとだけ中を覗け。もしかしたら仕切りがあるかもしれない」

「あいよ」


 ソードの指示に従いインターが取り出したのは、小さなロープのような細長い管と、それに繋がったスマホ型の小型端末だった。民生品を独自に改造した光ファイバースコープで、先っぽには小型カメラが仕込まれ、さまざまな方向に駆動する。また、スマホ型の端末を用いることで映像を補正し高画質にできる優れもので、その独特な動きから、彼らの間では“ヘビ”の愛称で呼ばれている工作機器だった。

 音が立たないよう、横開き式のドアを少しだけ開け、ヘビを少しずつ入れていく。案の定、扉の前には誰もいない。食事区画との間に仕切りを設けているわけでもなかった。ヘビを仕舞いながら、「障害なし」と報告してくる。


「(なら、突入してさっさとフラグ投げたほうが早いわな)」


 その時、リーパーから突入スタンバイの無線が入る。他の部隊も配置についたようだ。


『ソード、店内に入ったらすぐに敵の動きを止めて機材ごとすべて破壊しろ。こっちが援護する』

「了解。開幕フラグでいきます。ご注意を」

『了解。部屋全体にいきわたるように複数投げ込んでやれ』

「了解」


 敵が指揮所にしている部屋はすぐ目の前だ。持ち込んだ機材ごとすべて破壊し、下地島空港との連絡が取れないようにするのが最優先となる。そのために、必要とあらばと、フラググレネードも準備してきた。

 リーパーがすべての班に対し、突入を指示。インターがドアを強引に開け、残り3人が突入。同時に、M67手榴弾を3発“いつもより少し遅れて”投げ込み、すぐに伏せて目を閉じ耳を塞いだ。3秒後、タイマーが作動し、空中で盛大に破裂したM67の爆発音は、大小の破片を伴ってホール内に何度となく反響した。それだけではない。こことはまったく別の、非常口を通じて裏から入ってきたリーパーたち第1班は、手榴弾の炸裂にあわせるように、やはり複数のM67手榴弾を投げ込み、ソードたちからは届かないところにいる敵の動きを封じにかかった。


 炸裂した直後の動きは、まさにプロフェッショナル。HK416カービンライフルを構え、移動しながら目に見える敵に次々と5.56mmの銃弾を浴びせていく。出入り口方向から第5班、その右からは裏口進入してきた第1班から無数の銃弾が飛んでくることになり、まさに十字砲火を受ける様相を呈した。

 ホールは、テーブルごとに木の板を使った仕切りによって半個室が作られていたが、それらもすべて虱潰しに制圧。元より、少し背を伸ばせば簡単に見えるので、隠れていた敵兵も即座に射殺された。


 ……隣接していた食事を受け取るカウンターや和室などを含め、ここをすべて制圧しきるのに、1分とかからなかった。無駄弾もほとんどなく。訓練で何度となくやったような状況ゆえか、何の苦もなく制圧に成功する。


「クリア」


 その一言に、どこか安堵感をにじませるソードだった。


 ――その後、リーパーたち第1班は隣のホテルのほうの制圧に手を貸すために一旦離脱。レストラン内部の調査は第5班に託されたため、死体を隣接していた和室に放り込みながら、別の部屋なども検見。一部まだ生きていた敵兵がいたため、問答無用で射殺した。


「ホールにつれてきた上で尋問してもよかったんじゃないの?」

「そんな余裕ないんだと」


 上からは「人も少ないだろうからとにかく敵がいたら殺していい」とのお達しであったため、容赦なく殺す選択を取った。

 レストラン内部を一通り見て周り、敵がいないことを確認すると、リーパーに敵を排除しきったことを無線で伝えつつ、敵の装備や機材をチェックし始めた。


「敵の装備と衣服とかも使いたいわねぇ。変装とかに使えそうじゃない」

「大抵は穴開いてたり血ついてたりして使えないだろ。使うなら装備のほうだ」

「だろうと思った」


 割と本気で残念がるピクシーは、敵の装備や弾薬をまとめながら、あるものを発見した。


「……あれ、これって通信端末?」


 板によって仕切られたいくつかの区画の中で、ひとつだけ、通信に使うような大型のラジオっぽい機材と、重要そうな書類が置かれていた。広さ確保のためか、隣の区画と仕切る板を強引に切り倒しており、テーブルなどもつなげてある。

 ここにあった敵の死体は数人だけだったのでさっさと仕舞ってしまったが、その時は気づかなかったのであろう。調べると、電源の入っていない小さなノートパソコンと繋がっている。インターが、その機材に繋がっている線を見やった。


「バッテリーは……あぁ、あれ自家発電か。あの窓の外にあるインバーター発電機と繋がってるんだな」

「開戦以降こっちにくる電力は消えてるからなぁ。下地島空港みたいに自家発電やってるところは除いて」

「これ、損傷はないな……どれ、何かデータないか見てみるか……」


 そういってインターはノートパソコンを起動し、データを漁ろうと試みる。正直見てて危なっかしいぐらいにてきぱきと画面を切り替えていくが、元々、ハッカーとして生計を立てようとしていた身である彼にとっては、もはや手馴れたものだった。

 適当にデータを漁っている間、ふと、隣にあるファイル群を見つけた。スタンドに立てかけてあり、パラパラとめくって見る。通信記録と思しきものが多数あり、どうやら、最重要事項は無線ではなく、独自に構築した通信ネットワークを用いているらしい。ここは、通信拠点としても下地島空港の予備施設のような役割を持っていたようだ。


「(下地島空港と通信記録は共有してたのか、こりゃあありがてぇ拾い物だぞ……)」


 そう思いながら何回か捲っていると、ひとつの妙な紙が入ったページを見つける。今まで見たものより、シンプルだ。


「……なんだ、こりゃ?」


 『最重要的报告事项スイチョンヤォダバォガォシィシャン』と題がふられた用紙には、その報告事項の識別番号と思しき英数字が並んでいた。『D589GT5F』と番号が振られたものに関しては、手書きで「!」のマークがついている。よほど重要そうだ。


「おい、ちょっとこの英数字を検索かけられるか?」

「検索ぅ? ……え~っと、ちょっと待ってくれな。たぶん、ここをこうアクセスして……」


 刻みのいい音を立てながら、見るからに厳重そうなアクセスコードを次々と突破し、ページをどんどん更新させていくインター。そのうち、識別番号を入力するためのものであろう検索ボックスが中央に表示され、ソードが見つけた「!」マークのついた番号を入力する。

 すると、出てきたのはこれまたシンプルな2つの文章だった。中国語で書かれた内容を、インターが解読する。


「えっと、なになに……あー、『来賓をそちらに送った。直に着く』?」

「来賓? 何の話だ?」


 客人でも取り扱っていたのか? もちろん、ここでいう来賓とは、文字通りというわけではないだろう。何かしらの隠語のはずだ。文書が作られた日付は一昨日の7月23日。深夜の時間帯だ。


「ていえば、俺たちが見たあの……」


 あの日、ソードたちは下地島空港で、アジア系の男性が複数の護衛を引き連れて輸送機キャンディッドに乗っていく姿を確認していた。あの厳重な護衛、あの厳重な監視、“来賓”と表現するにはピッタリだ。


「あれやっぱりすげえ要人だったんじゃねえか?」

「だが、この文書にもそいつがどんなやつなのか書いてねえな。一人らしいのはわかるが」

「ああ。んで、この2つ目が……」


 少し下に目線を移して、再びインターが読み上げる。


「――『高台は突撃の準備を指示した。備えよ』……」

「突撃?」


 これもまた意味がわからない。高台、というのは恐らく北朝鮮にある極東革命軍の司令部を指すのだと仮定しても、突撃、とはどういうニュアンスなのだろうか。何かしらの、いつもとは違う行動を起こすつもりなのは間違いない。文字通り、どこかに突撃するのだろうか。だが、どこに?


「(なんだ、最重要機密っぽいから本当に何か重要なことを隠してるとは思うんだが……)」


 しかし、その思考は、横から聞こえてきたピクシーの声で中断される。先ほどまで、別の部屋や個室を漁っていた彼女は、その両手に一枚の大きな地図を持っていた。


「これ見てよ。他の部屋漁ってたら、敵の兵器の配置図があったの」

「おぉ、でかしたぞ。この場所をCPに――」

「そうじゃないのよ。これ見てどう思う?」


 怪訝な顔を浮かべて早口でいわれるがままに、ソードとインターは隣のテーブルに広げられた地図に書かれている敵戦力の配置図を見た。これでも、レンジャー訓練等の過程で、敵戦力が大体どういったロジックでどこに配置されやすいかという理屈は頭に叩き込んでいる。地図を一通り見た二人は、すぐにその異常性に気づいた。


「……これ、まともに隠したりしてないのか?」

「対空火器なんてその傾向が顕著よ。どうせ上から監視されたら場所がばれるといっても、せめて攻撃されにくいように森の中に隠したりとか、一番攻撃されたくない場所に配置するとか、そういう法則性は見出せるはずなのに、あいつらこれっぽっちもそれに従ってないのよ」


 ピクシーの言葉は事実だった。これまでに搬入してきた対空火器は複数あるが、そのほとんどが、適当な道路や田畑のどこかなどに“露出”させているのだ。

 あまりにおかしい。対空火器の一番の弱点と言えば、陸上での破壊工作だ。はっきりいって、航空機を使って攻撃をするよりは、自分たちも所属する特戦群等といった特殊部隊が、破壊工作でもって少しでも数を減らしてもらったほうが手っ取り早い。うまくやれば爆弾落とすよりローコストだ。

 伊良部島や下地島には、そのような脅威から身を守るのに適した木々が生い茂った場所は結構ある。広い田園地帯の中に小規模の森林地帯が点在する形で存在しており、木々の間に隠すように置いて、その周辺を森林地帯ごと警戒するという形でもいいはずだ。それがダメなら、市街地のどこかにおいて、その周辺を市街地ごと監視するでもいい。


 ……なのに、ほとんどが、周りの視界が広く確保されてしまっている、田園地帯の真っ只中の道路においている。これでは、「どうぞ壊してください」と言っているようなものだ。


「視界が広いから監視しやすいとか?」

「だが、それだとレーザーJDAMとかを誘導するためのレーザーを簡単に照射できちまう。自ら弱点を晒すようなもんだ」

「それに、こっちが軽MAT持ってたら簡単に潰されるわよ? そういう奇襲を防ぐために周囲を物理的に防護できる場所が必要だっていうのに、まさかあいつらそれ知らないの?」

「そりゃあないだろう。奴らは元は中国兵だろ? そこらへんの基礎知識ぐらいは習ってる筈だ。そんな初歩的なことを忘れてるほどの“新米ザコ”ってわけじゃあるまいし」


 インターが苦笑しつつも、怪訝そうに首をひねりながらいった。

 ――妙なのはその配置の仕方だけではない。下地島空港や伊良部島の住民を収容しているらしい市街地エリアには確かに対空ミサイルの部類はあるが、あとは疎らだ。被攻撃時、下地島と伊良部島を繋ぐことになるので非常に重要であろう橋の近辺に、対空機関砲をほとんど置いていない。ミサイル系がひとつもないのだ。

 そりゃあ、確かに射程を考えればそのやり方もあるのかもしれないが、せめて一基ぐらいあってもいい。にもかかわらず、その他の対空ミサイルは、守るべきものがあるとも思えない、ただの田園地帯の真っ只中に放りっ放し。そんな無駄遣いがあっていいわけがない。

 周りを見れば、物を隠すのに使えそうな地形など幾らでもあるはずなのに、それらをあまり使おうとしない。あまりに不自然だ。


 そして、警備の兵士も、その規模に比して少ないようにも見えた。数は少ないが、戦車だって、下地島空港と池間添の町に1両ずつ置いていると思ったら、他の6両はバラバラにおいている。上陸されたら各個撃破されるだけだ。せめて、少しでも集団になって徒党を組むぐらいすればいいはずなのに。


「(何かが変だ……。こいつら、“本気でこの島を守る気があるのか?”)」


 確かに今は手を出していないとはいえ、命令さえ下ればすぐに攻撃できる用意はある。島内に入った班の中には、軽MATや、破壊工作に使うプラスチック爆弾を携えた者もいる。彼らが縦横無尽に走り回り、様々な形でそういった兵器を破壊しに回ることだって可能だ。敵だって、そうした展開を予測できるはず。


 ――なぜしない? 奪還をしにくることは敵だってわかっているはず。そのための対策は、できうる限りしておくのが普通だ。なぜ、それをやろうとしないのだ?


「(意味がわからない……本当に、島を占領するのが目的だったのか? それとも――)」


 ――その裏にある何かに、ソードはいやな予感を感じていた。こうした時の予感はなぜかあたるのが世の常。そして、その予感を裏付ける肝心な情報は、ここにはない。恐らく、下地島にまとめてあるのだろう。そこに一体、どんな情報が……。


 しかし、その前に、


「あのぉ……」


 チェリーが、遠慮気味に3人を呼んだ。


「無線、なんか騒がしいんですけど……なんでしょうこれ?」


 チェリーが言っているのは、味方のものではない。ノートパソコンの隣にあった無線機。下地島と北朝鮮の司令部を繋いでいる周波数だが、ここもその周波数に合わせていたらしい。中国語で交わされるその切迫した声に、インターは聞き耳を立てた。


「なんだ、妙に騒々しいな」

「フリゲートがなんかやらかしたらしい。……えー、なんだって……?」


 インターが耳を無線機のスピーカーに向けて聞こえたその音声。その内容を聞き続けているうちに、彼の顔は険しいものになった。いや、驚愕も混じっているか。


「――ふ」




「フリゲートが、組織から“反乱”した……?」




 無線から届いた切迫した雰囲気は、この場にも容易に伝播していった……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ