7-5
――エ○コンで聞いたなそんな台詞。そんなツッコミを小さくされつつ、リカオン隊各隊長機より、発射コールが飛んでくる。
『リカオン2、レディ……、ファイヤ!』
『3、ファイヤ。ファイヤ』
その2秒後には、レーダー上でも小型のブリップが分離したのが確認できる。計……8発。4機のF-2は、ASM-3を放ったと同時に左方に旋回を開始。戦果確認のため、低空で別空域に向かおうとしていた。バザード隊の4機のF-15Jも、それについていくように方向を変える。
ASM-3の弾道部のシーカーが水平線上に敵艦を捉えるまで、E-767から貰った位置情報を基に設定したコースデータを用いて、INS/GPS誘導で自動的に飛んでいく。
高度20フィートという、まさに海面を這うが如き超低空を突っ走っているが、速度は音速は軽く超えていた。後ろに白い水しぶきを巻き上げながら、まさに“槍”のように一直線に飛んでいく。
「リカオン2、リカオン3離脱開始」
「超音速の槍が飛んでったぞぉ……刺さるか?」
「弾着まで……約2分!」
発射されたASM-3群のすぐ隣に、弾着までの推定残り時間が表示される。時々修正がされるが、ほとんど変わらない。指定されたコースのデータはE-767も受け取っている。速度とコース、気象条件などから算出した時間によると、残り、2分。敵フリゲートの対空レーダーが最初にこれを捉えるはずだが、探知して命中するまでは、大体40秒前後しかない。
『三明』は、旧式フリゲートではあるが、搭載している唯一の対空ミサイルである『HQ-7NB』の警戒レーダーや射撃管制レーダーは、複数の目標を同時追跡可能で、最大4つの目標を同時に攻撃できる能力がある。探知から発射までのリアクションタイムも6秒以内と迅速性を確保しており、亜音速対艦ミサイルであれば、低空を飛んでいても高い撃墜率を誇る。
しかし、弱点がある。余りに低空を飛びすぎている対艦ミサイルに対しては、最大でも8キロ前後の有効迎撃射程しかもっておらず、複数のミサイルの飛来に対する迎撃能力に欠点がある。ましてや、超音速にもなると話はまるで違ってくる。今のASM-3の飛翔速度はマッハ2前後、高度は20フィート前後と、まず迎撃をする上での優位に立つことができない。仮に8キロでASM-3を捉えたとしても、その時点で弾着まで残り15秒前後。6秒以内どころか、2秒ぐらいでさっさとミサイル4発撃たなければ、発射中に命中するという結末になる。しかし、かの艦に、そんな性能を超えた動きができるわけがない。
――4発もあれば十分沈められる。ほぼ確信に近かった。『蒼岩山』の持っている自衛用火器も『HQ-7』と同型。多少の性能アップはされているだろうが、基本スペックは同じはず。迎撃に余裕はない。あとは、主砲やCIWSがどれだけ頑張るかに全てがかかっている。
「(でも、それとて有効射程に入ってから射撃するっていってもそう易々と迎撃はできないはず……)」
一発でもいい。せめて動けなくすればいいのだ。そうすれば、後でどうとでも料理できる。近くにいる護衛艦を呼び寄せるなり、ご近隣にいる米軍駆逐艦に後始末を頼むなりといったことは出来る。せめて、最低でも動けなくしなければならない。
「『しらぬい』、速度上げます。……33ノット、『益陽』に突撃をかけますッ」
「近くにいる観測機はいないか?」
「那覇第53飛行隊の『GRAY-HERON 2-7』がいますが、対空攻撃を避けるために今観測距離にいません。いかせるなら護衛機を引き連れないと……」
「あー、じゃあとりあえず南西SOC経由で横須賀に送信。グレイへーロン2-7、こちらで観測に向かわせていいか――」
重本が本土からの返答を待つ。水上射撃はしていても、同時に対空攻撃は出来る。グレイヘーロン2-7は対潜哨戒機のP-1だが、フリゲート相手とはいえ攻撃されたらたまらないわけで、今そもそも近くにいない。すぐにいける観測担当の機体が必要だが、本来近くにいるはずのCAP担当のF-15Jは、MiG-29とやりあっている最中で手があきそうにない。他にいるとすれば……。
「……まてよ、いるな」
羽浦はすぐに思いついた。ちょうど、護衛はやったけど特になにもせずに終わった機体が4機もいる。護衛を2機のみにし、残り2機を観測用に持っていくことは可能だ。もとより、そんなに距離は離れていない。そして、“戦闘機”だ。速度は出る。1分弱で観測できる距離に到達できる。
「南西SOCからです。横須賀が、行かせてもいいと」
「バザードの4機、半分護衛にいかせますか?」
「速度はあるか……。しゃーない、グレイへーロン2-7をすぐに『益陽』周辺に持っていかせろ。バザード、誰でもいいから2機抽出して合流ポイントIP-2Fに急行」
「IP-2F、了解」
さて、誰を連れて行こうかとも思ったが、とりあえず一番個人的に信頼できるあの二人でいいだろうということで、すぐに無線を入れた。
「こちらアマテラス。グリズリー、フェアリー。予定変更だ。弾着観測を行うP-1の護衛を行う。データリンク、合流地点IP-2Fを確認しろ」
『グリズリー、確認した』
『フェアリー、チェック』
「了解。そのままIP-2Fに直行。護衛対象のコールサイン、グレイへーロン2-7。このままの無線周波数でいい。向こうから入る」
『了解した。フェアリー、そのまま左後方につけ。遅れんなよ』
『了解です』
近藤と蒼波の機体が編隊から分離した。2機のF-15JとP-1がIP-2Fで合流するまで、1分弱。大丈夫だ、間に合う。『しらぬい』にもこちらから知らせた。ちょうど今、主砲での艦砲射撃が始まったようだ。
「双方の距離は9000mだから、今の速度でいくとすれ違うまで5分とかからない」
「その前に決着は付く……本気で短期決戦に持ち込む気だ……」
水上監視を行っている管制員たちも、レーダー画面を祈るように見つめていた。こちらがやれることはもうほとんどない。脅威となる敵戦闘機が今ほとんどない以上、あとは見守るだけなのだ。
「ASM-3、命中まであと1分」
「敵艦の想定レーダー圏内突入まであと45秒」
「頼むよ、そのまま見つかるな……」
祈る羽浦。その時、後ろから切迫した声が響いた。
「『しらぬい』、至近弾!」
至近弾。すぐ近くに主砲が着弾したのだ。複数の砲弾が一気に落ちてくる第二次大戦とは違い、『夾叉弾』というものはないが、代わりに、すぐ近くに主砲弾が一発でも落ちれば、現代のFCSの性能を持ってすればもうすぐ命中が期待できる状態だ。今までは後ろから撃たれていたので、極端な話、艦を左右に不規則に振っていればかわせたが、今は反航戦の状態だ。
……といっても、
「――これ、そのままぶつかるんじゃねえかッ?」
『しらぬい』は、『益陽』のすぐ右舷側を通り越そうという腹積もりのようだった。確かに、ある程度距離をとっての反航戦となると、横っ腹を向けているために、被弾面積が増える。逆に、真正面か真後ろから撃つときのほうが、その面積が減って攻撃側は当てづらくなる。しかも、速度が読みにくくなるため、偏差射撃もままならない。一方、防御側は主砲が撃たれたタイミングを見計らって回避するよう心がければいい。
だが、これは完全にギャンブルだ。当然ながら、ほぼ真正面から突っ込み合う形になるため、距離は急速に縮まる。まだある程度距離がある今ならまだ出来る回避も、近づいて来れば、高性能なFCSに物を言わせて問答無用でどこかに当てることは可能だ。双方がその可能性を持っているが、仮に真正面からの戦闘を避け、距離をとっての砲撃戦を行いたいのだとすれば、出来る限り早く転舵しないといけない。距離が近づけば近づくほど、その転舵のチャンスは減ってくる。ギリギリになって転舵しても、近距離で横っ腹をさらすだけになるからだ。
「(……完全に、度胸試しだ……)」
あの艦長、喧嘩をするなら難しいことを考えず真っ正面から殴り合って勝負をつけるタイプに違いない。じりじりと距離が詰まっていく中、同時に、転舵をして逃げ切れる確率も減っていく。すぐ近くで殴りあうとなれば、相手を道ずれにして自分を犠牲にするという選択肢もできる。だが、ただでさえ戦力がない極東革命軍の立場からして、それがどこまで許されるのか。極端な話、“まだ”消耗品として補充が利きやすい航空戦力とはわけが違うのだ。
「ASM-3第1群、弾着まで残り20秒」
「レーダーに入るぞ!」
隣にいた補佐の管制員が叫んだ。その次の瞬間には、『三明』の想定レーダー圏内に入り、さらに4秒後には、『三明』から4発の小型の物体が立て続けに分離した。近距離防空用の対空ミサイル、HQ-7NBだ。同時に、主砲やCIWSも火を噴いているに違いない。
向こうにとってチャンスはこの1回のみ。『蒼岩山』のほうに向かったASM-3第2群も、相手のレーダーに入った。これもまた、命中まで残り18秒。あまりに時間がない。
「まもなく弾着」
ASM-3第1群と、HQ-7NBのブリップが重なった。刹那、ASM-3のブリップが消える。
――2発分だけ。
「よし、勝った!」
勝利を確信した新代。現実はその通りとなり、残りの2発のASM-3を、『三明』は迎撃しきることができず、ブリップは『三明』に吸い込まれた。同時に、命中を知らせる『HIT』の三文字が、ASM-3のブリップに変わって二つ表示された。
2発命中。十分だ、これで少なくとも、まともに動けなくなる。レーダー上では、『三明』は一気に急転舵しはじめたと思ったら、すぐに行き足が止まった。まともに操舵もできなくなったのだ。
そして、それは『蒼岩山』も同じだった。こちらは1発の迎撃に成功したが、残りは間に合わなかった。左舷側に満遍なく命中したASM-3のブリップは、そのすべてが、やはり『HIT』の三文字へと変わった。
「空中弾なし。ASM-3、5発ヒット!」
「よっしゃッ。大戦果だぞ!」
小さく湧き上がる歓声の声。『蒼岩山』も、完全に速度を落としてしまった。機関部がやられたのだろう。もうまともに動けないはずだ。あとは、向こうにいる“友軍”が無事かどうか……。
「滄波、聞こえるか? 滄波ッ」
新代が無線で呼び掛けるが、すぐに応答はない。滄波という、親しき友を呼ぶ声が何度となく木霊する。IP-2Fで、バザードとグレイへーロンが合流したという羽浦の声が一瞬響いても、その呼び掛ける声は止まらない。そして、応答も来ない。羽浦が観測機編隊に方位を指示する中、新代の声は、次第に弱弱しくなっていった。
「ッ……頼む、滄波、聞こえてるんなら応答しろ、滄波ゥ……ッ!」
……やはり、間に合わなかったのか? そう何人かはあきらめ、気落ちし始めていた。
『――あー、トウヤ、聞こえるか? トウヤ?』
――何度か聞いた声が、ようやく聞こえてきた。念願の彼の声だ。新代は無線に噛み付かんとばかりに叫んだ。
「滄波か! 無事なんだな!?」
『悪い、ギリギリに脱出したせいで爆発に巻き込まれて無線が軽く壊れちまった。こっちは大丈夫だ。味方も、結構大量に逃げ切れた』
「艦は?」
『正直複雑な気分だが、『蒼岩山』は火の海だ。お隣にいる護衛のフリゲートも、もう傾いてるな。……あぁ待て、今また『蒼岩山』が爆発した。燃料に引火したな、ありゃ。もう長くはない』
「っしゃァ! やったぞ!」
今度こそ、大きな歓声が湧き起こった。すぐに南西SOCに伝達するよう命令する重本の表情も、少しホッとした様子だった。同時に、F-2にも戦果確認ついでに、ローパスをさせる。アニメ好きな彼への、ささやかなご褒美だ。
――しかし、まだ安心は出来ない。『しらぬい』への攻撃はまだ続いている。例のMiG-29編隊は撃退できたようなので、後はこの『しらぬい』さえどうにかすれば、いよいよ大勝利だ。
「アマテラスよりグレイへーロン2-7、出来ればこのままの距離を維持願いたい。観測は可能か?」
『グレイへーロン2-7、問題ない。観測を続ける』
「アマテラス、了解」
『グレイへーロン2-7よりバザード、もうちょい左方に陣取ってくれ。今から軽く旋回する』
『了解。……あぁ、フェアリー。お前はそのままでいい。バックにいろ』
P-1とF-15Jの間で編隊の調整をしながら、観測を続ける。今日は波が荒いせいか、砲撃が互いに中々あたらない。観測を行っても、射撃する直前に波が艦を揺らし、FCSの補助をもってしても、あと一歩というところで外れるようだった。しかし、それも距離が縮まるにつれて大きな問題ではなくなる。多少の誤差は、近距離であれば目標の大きさそのものによってカバーされてしまうのだ。命中する場所が、ちょっとズレるだけになる。
「双方が交錯するまで、あと3分です」
「もうがんばれば肉眼でも見える距離だろ、マズイんじゃ……」
互いの距離はもう6000mもない。双方ともに30ノットを超えて、相手の真っ正面に向かって突っ走ってきてるため、現場の視界さえよければもう双眼鏡を使わずとも相手が見える距離にある。FCSも、この距離ならそろそろ必中範囲に入るはずだ。どちらが先に被弾するかの、“チキンレース”になってきている。
「(ここで逃げたやつが、勝負に負ける……)」
この距離で逃げようとしても、あまりに距離が近すぎて逆に横っ腹を相手に晒す。どうぞ撃ってくださいといっているようなものだ。だが、このまま行っても、せいぜい“引き分け”。引き分けを許容できるのは、はたしてどちら側なのか。それは、現場の指揮官たちが重々理解しているはずだ。
「(……まさか)」
果たして、一瞬抱いた羽浦の予感は、見事に当たることとなった。
「――『益陽』、反転します!」
その度胸は、『しらぬい』のほうが勝っていたらしい。『益陽』は急激に反転を開始、距離をとり始めた。P-1からも、『益陽』が面舵で反転しようとしているらしい様子が見て取れた。
しかし、それこそが御堂の狙いだったのだ。正面向き合っての砲撃戦では、条件はほぼイーブン。だが、距離が近づけば近づくほど、有利になるのは自分達になるという、彼の読みだった。必ずや、どこかで反転し、距離をとろうとする。それは偏に、自軍の戦力不足からなる、“消極的な戦闘姿勢”にあった。御堂は、それを誘発させたのだ。
――そうなればもう、勝負が決まるまでにはさして時間はかからない。
『――命中、命中! 敵艦、左舷中央部に一発!』
ついに、初の命中弾が繰り出した。中央部、機関部があるところだ。レーダー上の『益陽』のブリップは、右へ旋回をしつつも、一気に速度が衰える。こうなれば、あとは『しらぬい』が一方的に撃つのみだ。
機関部へのダメージにより速度が遅くなったことで、面舵も中途半端になった。距離も短くなったことで、どんどんと砲弾は船体に吸い込まれていく。元々、対水上/対地射撃が本業のMk45 5インチ砲は、其の能力を遺憾なく発揮し、『益陽』の船体各部へと容赦なく砲弾を撃ち込んでいく。
『こちらグレイへーロン2-7、敵の主砲塔に命中、砲撃能力の喪失を確認。戦闘能力のほとんどが消えた』
「アマテラスよりグレイへーロン2-7、敵の反撃、および航行の状況を報告せよ」
『アマテラス、こちらグレイへーロン2-7。目標、航行、および戦闘の様子を確認できず。完全に動きが止まった模様。……あぁ、追加で報告。今艦から海に飛び降りる人影を複数確認。脱出を始めた模様』
「了解。そのまま監視を続けろ」
報告を受けた羽浦はホッと背もたれに背中を預け、後ろにいた重本を振り返った。
「……シゲさんの先輩のほうが、肝っ玉が座ってたらしいですね」
「みたいだな、ったく……」
今度こそ肩をおろした重本。さらに、追加で報告が来る。
『リカオン2-3よりアマテラス。ASM-3攻撃評価。目標の2隻、被弾炎上中。フリゲートと思われる目標はもう半分が沈んでる。揚陸艦のほうも傾斜拡大、いずれ転覆すると見られる』
「了解。そのままローパスして帰還しろ。あなたのファンが下にいるんでな」
『リカオン2-3、了解。じゃ、ファンサービスといくか』
陽気に答えた彼は、そのまま4機編隊を従えて『蒼岩山』の近くに低空で向かった。
――『しらぬい』は健在。被弾なし。目標の2隻も、どうにかして撃沈できた。久々の大戦果に、室内は湧き上がった。一時期、一方的に痛めつけられた仕返しと、やられた仲間の敵討ちとして、これ以上のものはないだろう。戦果を南西SOCに伝え、担当機をそれぞれの基地に一旦帰らせる。
「バザード3-1、どうせ同じ那覇基地だからそのまま護衛して帰還してくれ。お疲れさん」
『了解したバザード3-1。今日の大戦果の祝いに、夕食はターキーにするか』
「ここ日本ですよグリズリー」
そらアメリカでやってくれって話で……。まあ、久々の大戦果だからしばらくはこのままでもよかろうか。そして後ろでは……、
『おぉ! 今上飛んでったやつがそうか! あの青いやつだな!? あそこに後輩系天使が乗ってるんだな!?』
「乗ってるわけじゃねえよ、コールサインがそうなだけだ」
『まあいいじゃないか、一先ず礼を言っておいてくれ。救難はいつくるかわかるか?』
「今近くにいる護衛艦が何隻か向かってる。近くに敵はいないから安心しろ。そのままひとつの場所に固まって――」
生き残った友人と嬉しそうに無線で会話する新代がいた。彼らは大丈夫そうだ。横須賀からの指示で、すぐに近隣の護衛艦が現場に救助のために急行するらしい。『しらぬい』も、『益陽』から脱出した乗員を救助した後、別の米軍駆逐艦の護衛の下、一旦佐世保に帰ることになる。
「……まずは、ここで一発反撃か……」
ここからだ。あとは官邸がゴーサインを出して、一気に攻め落とす。それまでさして時間はかからないはずだ。俄然やる気に満ちているこの室内を見て、羽浦は頼もしさを感じていた……。
「――ん?」
――その一方、指示を受けて帰還しようとした蒼波は、一瞬、はるか上空で、ひとつの動く物体を見たように感じた。敵かと思ってレーダーを見るが、何も反応がない。見えている位置からして、おそらくレーダーには入っててもいいはず……。
……と思った次の瞬間には、見失っていた。目を凝らしてよく見渡しても、何もいない。
「フェアリーよりグリズリー。そっちのレーダーに何か映りました?」
『レーダー? いや、こっちには何も映ってないぞ』
「あれ……気のせいかな……」
もう一度目視とレーダーで確認するが、何も映らない。TEWSは、何ら動く物体を検出しなかった。警告音も鳴らない。
……見間違いだろうか? 少し気になりはしたが、もう帰還の命令が下っている。たぶんキャノピーについていたゴミか何かだろうと思い直し、そのまま編隊を組んで那覇基地に戻っていった。
――その遥か上空で、ひとつの物体が蒼波たちを監視していたとも知らずに……




