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Guardian’s Sky ―女神の空―  作者: Sky Aviation
第1章 ―数ヶ月前 A few months ago―
3/93

1-2

 ――すなわち、先ほどまでのは“訓練”である。


 地上の訓練施設とリンクさせ、実際のパイロット側の無線付きで、状況を付加しての実戦に即した演習を行っていた。今回は、交戦許可状態下でのRESCAP対応と戦闘管制訓練である。

 こういったタイプの訓練は、状況そのものの達成に主眼を置いておらず、どちらかというと、“無茶ぶり”ともとれる状況下において冷静さを保ち続けることに慣れさせる訓練ともいえた。状況完遂もそうだが、どれだけ様々な状況下で冷静さを維持し続けられるかといった“精神鍛錬”の側面が多分を占めている。


「ふぃ~……」


 彼、『羽浦雄弥はねうらゆうや』三等空尉も緊張感から解放され、大きく背伸びをした。機上兵器管制官として、このE-767に搭乗してまだ半年も経っていない新米であるが、初期より要撃管制において重要ポストを任され続けてきた自衛官である。レイバーやレパード、オセロットといった部隊を統制していたのは彼である。


「こんな遠い海でRESCAPって、きっつい条件付けるなぁおい……」


 RESCAP。戦闘捜索救難中の救助部隊を支援するための戦闘空中哨戒(CAP)の一種であり、今回は味方ヘリが救助作業中のものを想定していた。陸から遠いため、本来ならもう少し速度の速い飛行艇や近隣にいる護衛艦などを使ってのものとなるところだが、ヘリしか使えないという条件であったためこの形になる。それもこれも、訓練内容の想定に“他国と戦闘状態に入っていたら”というものも入っていたのが原因である。


「US-2でも引っ張ってこかせてもいいじゃんってな」


 隣のコンソールを担当していた別の管制官が羽浦に愚痴を漏らした。


「一番近い厚木からでいいと思いますけどね」

「でも小松より遠いから結局1時間ちょいっていうな」

「ほとんど変わんねえっていう……」


 羽浦も思わず愚痴を漏らす。スクランブル多発地域、かつ、有事の際はすぐさま戦場となるであろう場所にしては、高速機を有する救難部隊が日本海側にあまりないというのは、こうした任務をする人間にとっては正直不便なところがあった。もちろん、まだUS-2自体そこまで大量に配備されていないのでしょうがない面はあるのだが、なんだかんだ言って広い海を持つ日本である。せめて数機ぐらい……というのが本音だった。


「よし、じゃあ0-2と交代するまで休憩入る奴は休んでいいぞー。自分の担当時間確認しとけよー」


 妙に気の抜けた声で指示を出すのは、先ほどまで先任機上管制指揮官ミッションコマンダーとして様々な指示を出していた『重本淳しげもとじゅん』三等空佐である。空自に入って以来、ずっと警戒航空団に勤務しているベテランであり、40代に入ったばかりで、若干しわが入り始めた少し厳ついおっさんな風貌を持つ彼だが、その人当たりの良さから『シゲさん』と呼ばれ親しまれている、羽浦も信頼を寄せている上官である。

 また、まだ新米であるはずの羽浦を、訓練でもよく重要ポストにおいて経験を積ませている元凶ともいえる。


「お疲れ羽浦。的確な指示だった。この調子でな」

「ありがとうございます。ただ、オセロットのあれどっちにやればよかったんでしょうね、今回はシゲさんの指示で迎撃に行かせましたけど」

「ありゃあケースバイケースで正解ないと思うぞ。訓練評価部隊(地上の連中)も頭の痛い状況引っ張ってきやがるが、今回の場合だと出そうが出すまいが結果的にレスキューは落とされるリスク負うことになるさ。レスキュー現場上空で空戦なんて、エ○コンじゃねえんだからやらんほうがいいってこった」

「残骸落ちてきたらまずいですしね」


 重本としては、やはり救助現場で空戦させることのほうが一番のリスクだと考えていた。仮に別働隊がいたとしても、空戦現場が救助現場と重なっていると、4vs2で数的不利になり、いずれ落とされる可能性がある。分散しているのなら、2vs2を二回連続でこなしたほうがまだ有利になるという公算だった。

 もっとも、本人が言っているようにこれはケースバイケースである。敵戦力があまりに多いことが事前にわかっているなら、もっと別の対応を取ったかもしれない。それは、状況によりけりである。


「ま、そこらへんは俺が判断するよ。少し疲れたろ、裏で休んでな」

「了解です。0-2との交代何時からでしたっけ」


 0-2とは、同じE-767の別の機体であり、今羽浦たちが乗っているのは0-1と呼称されている。0-2は日本海上で警戒監視任務を行っているが、まもなくその任務を引き継ぐこととなっていた。羽浦が手元にあるA4サイズの紙をペラペラとめくって確認しながら、重本も腕時計を見ながら教えてきた。


「1100から1800まで。下は海がキレイでなぁ」

「下は今日曇りですが……」


 用紙に書かれていた今日の分の天候図を見ながら、羽浦が小さく呆れながらそうツッコんだ。というより、飛ぶのは日本海の上である。雲がなくとも、眼下に広がるのはただの太陽に照らされた白い雲海なうえ、そもそも窓がない。彼はどこから見ようというのか。神通力か何かか。


「じゃ、休憩入ります。あと1時間ぐらいきゅうけーですわ」

「俺も昼飯すっかなー……。今日なんだっけ」

「肉弁です」

「昨日も肉弁じゃなかったか?」

「昨日は豚しょうがですよ。今日はカルビー焼きです」

「肉が違うだけじゃんか……」


 そういいながら、羽浦と重本はともに機体後部に向かう。しばらくの間の警戒管制の指揮は、当直の幹部に任された。

 機体前部は警戒管制に必要な機器類が詰まっているが、後方は搭乗員の休憩及び交代要員の待機スペースとなっている。そこでは、警戒中も交代しながら搭乗員たちが休息を取っており、二人は0-2との交代までは休憩の予定となっていた。

 コンソールの並べられた部屋を抜け、コンピューターが両サイドに敷き詰められた通路を抜けると、そこには旅客機と大差ない座席が並べられた区画に入る。すでに何人かは休憩に入っていたようで、室内はリラックスした雰囲気である。

 ギャレーに行くと、今日の分の昼食がすでに用意されていた。自分の分を取ると、適当な座席を探す。


「……ん?」


 ふと、羽浦は一人の女性が視界に入る。彼女は座席に座って昼食中だったのだろうが、箸を持ったまま放心状態になっていた。魂抜けた抜け殻か何かみたいに動かない。たぶんそのまま横に倒れそうである。いや、というか倒れる数秒前だった。


「……またか」

「またっすね」


 彼らにとっては見慣れた光景である。羽浦はすぐに彼女の肩を軽くたたいた。


「百瀬さん、死んでまっせ顔」

「ッひやぁ!?」


 完全に彼らの存在を察知していなかったのか、突然肩をたたかれ、声をかけられたのに異常なまでにびっくりし、目の前の折り畳み式の座席テーブルに置いていた昼食がトレーごとわずかに跳ねる。その声に他の休憩中の乗員らも驚く中、水入りの紙コップを羽浦が倒れないよう抑えると、苦笑しながら彼女に言った。


「顔、また死んでましたよ」

「し、死んじゃってました?」

「死んじゃってました」

「あうぅ……」


 しょぼーんと肩をすくめてしまった。

 『百瀬水姫ももせみずき』二等空曹は、羽浦と同年代の機上警戒管制員である。階級に関わらず、ほぼ同世代の二人は、重本とともによく話す親しい間柄であるが、羽浦とは違い少々冷静さに欠ける面があり、先の訓練時も、報告するときは大抵噛んでいた。最初の電偵機消滅の報告の時やら、何かしらの新手の報告をする時やら……。

 このE-767に集う警戒管制員は、地上で経験を積んだ警戒管制員の中から選抜された優秀なスタッフばかりなのだが、その中では彼女はある意味特異な存在であった。「よくそれで管制員になれましたね」と思わず口走ってしまったときに「ほんとにそう思う」と真顔で、かつ悲しげな顔で返された、出会ったばかりのあの頃を羽浦は今でも覚えていた。


「まあここら辺は慣れだ慣れ。そのうち治るさ」

「はぁ……」


 重本がそう慰めるが、本人は深くため息をついていた。自分の過度に緊張してしまう性格は十二分に自覚しており、それを変えようと自衛隊に入ったまではいいものの、今のところ改善の兆候が一向に来ない。日々頭を悩ませる毎日であった。


「いつになったら回復するんでしょうねこれ……」

「まあ、自分も最初は割と緊張しっぱなしでしたし、人間そこらへんは慣れですって」

「羽浦さんは慣れるの早いからいいんですよ。でも私はいつまで経っても治らないんです……」

「ハハハ……」


 自信が持てないのはあまりよくない兆候なのだが、そうはいっても彼はカウンセラーではない。自分にはどうしようもないということで、そのまま暫く置いておくことにした。その左隣では、重本が「うめぇうめぇ」と言いながら肉弁を食べていた。さっきまで肉が違うとか愚痴ってたじゃないか。うまかったら良いのか。

 百瀬もそのあと「どうせ私なんて……」的なことを呟きながら飯を食い始めたので、羽浦もおとなしく昼食を始めた。両サイドの面子が少し濃くて正直食べづらさすらあったが、さっさと食べて短い昼寝に勤しむことにした。


「……あれ、LINEの通知だ」


 時間を確認するためにスマホを開いたところ、LINEに通知が入っていた。上空にいる間は電波は切っていたはずだし、そもそも「何度も鳴って煩い」と、通知音が鳴らないよう設定していたので、おそらく飛ぶ直前に入ったものを気づかず放置していたのだろう。事実、着信時間は出発時間の数分前だった。

 差出人を確認。


「……咲?」


 通知が来た相手欄には『咲』と書かれていた。咲と題したLINEの相手は一人しかいない。彼女のことだ。

 中身を開いてみると、短くこうまとめられている。



『来週末そっちに合わせて休日とったぞ! たまには飯おごれ! いつものファミレスで!』



 ……飯かよ。彼は内心そうツッコんだ。何の話かと思ったら、飯に付き合えというそれだけのものだったのだ。


「なんだ、例のガールフレンドからか?」

「うぉッ」


 先ほどまでガツガツと昼食をとっていたはずの重本が、いつの間にか弁当と箸を手にしながら羽浦のスマホ画面を覗き見していた。


「あー、蒼波さんからの」

「うぇッ」


 右側からも百瀬にのぞきこまれていた。座席選びミスったかと思いながらも、羽浦は二人の顔をどかす。


「ただの飯の誘いですよ。飯の」

「たまにって書いてるが」

「先週飯代おごってやったじゃんかアイツ……」


 羽浦は先週にも飯に付き合っていた。ちょうど休日が重なっていたことから、彼女の「飯奢れ!」という鶴の一声で、“任意同行”という日本の警察官お馴染みの強制連行ワードを大義名分にしつつ、わざわざ休日に付き合ってやったのだ。

 先週は近場の寿司屋でたらふく昼食をとる彼女の代金を奢ってあげたと思ったら、別れ際の夕食はお気に入りの焼肉屋でこれまたたらふく平らげた分を奢ってあげた。

 ……完全に彼女のお財布と化している。その代わり、羽浦の好きな本やら何やらを色々と買ってもらったのでお相子といえばそれまでであるが……。


「また飯かよ、今度はなに奢れって言われるんだ……」

「ファミレスだから、ピザかな?」

「3枚とか言いやがったら本気で殴ってやるかな」


 それこそ天に高く上るように。


「でも可愛い友人さんですよね~。幼馴染でしたっけ?」

「ええ、まあ。小学校時代からの腐れ縁みたいなもんです」



「そして、“初恋”の相手にして、“失恋”の相手か」



 その発言をした重本の顔に「えええええ!!!???」とびっくりした顔を向ける百瀬と、「ハハハ……」と苦笑する羽浦。


「し、シゲさあん! それまた蒸し返しちゃいます!?」

「いや、これ本人から言ってきたことじゃねえか」

「それはそうですけど……ッ!」

「ハハハ……」


 両サイドからの軽い口論に、当事者たる羽浦自身が困惑しているのだが、文字通り間に挟まっているわけで、どうにかとりなした。


「い、いや、でも、別に恋してたとは言っても大した奴じゃなくて……」

「え、じゃあ告白しなかったんですか?」

「する前に別の奴に取られたんだと」

「シゲさああああああんん!!!」

「ハハハ……」


 容赦ないなぁと、内心羽浦はツッコんだ。軽くヒートし始めた百瀬を宥めつつ、どうにか話を丸く治めようとする。


「いや、そもそも俺に告白とか無理ですし、単に俺よりいい男を見つけたわけですし、それに彼氏さんは俺の友人でもありますし、あと職種は違えど同業者ですし……」

「でも付き合いは羽浦さんのほうが長いんでしょ?」

「まあ、長いっすけど……」

「先手必勝ってことだな」

「シゲさあああああんん!!!」

「……」


 なんだこのコントは……。思いながらそろそろ疲れた羽浦は、二人を放置して昼食をむさぼり始めた。休憩時間も限られているのである。さっさと飯食って寝たい。若しくは本読みたい。

 しかし、火が付いたのかどうなのかは知らないが、いい年したおっさんと若年女性との恋愛談義は続いていた。本人そっちのけである。本当に、座席選びを間違えてしまったなと本格的に後悔し始めながらも、おもむろにスマホである写真を出した。

 その写真には、3人の人物が映っている。自分が右側に、真ん中に先ほどの『咲』と呼ばれた彼女、そして、そのさらに左に例の彼氏。先週、昼食を奢ってやった日に撮った、食事時の写真だった。


「……そういや、あいつの部隊来月で配置転換だっけか……」


 ふと、そんなことを思い出した。彼女はF-15Jを操るイーグルドライバーである。空自の戦闘機パイロット女性解禁後すぐに入った、数名しかいない女性ファイターパイロットたちの一人で、部隊の中ではまさに紅一点の存在である。彼女の所属する部隊は、小松基地にその拠点を置いているが、来月、防衛省の方針により、転換となる予定であった。


「それ、もしかして309か?」


 そして、いつの間にか会話が終わっている重本と百瀬。話題切り替えが余りに早すぎるのにツッコみたくなるのを我慢し、自らの独り言に対する重本の問いに肯定して答えた。


「ええ、小松の309飛行隊です。那覇の308と入れ替えって形で」


 那覇には現在2個のF-15J部隊が配備されている。そのうち片方の308飛行隊が、小松にある309飛行隊と部隊ごと入れ替わる。当初の防衛省の部隊配置転換の計画にはなかった上、一見大きな意味を持ちそうにないF-15J部隊同士の入れ替えとなっているのには、一応の理由があった。

 というのも、309飛行隊のF-15Jは、最近近代化改修されたばかりで、自己防衛能力やIRST搭載等をも施された最新型の“F-15MJ(J改)”ともいうべきもので揃っており、逆に、那覇から押し出される308飛行隊のF-15Jはそうした改修がほぼされていない“F-15SJ”ばかりであったのだ。ちょうど新旧色がはっきりした部隊同士である。防衛省にとっては、本来ならば、308飛行隊のF-15J改修のために、機体をその都度本土に送らねばならないところを、この二つの部隊を丸ごと入れ替えてしまうことで、「わざわざ本国防衛最前線の機体を本土に送る手間が省け、戦力低下のリスクが減る」のである。


 つまりこれは、できれば金も時間もかけずに楽をしたいと考えた防衛省による、那覇基地のF-15Jを短期間のうちに最新のもので統一するべく行った、“ある意味合理的な新旧入れ替え”といったほうが早い。これが完了すれば、那覇基地に所在の第9航空団は、日本初のF-15MJで統一された最新鋭戦闘機部隊となる。


 F-35Aが空自に入ってきた今になっても、旧型のF-15SJが未だに那覇にいたのには、F-35Aの導入やら何やらで移転予算が回ってこず、改修自体も、全ての機体にやるのはほとんど諦めて、防衛省が中々予算を付けようとすらしなかった背景がある。308飛行隊の機体も、改修がなされないまま半ば放置状態であったのだが、今回、その移転予算がようやく回ってきたのだ。


「309が那覇に行くって事は、彼女も当然ついていくんだよな?」

「ええ、そうですね」

「え、じゃあもう会えないじゃないですか!」


 百瀬が半分悲鳴のようにそう言ってきた。確かに、小松から那覇に移るということは、海を越えての遠い転勤になるのと同じことなので、陸続きなうえ頑張れば互いに会いに行ける距離にいる現状から考えれば、一緒の時を過ごす機会が今後激減することにはなる。

 羽浦としても、少々残念なことではあるが、国の決めた方針なので、当然ながら逆らうなんてご法度なのだ。


「まあ、でも一応電話とかメールはできますし……あとこの通りLINEもやってますから……」

「最近はスカイプもあるしなぁ」

「でも会う機会減るのってやっぱり残念ですよね」

「まあ……」


 今の時代、例え会えなくても電話は普通に通じるし、テレビ電話を使えば画面越しではあるが面と向かって通話できるので、若い世代あたりは特に“分かれる/会えなくなる”という感覚が地味に薄れてきているとも言われているが、羽浦もそんな世代である。正直、実際に会えなくとも電話やらLINEやらのおかげで会話頻度は変わりそうにないので、そこまで気にしているつもりはないのだが……。


「この飯の話もたぶん最後にちょっと会わせろってことかな?」

「たぶんそういうことですね」

「別れ際だから何か買ってやるか?」

「そろそろ財布の中身(残弾)消えますよ。何渡せばいいんです?」

「ゴム」

「ブフゥッ!」

「こらああああ!!!」


 唐突に飛び出した下ネタに、羽浦は思わず飲んでいる水を吹き出しかけ、百瀬は赤面しながら怒鳴った。周りの隊員も何人かが笑いかけているのは、恐らく盗み聞きしていたからであろう。むせている羽浦を横目に、重本はゲラゲラと笑っていた。セクハラなんて知ったこっちゃないぜみたいな野郎である。


「あ、お前の分は要らんか。もう結婚してるし」

「してますけど! もう子供も持ってますけど!!」

「使ったことあるか聞いたらダメか?」

「それ以上は本当に警務隊にチクりますよ」

「大変申し訳ございませんでした」


 そして重本は一転して頭をぺこぺこし始めた。これでよく今まで警務隊にしょっ引かれなかったなと、百瀬の懐の深さに羽浦は感謝した。いや、感謝すべきなのは、誰でもない重本自身なのかもしれないが。

 再び騒がしくなった両サイドであるが、何だかんだで仲は良い。尤も、重本はどの部下とも仲は良い様にしているのだが、百瀬は羽浦と同じぐらいお気に入りであった。百瀬もそれを理解してはいるが、時としてこれにだけは悩まされるのである。世間にバレたら間違いなくセクハラ自衛官としてぶっ叩かれること請け合いであろう。ここが組織的密室状態な自衛隊でよかったと、羽浦は心底感謝した。


「……もういいや、食おう」


 そのまま、左右の喧騒を脳内からシャットアウトして、昼食にありついた。


 結局、飯は食って寝ることはできたが、時間が十分でなく、中途半端な目覚めでその後の任務に就くこととなった……

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