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ロスタイムレコード- side 杉野光雄-(仮題)  作者: 水咲 理記
序章-杉野光雄という男-
1/2

-いつもの日常-

西暦2015年8月1日

科学が発達した現代。社会で生きる人は真夏の炎天下の中、汗水垂らしながらも必死に仕事をして自らの糧とし、また甘酸っぱい青春を送る学生諸君は、部活動という青春の日々を彩り、100年もない人生を全力で謳歌するこの日々である。

一方、私こと杉野光雄は学生生活の醍醐味である夏休みと言われる学校の休業期間を、コンビニのアルバイトとMMOオンラインゲームに浪費してゆくのであった。

そして夏休みが始まって数日経った今、いつもの如くお昼時なのに閑散としたコンビニで、一人で店番をしながら「青春真っ盛りの中高生諸君らは無駄に体力を浪費しつつ、猛暑と言う引きこもり属性には特攻が付く殺人的環境に身を晒して、紫外線と言う自然界からの刺客によって己の細胞を痛め付けて喜んでいるのだろうな」と、あまりにもお客が来ないので非常にどうでも良いことを考えていた。

客が来ない理由は分かっていた。現在外気温は41度。ほぼ快晴に近い状況かつ外出禁止令まで出ている状況で、外出しているアホは本当のアホだけである。

「さっさと帰ってイストやりてぇ…。」

私は、ため息をつきながらいつものようにとあるゲームの略称をつぶやいた。

イスト・ガーディアンズ、そのゲームは販売直前に販売中止になったパソコン用のゲームである。発売元は私の父親が働いている企業であり、急遽VR対応させる事となったため、αテストまで引き戻さなければならなくなったので発売中止となったらしい。しかし、αテストのためとは言え、一介の学生やら暇人やらにやらせるのはどうかと思うが、お金も出るから良しとしよう。

それよりも、今現在のやる事が皆無に等しいこの状況において、これまでの開発計画を見直してみてはいるものの、こんなどうしようもない開発プロットに付き合わされる私も私であると考える。

まぁ、バグ探しはかなり楽しいからいいんだけどね。

この後もお 客は夕方まで来ず、夜になっても両手で足りるくらいしか来店せず、私はおよそ九時間の勤務を終え、徒歩数分の自宅に帰宅した。


私は父と母が待つ一軒家に帰宅すると、すぐさまシャワーを浴びに行った。そしていつものように、二階のゲーマーの部屋独特の湿っぽい香りが漂う月明かりに照らされた自室の高性能パソコンを起動させ、一階のリビングで家族3人での会話をそれとなく流しつつ楽しみながら食事を取り、家族が寝静まるのを待った。


しばらくして、私は家族との就寝の挨拶を交わした後、自室に戻り携帯電話で時間を確認した。

「22時丁度か。あいつらそろそろ始めているかな」

いつものように明かりつけず、デスクトップの画面にある『IST』と書かれたアプリケーションを起動し、ヘッドセットを付けた。画面には見慣れたウィンドウが表示され、手慣れた操作で自身の操作キャラを選択した。

ゲームモードはオンラインモードを選択し、バックグラウンドで先に始めていた友人のボイスチャットに接続をした。チャット画面には私を含めた4人の名前、杉野光雄、青葉冬哉、青葉瑠夏、Henry・B・Drakeの4人が表示された。それと同時に騒がしい会話のような激しい罵声が飛んできた。

「良いから斬られろヒゲジジィ‼︎」

「おー、怖い怖い。せっかくの美少女もこれでは台無しだぜお嬢ちゃん。もっとお淑やかに、冷静かつ慎重に事を進めないとジリ貧になるぜ。」

「姉さん…」

このやり取りを聞いて私は安心していた。一人はいつものように騒がしく、一人はいつものように煽り倒し、一人はいつものようにため息混じりに話す。この時だけ私は自身の取り繕いを捨てる事ができる。

「なぁにやってんだ、お前ら」

私のこの一言に、騒がしい少女がいち早く反応した。

「やっときた。遅いのよ光雄、早く私を援護しなさい。今日こそこのヒゲジジイを真っ二つにするのだから。」

…どう言うことだか状況が掴めないし、何よりも面倒はごめんだ。とりあえず適当に流して、冬哉に聞いてみることにしよう。

「いや待て、状況がいまいち掴めんから説明頼めるか冬哉?」

「姉さんがドレ兄に喧嘩売ってPvPを始め、10戦ほどドレ兄にあしらわれてるところ。」

状況は大方把握したが、吹っ掛けた理由がいまいち分からん。けど、大方検討はついていたが確認は取っておくことにした。

「買い言葉はいつもの?」

「い・つ・も・の」

私は大体の状況を理解した。

つまりこういうことだろう。

まずいつものごとく瑠夏がヘンリーのおっさんを無職だとかテキトーな事を言って挑発。これに対しておっさんは瑠夏のコンプレックスの慎ましやかな微笑ましい胸部をネタに煽り倒す。これにより瑠夏が激怒し、いつものように開戦ってところだろう。よって、私の出す答えはいつものごとくこうなる。

「瑠夏ー、終わったら教えろよー。俺は見物してるからー。」

「右に同じくー。」

私は、二人のゲーム内キャラの戦闘が観戦できる位置に、自身のキャラを移動させ、二人の激闘を冬哉と共に見物することにした。

「Hue、流石だわ。嬢ちゃんの扱い方を心得てるな、あいつら。」

何故かヘンリーから半笑いの賞賛が送られてきた。大したことは何もせず、傍観一方を決め込む意思を表明しただけなのに。

一方、瑠夏は子供じみた罵声をこちらに定期的に飛ばしつつ、ヘンリーを両断するために追い続けた。そのため二人の闘いが終わる気配が無く、およそ一時間が過ぎた時点で私と冬哉は退屈から来る急激な眠気に襲われた。私は、二人の罵声を心地良いと感じつつ、睡魔に屈して薄れゆく意識の中で、なんとなく雨戸を閉めていない窓に目を移した。

夜も深まり、雨音と強風が窓を叩く音が響くこの部屋に、一瞬だけ眩い光が差し込んだ。その光は赤い稲光。この世では決してありえない光が私の部屋に差し込んだ。その一瞬の出来事と共に私の意識は途切れた。


次に私が目を覚ましたのは、何故か自室のベットの上だった。雨戸の隙間から入ってくる光から朝の7時ごろだということはわかったが、寝落ちした私にとっては不可解な現象であった。寝落ちしたのならパソコンの前に突っ伏して力尽きていないのが不自然過ぎたからである。また、寝落ちなら確実に電源も入りっぱなしのはずの空調やパソコン、携帯電話も軒並み電源が落ちていた。私は、この不可解な現象は一度棚に上げて、いつもの生活パターンに沿って行動することにした。


「まずは換気換気。1日の始まりは換気から始まり、悪い気と空気の入れ替えは1日の生活の質の向上につながるのだ」

と自慢気に言いつつ、暗がりから解放される為に雨戸を開けた。


雨戸を開けた窓からは、いつものように静寂とは言い切れないが平和な住宅街と家族の日常的な行動や趣味をしている姿、向かいの家の双子の朝からの手厚い挨拶が飛んでくると思っていた。だが私の眼前にはそんな平和な日常はすでになかった。


窓の外から見えた光景は、住宅街の建物は熱線か何かが通過して溶けたような跡を残して崩れており、地面には砲弾のような物が直撃した跡が見受けられた。

「おいおいおい、ちょっと待てよ。昨日の雨は酸性雨か隕石でも降ったのかよ‼︎」


私は急いで外着に着替えてリュックサックに林檎社の電話と普段から持ち歩いている方位磁針を持ち、家の中にいると思われる両親を探した。しかし、誰も家の中にはいなかった。それどころか、外の状況に対して部屋の中のおかしな点に気付いた。

外があれだけ荒れていながら、私の実家は昨日と何一つ変わっていない。

「これではまるで、この家だけ外の影響を受けていないとでも言うのか⁉︎」

他にも多くの違和感を感じたまま、とりあえず冷蔵庫にあるボトルのお茶とコッペパンを1つリュックサックに詰め込んで、災害時の指定避難所の高校に向けて家を飛び出した。



移動している間に現状を大まかに整理すると、まず一つ目に地面の砲弾の様な跡や住宅の焼け跡からこの状況は告知されて人為的に発生した災害である。

二つ目は道中に死体などが無いことから、この事象は住民はあらかじめどこかに退避しなければならない内容が潜んでいる。

最後に周辺の掲示物と案内板からここが日本で、私の住んでいる上風市若葉町であること。

最後のことに関しては、周辺のあまりの変わり映えに初めこそ戸惑ったもののすぐに慣れた。

「さぁて、状況整理してみても何が起きたかが全くわからんぞ」

自分の置かれている状況に困惑しつつもコッペパンを食べながら移動していると、あっという間に目的地の追風高校に到着した。

登校ルートを普通に歩いて来たため時間は20分もかからず、道中では真っ白な野良猫1匹とすれ違ったくらいだ。

高校の正門はいつもの様に解放されており、4階建ての建物そのものにも大きな変化はなかった。

私はとりあえず正門から入ると、生徒用の昇降口、職員用の昇降口、来賓用の昇降口を調べてみたがやはりどこも開いては居なかった。

「まぁ、そうですよね。この校舎から人の気配感じないし、夏休み中だから普通居ませんよね…」

私は今後の事を考える為に職員室前の外にあるベンチに座り、携帯電話を取り出した。

画面には今日の日付と時間が表示され、端っこに電波とバッテリー残量が表示されている。バッテリー残量は問題無くあり、1日程度なら普通に使えるだろうが、電波は圏外である。

「さて、どうしたものか。とりあえず水と食料を確保して、家に戻って武器を探してから探索するか。」

今後の行動方針を定めていると、視界の右端の方から大きな土煙を立ててこちらへ何かがやって来ていた。

私は立ち上がり、目を細めてそれが何かを確認しようとした。

「…人か?、にしては移動速度が速いな⁉︎」

赤い人の様な何かはものすごい勢いでこちらへ接近しつつ校門の前まで迫っていた。

そして、赤い人の様な何かは校門を閉める時の地面の金具に足を取られ盛大にコケた。


「あっ、ちょおまおおぶるぁっしぇいやぁぁぁぁ⁉︎」

赤い人の様な何かは校門から体育倉庫まで直線100メートル以上を、2回だけ地面と接触して2、3秒で吹っ飛んでいった。そしてそのままの体育倉庫のシャッターをぶち破った。

私は赤い何かが、体育倉庫に激突した時に出た土けむりと石灰の煙でで周りはよく見えなかったが、あの速度で物にぶつかった場合、骨折か何かしらの重傷以上は免れないまただろうとこの時は思っていた。


とりあえず私はこの第一村人ならぬ第一負傷者の元へ駆け足で向かうのであった。

「あ、あのー。大丈夫ですか。」

私はそう言いながら手を差し出すと、赤い人は何も言わずに手を掴み、強引に私を引っ張り、腕で首根っこを押さえながら頭をひたすら撫で回しながら言った。

「いよっしゃ、要救助者確保。今回は間に合ったぜ。」

何が何だか私には理解できなかったが、頭から大量の血を流しながら大喜びする赤い武者の姿をした彼の顔を見て、私は少しだけ安堵するのと同時に人の暖かさを再確認するのであった。

はい、始まりました初投稿。

量自体はさほど多くはないですが、頑張って連載できればええなー。

語学力不足がかなり目立つ気がするけど、とにかくいろんなことを学びながら頑張っていきます。

興味を持ってくれた方、また次回をお楽しみ。

※この物語はフィクションです。

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