刹那
風の吹いている向きが変わったのだ。偏西風とかそういうのではない。この現象に有は覚えがあった。 しかし思い出せない。でも、それが表す答えは1つしかないだろうと確信していた。多分そう...うっかり忘れていたであろう記憶にそれは入っている。冷たい風、黒い風の起こる前兆だ。
有は背筋がゾクゾクするのをこらえながらじっと待った。 ゾクゾクしているのは決して寒いからとか怖いからでは無い。どちらかと言えば、興味津々、期待に満ちているからであろう。
「この時を待っていたんだ。何年も...何年も!! さぁ来い!モンスター!!!!!」
有はモンスターと叫んだ。何故か?? 確証は無い。感覚でだ。 異常な現象にはモンスターがつきもの。昔からそう言われている。ただその異常な現象はなかなかおきない。もしくは人間が気づかないレベルの出来事なのだ。実際、この黒い風も有にしかわからない。
「私が見えるのか......??」
と、風が有に返事をした。
その声は何処か懐かしいものを感じた。なんだろう、お腹の中にいた赤ちゃんが外に出てきた時、母の心臓の音で安らぐみたいな。
「あぁ...みえる。」
と、有は返事を返す。
「私はこのままだとどんどん力を蓄えて土地を破壊しかねない。有......お前にだけ見えるのか。不思議なものだ。」
と、その風は言う。
「何で俺の名を知っている??」
「ふふ......もう時間もないし、言うしかないか。 私は有......が6歳の時に他界した父だ。」
「何を言っている??馬鹿げたことを。 貴様はモンスターなのだぞ。そんなわけなかろうが。」
「転生って知ってるかい有...??有が子供で心配だったから俺は病気で死んだ時に強く願ったんだ。何にでもいい、少しでも有と話がしたい。また......とな。」
仮に貴様が父だとして今更なんだ...??なんだというんだ。出てくる必要も無い...ゆっくりとあの世で暮らしてくれ。とかっこよく言いたい有であったが、口から出てきた言葉は違った。
「お父さん......おとうさーーん!!ずっとずっと会いたかった...抱きしめたかった!でも、貴方は風...抱きしめられない、しまいに力が強くなる??殺すのか...俺が??」
涙が地にこぼれ落ちた。1粒落ちた途端にそれは大量の雨となって地面に降り注いだ。
「すまないことをする......」
「お父さん、愛しています。これからも天国で、あの世で見守ってください俺のこと。俺は成長しました。さようなら。」
ズサッ...バリッ......!!
これから進むべき道は何処なのだろう??と、俺はふと考える。でも、ずっと悩むより行動しろとお父さんは言っていた。 やるしかない......。
世界を平和にする為に!!!
今は11時。教官のとこへ行かなければ...。
なんて思いながら有は小さくなくなった、この大きな1歩を確かに踏んで...。
世界は今日も巡り巡る.........。




