すべてを手に入れる12
『秘密を聞いて欲しい』
その言葉はきっとチャコにとって、すごく勇気のいる言葉だと思う。
いつも、えへへって笑って誤魔化すだけだったチャコが私に話をしてくれようとしている。
聞きたい。
チャコの秘密を。
ようやく辿り付けた事に私の胸はドクドクとうるさく鳴った。
私はそんな自分を落ち着けるように、そして、チャコを安心させるように、しっかりとその金色の目を見て、頷く。
チャコはそれに小さく笑って、話を続けた。
「唯ちゃん、前にさ、前世の事話したよね?」
前世の事。
それは写真部で行った、あのハイキングで教えてくれた事だろう。
「うん。チャコは今のチャコになる前の事を覚えてるんだよね。」
「そう……私ね、前は人間だったんだ。」
チャコが冗談を言ってるような声音で……。
でも、縋るような目で私を見た。
私はその目にそっと笑いかける。
「うん……そうなんだろうなって思ってたよ。ハイキングの途中で落石にあったって言ってたよね。だからきっと人間だったんだろうなって。」
「そっか、そうだよね。ハイキングなんて人間しかしないか。」
チャコが元気のない声で、でも笑ったような声を出した。
なんだかそれが切なくて……。
大丈夫。
大丈夫だよ。
そんな気持ちを伝えたくて、チャコがの手を自分の方へ引き寄せ、両手で包み込んだ。
チャコはそれに一瞬、目を瞠った。
そして、ずっと握りこんでいた手を開いて、代わりに私の手を握り返す。
ぎゅうっと握られた手は力が強くて……少し痛い。
「唯ちゃん。私はこの世界の人間じゃないんだ。」
「……この世界?」
チャコの金色の目が私を見ている。
「ここはね、ゲームの世界だよ。私が人間として生きていた世界とは違う。人間の時にやった事があるんだ。小さい銀色の円盤。それがこの世界。」
「……ゲーム?」
「そう。」
……ここがゲームの世界?
「意味わかんないよねー。……私も意味わかんなかった。なんで自分が人間じゃなくなって、なんでゲームの世界にいるのか。」
チャコがははって笑った。
相変わらず、その声音は冗談を言っているみたいだ。
でも、握り返されている手は今も痛いぐらいに力が入っていて……。
私はチャコを信じるって決めた。
そのチャコがここはゲームの世界だって言う。
じゃあ、私達はみんなそのゲームに出てくる登場人物なんだろうか。
最初からストーリーが決まっていて、台本通りに話しているだけ?
喜びも悲しみも、あらかじめ決まっていて、決められた通りに進むだけ?
……そうなのかもしれない。
それが運命というものなのかもしれない。
「……そうなんだね。ここはゲームの世界なんだね。」
私を伺うように見ているチャコに、わかったよって小さく頷く。
チャコはそんな私を見て、苦しそうにギュッと眉を顰めた。
ここがゲームの世界で。
私がゲームのキャラクターだとして。
私の心は偽物なのかもしれない。
作られて、決められているものなのかもしれない。
でも、目の前にいるチャコはこんなに苦しそうだ。
私がゲームのキャラクターだって知ってるのに、私が傷つくのを恐れてる。
私の心を守ろうとしてくれてる。
「……でも、チャコは私達をゲームのキャラクターって思ってるわけじゃない。ちゃんと私を見てくれてる。鋼介君や勇晴君の事も……。みんなの事、ちゃんと見てるよ。」
そうだよ。
チャコがちゃんと私達を見てくれてる。
生きてる者として見てくれてる。
私には私がキャラクターだという事はわからない。
でも、それを知っているチャコが私を生きてる者として扱ってくれてる。
「ここがゲームの世界でも、私はみんなの事をちゃんと生きてるって思う。……チャコだって、みんなの事を生きてるって思ってくれてる。」
「うん……うん。」
それなら何も問題ないよね?
チャコがずっと苦しそうな顔をしてるから、元気づけたくて、ふふって笑った。
チャコはそんな私を見て、ギュッと唇を噛む。
そして、小さく息を吐いて、話を続けた。
「私が最初に会ったキャラクターは友孝様でね。……友孝様、説明書の紹介文がね『ミステリアスな雰囲気のなんでもできる王子様』だよ?」
「ああ……でも、そんな感じだよね。」
「ええぇー。」
友孝先輩の説明に同意すると、チャコが驚きの声を上げて目を瞠る。
そして、ないない、と首を振った。
「私から見たらどこも王子様じゃなかったしね。ミステリアスどころじゃないよ。闇だよ、闇。」
チャコと友孝先輩がどんな関係だったのかわからないから、私には何も言えない。
だから、眉を顰める事しかできなくて……。
「ゲームの世界だって気づいたけど、友孝様はあまりにも違った。だから、ここに生きている人がいて、この世界がちゃんと生きてるっていうのはすぐにわかったよ。」
チャコがじっとこちらを見る。
「みんな生きてる。偽物じゃない。」
「うん。」
しっかりと告げるチャコに私もしっかりと頷く。
すると、チャコは目線を彷徨わせてギュッと唇を噛んだ。
「だから……偽物は私なんじゃないかって。」
チャコの声が掠れる。
「本当はどこかに本物の友永茶子って人か妖がいたのに、私がその役を奪ったんじゃないかって。」
『役』
その言葉がやけに耳に響く。
「唯ちゃん、この世界はね乙女ゲームって言って、女の子の主人公がかっこいい男の子と恋をして、がんばって幸せになるゲーム。」
チャコが伏せていた目を上げる。
そして、その金色の目でまっすぐに私を見た。
「唯ちゃん。唯ちゃんが主人公だよ。」
……私が主人公?
「友永茶子は悪役。唯ちゃんの恋を邪魔するんだ。」
……チャコが、悪役?
「私はそのゲームを一回しかクリアしなかったから、今、唯ちゃんがどこに進んでるかわからない。」
まっすぐに私を見ていた金色の目がスッと陰る。
チャコは苦しそうに眉を顰めた。
「私が偽物だから、どうしていいのかわかんないのかなって。」
その声はさっきからずっと震えてる。
「私のせいで唯ちゃんと唯ちゃんの選んだ相手がうまくいかなかったらどうしよう。ちゃんと役をやれなかったらどうしよう。」
――それがずっと怖かったんだよ。
一生懸命に話しているチャコの顔は今にも泣きだしそうだ。
眉を顰めて、唇を噛んでる。
バカだ。
チャコはバカだよ。
「この世界。私にとってはゲームだけど、でも、みんながちゃんと生きてる。本当に楽しくて……。あの時、落石で死んだはずの私が、ここにいる。……それって全部唯ちゃんのおかげだって思う。だってこの世界は唯ちゃんが主人公だ。」
小さくチャコが息を吐く。
自分自身を落ち着けるように。
そして、もう一度私をじっと見た。
「……だから、唯ちゃんに恩返しがしたい。」
声が震えてる。
唇だってギュッと噛んでる。
でも、その金色の目は決意が宿っていて……。
「偽物の私でもちゃんと役を――」
「バカ。」
私はそんなチャコを見ていられなくて、チャコの言葉に上から声を被せた。
「役なんかしなくていい。」
イヤだよ、チャコ。
そんな覚悟しないで。
「チャコは偽物じゃない。ちゃんとここにいる。ちゃんと生きてる。」
悪役なんかしなくていいんだよ。
「もしかしたら、どこかに悪役の友永茶子がいたのかもしれない。でも、私は今のチャコしか知らない。私にとって本物は今のチャコだけ。ここにいて、私をじっと見てる、この子だけだよ。」
チャコの手をぎゅっと握って、金色の目をじっと見返す。
しっかりチャコを見たいのに、チャコの姿が滲んでしまった。
「悪役なんかしないで。」
「……うん。」
「チャコは、偽物じゃない……。」
「うん。」
「チャコは偽物じゃな、いよ。」
「うん。」
「チャコに、悪役なんか似合わないから。」
「うん。」
溢れそうになる涙を気にしないようにしながら、言葉を続ける。
チャコはそれに目を閉じて、うんって頷いた。
チャコは……ずっと悪役をやってくれてたの?
だから、時を繰り返しても、最後は消えてしまったの?
「……ごめんね。」
ごめんね。
ごめんね、チャコ。
私、こんなに時を繰り返してるのに、ずっとチャコの事わかってなかった。
「……悪役やるなんて嫌だったよね。」
苦しかったよね。
「怖いよね……。よくわからない世界で悪役を割り当てられて。自分がどうなるか、どうしたらいいかもわからなくて。」
チャコはずっと自分のしたい事としなければならない事の齟齬に苦しんでたんだ。
自分の意思だけで動けなくて、気を張って、先がどうなるのかを必死で考えて……。
「……唯ちゃん、ハイキングの時に言ってくれた。怖くないよって。」
あれは結構効いたー、ってチャコが呟く。
「あの時は……チャコが死んだ時の事を思い出して、怖がってると思ってた。チャコが自分の存在に疑問を持ってて、この世界に馴染んでないなんて思ってもなかった。」
「うん。……いいんだよ、唯ちゃん。私、何も言わなかった。誰にも言わなかった。わかるわけない。」
それに、実際死んだ時の事を思い出して怖かったのもあるよ。ってチャコが金色の目で私を伺う。
そして、ゆっくりと言葉を続けた。
「唯ちゃんが手を引いて、怖くないよって、大丈夫だよって言ってくれる。だから、ここまで来れた。今だって、わけわかんない事を全部信じてくれて……唯ちゃんだって嫌な気持ちなのに。……唯ちゃんはいつも私の事ばっかりだ。」
そう言って、二人で握り合っていた手をそのまま上げる。
そして、私の手を引いたまま、そっと私の涙を拭ってくれた。
その金色の目は柔らかい光を宿していて……。
「チャコだって……。」
チャコだって。
――いつも私の事ばっかりだ。
チャコの姿がもっと滲んでくる。
「っ……ありがとう、チャコ。」
「……ん?」
チャコの金色の目が優しく私を見てる。
「ずっと、私のために生きてくれてありがとう。」
「……うん。」
チャコは私のためにここにいてくれたんだ。
怖くって、怯えてて……それでもいつも私の傍にいてくれた。
「もう、ゲームの事なんか気にしなくていい。悪役なんかしなくていいから。主人公……私の事も気にしなくていいから。……チャコはチャコの道を歩んだらいい。自分で決めて、自分の未来を掴みとっていいんだよ。」
いつだって。
何度だって。
チャコはいつも私のために。
「チャコ、私、チャコを助けたい。どうすればいい? どうすればチャコに報いることができる?」
「えー……。いや、だからね。私は唯ちゃんに恩返ししたいんだよ。恩返ししたい人に恩返しし返されたら、私が困るよー。」
また、チャコが涙を拭ってくれる。
「だから、唯ちゃんは今のままいてよ。……それでさ、幸せになってよ。」
金色の目が優しく細まる。
「それが私の願いだよ。」
――私が幸せになる事。
それがチャコの願いなの?
「というかさー、唯ちゃん。もっとゲームの世界って言うのに食いつかなくていいの?」
「……っだって、チャコが言うのならホントなんだよ。」
「……いや、疑って欲しいわけじゃないけどさー。」
チャコが困ったようにムムッて眉を顰める。
なんだかそれがおかしくて、思わずふふって笑ってしまった。
チャコもそんな私を見て、えへへって笑う。
「……ここがゲームの世界でも。ここにチャコがいて、私と手を繋いでる。これがゲームだとしても、私のこの嬉しかったり、悲しかったり、悔しかったり……そういう気持ちは私の物だから。」
「……そっか。」
チャコが私を眩しそうに見た後、ふと空を見上げた。
青い空には薄雲がかかっている。
クラブ棟の陰から見る空はきれいな色をしていた。
「あー……秘密打ち明けちゃった。唯ちゃんがすぐに信じてくれるなら、もっと早く言えば良かったね。」
「うん……でも、きっと、遠回りしないとわからなかったのかも。」
「えー、そうかなー……めんどくさいねー。」
「そうだね。」
ホントだね。
めんどくさいね。
「……チャコ、文化祭が終わった後も楽しい事いっぱいあるんだよ。」
いつも文化祭の後、私とチャコは一緒にいられなかった。
でも、今回は違うよ。
ずっと、ずっと一緒にいよう。
楽しい事いっぱいしよう。
「十二月八日が鋼介君の誕生日だよ。一緒にお祝いしてあげよう。」
「あー、そうだね。」
「そしたら、クリスマスだよ。みんなでパーティーしよう。」
「いいね。」
「でね、大みそかもお正月もあってね、一月二十日が友孝先輩の誕生日だからね。」
「……そうなんだ。」
「全部、全部、チャコと一緒にやる。」
「え、決まりなの?」
決まりだよ。
「もう偽物だなんて思わせない。怖いなんて思えないぐらい、楽しい事で埋め尽くそうね。」
チャコの金色の目をしっかり見つめて、笑いかける。
チャコはそんな私に柔らかい笑みを返してくれた。
そして、そっと目を閉じる。
「唯ちゃん……。こんな話を聞いてくれてありがとう。」
「ううん。」
「……手を離さないでいてくれて、ありがとう。」
チャコが繋いでいる手にギュッと力を入れた。
「唯ちゃんに会えてよかった。」
チャコが小さく息を吐く。
その言葉が嬉しいような悲しいような、不思議な心地で……。
私も繋いでいる手にギュッと力を入れた。
「私もチャコに会えてよかった。」
……会わなければよかったって。
思ったこともあったけど。
「チャコがいるから……私、ずっと幸せだよ。」
チャコは幸せになってって言ったけど。
私、今が幸せだよ。
チャコがいて、みんながいて……。
十分すぎる程、幸せだよ。
そんな気持ちを込めた言葉にチャコはピクッと手を動かした。
でも、そんな自分を収めるようにゆっくり息を吐いて……そっと、目を開ける。
「うん。……よし、もう大丈夫。」
チャコが自分に気合を入れるように呟く。
そこには深いブルーの目があった。
「私も唯ちゃんがいるから幸せだー。」
チャコが深いブルーの目を細めて、えへへって笑う。
私もそれにふふって笑い返した。
きっと大丈夫。
私の気持ちはちゃんとチャコに届いたと思う。
チャコは自分の道を探すはず。
自分で選んだ道を歩いていく。
「チャコ……。そういえばさ、秘密を打ち明けてくれたんだから、もう一個の秘密も教えてよ。」
「もう一個の秘密?」
「そう。ハイキングに行った時の山桜。」
「あー! あれね。」
ハイキングの時には教えてくれなかった。
でも、きっと今日なら教えてくれると思ったから。
チャコの手を握りながら、チラッとチャコの目を見る。
やっぱりダメだと言われたらどうしようかと思ったけれど、チャコはなんでもない事のようにいいよー、と頷いた。
「さっきの秘密に比べたらどうってことないよ。あの木が私の育ての親っていうか?」
「チャコが山にいた時の?」
「そうそうー。えっとね、生まれた時に木魂のじーちゃんが声をかけてくれてね、一緒に暮らしてた。」
「木魂?」
「うん。樹齢千年の山桜の妖だよ。今は眠ってるけどね。」
「眠ってるの?」
「うん。あー、友孝様にちょっと。」
チャコが困ったように眉を顰める。
そして、その時を思い出すかのようにうーんと考えながら言葉を続けた。
「なんでかわからないけど、友孝様がね、木魂退治に来て。それで、じーちゃんを助ける代わりに式神になったんだ。……まあ、力を削がれすぎたじーちゃんは形をとれなくなっちゃったんだけど。」
チャコがなんてことない事のように話をする。
でも、私にとってはいきなりポンと手渡された宝箱を開ける鍵だった。
「……っ! チャコは落石で死んだ。妖として生まれた時にその木魂がいた。それを友孝先輩が退治しに来た。そういう事?」
「う、ん? そうだよ。」
チャコの手をグイッと引っ張り、チャコを凝視する。
チャコはそんな私の剣幕に驚いたようで、戸惑いながら頷いてくれた。
その返事に私の体が沸騰したように熱くなる。
見つけた。
やっと見つけた。
――これで、チャコを助けられる。
「チャコ、行こう。一緒に行こう。」
興奮する胸を必死で抑え、地面から立ち上がる。
右手は離して、左手でチャコの右手を引っ張った。
「みんな待ってる。……チャコは悪役じゃない。自分で選んだ道を歩いていいんだよ。」
私の言葉にチャコは小さく頷く。
私はチャコの右手を握ったまま、ゆっくりと歩き出した。
グラウンドの土を踏めば、ジャリッと小石が擦れる。
それは私だけの音じゃなく、すぐ近くでもう一人分の音がした。
二度目の時とは違う。
私の手にはチャコの温もりがある。
「そういえば、文化祭、鋼介君と回ってたの?」
「うん。あ、後で勇ちゃんとも一緒に回ろうって言ってたんだけど。……怒ってるかなー。」
「……やきもきしてると思う。」
まっすぐ前を見て、何気ない話をチャコに振る。
チャコはそこで初めて二人の事を思い出したようで、あーと眉を顰めた。
それにふふっと笑って返す。
鋼介くんには材木を保管している部屋の整理を頼んでしまったけど、頭の中はチャコの事でいっぱいだろう。
勇晴君は今日の事をそれとなくは話しているから心配しているかもしれない。
チャコと話をしながら、グラウンドを歩いていく。
新校舎の入り口には鋼介君と勇晴君が待ってくれていて、手を繋いで歩く私達を見て、ほっとしたようだった。
鋼介君がこちらに向かって走って来る。
一瞬チラリと私と目が合って……。
私はそれに頷いて返した。
そして、鋼介君はチャコの隣に行き、大丈夫か? と声をかける。
チャコはそれにごめんね、と困ったように笑った。
勇晴君はそんな私達三人を見て、柔らかく笑っている。
「チャコ、この後どうするんだ?」
「あー、そうだねー……うん。予定通り、軽音楽部を見に行く。」
「え、チャコ、音楽が好きなの?」
聞こえてきた言葉にびっくりして、チャコを見た。
チャコはそれにイヒヒッて笑って答える。
「いや、かっこよさそうじゃない?」
「……チャコって案外ミーハーだね。」
「なんかバンドしてるってだけでモテそうだし。いいなー。私もしたいなー。」
私と鋼介君が複雑な顔でチャコを見てるのに、チャコはどこ吹く風で体育館へと歩き出そうとする。
勇晴君も私達に合流して、四人で並ぶ。
「勇ちゃん。モテるには部活が重要だよー。」
「なるほど。」
「楽器ができる陰陽師とか絶対モテる。」
さっきまで真剣に話してたのに、もういつものチャコに戻ってる。
勇晴君と良からぬ事を話して、鋼介君に呆れたように溜息を吐かれて……。
いつもより人の多い学校はがやがやと騒がしい。
模擬店の客引きや部活の展示会への呼び込みの声が混ざり合う。
鉄板でソースの焼ける匂いや、炭火で焼ける肉の香ばしい匂いもする。
そんな中にいる私達四人は、お揃いのクラスTシャツを着て、笑って話してる。
ここがゲームでも。
私がキャラクターでも。
チャコといたい。
チャコとずっと一緒に笑っていたい。
「チャコ、私、生徒会に戻るね。」
残念がるチャコを鋼介君と勇晴君に任せて、三人に手を振る。
きっと、友孝先輩も心配しているはずだから。
活動報告に鋼介の誕生日小話upしました。




