すべてを手に入れる8
プールに行ったり、友孝先輩と話をしたり、勇晴君と修行に明け暮れたりした夏休みが終わり、二学期が来る。
今日はオカルト研究部の部室で、友孝先輩と勇晴君と話をするために集まった。
友孝先輩とチャコの事を話してから、ついでにとばかりに先生の事を相談していたのだ。
勇晴君とも色々と考えてはいたのだが、友孝先輩を巻き込めば、よりいい方法が見つかると思ったから。
友孝先輩はそんな私の考えにやれやれと溜息を吐きながらも付き合ってくれている。
勇晴君も最初は友孝先輩を巻き込む事を嫌がっていたが、友孝先輩と妖の事を話すのは少し楽しかったらしく、少しずつ態度は軟化していた。
「賀茂。なんかわかったか。」
「ああ。君たちに言われて、何度か彼の中を覗いてみた。」
先生の力を抑えたい。
それが話の始まりだったのだけど、今日は鋼介君を調べてもらった事の報告だ。
勇晴君は鋼介君と接して、何か思うことがあったらしい。
妖の力を見るのは友孝先輩の方が得意らしく、友孝先輩に鋼介君の力を調べてもらった。
鋼介君が友孝先輩に尊敬している、と話して以来、友孝先輩はなんとなく鋼介君に触れて、中を覗いていたのだ。
「夏から少しずつ見てみたが、やはり、彼の身体と力のバランスは悪い。狐とは正反対だ。」
「……鋼介君が先生と反対。つまり、身体に対して力が少なすぎるって事ですか?」
考えながら友孝先輩を見ると、友孝先輩が頷いてくれる。
鋼介君を調べてみた結果、やはり先生だけでなく、鋼介君もおかしなところがあったらしい。
「そうだよ。狐はあまりにも力が強すぎて暴走する危険と隣り合わせだが……。」
「逆に鋼介は器はあるのに中身がない。……だから、余計に飢餓感があるのかもしれないな。」
友孝先輩と勇晴君がお互いに一瞬だけ目を合わせて、ふむと考え込む。
『飢餓感』
そういえば、鋼介君は友孝先輩と話した際にそれを言っていた。
足りない、と飢えながら、それを抑えて生きて来たんだろうか。
鋼介君の今までの事を思い、ぎゅっと眉を顰めた。
一度目の時、力が欲しいと苦しんでいた鋼介君。
ずっと抑え込んでいた飢餓感が抑えきれず、私が目の前にいたから、それに縋ってしまったんだろう。
でも鋼介君は一度目以降、私に力を求めて来た事はない。
ずっと飢餓感と……自分と戦い続けている。
きっとそれはすごく苦しい事で……。
でも、鋼介君は笑って過ごしているんだ。
「名波、九尾兄と鋼介の力の質はどうなんだ?」
眉を顰めたままの私を勇晴君がチラリと見る。
私はそれに小さく頷いて答えた。
力の質。それはそれぞれ持っている物が違うらしい。
一般的に違いを見ることはできないようだが、私には色のような形で見ることができた。
なので、力の量を友孝先輩が見て、力の質を私が見ることになっていたのだ。
「うん、二人に頼んで少しだけ触らせてもらった。その時に見てみたんだけど、ほとんど同じに見えた。」
「……さすが兄弟、か。」
先日、鋼介君と先生に見せてもらった力の色はほとんど同じだった。
勇晴君の言う通り、兄弟だからなのだろう。
そんな私の言葉に、勇晴君がなるほどな、と頷いた。
確信を得た、とその黒い瞳をキラリと光らせる。
「鋼介のコンプレックスを聞いて、おかしいと思ってたんだ。アイツは懐が深いヤツなのに九尾兄にだけ、異常に反応する。……小さい頃から比べられた所為もあるだろうが、自分に足りない物を余らせてるヤツがそこにいるんだ。」
そこまで話すと、ふと言葉を止め、小さく息を吐いた。
そして、少しだけ眉を顰める。
「……欲しくて欲しくて仕方なかっただろうな。」
身体に対して力が足りなくて。
それを埋めたかった。
そして、すぐ近くにその力がある。
……ああ、そうだったんだ。
鋼介君は先生と比べられるのだけが辛かったんじゃない。
先生の力が欲しくて、足りない物を埋めたくて、ずっとずっと苦しんでたんだ。
勇晴君が鋼介君を思ってポツリと話した言葉は私の胸にズクリと突き刺さった。
ずっと飢餓感に苛まれていた鋼介君。
写真部にいる事は辛かっただろう。
きっと、先生と関われば関わるほど、鋼介君の飢餓感は増していたはず。
写真部に無理やり誘ったのは私だ。
私は自分のために鋼介君を苦しめた。
今だってずっと苦しめている。
「……先生と鋼介君の力の質は同じ。そして先生はそれが多すぎて、鋼介君はそれが少なすぎる。」
自分がした残酷な仕打ちに心がギリギリと痛んだ。
それでも小さく息を吐いて、心を落ち着かせると、ゆっくりと言葉を告げる。
「じゃあ、先生の力を鋼介君に移せたら……。」
「ああ。彼の飢餓感も薄れ、狐も力を持て余す事はなくなる。」
「WinWinだな。」
私の言葉に友孝先輩と勇晴君が頷く。
私は鋼介君を苦しめた。
もっと鋼介君を苦しめずに助ける方法があったのかもしれない。
でも、反省は後でしよう。
後悔は全て終わってからでいい。
今はただ、やるべきことをやる。
「先生の力を鋼介君に移動する。……それは私の力を使えばできそうですか?」
友孝先輩を見ると、先輩は少し考える素振りをした後、小さく首を振った。
「どうだろう……力の質が同じと言ってもね、それを使う意志は違うものだから。」
「ああ。なるほど。」
そんな友孝先輩の言葉に勇晴君も頷く。
二人はそんな会話だけで、お互いに何が言いたいのかわかったようだが、私はよくわからなかった。
なので、詳しい説明を勇晴君に求める。
「わかんない。勇晴君、もっとわかりやすく。」
「あー……だからな、同じように見えるパソコンでもOSが違うんだよ。」
「おーえす?」
「そうだ。マックとウィンドウズみたいな。……まあ、マックとウィンドウズならケーブル繋げば、データの移行は簡単なんだけどな。さすがにそんなに簡単じゃない。」
どうやら勇晴君はパソコンに例えて教えてくれているらしい。
だけど、まだわかりづらい。
首を傾げていると、勇晴君が更に説明を続けてくれた。
「九尾兄には九尾兄が使いやすいような形式でデータが保存されてるんだ。それを鋼介がそのまま使えればいいが、そうじゃないものもあるだろう。だから、一度ファイル形式を変更しないといけない。」
「……うん。」
「あー、だからな、九尾兄用の力を鋼介用に変換しないといけないってことだ。」
よくわからないけど、先生の力を今のままでは鋼介君に移すことができない事はわかった。
移すには、先生の力を鋼介君が使えるような形に直してから移さないといけないって事なんだね。
私が頷くと、友孝先輩が考えながら、説明を付け加えてくれる。
「……ただ、それを狐の中でやるのは不可能だろうね。容量が足りない。」
「ああ。名波なら力を変換できると思う。そして、移行する事もできるだろう。……ただ、一度でやろうとすると、九尾兄の方が耐えられないかもしれない。」
「……何か、一度、力を移動する場所がいるって事ですね。」
二人の説明を聞きながら、ゆっくりと考える。
先生の力を移すことも変換する事もできるけど、それをすると先生に負担がかかってしまう。
どこかに先生の力を移すことができれば……。
私と勇晴君が考えていると、友孝先輩が小さく息を吐いた。
そして、私達二人を見る。
「……チャコがいるだろう。」
友孝先輩の言葉に私と勇晴君が目を瞠った。
「チャコはまだ容量がある。そして、自分の物ではない妖力を取り入れても暴走しない。狐の力をチャコに移す。そして、チャコの中で力を変換しながら、彼に移せばいい。」
友孝先輩は私と勇晴君をチラリと見た後、視線を窓の外へ移す。
続けられた話はチャコの特性を活かし、鋼介君と先生を助ける方法だった。
「なるほど。チャコが外部HDDみたいなもんか。」
勇晴君が友孝先輩の話に黒い瞳をキラリと光らせ、頷く。
私は友孝先輩と勇晴君を見つめながらも、鼓動が高鳴るのを感じた。
先生の力をチャコに移す。
チャコの中で力を変換しながら鋼介君へ移す。
そうすれば、先生の力は少なくなり、暴走する心配はなくなる。
そして、鋼介君は足りない力を得る事ができ、飢餓感が薄れるはずだ。
二人を助けられる。
二人の悩みを知りながら、知らない振りをして、ずっと無視し続けてた。
それをようやく助ける事ができるんだろうか。
「……ただ、チャコには負担になるだろうね。」
友孝先輩が窓の外へ移していた視線を私に戻し、小さく呟く。
その声は平坦で、事実を告げただけ、と言った感じだ。
でも、わかる。
きっと友孝先輩はチャコを心配してるんだ。
「チャコにはちゃんと説明します。チャコがイヤだと言ったら、無理やり手伝ってもらうような事はしません。」
ごめんなさい、先輩。
きっと、説明すればチャコはやるって言うと思います。
「私、二人を助けたいです。」
二人を助ける事で、チャコは苦しむかもしれない。
それでも、私は――
「……君にメリットがないだろう?」
友孝先輩の紺色の瞳がじっと私を見る。
私はそれにふふって笑い返した。
「メリットですか。……そうですね、誰か一人でも残ってたら、チャコが先に進まないからですかね。」
チャコは優しいから。
誰か一人でも残っていたら、その人と一緒に残る気がする。
「なので、まずは鋼介君と先生に進んでもらいます。」
鋼介君が毎日を楽しく生きてくれたら。
チャコと同じような目をしていた先生が遠い未来を見てくれたら。
二人が先に進む。
それはきっとチャコの心を揺さぶってくれるはずだから。
「二人を助けるメリットは――チャコをぐらぐらに揺らせるって事ですね。」
チャコはすぐに心を隠すから。
きっと、それぐらいがちょうどいいと思う。
私がそれを言い切ると、勇晴君が溜息を吐いて私を見た。
眉を顰めて……でも、柔らかく笑ってる。
「名波はいつもチャコばっかりだな。」
「うん。そうだよ。」
私の返事を聞いて、勇晴君が鼻でフッと笑った。
そして、ニヤッと意味ありげに友孝先輩を見る。
「そもそも、賀茂がチャコを式神にしたから、こんなにややこしい事になってるんだけどな。」
「……ああ。」
勇晴君のその言葉に、友孝先輩は一度目を閉じて、小さく頷いた。
そうだ。きっとこんなにややこしくなってるのは友孝先輩のせいだ。
チャコが式神じゃなければ、もっと簡単に話が進んでいたのかもしれない。
でも。
「……先輩が連れてきてくれなかったら、チャコはここにいないですから。」
そう。
友孝先輩の式神じゃなければ、チャコがこの学校に来る事もなかった。
「私とチャコは会う事もなくて。そうしたら、私はこうやってみんなと仲良くしてなかったと思います。」
鋼介君とはクラスメートとして話すだけで。
友孝先輩は生徒会の先輩。
先生は隣のクラスの担任ってだけ。
勇晴君とは話すこともなかったかもしれないし、友幸さんの事だって知らなかっただろう。
そして、私は妖雲の巫女っていうのもよくわからず、友孝先輩と勇晴君に守られて生きて行ってはずだ。
「私、チャコに会えてよかったです。今、毎日楽しいです。……友孝先輩とこうやって話せて嬉しいし、勇晴君の背中をバシッて叩くのも嫌いじゃないですから。」
私が笑って友孝先輩を見ると、友孝先輩は困ったように眉を顰めていた。
そして、勇晴君はあー、と言って自分の頭を掻くと、はぁと小さく息を吐く。
「……別に、お前がいいなら、いいけど。」
それだけボソッと呟くと、チラリと友孝先輩を見た。
「でも、いいのかよ。賀茂の坊ちゃんが妖を助ける事に協力して。」
「……ああ。」
「お前が九尾兄弟を助けるとは驚きだったな。九尾兄とは犬猿の仲だろ?」
勇晴君が眉を顰める。
友孝先輩はそれに曖昧に微笑んだ。
「賀茂家としてはね。……けれど、あんなにまっすぐに言われると、少し絆されるさ。」
友孝先輩の目が仕方ない、と優しく細まる。
……きっと、友孝先輩は鋼介君の事を言っているのだろう。
確かにあんなに率直に好意を向けられると、それを無下にできないのかもしれない。
鋼介君と友孝先輩の悩みは似ているんだろうから。
「まあ、バレなければ問題ないだろう?」
友孝先輩が小さく笑う。
「表立っては行動しない。だから彼にも狐にも私の事を言う必要はない。……本家と対立するのはめんどうだからね。」
つまり、友孝先輩が関わっていた事を言うな、とそういうことだろう。
鋼介君にも先生にもきちんと説明すればわかってくれるし、黙っていてくれるのに。
「……リア充も苦労してるんだな。」
ポツリと勇晴君が言葉を零す。
友孝先輩はその言葉に、眉を少し上げて反応した。
「前から思ってたんだけど、リア充ってリアルが充実してるって意味だろう? 私とは違うと思うんだけど。」
「充実してるだろ。……中学の時なんか女をとっかえひっかえ。今だって人気者の生徒会長様じゃねーか。」
「ああ……中学の頃か。」
勇晴君がケッと掃き捨てるように言うと、友孝先輩がなるほど、と頷く。
「あの時は婚約者を決められそうになって、なかなか大変だったからね。」
「婚約者ですか?」
「ああ。」
あまりに唐突な言葉にびっくりして友孝先輩を見た。
私のそんな顔を見ても、友孝先輩は事もなげに頷く。
当然の事、というように。
「中学の時から婚約者って決まっちゃうものなんですか?」
「まあね。」
「……あー、まあ俺たちはいいとこの坊ちゃんだからな。」
勇晴君が右手で自分の頭を掻きながら、バツが悪そうに呟く。
私はそんな二人を交互に見て、なるほど、と頷いた。
「先輩も勇晴君も色々あるんですね。」
この話し方からするに、自ら望んで婚約者を選んでいるわけではないのだろう。
中学の時から婚約者を決められて、自由恋愛なんかできない。
友孝先輩も勇晴君もそういう世界で生きているんだ。
私が何も言えなくなって、目を伏せていると、勇晴君が唸るように言葉を発する。
「……相手から断るように、女グセが悪いヤツを演じたのか?」
「さあ。」
友孝先輩は睨んでいる勇晴君をさらりと躱し、微笑む。
勇晴君はその笑みですべてがわかったようで、大きく溜息を吐いて、奥歯をギリッと噛んだ。
「これでリア充じゃないって事はわかってもらえただろう。生徒会長だって、それをしたからと言ってなんになる? 陰陽師の力は君には遠く及ばない。所詮、優秀な陰陽師だ。」
友孝先輩がなんてことないように自分の事を話す。
勇晴君は友孝先輩の話を眉を顰めて聞いていた。
「悪かった……。お前を誤解してた。」
そして、低い声で、だけどしっかりと勇晴君が友孝先輩へ伝える。
そんな勇晴君の言葉に友孝先輩が驚いたように目を開いた。
「同じ名家に生まれて、そういうのは同じなはずなのに、お前はもっとうまく生きてるんだと思ってた。」
勇晴君がチラリと友孝先輩を見て、またすぐに視線を逸らす。
そして、小さく息を吐くと、ボソリと呟いた。
「……俺はお前が羨ましかったんだ。」
唇を一度ギュッと噛む。
「俺は強い。間違いない。……けど、陰陽師としてトップに立って、組織をまとめるのはお前みたいなヤツなんだろうなって。」
勇晴君が苦しそうに言葉を続けた。
「俺には力しかない。……お前とは違うから。」
勇晴君の話は友孝先輩にとっては思ってもみない話だったのだろう。
目を瞠り、ありえない、と顔にありありとうかんでいる。
そして、ゆっくりと勇晴君に向かって言葉を発した。
「……力があれば十分じゃないか。」
呆然と、ちょっと掠れた声で言う友孝先輩に、勇晴君も眉間に皺を寄せ、低い声で話す。
「……お前だって、それだけモテれば十分だろ。」
二人とも呆れた顔でお互いを見た。
何言ってんだコイツ、とお互いがお互いに思ってるんだろう。
二人の間に不思議な空気が流れる。
きっと、羨ましいと思う気持ちはこれからも消える事はなくて……。
二人とも、お互いにお互いを気にしてずっと生きていく。
私はそんな二人の顔を交互に見て、ふふって笑った。
「二人ともかっこいいですよ。二人ともすてきです。」
そうだよ。
二人とも贅沢だよ。
「友孝先輩はいつもがんばってて、すごいです。努力してる先輩だから、かっこいいなって思います」
呆然としている紺色の瞳ににこって笑いかける。
先輩はちょっとがんばりすぎです。
「勇晴君は強くて、物知りで、いつも私を励ましてくれる。勇晴君と話せば、みんな勇晴君の事好きになる。友達だってもっといっぱいできるよ。」
眉を顰めてる眼鏡の奥の黒い瞳にも、ふふって笑う。
まあ、勇晴君は時々変な事言うけどね。
「二人とも、今で十分だって私は思いますよ。」
私はそれだけ言うと、目を閉じてうんうんって頷いた。
「妖好きな陰陽師同士、適当に話したらいいんじゃないですか? これからも二人はずっと関わって生きていかなきゃいけないんですから。」
ね? って二人に笑いかけると、二人は何とも微妙な顔をしてお互いに顔を見合わせる。
そして、どちらからともなく目を逸らし、はぁと小さく息を吐いた。
私はそんな二人を見て、とにかく、と鋼介君と先生の話に話題を戻す。
「私は先生に助ける方法がある事を伝えます。なるべく早いうちにチャコと鋼介君にも話をして、力を移したいと思います。」
「ああ。そうだね。狐がいつ暴走するとも限らないからね。」
「友幸さんにも頼んで、友幸さんの家に集まります。」
私の話に友孝先輩が頷いた。
場所は友幸さんの家。きっと何かあっても友幸さんならなんとかしてくれるだろうから。
「お前は来ないんだろう?」
「ああ、行かない。」
勇晴君の質問に友孝先輩ははっきりと頷いた。
やはり、鋼介君と先生を助けるという事に表立って関わる事はしないらしい。
その返事に勇晴君がはぁ、と小さく溜息をつく。
「調整とか相手の力を見るのはお前の方が得意なのにな……。名波、賀茂は参加しないから、代わりに俺が補助する。一人でやるよりはマシだと思う。」
「うん。わかった。」
友孝先輩と勇晴君と私で話し合って。
友幸さんに見守ってもらいながら、チャコの力を借りる。
そして、鋼介君と先生を助ける。
みんなの力があれば。
きっとうまくいく。
私がしっかりと頷くと、友孝先輩が席を立った。
「じゃあ、私は行くよ。文化祭の準備で忙しいからね。」
「はい。私もまた手伝いに行きます。」
友孝先輩が手を振って部室を出ていく。
私はその背中を見ながら、ギュッと拳を握った。
がんばろう。
鋼介君と先生を助けるんだ。




