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すべてを手に入れる

 目が覚めた。


 ベッドから体を起こし、掃き出し窓まで行き、カーテンを開ける。

レース越しの朝の光がきらきらと輝いた。


「がんばる。」


 部屋で決意を新たにする。

私がやらなくてはならない事はたくさんある。

きっと今までで一番、大変だろう。

それでも、やりきってみせる。


 みんなと共に過ごす。

一緒に生きていく。

解決できる悩みなら、私が解決しよう。


 身支度を整え、姿見に自分を映す。

制服を着て鏡に映っている私は、今までの自分とは変わったように見えた。


 チャコは消える事を受け入れているのかもしれない。

消える事で成し遂げたい事があるのかもしれない。

その願いを変えたいなんて思っていないだろう。


 それでも。


 ――私の手を取らせてみせる。


 弱くて、情けなくて嫌な女で。

欲張りで諦めの悪い。

そのままの私でチャコの隣に立つんだ。


 チャコの願いを教えて。


 私がそれを叶えてみせるから。





 家を出て、両親と共に入学式へ向かった。

やはり時を繰り返す影響があるのか、今までと違い、入学式だというのに心配そうだ。

前を歩いていた私だが、背中に気遣わしげな視線を感じ、ゆっくりと振り返る。

そこには並んで歩きながら、私をじっと見ている両親がいた。


 心配かけてごめんね。


 心でこっそり謝って、顔には笑みを浮かべる。


「お父さん、お母さん。こんな私だけど、これからもよろしくお願いします。」


 そして、ちょっとだけ頭を下げた。

私の唐突な言葉に驚いたのだろう。

両親は目を丸くして私を見た後、お互いに顔を見合わせた。

母は、どうしたの、入学式で緊張してるの? と狼狽していたし、父は困ったように眉を顰めている。

なんだか二人の表情がおかしくなって、私はふふっと笑ってしまった。


 きっとまた落ち込んだり、怒ったり、泣いたりと手間をかけると思うけど。

まあ、お父さん曰く欲張りだから仕方ないんだよ。

だから、これからもよろしく。


 困惑している両親に背を向け、また学校へと歩き出す。


 さあ、これから、また、新しく始めるんだ。


 私は紅潮する頬を抑えきれないまま、正門から学校へ足を踏み入れた。

そして、両親に手を振って、クラス分けをされた教室に入る。

前の席には既にチャコがいて、黒い髪が風に揺れていた。

廊下側の一番前の席には勇晴君がいて、一人席に座り、本を読んでいる。

そして、鋼介君はもう友人ができたようで、三人ぐらいで固まって、窓際で何やらじゃれていた。


 戻って来た。

私がいたかった場所。


 胸がギュッと苦しくなって、小さく深呼吸をした、

欲張りだけど、やっぱり。

ここを諦めるなんてできない。


 がんばろう。


 苦しい事も辛い事も、たくさんあるだろうけど。

がんばった事は全て、自分に返って来るはずだから。


 時間が来て、体育館へと移動し、入学式が始まる。

隣の席のチャコに声をかけると、えへへっと笑ってくれた。


 懐かしいその笑顔。


 少しだけ胸が痛んで、でも、温かいものが心に広がる。

ああ。チャコが笑ってくれるなら、なんだってがんばろうって思えちゃうな。


 一度、距離を取った所為か、よりその笑顔を大事にしたいと思う。

私ってもうメロメロなんだな、と思うとちょっと笑えた。



 入学式が終わり、HRも終わる。

私は荷物を片付けると、前に座るチャコに声をかけた。


「今日、一緒に帰ろう? 」

「うん。いいよー。 入学式から仲良くなれるなんて嬉しいねー。」

「……そうだね。」


 本当に嬉しい。

チャコと一緒に帰るのも久しぶりだ。

もし、チャコにも時を繰り返す影響があるのなら。

少しでいいから懐かしく思ってくれたらいいのにな。


 自分勝手な願いにふふっと笑いが漏れる。

チャコはそんな私を見て、えへへっと笑った。


「あ、でも少し用事があるから待ってもらっててもいい? 二十分ぐらいだと思うんだけど……。」


 このままチャコとずっと一緒にいたいが、これからやらなくてはいけない事がある。

一緒に帰ろうと誘っといて申し訳ないが、少しだけ待ってもらいたい。

私がごめんね、と手を合わせると、チャコは、大丈夫、と頷いた。


「いいよー。今日もらったプリント見たり、必要事項を書いてたりしたら、それぐらいかかりそうだし。」

「うん、ありがとう。じゃ、ちょっと行ってくる。」

「んー。」


 チャコにお礼を言って立ち上がると、廊下側の一番前の席に向かった。

後ろでチャコが少し驚いたのがわかったので、振り向いて、二回頷く。

チャコはよくわかってないだろうけど、うんうん、と目を大きくしたまま頷いた。


「勇晴君。二人で話したい事があるんだけど。」


 チャコの様子にちょっと笑いながらも、勇晴君に向き直って声をかける。

眼鏡の奥の黒い瞳が私を見て、妖しく光った。


「いいぜ、ついて来い。」


 そうして、扉を出て廊下を歩いていく。

私はその後ろ姿を見て、ふっと笑いが出てしまった。


 変わんないな、勇晴君。

話したい事ってなんだ、とか、馴れ馴れしく呼ぶな、とかさ。なんか言えばいいのに。

でも、きっと、理由とか聞かない方が勇晴君らしいよね。


 私はほころぶ顔が止められないまま、勇晴君に続いた。

そして、オカルト研究部の部室で今までの事を話す。

勇晴君は面白がりながら聞いてくれ、またすべてを信じてくれた。


「なるほどな。つまり、名波はこれで六度目か。」

「うん。」


 勇晴君はイスに座り、黒い瞳を光らせながら、何やら考え事をしている。

オカルト研究部の部室は相変わらずで、なんだかホッとした。


「それにしても、時を繰り返す影響っていうのが面白いな。」

「うん。本当にあるのかはわからないけどね。……勇晴君は何か覚えてる、とかそういうのはないんだよね? 」


 上目遣いでチロリと見上げる。

チャコや鋼介君に聞くことはできないが、勇晴君はすべてを知ってくれているので、記憶の事も聞くことができる。

多分、覚えてはいないだろうけれど……。


「……そうだな。あー、残念ながら、俺にはこの入学式が何度も繰り返しているようには思えない。名波の事も妖雲の巫女、ということしかわからないな。」

「そっか……。」


 やはり記憶はないようだ。

勇晴君はガシガシと頭を掻いた。


「あー、わりぃ、こんな面白そうな事を覚えておけないなんてな。……けど、その、時を繰り返す影響ってヤツはなんかわかる気がする。」

「そうなの? 」

「ああ。名波が俺に話して来た時な、『やっと来たか』って思ったんだよ。」

「……うん。勇晴君ね、ダメでも戻って来いって言ってくれたよ。お前が話せば俺は信じるって。」


 遅くなってごめんね。

また信じてくれて、ありがとう。


「多分、心の奥の方で覚えてるんだろうな。デジャヴみたいなもんかな。」

「そっか。」


 デジャヴか。

覚えていない人にはそれぐらいの不確かさなんだろう。


 やっぱり覚えていないんだ、とわかってた事だけど胸がツキッと少し痛んだ。

忘れられてしまうのはやっぱり寂しい。

うん。でも、それでいい。この痛みだって私の糧になる。


 少しだけ目を瞑って、ふっと息を吐く。

勇晴君はそんな私にニッと口の端を上げて笑った。


「で、二か月引きこもってどうだった? 楽しかったか? 」


 え? と目を大きくして勇晴君を見る。

嫌味とかそういうのではなく、ただただ興味深々と目を輝かせている。


「……楽しいわけないよ。」

「そうかー? ゲームに読書にやりたい放題だろ? 名波は一人暮らしだしな。羨ましい。」

「……全然、楽しくなかったからね。」


 一人で引きこもって、チャコのメールが来ては喜び、返信できなくて胸が痛む。

買い物に行くのだって怖くて、関わる人みんなを疑って。

そんな日々が楽しかったわけない。

何言ってるんだ、とじとりと睨めば、勇晴君はははっと笑った。


「あー、わりぃわりぃ。」

「もう。」


 はぁと大げさに溜息をつけば、勇晴君はまだ口の端は笑ったままで、言葉を告げる。


「とにかく、お前はまた修行するんだろ? 」

「うん。がんばる。よろしくおねがいします。」

「ああ、せいぜい気張れ。」


 勇晴君が楽しそうに笑う。

その表情も言葉も懐かしくて、私の顔も勝手に笑ってしまった。


「……あ、私二回目だからすごい勢いで覚えると思うから。勇晴君なんかあっという間に追い越すかもしれないよ。」

「あー? 」

「そうやって上から目線もね、今だけだからね。」


 そうだよ。

すぐに勇晴君のライバルになっちゃうんだからね。


 私の挑戦的なセリフに、勇晴君は面白そうに笑った。

そうして、一しきり笑ってから、壁に掛けてある時計を見上げる。

既に十五分ほど経っていた。


「あ、チャコの所に戻らなきゃ。」

「そうか。」


 もうそろそろ行こうと、席を立つ。

勇晴君はそのまま見送ろうと思ったのだろう、座ったまま私を見上げた。


「勇晴君も来てね。」

「あー? 」

「よし、行こう。」


 は? と間抜け顔で見上げる勇晴君の手を取り、歩き出す。

勇晴君はおいおいと焦りながらも、私に繋がれていない方の手でカバンを取り、私の後に続いた。

しばらく歩いていると、最初こそ焦っていたが、そのうちに諦めたようで大人しくなる。


「なんか手を繋ぐって、思ってたのと違うな……。」


 そして、ボソリと後ろから声がかかった。

なるほど。女の子にモテない勇晴君はこういう胸キュンな感じもなかったんだね。


「良かったね。役得ってヤツだね。」

「いや、役得とは違うだろ。……ってか、名波ってなんか変わったか? 」

「そうかな? 」

「ああ、俺の心がな、『なんか違う。コレジャナイ』って言ってる。」

「なにそれ。」


 よくわからない言葉にあははっと笑うと、勇晴君はむむっと眉間に皺を寄せる。

その表情がおかしくて、余計に笑ってしまった。


「でも、そうかも。なんかね、こんな私でもいいじゃないかって開き直ったら、心がパーッと晴れたんだよね。」

「そうか。」

「うん。だって、チャコのためならなんだってやるからね! 」

「……強くてニューゲームってやつか。」

「なにそれ。」


 勇晴君はよくわからない言葉を使う。

だけど、楽しそうに笑う私を見て、勇晴君もははっと笑ったので、きっと悪い言葉じゃないんだろう。

そうして、ようやく教室へ戻ると、そこにはプリントを広げて、必要事項を書いているチャコがいた。


「お待たせ。」


 チャコに声をかけて近づくと、目を開き、驚いた顔でこちらを見る。

そんなチャコに笑顔を向けながら、私は手をグイッと引き、勇晴君をチャコの机へ近づけた。


「こちら安倍勇晴君。友達。」


 繋いでいた手を離し、チャコに紹介する。


「この美少女がチャコ。二人とも仲良くしてね。」


 二人の顔を見回して、一つ頷く。

私の端的すぎる紹介に、二人は微妙な感じで頭を下げあった。

そして、勇晴君は呆れたようにこちらを見ていたが、チャコは冷静さを取り戻したようで、勇晴君を見て、えへへと笑う。


「あ、初めまして。友永茶子です。唯ちゃんとはさっき知り合ったばっかりなんだけど、一緒に帰ろうと思ってて……あの、安倍君は唯ちゃんと知り合って長いの? 」

「あー、どうなんだろうな。まあ、俺もさっき知り合ったって事になるんだと思う。」


 勇晴君の煮え切らない返事に私はふふっと笑った。


「そうだよ、私達三人とも、今日、知り合った所だよ。」


 それでいい。

今日からまた始めればいいんだ。


「なんか唯ちゃんって面白い人なんだねー。」


 チャコが笑う。

それが本当に嬉しいから。


「強引でごめんね。」

「ううん、友達が増えるのって嬉しいし、全然いいよー。安倍君もよろしく。」


 上目遣いで謝れば、チャコはイヒヒっと悪戯っぽく笑った。

そして、その顔のまま勇晴君を見る。

勇晴君はあー、とだけ返事をした。


「あ、チャコ、勇晴君ね、安倍って呼ばれるの嫌なんだって。」

「そうなの? 」

「あー、まあな。」

「んー、じゃあ、勇ちゃんだね。」


 よし決まり! とチャコが呼び方を決める。

鋼介君と同じように、ちゃん付けで呼ぶらしい。

なんだか、そのかわいさが勇晴君に似合ってなくて、プッと吹いてしまう。

勇晴君は嫌がるかと思ったが、特に表情を変えなかった。

ただ――


「……高校生にちゃん付けとかエロゲか。幼馴染キャラか。」


 勇晴君がキラリと目を光らせて、隣にいる私にしか聞こえないくらいの小声で、何かを呟いた。

よくわからないが、明らかに不穏な言葉だ。


 横目でじとりと睨んで、バシッと背中を叩く。

チャコに聞こえなかったかとひやひやして見るが、不思議そうな顔でこちらを見るだけだった。

……良かった。


「いてぇ。」

「次、言ったら、グーで行くからね。」


 ボソリボソリと二人で呟く。

チャコはその間に帰り支度をしたようで、カバンを机の上に置いて、私達を見上げた。


「あ、勇ちゃんも一緒に帰るの? 」


 『勇ちゃん』という言葉の響きにまたしても勇晴君の目が光るのを見て、じとりと睨む。

そして、睨んだままの目にならないように気を付けながら、チャコを見て、首を振った。


「帰りは別なんだけどね、この後少しだけ寄りたい所があるから、そこに一緒に行きたいんだ。チャコにもついてきてほしいんだけどいい? 」

「うん、いいよー。」

「ありがとう。」


 勇晴君は私の話は初耳だったので、俺も行くのか? と目線を送って来たので頷いておく。

そして、三人連れ立って、校内を歩いた。

新校舎を出て、部活をしているグラウンドを眺めながら、目的地へと向かう。

勇晴君は途中でこれから行く場所がわかったらしく、ちょっと焦っていたが、それには気づかないふりをして歩き続けた。

そして、ようやく第二グラウンドの横に立つ、離れのような一軒家につく。

チャコは見知らぬその場所に不思議そうに私を見ていた。


「ここが寄りたかった所? 」

「うん、そうだよ。」


 チャコに頷きながら、インターフォンを押す。

勇晴君は既に諦めたようで、呆れたように後ろに立っていた。

インターフォンを押すと、声が聞こえたので、名前を言ってしばし待つ。

少し経って、ドアがガチャリと開くと中からは理事長が出て来た。


「いらっしゃい。初日から、もうがんばっているんだね。」

「はい。飛ばしてます。」


 ふふっと笑うと、水色の目が優しく微笑んでくれる。

戸惑うチャコと諦めたような勇晴君を家の中に押し入れ、靴を脱いだ。

この前に話した土足で入る応接間で良かったのに、理事長は応接間ではなく、靴を脱いで上がるプライベート空間の方へ案内してくれたのだ。


「わー、すごい。」

「うん、すごいね……。」


 靴を脱ぎ、玄関の正面にあったドアから入るとそこはLDKになっていた。

正面には大きなガラスでできた掃き出し窓があり、ウッドデッキへと繋がっている。

理事長はその正面に置いてあるL字型の茶色の皮でできたソファを私達に勧めた。

おずおずと座ると適度なクッションとスプリングがお尻を跳ね返してくれ、とても心地いい。


「唯ちゃん、このソファ、ずっと座っていられそうだね。」

「そうだね。」


 二人でボソボソと呟いていると、理事長と勇晴君が何やら話していた。

お久しぶりです、とか、元気かい? とか聞こえるから、二人は前からの知り合いだったのだろう。

勇晴君と理事長の話が終わると、勇晴君はソファに腰掛け、理事長がチャコの方を見る。


「はじめまして。ここの理事長をしている賀茂友幸だよ。よろしくね。」


 そういえばまだ紹介をしてなかった。

どんな反応をするだろう、と心配になってチャコを伺うと、チャコは、あー! と手をポンと叩いた。


「お金くれる人! 」


 合点がいったと言う風に、何度も頷くチャコはかわいい。

でも、第一声がそれでいいのかな……。

チャコはまったく気にしていないようで、そのまま、えへへっと笑って自己紹介をした。


「お世話になってます、友永茶子です。おかげさまでこの学校にも通えて、これから楽しくなりそうでワクワクしています。」

「そうかい? それは良かった。」


 理事長が柔らかく笑うと、チャコはありがとうございます、とペコリとお辞儀をした。

理事長はそれを見ると、お茶を入れるね、とキッチンへと向かう。

私は手伝うために、ソファを立ち上がった。


「手伝ってくるね。」

「私も行こうか? 」

「ううん、勇晴君とここにいて。」

「りょうかいー。」


 初対面のチャコと勇晴君を置いていくのもどうかと思ったが、まあチャコならうまくやるだろう。

キッチンへと向かう途中でチラリと振り返ったが、チャコは楽しそうに勇晴君に話しかけていた。

これなら大丈夫そうだ、ともう一度キッチンへと向き直り、理事長の隣へ行く。

手伝います、と言うと、じゃあ、これを持って行ってもらおうかな、と茶菓子を渡された。


「すごいきれいな家ですね。」


 茶菓子を受け取りながら、理事長へと話しかける。

応接間で話した時はあまり感じなかったけれど、こちらの空間はすごくきれいだ。


 リビングの横がダイニングになっていて、そこにアイランドキッチンが備え付けてある。

無垢だと思われる床材も銀色に鈍く光るステンレスのキッチンもとてもきれいだ。

思わず、はーと感嘆の溜息をつくと、理事長はありがとう、と言いながらもくすくす笑った。


「それにしても、来るだろうと思っていたけど、まさか勇晴とあの子を連れてくるとは思わなかったな。」

「もう、どうせならみんなも呼んだ方が早いんじゃないかな、と思いまして。」


 そう。

楽しい事をいっぱいしたいし、みんなの悩みも解決したい。

でも、私だけでやるにはやはり限界がある。

だから、みんながみんなの事を知って、みんなで楽しくなればいい。

自分勝手で他人任せの考えだけど、それでいいんだって思うから。


「あ、でも、これで終わりじゃないですからね。」

「そうなのかい? 」

「はい。鋼介君も友孝先輩も九尾先生も連れてきます。ここでいっぱい楽しい事をしますから。」


 うん。

陰陽師とか妖とか兄弟の諍いとか陰陽師の内部抗争とか。

全部知らない。それはみんなが考えたらいい。

私はみんなと楽しい事をいっぱいするんだ。


「傍観者じゃいられませんからね? どんどん巻き込んでいくんですから。」


 私が胸を張って宣言をすると、理事長はおかしそうに笑った。

その笑顔は嫌そうではなかったので、私もふふっと微笑む。


「理事長も……友幸さんも、『みんな』に入ってますから。一緒に生きて、一緒にいっぱい笑いたいんです。」

「……ありがとう。」


 ミルクティー色の髪がサラリと揺れて、水色の目が柔らかく微笑む。

私はなんだか照れてしまって、茶菓子を持ってチャコと勇晴君の元へ戻った。

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活動報告にupした小話をまとめました。
本編と連動して読んで頂けると楽しいかもしれません。
和風乙女ゲー小話

お礼小話→最終話の後にみんなでカレーを作る話。
少しネタバレあるので、最終話未読の方は気を付けてください

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