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第2話

 俺達冒険者二人は森の中の薬草の群生地に着いた。


「採っていい数は一人10株までだそうだ。気をつけろよ。」

「ということは、合計20株ね。」

「……俺は、一応ソロという事になっているぞ。」

「あっ……そうね。」


 実際の所、一部の魔人には人権が認められているため、20株採っても問題が無い可能性はある。しかしラミア族には恐らく認められていないだろう。


 俺達は薬草を採り始めた。すると「うわぁぁぁ!」という男とも女とも聞こえる悲鳴が聞こえてきた。


「これで10株だな。帰るぞ。」

「あの悲鳴の主、見に行かないの? 魔物に襲われたのかもしれないわよ?」

「放っておけ。魔人連れが見に行っても余計に混乱させるだけだ。それにどうせ金にもならないだろうが。面倒だ。」

「困っている人を見捨てると言うの? 行くわよ。」

「ろくでなしが相手ならどうするんだ。助けに行ったとして冒険者にお前と俺の討伐依頼が出るぞ? お前は自分が魔人だということをもう一度思い出した方がいい。」


 だがこんなことを言いつつ俺は内心かなり気になっていた。だから、言いなりになった。


「誰か! 助けて下さい!」


 森を抜け、俺達の前に現れた光景は、草原で棍棒を持った俺と同い年くらいの弱々しい黒髪の少年が下級魔物ファングウルフと睨み合っている姿だった。


 魔物とは一体何なのか? それはマナにより変質した動物だと言われている。魔人との違いは、知能にある。魔人はゴブリン等の例外を除き基本的に人間と同程度の知性を持っている。が、魔物はよほど高位の魔物でない限り本能に従って行動しているだけだ。となると、基本的に手強いのは魔人ということになる。


 少年は武器は持っているものの、防具はなく見た目に反して武術の心得がありそうなわけでもない。

 では敵のファングウルフはと言うと、下級魔物の中でも下位で戦闘の心得があれば苦戦せずに倒せる相手だ。だが群れを作っている場合は話が変わる。群れているファングウルフは連携に長けており、ナメてかかると痛い目に遭う。が、今目の前にいるファングウルフは一体だけだ。


 俺は何故かこの少年を助けるべきだと思った。人としての義務や感情、そういったもの抜きで本能的に思ったのだ。やはりミリアと会った時から、俺は何かに無理やり突き動かされている気がする。


「しょうがない、助けてやるか。フィレ、バルル、コマンド、ブート!」

「ガウッ!」


 俺のファイアボールがファングウルフに命中する。


「はぁっ!」


 ミリアの一閃が弱ったファングウルフを両断。ファングウルフは瞬間的に倒された。


 少年は一瞬呆然とし、その後慌てたように俺達の方を見て頭を下げた。


「あああ、ありがとうございます。お、お名前を教えててていただけますか? ボクはタヒュです。」

「そんな事より、何故ああなっていた? お前のような奴が棍棒一つで一人で森に入るとは命知らずもいいところだぞ。」

「ボク、両親とも冒険者で、でもボクは体が弱くて、それで、強くなろうと……」


 冒険者の戦闘能力は、基本的にマナの最大容量で決まる。この最大容量は殺した相手の容量の一部を奪えるというのが定説となっている。大量に魔物を狩った冒険者が強い理由が、これだ。


「この森には魔人もいる。ここにいる奴のようにな。ほんとお前、馬鹿だな。」

「ま、魔人を従えているのですか! さぞご高名な冒険者の方でしょう! 名前、どうかお名前を!」

「ザインだ。今日冒険者になった。後コイツは従えているわけではない。」

「え、ええっ……ま、まぁいいです。ザインさん、ボクを弟子に、弟子にしてください! 魔人を仲間に出来れば、こんな弱いボクでも戦えるんです!」

「やめておくことね。人類の仲間になる、魔人にそんな物好きは基本的にいないわ。」

「は、はい……で、では、何かお手伝いさせてください! 命を救われた恩です! 雑用なら、何でもこなせますよ!」

「邪魔だ、ふざけるな、と言いたいところだが、勝手にしろ。お前のような手合は、断ってもしつこく付いてくるからな。」


 本当は、タヒュについてきて欲しいと思っていたが、照れ臭くてこういった言い方をすることになった。なぜ役立たずのはずのタヒュをパーティーに入れたくなったのかは分からない。運命を感じたのかもしれない。


「ありがとうございます! 煮炊きでも野営の見張りでも何でもやりますよ!」

「ふふっ、これで、20株ね。」

「はぁ……お前、意外と強かだな。」

「2、20株って、何の話ですか?」

「気にするな、薬草を取りに行くぞ。とその前に、ファングウルフの毛皮と肉を剥ぎ取る。討伐証明部位は分からんから放置だ。」

「え、えっと、確か右の牙だったと思います。」

「そうか、では剥ぎ取るぞ、誰かナイフや袋を持っていないか?」

「私が持ってるわ。」

「タヒュ、手伝えよ。」

「は、はいっ!」


 これが、俺達の得難い仲間となるタヒュとの出会いだった。

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