10-3 私のターニングポイント
③
「俺にええ考えがありますわ。その嬢ちゃんの一生が終わるまで放置っちゅうことでどうです?」
「?やっぱり無かったことにしていいってこと?」
「ふっ、せやのうて嬢ちゃんは人生を全うしたいんやろ?せやったら全うさせたるわ。・・・ただし、全うした後の魂はこっちの好きにさせてもらうっちゅうことや」
「(え?え?どういうこと?)」
自分で言うのもなんだけど、私の可哀想な頭では理解が難しいらしい。もう少しわかりやすく説明してくれないかな。せっかく前衛に出ていた意識もパニックを起こして前王さまとチェンジしてしまったし。
「えーと、つまり死ぬまで手は出さないけど死んだ後の魂はこっちで回収するってこと?」
「そういうことや」
『あら面倒くさいわね。でもまあスィエロが良いのであればあたしはなんでもいいわよ。もう退屈してきたし』
「いやいやダメだよ。さっき言ったよね?のばなちゃんに決めてもらうって」
投げやりになってきた前王さまに悪魔なトウドウさん。傍観者を決め込んでいるそもそもの原因である死神さんに対し、私の味方は魔王さまだけだ。頑張れ魔王さま!
「ちゃんと嬢ちゃんの意見も取り入れとるんやで?死ぬまでは人、死んだら悪魔。ほら」
「ほらじゃないよ!!あれは言葉のあやってやつであって死んだら悪魔になってもいいなんて言ってないから!!」
本当に退屈してきたらしくあっさり意識を前に出すことができた。
「嬢ちゃんよう考え?今無理矢理悪魔にされて一生をここで過ごさなあかんくなるか、生きとる間は地上で生活して死んだ後はここ。さ、どっちがええ?」
「どっちも嫌ーー!!譲歩してるみたいに言ってるけど死神さんのわがまま聞かないでそのままスルーしたら解決するんじゃないの!?」
「それでも俺はええんやけど、あのおっさんわがまま通るまで封印される気ないみたいやで?」
ばっと死神さんの方を見ると、先ほどまできつく鎖に縛られていたはずなのにどうやったのかその鎖が外れてしまっている。地面に落ちた鎖を弄びながらちらちらとこちらを盗み見ていた。
「ぐっ、ものすごく面倒くさい!!」
「それは同感や」
「うわーんやだよぉ!」
ここまできたら効果があるかはわからないが、泣き落としでなんとかするしかない。あ、やっぱり効いてるのは魔王さまだけだ。
『はあ、仕方ありません。のばな様』
「?」
かなり面倒くさそうにペン子が私の足に手を置いて話かけてきた。
『死した後も美味しい物がたくさん食べられると考えるのはどうでしょう?陛下の直属の部下になるわけですし、毎日ディナーのような夕食になりますよ』
「ディ、ディナー・・・・」
「もーホロ、さすがにのばなちゃんもディナーなんかにはつられないよ、ねえのばなちゃん。のばなちゃん?」
ディナーとな?よくよく考えたら私はここにディナーを食べにきたんだよ。そりゃパーティの時に少しは食べたけど本当に少しだけだったからお腹に溜まったかって聞かれたらそうでもないし、八割どころか七割いったかなぐらいだ。ローストビーフも食べたりないしダンスのせいでデザートも食べないままだったし、うん。・・・・・・・・・・・うん。
「えらい考えこんどるな」
そういえばここの夕食豪華なの多かったな。毎日あんな美味しい物食べているなんて、いいなあ魔王さまは。そうだよね、死んだ後ってことは人生満喫した後にここに来て毎日贅沢な夕食にありつけるってことだよ。死んだ後もご飯を食べられるなんて幸せじゃないかな・・・・。
『のばな様!!いい加減こちらにお戻りくださいまし』
「はっ、ああごめん。あーうん私なってもいいよ、三食豪華ディナーなら」
「えっ」
「よし決まりや。さっさとアホを封印して終わらせましょか陛下」
「えっ」
『はあーやっと決まりましたか。これで陛下も通常の業務に戻れますね』
一人混乱状態の魔王さまを残し、周りはせかせかと各々のやることを進めていった。その結果死神さんは封印魔法によりあっさりと手を振って別れを告げていった。
「ちょ、ちょっと待ってよーーーーーーーーー」
ようやく落ち着いた魔王城ではこの城の主の叫び声だけが響き渡った。




